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希望◆7pf62HiyTE




 とある世界で起こった話をしよう。
 その世界には1人の少年がいた―――彼は妹が望む世界を手に入れる為に魔女から力を受け取りある帝国へと戦いを挑んだ。
 1人の少女がいた―――彼女は火事の時に自分を助け出した少女に憧れ、その少女と同じ魔導師となった。
 2人は出会う―――少年の持つ力の調査と監視の為に少女は彼の前に現れた―――
 学校・事件・戦闘の日常の中で少年と少女は心を通わせ互いの正体や秘密を知りながらも関係を深めていった。
 しかし度重なる日々の中で少年は多くの物を失っていった。
 友人を傷付け救う為に自分に関する記憶を奪い、7年来の親友とは敵同士となり、そして初恋の少女に大量虐殺の罪を負わせ彼女を自らの手で殺してしまった。
 それだけではなく、一番に守りたいと思った妹すらもその親友によって射殺された。そして少年は親友を憎悪の捌け口にする前に親友を撃ち殺していた。
 発狂すらも出来ずに少年は全てを失ってしまったのだ。いや、更にその後には少女の属する組織による罰が待っていた―――
 少女はそれを拒んだ。故に少年を守ろうとした―――相棒や仲間、憧れの人を敵に回し、組織を裏切る形になっても、家族と別れる事になったとしても―――
 少女の想いは少年に届き―――少女は少年の生きる意味となった―――

 それはきっと絶望の中から生まれたささやかな―――










「とりあえずこれで大丈夫かな?」
 スバルはG-6にある幾つかの店から先程骨折した左腕への添え木を見つけ出し、他にも治療に使えそうな救急箱も確保していた。
 真面目な話、戦闘機人である彼女には普通の医薬品は使えない。しかし、他の仲間達の治療には必要な代物である。
 勿論、先程までいたデュエルアカデミアで治療道具は確保していたが、治療道具はあるにこした事はない。

 さて、これからどうするかだ。
 襲撃者であるかがみを止めるには今の装備では無謀以外の何者でもない。実の所建物を回っている最中にもかがみの姿を確認してはいたが今接触しても無駄だとはわかっている為、気付かれない様に何とか細い路地に入る等してやり過ごしている。
 その為、まずは現状の仲間であるルルーシュ・ランペルージ、泉こなた、リインフォースⅡ、早乙女レイとの合流を優先すべきだろう。
 襲撃があった事で4人とも逃げたはずだ。こなたとレイが心配ではあったがルルーシュとリインがいれば少なくてもやられはしないはずである。
 そして合流して、手当てを行ってからかがみを追えば良いだろう。行き先に関してはかがみと彼女を唆したであろうバクラの会話から北の煙の方だというのはわかっている。
 が、実の所今後を踏まえるならばもう1つやらなければならない事があった。それはかがみの襲撃によって散らばってしまったチンクの荷物の確保である。
 彼女の荷物の中でどうしても必要なものがあった―――それが2つの首輪である。殺し合いの打破の為には首輪の解除が必須、その為には解析用の首輪が必要だ。
 今後も運良く首輪が手に入るとは限らないし、それ以前に死んだ人と遭遇する事自体あまり望んではいない。
 また、この首輪を見逃すという事は首輪の持ち主であるフェイト、ミリオンズ・ナイブズ、そして2つの首輪を持って来て、最後に自分を守る為に死んだチンクの死を無駄にするのと同義だ、それは決して許されない。
 その為、どうしても1度アカデミアに戻りたい所ではある。
 が、あくまでも当面の優先順位は仲間達との合流、そしてかがみを止める事である。何しろこれ以上こなたの友人で只の少女である彼女に人を殺させるわけにはいかないからだ。


 何はともあれ仲間を捜さなければならないわけだが……
「問題は何処に行ったかだけど……」
 地図を確認し、4人が向かったと思われる方向を考える。
「多分リイン曹長だったら煙が上がった方向には行かないと思うけど……ルルーシュが何か考えてそこに向かう可能性はあるし……ん、ちょっと待って……」
 この瞬間、スバルは根本的な間違いに気が付いた。
「そうだ……4人が一緒だとは限らないんだった……」
 スバルがかがみと対処している時にもルルーシュ達の心配はしていたが、リインが一緒ならば大丈夫だとかがみへの対処に専念していた。
 しかし、冷静に考えてみるとこの仮定にはある重要な前提が欠けている。それは4人が一緒にいるという前提である。
 思い出して欲しい、かがみの襲撃時他の4人が何をしていたのかを。
 こなたとレイは『手分けして』デュエルアカデミアの内部を調べていたし、ルルーシュは保健室に向かっていた筈である。リインがこなたと同行している以外はバラバラだったはずだ。
 その状況で襲撃が起きたとしよう。バラバラに逃げる事が危険なのは言うまでもないが、合流してから一緒に待避するという余力なんてあるわけ無いだろう。恐らくは各々が必死に逃げなければならないはずだ。
「大丈夫かな……みんな……」
 スバルは4人が殺し合いに乗った参加者に襲われても大丈夫かどうかを考えた。
 ルルーシュ―――武器もあるし、絶対遵守のギアスもあるが、腕の怪我が心配
 こなた―――リインが付いているが正直心許ない(リインには悪いけど)
 レイ―――武器として使えるらしいカードがあるが、こなた同様心許ない
 真面目な話どれも同じぐらい心配である。どちらにしても誰が何処に逃げたのかがわからない以上このまま探すしかないだろう。


 その一方、スバルはかがみの事を考える。何が彼女をあそこまで追いつめてしまったのだろうか?
 真面目な話をすれば、彼女が殺し合いに乗った決め手はバクラの存在だ、彼に唆された事で殺し合いに乗ったという事でほぼ間違いないとスバルは考えている。
 だが冷静に考えてみれば、果たして本当にそれだけで彼女が殺し合いに乗るだろうか?
 こなたから聞いた限りでは彼女は怒りっぽいけど根は優しい人だったはずだ。
「……ある意味ではティア……だよね……」
 そういう人物像からスバルの脳裏には自分の相方であるティアナ・ランスターが連想される。冷静に考えてみれば自分とこなたにも髪の色や眼の色とかが同じという共通点もあった気がする。
「あれ? もしかして、あたしとこなたって似ている?」
 ……実際、ルルーシュもこなたと話をしていた時そんな事を思ったわけだが、この場ではその事自体はどうでもいい。
 本題に戻そう。例えばの話、ティアナが妙なリングに宿る人物に唆されたぐらいで殺し合いに乗ったりするだろうか? まず有り得ない。彼女の性格を考えれば思い詰めて間違いを犯す事はあっても、冷静な彼女がその言葉に騙される事はまずないはずだ。
 かがみとティアナを同列に論じれない事はわかっている。しかし、かがみとティアナが似たタイプの人間ならば彼女だってそう簡単に口車に乗せられるとは思えない。
 つまり、要因は別の所にもあるという事である。ここで先程のかがみの言葉を思い出す、
『どうせほとんど無傷のアンタには分からないだろうけど、現に私はもう何度も殺されかけてるの!
 迷ったら殺される! 気を許したら騙される! だから私はみんなを殺す!』
 この言葉から察するに彼女は何度と無く他の参加者に騙され襲われ命の危機に遭遇したのだろう。それ故に良心は駆逐され過度の不信状態に陥ってしまったという事なのだろう。
 その心の隙を突いてバクラが彼女の信頼を得て、彼女を殺し合いに乗せたというのは想像に難くない。
 となると厄介な話である。バクラに単純に操られているだけならばリングから引き離せば済む話だが、こうなると引き離しただけでどうにか出来るとは思えない。メンタル面での彼女のケアを行わなければならないだろう。
 勿論、それ以前に彼女を無力化しなければならないという問題がある。だが、冷静に考えればこれも一苦労だろう。
 隙を見せれば先程の同様モンスターに喰われて終わり、武器を持っていたとしても先程同様いつの間にか彼女に奪われる、さらに彼女はアガデミアを一撃で崩壊寸前まで追い込むほどの強力な武器を持っていた。
 他にも何か武器を持っている可能性があったしバクラの宿っているリングにも何か隠された力があるかも知れない。
 勿論、倒すだけならば極端な話戦闘機人の力である振動破砕を使えばまだ何とかなるかもしれない。だが、それを使えばかがみも只では済まない。かがみを殺すわけにはいかない以上当然この手段は使えない。
「困ったなぁ……」
 どちらにしても仲間との合流を考えなければならないだろう。


「そういえば……」
 その一方、スバルは今更ながらにチンクが持っていた名簿の事を思い出した。実の所そこに書かれてあった内容に引っかかっていた事があったのだ。その名簿を改めて見てみる。
 その名簿には協力者、保護対象、要注意人物がグループ分けして記載されていた。その内訳は以下の通りだ、

 協力者……高町なのは、シグナム、八神はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア、矢車想
 保護対象……エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ、柊つかさ、柊かがみ、泉こなた
 要注意人物……遊城十代


 まず、この名簿がチンクのものではない事は一目瞭然だ。彼女ならばクアットロ、ディエチ、ルーテシア・アルピーノ、ゼスト・グランガイツの名前が出てこないのは不自然だからだ。では、これは一体誰が所持していた名簿だったのだろうか?
 いや、実の所それについてはある程度推測が付く。チンクはある人物の首輪を所持していた事を思い出して欲しい、そうフェイトの首輪を所持していたのだ。
 つまり、チンクはフェイトの死体から首輪を手に入れ、さらに彼女のデイパックをも確保したという事だ。前述の名簿は彼女のデイパックに入っていたという事だろう。
 今となってはチンクがどういうスタンスだったかはわからない。クアットロを託した事から優勝狙いという事は無いと思うが、自分達管理局と敵対していないという保証は何処にもない。
 真面目な話、チンクがフェイトを殺して首輪を手に入れたという可能性はあった。だが、正直スバルはそれを信じたくはないし、今はその事は重要ではないのでそれについては考慮しない。
 さて、問題の名簿がフェイトが所持していたものだとするならば協力者に上げられた人物に説明が付く、矢車以外は何れも管理局の仲間だ(フェイトの名前が無いのは自分自身の名前だったからだろう)。
 ここで気になるのは自分とティアナの名前が無く、エリオとキャロが保護対象扱いになっていた事だ。しかしこれについても納得のいく説明が付く。
 単純な話、機動六課設立前の時期から連れて来られたのだろう。だとすれば自分達の扱いにも説明が付く。
 さて、実の所引っかかった所というのはここからだ。保護対象の中にはこなた、かがみ、つかさの名前があった事だ。
 一体何故彼女達の名前があったのだろうか?
 フェイト自身が知っていた、もしくは3人の世界のなのはと会った? その可能性は低いだろう、それなら自分とティアナの名前が無いのが不自然だ。
 結論は単純だ、フェイトがその3人を知る参加者と遭遇したという事だろう。そしてそれに該当する人物は1人しかいない。
 こなたと遭遇した? こなたは自分と殆ど一緒だったためそれは有り得ない。
 かがみと遭遇した? フェイトならばかがみのケアをちゃんと行ってくれるはず、かがみの様子を見る限りそれは無い為これも除外される。
 フェイトと遭遇したのは恐らくつかさだったのだろう。それもかがみ同様、自分とティアナの事を知らない世界から連れて来られたのだろう。
 なお、スバルは前述の仮説を立てたが実はフェイト自身が3人の事を知っていてなおかつ、自分とティアナを知らない世界から連れて来られたという可能性もあるし別の可能性もある。しかし、この状況下でこの考えに至れるスバルではなかった事を記しておく。
「もしも、フェイトさんがつかささんを保護していたら……」
 この仮説自体が断言出来るものではないが可能性は十分あると考えている。が、この仮説通りだとしたら正直不味い事になる。
 何しろ、チンクを保護したタイミングから考えてフェイトの死亡はその数時間前だと考えられる。となれば、その後つかさはずっと1人という可能性が高い。
 こなたの話ではつかさは大人しく心優しい少女らしい、そんな彼女がたった1人でこの殺し合いに耐えられるとは思えない。極端な話、かがみと同じ状態に陥る可能性はあると考えている(信じたくはないが)。
「それに……」
 問題はもう1つある。名簿には要注意人物としてレイの仲間である十代の名前があった。レイの話では殺し合いに乗る人物ではないはずだ。では何故、フェイトからは要注意人物扱いされているのだろうか?
 だが、ここでレイから聞かされたある話を思い出して欲しい。それは『フェイトは敵に操られている可能性がある』という話だ。仮に十代もそう考えていたとしたらどうだろうか?
 十代はフェイトを止める為に彼女と交戦した可能性がある。だが、何も知らないフェイトから見れば彼が殺し合いに乗っていて襲いかかってきたという風にしか見えないだろう。
 故にフェイトは十代を要注意人物として扱ったのだろう。
「こういうのって本当はティアの方が得意分野だよね……」
 ここまで考えて、今更ながらにスバルはそう思った。


 さて、スバルは正直途方に暮れていた。状況は自分が思っていた以上に悪化している可能性が高いからだ。
 実の所、ルルーシュ達4人が無事に逃げ出したという可能性も正直微妙な話である。放送で十代の死を知らされたレイが暴走する可能性があったのだ。信じたくは無いが彼女がこなたやルルーシュを襲う事もあり得る。
 更に、この間にもかがみが他の参加者を襲う可能性は十分にあり得る。スバルの知る限りアカデミア周囲にいる可能性が高い参加者は少なくても4人以上いる。
 まずは前述のこなた、ルルーシュ、レイの3人、そして数時間程前にアガデミアから去っていたシャーリーだ。シャーリーに関しては立ち去ってから大分時間が経過しているから遠くに行っている可能性はあったが断定は出来ない。
 かがみが彼女達に遭遇したら恐らく襲いかかるのはいうまでもない。
 不安はあるものの遭遇したのがルルーシュもしくはレイならば対処出来るかもしれない。ルルーシュはギアスを、レイはカードを使えば対処出来るだろう。
 逆にかがみを殺す可能性も無いではないが、バクラがいるならばかがみを死なせるはずが無い為その可能性は低いだろう(バクラ頼りになるのは正直不服だが)。
 問題はシャーリーとこなたと遭遇した場合だ。彼女達ならばあっさり殺される結果になるだろう。無力なシャーリーは言うまでも無いが、こなたの場合はリインがいるから大丈夫じゃないのか?
 いや、恐らくリインがいても無理だろう。別にリインの力を信じていないわけではない。
 仮にこなたとかがみが出会えばこなたは警戒せずに接触するはずだ、当然リインも警戒を解くだろう。その一瞬の隙を突いて―――まさしく先程の自分とほぼ同じ結果になる。
 その為、出来るだけ早く、それもかがみと再会する前にこなたとは合流しなければならないだろう。
「でも……どうやって説明しよう……」
 だが、再会したら再会したで別の問題がある。かがみの件をどう説明すればいいかがわからないのだ。
 彼女がチンクを殺したという事実がある以上黙っているわけいはいかないし、こなたの安全を考えるならば話さないわけにはいかない。
 一応、全部バクラのせいだと説明しても良いが、理由はどうあれて聞かされたこなたがショックを受けるのは想像に難くない。
 それに仮にバクラをかがみから引き離したとしてもかがみの状態が変わるとは限らない。それでもこなたを殺すというかがみの姿を見たらどれだけ辛い事だろう。

 正直な所、自分の無力さを感じずにはいられない。
 最初に赤い吸血鬼からこなたを守った以外は何も出来ていないではないか。むしろ自分の判断の甘さで悪い結果すら引き起こしている気がする。
 かがみに並行世界の話をした時にしてももう少しやりようがあったのではないだろうか。こなたやルルーシュ達がそれ程ショックを受けていないと思い込んで、その重要さを甘く考えていたのでは無かろうか?
 彼女はそれを聞いてハッキリとこなたもつかさも別人だと決めつけ殺す意思を固めたのだ。
 ルルーシュの様に異なる並行世界の人物でも同じだと言える人物がいるとしても全部が全部そうとは限らない。自分だってルルーシュが自分が彼の世界の自分と知って絶望する姿を考えていた、十分にあり得た話だった筈だ。
 いや、真面目な話今でもルルーシュやこなたが内心ではそれでショックを受けているのかも知れない。それを自分は忘れてしまってはいなかっただろうか?
 結局の所、チンクを死なせる結果になった事もスバル自身の見極めが甘かったからでしかない。
 スバルがかがみの身に起こった事をもう少し深く考えていればかがみの凶行を察知出来、自分を助ける為にチンクを死なせる事も無かったはずだ。
 幾らバクラが元凶だと考えていても、自分に全く原因は無かったと考える程スバルは愚か者ではない。自分の悪かった所はある程度認識出来ている。
 更にいえばだ、かがみによってレヴァンティンが奪われたが、スバルがルルーシュの助言を聞かなければもっと悪い状況になっていた事もあり得る。
 ルルーシュに指摘されるまではレヴァンティンはこなたが所持し、スバル自身は質量兵器であるライフルを持っていた。スバル自身もその装備が合わない事はわかっていたが、こなたに戦わせず、なおかつ最低限守らせる為の配慮であった。
 しかしルルーシュはこなたを戦わせたくないなら自分の力を分けずこなた自身の力を0にしてでも10の力で守り抜けと言った事で、レヴァンティンをスバルが、銃をルルーシュが持つ事になった。
 仮にルルーシュからの指摘が無くスバルがずっとライフルを持っていたらどうなっていただろうか?
 考えるまでもなくライフルが奪われただろう。そして、その銃を使ってかがみは多くの参加者を殺しに行くのは想像に難くない。レヴァンティンならば魔力の持たないかがみでは十分に使えない。
 なお、こなたのレヴァンティンの有無が問題になるがそもそもこなた自身が魔力を持たないし、それ以上に守る上ではある程度頼れるリインがいる為、大した違いは無いと考えて良いだろう。
 つまり、結果としてルルーシュの助言が状況の悪化を僅かに防いだという事である。その助言が無い、もしくは助言を聞かなければどうなっていたか―――考えたくもない。
 とはいえ過去の失敗を何時までも悔やんでも仕方がない、重要なのはこれからだ。しかし、やはり先は全く見えていない。スバル自身は仲間と力を合わせればどんな困難でも乗り越えられると考えているが現実はそう甘くはない。
『殺らなきゃ殺られるの! 他の脱出法を探してる時間なんてないのよ!』
 これは先程のかがみの言葉だがこの言葉は真理を突いている。
 認めたくはないが殺し合いに乗った参加者を完全に無力化しなければ他の参加者が殺されるのは言うまでもない。
 スバルはこなたと遭遇した吸血鬼を振動破砕である程度ダメージを与えていたが、奴の再生能力を考えるならば既に身体は万全のはずだ。当然その後は他の参加者を殺し回っているだろう。
 ルルーシュとディエチが遭遇した金髪の男にしてもその実力を考えるに未だ健在のはずだ。当然彼は今も他の参加者を殺し回っている筈だ。
 そしてチンクの両腕を焼き落とす程の重傷を負わせたらしい参加者もいる。詳しい事は全く不明だが、奴を放置すればまた多くの参加者が殺されてしまう。
 更に万丈目準やヴァッシュ・ザ・スタンピードといった殺し合いに乗った参加者が数多くいるし、プレシア・テスタロッサの言っていた御褒美を得る為に殺し合いに乗った仲間だっているかも知れないし既に何人かが殺されている可能性はある。
 同時に時間が無いというのも確かな話だろう。14時間経過した段階で60人中少なくても23人もの参加者が殺されている。
 単純にペース計算をすると48時間ぐらいで10人前後になるぐらいのペースだ。
 残り34時間で仲間を集めて脱出法を確保出来るかどうかもわからないし、仮に出来たとしてもその段階では犠牲者があまりにも多すぎる。
 その方法が全く見えていないわけではない。しかし、かがみの襲撃1つだけでそれが殆ど崩壊してしまっている。不安材料がある中でここから再び立て直すのがいかに困難な事か……正直不安になってくる。


 勿論スバル自身は諦めるつもりは全く無い。だが、自分の力で本当にそれが出来るのだろうか……仲間を集める事すら出来ないのでは無かろうか……

『どうした、それで終わりか!? 『この』スバル・ナカジマは武器を失った程度で戦えなくなる臆病者だったか!?』
『なんだか、スバルって本当にアニメのヒーローみたいだね』
『決意も、行動も……お前が“スバル・ナカジマ”なら、できるはずだ』

 脳裏に浮かぶのは形は違うが何れも自分を評価した言葉だ。
 だが違うのだ、自分はそんな立派なものじゃない。それはこの結果が証明している。


 考えれば考える程深みに嵌ってしまう……とはいえ何時までも立ち止まるわけにはいかない。気を取り直して名簿をデイパックにしまう。
「あ……これ……」
 と、デイパックの中から小さな指輪を何気なく取り出した。それはスバルの瞳と同じ色をしたエメラルドの指輪。
 それが何の力も持たない普通の指輪だというのはわかっているし、ルルーシュ達もそれには同意していた。
 何故か自分の指に合致するが、少なくてもスバルには全く心当たりがない。真面目な話、自分が今後これを身に付ける可能性が全く想像出来はしない。それでも―――

 指輪を見ていると深く沈んでいた心境が晴れていく気がした―――
 その指輪が自分に力を与えてくれると感じた―――
 そして、自分を励ましてくれると感じた―――

 それはきっと気のせいだ、この指輪にはそんな力はない。極端な話、世間一般に存在する指輪と殆ど何も変わらないはずだ。だが、この指輪には間違いなく『想い』が込められていると―――

『たとえどんな世界にいようと、お前はお前だ。いつも笑顔で、楽しそうで……精一杯真っ直ぐに生きてる、スバル・ナカジマだ』

 何故かルルーシュの言葉が脳裏によぎった―――先程までだったら重荷に感じたであろうその言葉が今では大きな支えになる気がする。
 ならば最早立ち止まるわけにはいかない。例えこの先が困難であったとしても、方法が見えなくても、傷つき倒れそうになっても、精一杯やり抜こうとスバルは思う。


 指輪を再びデイパックにしまい、仲間達の捜索を始めた。今いる場所はG-6の大通りから外れた道路。
 大通りは何か戦いがあったせいか荒れており移動には適さず、また何かと目立ち殺し合いに乗った参加者に見つかる可能性がある為、大通り外れの路地を通る事は十分に考えられる。
 優先順位としては先程想定した危険を考えてこなたとシャーリーだ。ルルーシュとレイには悪いとは思うが、今のかがみと遭遇する可能性を考えると仕方が無いだろう。
「一番良いのはみんなが一緒にいる事だけど……そこまで都合良くは……」
 と、歩いていると何かが飛んでいるのが見える。
「あれ……?」
 スバルがその場所にたどり着いたら『それ』はスバルの前まで近付いてきて、スバルが手を伸ばしたら素早くそこに止まった。
「これって……!」
 スバルにはそれに見覚えがあった。『それ』は銀色のカブトムシを模した機械ハイパーゼクターだ。時空間をワープする能力を持ったそれは現状では数少ない脱出の手掛かりである。
「ちょっと待って、どうしてこれが……」
 確かハイパーゼクターはルルーシュが持っていた筈である。脱出の鍵となり得る要素をプレシアに知られるのは不味い為、現状でルルーシュが出す可能性は低いはずだ。
「まさかルルーシュに何かあったんじゃ……」
 予想していたとは言え、その可能性はスバルに不安をよぎらせる。それでも冷静に周囲を見回すと、
「あれ……まさか……」
 そこには気になる店があった。その店の名前は『アニメイト』、スバル自身にとっては未知の店の名前ではある。しかし、
「まさかこなた……」
 そう、こなたがアニメやマンガ及びゲームが好きなのはよく知っている。そして『アニメイト』といういかにもアニメに関係する物がありそうな店だ。こなたがそれに引かれて入っていった可能性は十分にあり得る。
 この非常時にそんな馬鹿な真似をするだろうか? 正直そうは思うが、もしもかがみがこれを発見した場合、その名前に引かれて入り不幸にもそこにいるこなたと鉢合わせになる可能性はある。今こなたとかがみを出会わせるわけにはいかない。
「まさか……これを教えるつもりだったの……?」
 銀色のカブトムシは答えない、故に真実はわからない。

 それでも、仲間達と合流し守る為にスバルは迷うことなくアニメイトへと踏み込んだ。


【1日目 午後】
【現在地 G-6 アニメイト入口】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、全身にダメージ小、左腕骨折、ワイシャツ姿、若干の不安と決意
【装備】なし
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、添え木に使えそうな棒、救急道具
    炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。
 1.アニメイトに入り、こなたやルルーシュ達を探す。
 2.ルルーシュ達と合流し、かがみを止めにいく。出来ればこなたとシャーリーを優先して探したい。
 3.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。
 4.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。が、かがみの事はどう説明するべきか……
 5.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。
 6.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※質量兵器を使う事に不安を抱いています。
※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。
※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いています。
 でもそれを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。
※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在していることに気付きました。
 また、かがみが殺し合いに乗ったのは、バクラにそそのかされたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※救急道具は及び棒はG-6にある幾つかの建物から見付けました。










 少年と少女の話には続きがある―――
 その3年後、少年は少女に指輪を送った―――

 その指輪は少女の瞳の色と同じエメラルドがあしらわれたもので特別な力など何もない。
 しかし、その指輪は2人の絆であり、そしてこれからを象徴するものだろう。
 勿論、エメラルドだったのは少女の瞳の色と同じだったからだろう。だが、その2人にとって相応しい物と言えよう。
 宝石にはそれにまつわる言葉や意味が存在する―――エメラルドが意味するのは『新しい始まり』、そして―――





 ―――『希望』



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浅倉威 Next:ライダー大戦2010(前編)
柊かがみ Next:ライダー大戦2010(前編)
相川始 Next:ライダー大戦2010(前編)
スバル・ナカジマ Next:崩落 の ステージ(前編)






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