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STRONG WORLD/神曲・最終楽章(後編)◆vXe1ViVgVI




□ ■ □ ■



 終わった、と新庄は地面にへたり込みながらも、安堵の息を吐いた。
 始まりは上空からの謎の攻撃。
 一瞬死さえも覚悟したが、この攻撃はまるで見えない膜に弾かれたのように、外れていった。
 同時に、その瞬間視界を覆い隠したのは彼の右腕から発現した白色の翼。
 その翼は自分の身体を易々と弾き飛ばし、森林の奥底へと退避させた。
 戦闘に巻き込ませないよう彼が行ったのだ、と気付いたのは異次元バトルを観戦し始めて直ぐの事。
 異次元バトル……まさに今回の戦闘はそう敬称するのが相応しいと思う。
 幾度と放たれる青白い閃光に、それを防ぐ目に見えない膜。
 彼の左腕から出現した何本もの刃を易々と回避し続け、隙を塗って反撃を行う襲撃者。
 とても自分が介入できる域を遥かに越えていた。
 まさに次元が違う戦闘であった。

「こっちのトリガーにも……指がかかっているのさ……」

 しかし、その戦闘にも終焉の時は訪れた。
 武器を手放し、四つん這いの状態で悔しさに呻きを漏らす襲撃者。
 襲撃者の身体には微小ながらも山のような傷が残されており、そこから夥しい量の真紅が流出している。
 屈辱に満ちた呻き声だけが、場を支配していた。

「……君がなぜ殺し合いに乗ったのか、僕には分からない……」

 そんな静寂の場で最初に口を開いたのは、彼だった。
 疲労困憊の顔に淋しげな笑顔を映し、呻く襲撃者に声を落とす。

「……でも、もう止めにして欲しい……もう誰も殺さずに生きて欲しいんだ……」

 その儚げな笑顔に、やっぱり不安が募る。
 もしこのまま彼と別れて、本当に『生』の道を選択してくれるのか?
 このまま独り禁止エリアに残り、『死』を受け入れてしまうのではないか?
 ただ、それだけが不安で仕方がない。
 どうすれば良いんだろう?
 彼が確実に未来を掴んでくれる方法、それが知りたい。
 考える。彼の笑顔を視界に映しながら、ただひたすらに考える。
 共に行動する事は困難の極み。
 でも、彼を独りにして本当に禁止エリアから脱出してくれるのか分からない。
 知りたかった。
 彼が必ず明日へと歩んでくれる方法……それを―――、


『……新庄、これ以上は危険です。今すぐにでも行動しなければ……』
「……だってさ。さぁ、行くんだ。そして誰も殺さずに生きてくれ……お願いだ……」


 ―――あ、


「貴様……名は何という……」


 ―――思い付いた、彼を救う方法を。


「……ヴァッシュ・ザ・スタンピードだ……」
「そうか……ヴァッシュ・ザ・スタンピード。次に……次に会った時は覚悟しておけ……! 絶対に殺す……絶対に殺してやるぞ……!」

 ふと見ると襲撃者さんが立ち上がり、彼から距離を開けている。
 おそらく逃亡する気なんだろうが、彼はそれを阻止しようとしない。
 ただ笑顔で、襲撃者の事を見詰めていた。
 今だ。
 今しかタイミングはない。
 今ここで言わなければ、この方法はもう使えない。


「―――ぼ、僕……僕、この人の事を監視します!」


 ―――そう、これが今僕に考えられる唯一の方法。
 この人を死なせない、唯一の方法。


『新庄!?』
「え…………い、いきなり何言ってんの、君!?」
「だ、だって、この人が本当にあな……ヴァッシュさんの言う事を聞くか分からないじゃないですか! だ、だから僕が監視します! この人が他の参加者を殺さないよう、僕がずっと監視してます!」

 彼……ヴァッシュさんは驚愕の表情でこっちを見ている。
 それはそうだろう。
 今まで無言で成り行きを見守っていた人間が、突然殺人鬼と行動したいと言い始めたのだ。
 驚くなという方が無理のある話だ。

「いやいやいやいや! 何言ってんのさ!? さっきの戦い観てたよね!? この人、凄んごい危ない人なんだよ!?」

 ヴァッシュさんの言いたい事は分かる。
 このターバンを頭に巻いた男の人は、確実に殺し合いに乗っている。
 今はヴァッシュさんを前にしているから大人しいが、二人きりになったとしたら、絶対に僕を殺害しようとする筈だ。
 それくらいの事は僕にだって理解できる。

「大丈夫ですよ。仮に僕が襲われたとしても、ヴァッシュさんの『能力』があるじゃないですか。『参加者の現在地と生死を把握できる能力』が!」
「……は……?」

 ―――だから、不確かな物ではあるが、対処法も考えてあった。
 その対処法とは、ずばり虚言。
 この襲撃者に、嘘の事実を認識させるのだ。
 ヴァッシュさんに『能力』があると。
 別々に行動をしていたとしても、ヴァッシュさんはコチラ側の情報を逐一入手できる―――そんな『能力』を持っていると、襲撃者に認識させる。
 そうすれば襲撃者は迂闊に僕へと手を出せなくなる筈だ。
 その『嘘の能力』が抑止力となり、襲撃者は僕を殺害する事が出来なくなる。
 ヴァッシュさんとの戦闘に敗北し、ヴァッシュさんに殺され掛けたこの人なら……ヴァッシュさんに『恐怖』を覚えていたこの人なら、その効果は特段高くなるだろう。

「お願いしますよ、ヴァッシュさん。ヴァッシュさんの存在が、この人の凶行を止める抑止力なんです。
 だから―――絶対に死なないで下さいね」
「…………そういう、事ね……分かったよ、君の考えは良く理解できた……」

 ヴァッシュさんは諦めと呆れを混合させ、降参だと言わんばかりに軽く両腕を上げた。
 どうやら、僕のこの行動の意図に気付いてくれたらしい。

「そういう訳だから、君よろしくね。この子……」
「新庄です」
「そう、新庄君のこと守ってやってよ。君の能力なら楽勝だろ?」
「ふ、ふざけるなよ……! 何故、私が貴様の命令に従わねばならん!」
「……言っただろ、こっちのトリガーには指が掛かってるって。やろうと思えば何時でもやれるんだよ、僕は」
「なっ……!」
「でも、命までは奪わない……だから、その代わりに言う事を聞いてよ。安いもんだろ? 未来の代価にしてはさ」
「っ……!」
「ちなみに、君が手に掛けたにせよ、他の人が手に掛けたにせよ、新庄に何かあった場合はそれ一切君の責任ね」
「……!」
「もっとも失敗したら地獄の底まで追い掛けてくから、そのつもりで」
「…………」


 それからの展開は思った以上に迅速なもので……僕達は直ぐにヴァッシュさんと別れる事となった。
 襲撃者……エネルさんは、ヴァッシュさんの脅し文句が効いたのか、二人きりになっても何ら手を出してくる様子はない。
 ヴァッシュさんという抑止力は予想以上の効果を引き出しているらしい。

(これでヴァッシュさんも……)

 この摩訶不思議な状況に陥った今、ヴァッシュさんも『死』を選択する事はない筈だ。
 ヴァッシュさんという抑止力が存在するからこそ、僕はエネルさんに殺害されずに済んでいる。
 だからこそ、ヴァッシュさんが『死』を選択する事はない。
 他人の死を嫌うあの人だからこそ、絶対にその選択だけはしない筈だ。

(頑張って、下さい……)

 取り敢えずの進路は南。
 これからの行動については禁止エリアを抜け出た後に考えれば良いだろう。
 空には太陽が爛々と山吹色の輝きを見せている。
 四時間振りに踏み出した殺し合いの場は、内で行われてる凄惨な催しに反し、何処までも澄み切っていた。



□ ■ □ ■



 木漏れ日が降り注ぐ森林の中にて、エネルは憤怒に顔を赤らめていた。
 後方を歩くは貧相な青海のサルが一人。
 殺害するに一秒と掛かる事もない、だが手出しができない青海人。
 いやそれどころか、他の殺人鬼から、守護すらしなければならない相手だ。
 何故ならこの青海人が死ねば、自分もまた殺されるから。
 あのヴァッシュ・ザ・スタンピードという男により、殺されるからだ。

(くそっ……どうしてこうなった……! 何故、神たる私が青海人の言う通りに動いているのだ……!)

 奴の『能力』とやらで、自分達の現在地は常に把握されているらしい。
 おそらくは心網(マントラ)のような能力なのだろう。
 だが、奴等の話しぶりからするとその効果範囲は会場全域。
 全ての参加者が制限下に置かれている今、その射程は脅威的なものだ。
 奴のみが制限の外に居るのか、それとも制限が設けられてでさえそれだけの効果範囲を持つのか……どちらにせよ、奴が異常な能力を有している事だけは確か。
 左腕を幾多もの白刃に変化させる能力、雷すら防ぎきる不可視の防壁、会場の全域を覆う索敵能力、そして……我が雷龍(ジャムブウル)を消滅させた光球。
 奴が様々な能力を有している、それだけは確固たる事実であった。

(こんなガキを……何故私が……)

 別段、恐れる事はない筈だ。
 この青海人を殺害し、再びヴァッシュ・ザ・スタンピードと合間見える事だって可能。
 先は奴の能力を読み違えた事から敗北を喫したが、その勝敗は均衡の上にあった。
 もう一度戦闘すればどうなるかは分からない。
 いや、充分に勝機は在る。
 分かっている。
 それは分かっているのだが……身体は動かない。
 後ろの小僧を殺害しようと考える度に、先の光景が頭をよぎってしまうのだ。


 謎の光球が雷龍(ジャムブウル)を消し去った、その光景が―――、


 数十もの刃が自分の身体を完全に包囲した、その光景が―――、


 薄皮を貫く刃の感覚が―――、



 ―――どうしても頭をよぎる。


 そして、その光景が頭をよぎる度に、身体が震え、脚がすくみ、冷や汗が噴き出す。
 この吐き気を催す感情は何なのだ?
 今までの人生で一度たりとも経験した事のない感情。
 あのゴム人間を前にした時さえも、こんな感情は覚えなかった。
 これは、この感情は―――何なのだ……!
 分からない。
 幾ら考えれど、この疑問に対する答えは出ない。
 ただ思い出されるは、何時ぞやか、ある男が放った一言。

『下の海には……もっと怪物みてぇな奴らがうじゃうじゃいるんだ!!』

 ただその言葉だけが何度も、何度も、頭の中で鳴り響く。
 何故、今更になって奴の言葉などを思い出すのか……それすらも分からない。
 私は……私は一体どうしてしまったのだ?
 訳が分からない。
 ただ纏まらない思考のまま、道なき森林を歩いていく。
 まるで青海のサルを守るかのように周囲を警戒しながら、進んでいく。
 これから先どう動いていくのか―――その思考さえ停止させたまま、その思考さえ謎の感情に遮られたまま、進んでいく。
 心に虚無を宿したまま、先へと進んでいく―――





【一日目 日中】
【現在地 B-4 森林】

【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(大)、胸に大きな打撲痕、身体中に切り傷(小)、『死』に対する恐怖
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0~2
【思考】
 基本:主催者も含めて皆殺し。この世界を支配する。
 0.何なのだ、この感情は……!
 1.このサルを守るのか……?
 2.ヴァッシュに復讐したいが……
【備考】
※心網の索敵可能範囲がおよそ1エリア分である事に気付きました。
※漆黒の鎧を纏った戦士(=相川始)、はやてと女二人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※身体に掛けられた制限及びゴロゴロの実の能力を駆使しても首輪を外せない事に気付きました。
※なのは(StS)の事は覚えていますが、彼女と会ったのが何時何処でなのかは覚えていません。
※なのは・フェイト・はやての3人が、それぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を二つ喪失したことにより、雷龍(ジャムブウル)を放つ事ができなくなりました。
※ヴァッシュに『参加者の現在地と生死を把握できる能力』があると思っています。

【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】全身に軽度の火傷、全身に軽い打撲、全身ずぶぬれ、男性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する。
 1.ヴァッシュを死なせない為にも、生き残る
 2.エネルと行動。彼が人を殺さないように監視する
 3.レイが心配。
 4.フェイトさん……
 5.ヘリコプターに代わる乗り物を探す
 6.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する。
 7.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー。
 8.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す。
【備考】
 ※特異体質により、「朝~夕方は男性体」「夜~早朝は女性体」となります。
 ※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
 ※ストームレイダーの弾丸は全て魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。
  また、ストームレイダーには地図のコピーデータ(禁止エリアチェック済み)が記録されています。
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。




□ ■ □ ■



 これからどうしようか、とヴァッシュは一人で歩きながら考えていた。
 自分の左腕は、やはり意志に反し行動する。
 先の戦闘だって、新庄の言葉がなければ確実に殺害していた。
 左腕から生えた白刃で彼の身体をめった刺しにし、殺害していただろう。
 あの言葉があったからこそ、ギリギリの所で踏みとどまれたのだ。
 あの言葉があったから―――、

「やっぱり……駄目だよ……」

 ヴァッシュはポツリと呟いた後、歩みを始める。
 目的地など無い。
 でも新庄の為にも死ぬ事は出来ない。
 ただ誰とも会わないよう、ただ誰も傷付けないよう……それだけを考えてヴァッシュは歩く。
 不意に開けた森林にすら気付く事なく、その瞳に何も映さず、ヴァッシュは進んでいく。
 変わらぬ後悔を背負ったまま、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは昼の森林を突き進む。

【一日目 日中】
【現在地 A-3 草原】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、精神疲労(大)、悲しみ、融合、黒髪化四割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish
【道具】なし
【思考】
 基本:新庄を死なせない為にも、とりあえず生き残る。
 1.今のところは、誰にも遭わないようにしたい。誰にも迷惑をかけたくない。
【備考】
 ※第八話終了後からの参戦です。
 ※制限に気付いていません。
 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。



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ヴァッシュ・ザ・スタンピード Next:ひとつ分の陽だまりに ふたつはちょっと入れない
エネル Next:13人の超新星(1)






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