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君の名を叫んでいた ――月蝕・終章終節 ◆Vj6e1anjAc




 いつの間にか、夕方に差し掛かっていた。
 西方から照りつける黄昏の陽光が、燻った世界を朱色に染めていく。
 ひび割れた道路も、煤けたビルも。
 へし折れた標識も、熔けたガラスも。
 全てが炎の赤とも異なる、穏やかな朱の色へと染まっていく。
 血みどろの銀髪が光を受けて、この時この瞬間だけは、黄金の色に煌いていた。
 廃墟と化した街の真ん中で、1人セフィロスが腰を下ろしている。
 そこにかつての力強さも、おぞましさすらも存在しない。
 どこかぐったりとした様子で、倒壊した建物の瓦礫にもたれかかっている。
 珠のような脂汗が、顔中にびっしりと浮かんでいた。
 絹糸のごとき銀の長髪が、艶やかな光を宿して頬に貼りついていた。

 命の鼓動が弱まりつつある。
 致命傷を受けたこの身体は、着実に死に向かいつつある。
 文字通り死力を尽くした激闘の結果、魔力も体力もすっかり使い果たしてしまった。
 まさに満身創痍といった状態だ。
 もはやなのはやヴィータはおろか、スバル達新人連中の誰かと当たれば、その時点で敗北が決定するだろう。

 それでも。
 それだけの犠牲を払った結果、少なくともアーカードを抹殺することには成功した。
 恐らく一番手強いであろう相手を仕留めたのだ。
 これで今後の戦いも、ある程度は楽になるだろう。
 そしてあのアーカードを倒した今、彼にはまた他にやることがある。
 ぐ、と。
 ほとんど力の入らぬ身体に、無理やり力を込めようとした。
 両の腕を道路に突く。
 腰を浮かせんと持ち上げる。
 それでも身体が言うことを聞かない。
 鉛のように愚鈍な肉体は、いつまで経っても起き上がろうとしない。
 早くしなければ。
 奴をこの手で殺さなければ。
 奴がここからいなくなる前に。
 奴がこの場から逃げおおせる前に。
 憑神刀(マハ)の切っ先すらも杖にして、立ち上がらんとした瞬間。



 ――ぱぁん。



 乾いた銃声を、耳に聞いた。
 口元へと逆流する血液が、ほんの少し増えた。
 胸に感じる痛みが、ほんの少し増えた気がした。
 鼻腔をくすぐるのは、血と硝煙と女の匂い。

「……お前に殺されることに、なるとはな……」

 眼前に現れた八神はやての偽物が、ピストルでセフィロスの心臓を撃ち抜いていた。

「だァホ……」
 吐き捨てるようにして、女が言う。
 忌々しげに、眉間に皺を寄せている。
「お前のことなんか知らんって、言うとるやろ……」
 その悪態すらも、既に霞がかってよく聞こえない。
 命の遠ざかる感触が、急激にその速度を増していく。
 もはや、終わりの瞬間が近いのではなく。
 今こそが、終わりの瞬間そのものなのだろう。
 五感は緩やかに遠ざかり、思考は徐々にぼやけていく。
 体温が肌から奪われていき、血肉が硬直していく感触。

 これは何という皮肉だろうか。
 己の星の巡り合わせに、苦笑する。
 かつて自らの生まれ育った星を奪わんとした時、自分は運命に敗北した。
 世界は自分の支配を拒絶し、クラウド・ストライフという名の抑止力を仕向け、結果己を敗北へと導いた。
 そしてクラウドのいないこの地でもなお、自分は世界に否定されたらしい。
 いわばこの八神はやての姿を騙る者が、このセフィロスという異物を狩るために遣わされた、抑止力だったということか。
 全く、なんと皮肉なことか。
 最も愛しき友の形に、取り殺されることになろうとは。

 いよいよ意識がぼやけてきた。
 むしろよくここまでもったものだ。
 同じように心臓を撃たれた八神はやては、ものの数瞬で逝ってしまったというのに。
 命が削り取られていくごとに、全ての感覚が消失していく。
 感覚が引き剥がされるのにつられて、あの偽物を憎悪する想いも、不思議なまでに風化していく。
 あれほどまでに憎らしかった偽物の姿が、今ではもう思い出すことができない。
 代わりに鮮明に浮かんでくるのは、本物だけが持っていたあの笑顔だ。
 帰りたい。
 心からそう思える場所は、あの戦いに満ちた星ではなく。
 あのなんてことのない会話に満ちた、なんてことのない日々を送ってきた、機動六課の隊舎だった。
 分かりきっていたことだ。
 星を支配することも、この地の者達を皆殺しにすることも、所詮は手段でしかなかった。
 要するに自分は、孤独であることに耐えられなかっただけなのだ。
 世界を拒絶し破壊しようとしたのは、世界に居場所がなかったからだ。
 本当に求めていたものは。
 なんてことのない、仲間達との平穏な日々だった。
 世界を嫌ったのではなく、孤独な己の境遇を、呪い続けていただけだったのだ。

 いずれ自分はまた蘇る。
 既に3度生き返った身だ。4度目がないということもないだろう。
 一度目の死は憎悪と共に。
 二度目の死は無念と共に。
 三度目の死は喜びと共に。
 そしてこの四度目の死は、期待と共に。



 ――セフィロスさん。



 あの声が聞こえる。
 求めてやまなかった声が響いている。



 願わくば、此度の転生の先に、彼女の姿があらんことを――




「………」
 セフィロスは死んだ。緑に輝く風となった。
 静かに目を閉じたあの男の遺体は、光の粒となって消えていった。
 首輪と支給品だけを残して、光る粒子へと分解されていく彼の身体が、天へと立ち上っていく。
 茜に染まった夕焼け空に、緑の蛍が舞うように、静かに空へと還っていく。
 忌々しいまでに美しい情景を、険しい顔でじっと見つめていた。
 あれほど憎らしかったあの男が、どこか満ち足りたような顔で死んでいったのが、ひどく腹立たしくてたまらなかった。
 ほとんどひったくるような勢いで、地に落ちた首輪を拾い上げる。
 残されたデイパックを掴み口を開け、鼻息も荒く中へと突っ込む。
 ふと。
 血塗れの鞄を背中に抱え、落ちていた奇妙な仮面へと視線を向けた。
 古代の呪術に使われていたような、不気味な様相の猫の仮面。
 あの魔剣士の操る紫の刃が、彼の死と共に変化したものだ。
 であればやはりあの剣は、デバイスのようなものだったのだろう。
 生前のあの姿が戦闘形態で、死後の今の姿が待機形態だ。
 凄まじい剣だった。
 獰猛な竜巻を操り、薔薇の砲台を指揮するあの武器は、まさに自分が求めていた、強力な遠距離戦用デバイスそのもの。
 腰を屈めて手を伸ばし、その指に掴んで拾い上げる。
 瞬間、理解した。
 自ずと理解させられた。
 デバイスそのものが語りかけるように、脳裏に浮かぶ言葉があった。
 この刃は望みを叶えるためのもの。
 心に空いた穴を埋めるべく、喪失の虚を形として顕現するもの。
 何の犠牲もなしに得られる力などない。
 望む意志のない者に、力を使う資格などない。
「望み? 私の望みは、家族との再会や……」
 ならばこそ、使える。
 自分ならばこの剣を使うことができる。
 この妖艶な輝きを放つ魔性の刃は、この八神はやてにこそ相応しい得物だ。
 喪失ならとっくに抱えている。
 意志ならとっくに持っている。
「家族を救うために……奴の力を手に入れるために……プレシアをぶち殺せる力を、私に見せてみぃ――憑神刀(マハ)ッ!」
 顕現。
 鋭い一声と共に。
 <誘惑の恋人>憑神刀の魔刃は、新たな主の手中へと収まる。
 かつてもう1人の八神はやてが覚醒へと導き、復讐の鬼と化したセフィロスへ渡った薔薇の切っ先は、今ここにはやての手に渡った。
 艶やかに煌く剣を携え、八神はやては歩を進める。
 願いを貫く力は手に入れた。
 油断も迷いも当に捨て去った。
 もう、二度と。
 これ以上、誰にも何も奪わせはしない。


【現在地:E-5 市街地】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、胸に裂傷(比較的浅め、既に出血)、スマートブレイン社への興味
【装備】コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、首輪(セフィロス)
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる
 0.これ以上の油断は絶対にしない。何としてでも生き残る。
 1.ヴィータと合流する
 2.手に入れた駒(ヴィータ等)は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 3.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 4.金居のことは一応警戒
 5.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 6.以上の道のりを邪魔する者を排除したいが……
 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと考えており彼を許すつもりはありませんが、自分にも原因があったのを自覚しました。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
※プレシアには他にも協力者がいると考えています。
※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
※図書館のメールアドレスを把握しましたが、メモが無い為今も覚えているかは不明です。
※シャマル、クアットロと情報交換しました。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※金居の発言には疑念を抱いていますが、少なくともアーカードを殺したいという意志だけは信じてもいいと思っています。
※自分の考え方が火種になっている事を自覚し、仲間にも拒絶される可能性がある事を認識しました。
※以上を踏まえた上で、自分の行動を改める。生き残る為には、形振り構わないつもりです。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。その為なら外見だけでも守護騎士に優しくするつもりです。
※憑神刀(マハ)のプロテクトは外れました。

【全体の備考】
※パニッシャー@リリカルニコラスは完全に破壊されました。
※E-5は地上本部を除いてほぼ壊滅状態となりました。


「一体、何が起きたというの……!?」
 ぴ、ぴ、ぴ、と。
 忙しなくキーボードを叩く音が、暗闇の中に響き渡る。
 モニターの光の前に立っているのは、かのプレシア・テスタロッサの使い魔・リニスだ。
 常に冷静沈着な彼女が、今は傍目に見ても分かるほど取り乱して、目の前のシステムを操作している。
 画面に映し出されたデータは、参加者ナンバー37――セフィロスのもの。
 先ほど彼の生命反応が消失した瞬間、突如として奇妙な現象が起きた。
 彼の遺体が、忽然とその姿を消したのだ。
「セフィロスの肉体は、完璧に再生されたはずなのに……!」
 確かに元々彼の身体は、ライフストリームという特殊なエネルギーによって形成された、いわば思念体と呼べるようなものだった。
 だが、それもこの殺し合いが始まる前までの話だ。
 この地の技術を尽くした結果、既にセフィロスは、元の人間の肉体を取り戻していたはずだ。
 その身体が死と共にエネルギー体となって霧散するなど、到底あり得るはずがない。
 しかし今まさに現実として、セフィロスの遺体は消失した。
 これは一体どういうことだ。
 まさか外部からの干渉によるものか。
 決して外界からは気取られないはずのこの場所が、何者かによって見つけられたとでもいうのか。


【この者の魂は頂いていく】


 と。
 その、瞬間。
「えっ……!?」
 突如として、眼前のモニターがブラックアウトする。
 黒一色に染まった画面に、白い文字が打ち込まれていく。


【案ずることはない。貴様達の戯れを邪魔するつもりはない】


 これは何だ。
 一体何が起こっているのだ。
 外部からハッキングされた形跡は全く見られない。
 かといって、自分自身がこんな操作をしているはずもない。
 何が起きている。
 誰が何をしでかしている。
「貴方は……一体何者なんですかっ!?」
 ただならぬ気配を本能的に察し。
 この何者かが、セフィロスの遺体を簒奪した張本人であると確信し。
 今やコントロールを乗っ取られたモニターに、思わず上ずった叫びを上げる。


【我は混沌を統べる者。久遠の輪廻を司る、二つの神の一柱】


 返事は、すぐに返ってきた。
 そしてそれから数瞬と経たぬうちに、画面に映し出されたのは、合計5文字のアルファベット。


 C。
 H。
 A。
 O。
 S。


「……カオス……」
 読み上げた瞬間には、既に画面は元のものに戻っていた。



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金居
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セフィロス
リニス






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