※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

13人の超新星(5) ◆WslPJpzlnU




「あの男!」
 視界の一切を黒く染めるその中に立つプレシア・テスタロッサの衣装は黒い。
 ローブともドレスともつかない軟質の布地、大きく開いた胸元からは病的に色白な肌が覗けている。首筋や手首をか細くやつれ、狂気に打ち込まれた瞳の色は、病的な印象に拍車をかける。
 かくもプレシアの姿を捉えられるのは、彼女が周囲に空間モニタを展開しているからだ。
 青白い光の長方形は、まるで虚空がPC画面であるかのように表示される。大きさはプレシアの上半身程度、それが腰ほどの高さに映し出されているのだから、プレシアの顎は若干引かれる形だ。
「やってくれたわね……!!」
 怒りに揺れるプレシアの瞳は、空間モニタに映し出される動画を睨んで離れない。
 映し出されているのは大通りを敷いた市街地、看板として大きく印刷された文字はいずれも鏡移しとなっており、そこはプレシアが用意した世界とは違う、ミラーワールドであえる事が伺い知れた。
 その中には黒い影が幾つも浮いていた。数にして両手の指を全て折る程度、五体に輪郭を隆起させるそれは人影だ。その誰もが、そこに含まれないたった1人によって引きずり込まれた被害者である。
 全ての元凶であるたった1人の男、操作を受けた空間モニタはその姿をクローズアップする。
 紫の鎧を持つ仮面ライダー、個体名を王蛇とするそれで本来の姿を隠しているが、彼を監視し続けるプレシアには正体が知れている。
 名を浅倉威、凶悪な殺人犯として社会全体から追われていた男だ。
 野獣のような男だが、その常軌を逸した戦闘欲求とカードデッキを使いこなす経験が、このバトルロワイヤルにおいて生き残る参加者の半数近くを一点に集中させるという暴挙を組み立てた。
(カードデッキ無しでも生きられるように調整したのが裏目に出たわね)
 本来のミラーワールドならば、現実世界側から来たあらゆる物体は5分と待たずに霧散し消滅する。
 しかしカードデッキの個数が限られている以上、消滅までにかかる時間をそのままにしておけば、引きずり込まれる事が死ぬ事に直結する広大な武器となってしまう。だからこそプレシアはミラーワールドに働きかけ、猶予の時間を12時間程度にまで引き延ばした。
 だが生存可能時間を引き延ばしたために、今やミラーワールドは強者が集う闘技場と化した。
 まさか理解していたのか、と思うが、今までミラーワールドに侵入した参加社はいない。浅倉でさえも今回が始めてなのだから、知っている筈がない。
(完全に、考え無しに片っ端から引きずり込んだわね……!!)
 あまりにも愚かな所業であったが、とにもかくにも、それは最悪の状況に至ってしまったのだ。
「くぅ……!」
 白い歯が唇を噛んだ。
「バトルロワイヤルの横取り!! ーー戦闘狂の野獣が、ありもしない頭を使って!!」
 紫色の口紅が溶け、皮膚が破れて一筋の血が顎を伝う。しかし胸中で渦巻く憤怒はこれで収まるようなものではない。流血が怒りに比例していたら、既にプレシアは辺りを赤く染めて失血死している。
 だがいつまでも手をこまねいている訳にはいかない。
 殺し合いによってなし得る望みがある以上、この争いには介入する必要があった。
 その時、プレシアの背後で光が生じた。
 2つの光点は水平に走り、弧を描いて正円を描いた。内側に灯った光点はインコース、若干小さめである。二重の円が闇に浮かび上がり、次いでそこに幾何学模様の羅列が走る。文字のようにも見えるそれは円に倣って環状となり、始点に繋がった後は回転を始めた。
 そしてインコースの円の中央に正方形を重ねたような図形が現れ、その中にも文字を挟んだ二重円が入る。
 それらも回転し始めれば、ミッドチルダ式の空間転移魔法が発動する。
「プレシア!」
 魔法陣の中、水中から出てくるかのように現れたのは1人の女性だ。茶髪に白亜の西洋風法衣を纏う風貌は、賢げな印象をまとっている。しかし今は端麗な顔を焦りに濡らし、足が現出するとともに駆け出す慌てぶりを見せた。
 消えゆく魔法陣を見返すこともなく、茶髪の女性はプレシアの後ろに立つ。
「セフィロスの死についてお話ししたい事が……!!」
「どうでも良いわ」
 女性、リニスの言葉をプレシアは断ち切る。しかしリニスの唇はそれに従わなかった。
「ですが!」
「どうでも良いって言ってるでしょう!!」
 振り向き様の平手が、リニスの白い頬を打った。
 あぅ、と短い悲鳴をあげてリニスはよろめき、その拍子に頭頂部を隠していた帽子が飛んだ。法衣にあつらえた白い帽子は闇の上に落ち、その内側に隠していたもの、リニスの頭部に生える山猫の耳が露見した。
 頬を抑えるリニスに、プレシアは烈火の表情で言葉を浴びせかける。
「使い魔風情が主の命令に背くというの!? 身分を知りなさい、魔力で動く死体如きが!!」
「………………っ」
 震える唇を噛み締め、俯いたリニスの肩が震えた。
「答えなさい道具! 貴方は何? 貴方の主は? 貴方の存在意義は!?」
「……私は」
 引き攣る喉で、しかし声は紡がれる。
「私は、プレシアの道具です。プレシアだけを主とします。……プレシアの目的の為だけに使い捨てられる、F計画の技術で幾らでも代えの効く、人の皮をかぶった山猫の死体です」
「解っているなら、私の気を患わせないで!」
 俯くことすらもプレシアは許さない。
 リニスの左耳を掴み、捻り上げるようにして面を上げさせる。
 涙の滲んだ双眸が目前となり、そんなに濡らしたいなら唾を吐きかけてやろうか、という思いでプレシアは自らの顔を突き付ける。文字通り、目と鼻の先にリニスの顔が迫った。
「“貴方”に次はないわ、次にやったらは新しい“貴方”を起動させて交替させる! 全身の随意筋を意思と切り離して、虚数空間に叩き込んでやる!! 解ったら命令に従いなさい!!」
 そこまで言って、リニスの表情は、一瞬で目が打ちくぼんでしまったような色合いとなった。
「……は、ぃ」
 雨天に放浪する野良猫のような様相に怒りを僅かばかりに諌め、放り捨てるようにリニスの耳を離す。
 猫の死体に触っていたのかと思うと、ばい菌がべっとりと掌に移り住んだ気がして、洗浄魔法を発動させて無菌状態にした。
 もはや振り向かず、プレシアはリニスに命令した。
「今すぐ“アレ”を連れてミラーワールドに行きなさい」
 その言葉に、え、とリニスが息を飲むのを聞く。
「“アレ”とは……彼女達の事を言っているのですか」
「何、もう私の命令に逆らうの?」
「……いえ、ですが彼女達を連れ出す前に、あのカードを使ったら宜しいのでは」
「所詮は猫畜生ね、それともボケが始まったのかしら? あれは効果が特殊過ぎて複製が効かないの。それ以外はどうにかなってもね。解りきったことに口を開かないで。死臭がするのよ、貴方の息」
「……すみません」
「こういう時のための量産型でしょう? 脳髄まで腐ったかしら? 死体だものね、貴方」
 ふん、とプレシアは鼻を鳴らし、僅かばかりに加虐心を満たす。
 それでも、消滅を恐れて言葉を引っ込める癖に一端の口を、と思うと、埋まりかけていた苛立ちも再び疼くような心持ちがした。
「ミラーワールドに引きずり込まれたのは、いずれもが高い戦闘力を持つ者ばかり。それを狙ったんでしょうが、このまま潰し合われたのでは、パワーバランスが崩れるのよ」
 彼等には殺し合ってもらわなければならない。だが異なる勢力がもう一方の勢力を圧倒的に踏み潰したのでは意味がないのだ。拮抗して泥沼となり、血に塗れてむせび泣いてもらわなくてはならない。
 今の状況は、穏健派を穏健派で、過激派を過激派でまとめているようなものだ。これはプレシアにとって非常に都合が悪い。
 急ぎミラーワールドに連れ込まれた参加者を現実世界へ戻す必要があった。
「奴等を現実世界に戻しなさい。ああ、でも浅倉威は……殺すのよ」
「やはり、そうしますか」
「当たり前でしょう。奴にカードデッキを持たせ続ければ同じ事が何度も繰り返される。そしてあの男は、圧力や制限で御せるような人種ではないわ。ーー殺すのが妥当なところね」
「はい」
 答えが来て、背後に魔力の気配が生じる。リニスが転移魔法を再び発動させたのだ。
 解れば良いのよ、という思いで、プレシアは再び言葉を紡いだ。
「ーー行くのよ。馬鹿共のらんちき騒ぎを、とっとと収めてきなさい!」

     ●

 宣言の直後、大きな破砕が発生した。
 起点はレストランの向かいに並ぶビルの一つ、硝子の自動扉を壁ごと内側から砕くものだ。衝撃は渦を巻いてレストラン側まで届き、瓦礫は硝子の破片は粉塵を引き連れて道路へ飛来する。そうした中には、ベルトの千切れたデイバックも混じっている。
 誰もが息を飲み、そして粉塵の中から一際大きな影が現れた。
 人影だ。
 体を折り畳むように小さくまとめ、大きくバックステップするようにして道路上空を横断する。着地したのは砕かれたビルの対向車線側に並ぶガードレールを越えた先、つまりは浅倉が立つレストランの側に拓かれた駐車場だ。人影の靴底がアスファルトを擦り、耳障りな音をたてる。
 移動の止まった人影を浅倉は見る。
(男か)
 金髪に色白な肌をする典型的な白人だった。厳つい顔に碧眼を秘め、髪と同色の眉は合間に皺を寄せた厳しいもの。太い首から広がる肩幅は広く、軍服の上からでも筋骨隆々である事が解る。
 そして左右の袖を引裂いた両腕は、体格に不相応に大きい。それどころか人体ですらなかったのだ。
 黒みの強い灰色に染まる岩のような腕は、それぞれに1枚づつ刃を伸ばしている。
「…………………」
 異形の腕を持つ男は浅倉を見ない。
 まるで狩りを現在進行形で行う豹か何かのように、身を低く屈めた姿勢を維持している。青い双眸は自らが飛び出してきたビルの大穴にだけ注がれ、
「おぅ?」
 大穴から新しい人影が歩いてきた。
 それは刃を生やす男と同じように異形の腕をした、同じ顔を持つ白人だった。ただし新たに現れた方の男に刃はなく、砲門のように深く穿たれた穴が空いていた。
 晴れ始めた粉塵を蹴散らし、持っていて邪魔になったのか、デイバックを放り捨てた。ガードレールに足をかけて男もまた路上に出る。
 その視線もまた、1人目の刃を持つ男を捉えて離さない。
 空気が張り詰め、しかしそれを意に介す事もなく浅倉は声を紡いだ。
「解ってる奴がいるじゃねぇか」
 笑いに首を浅く傾げ、
「お前、名は」
「キース・レッド」
 軍服の方の白人は短く答える。
 獰猛さを滲ませつつも笑んだ声に対し、その答えは非常に事務的で色がない。しかし浅倉は気分を害することもなくそれを受け止めた。むしろ、それでぐらいでなければ可笑しい、とさえ思っていた。
 争いに従事する者は、かくあらねばならない、と。
 個人的にはもう少し絡んでくれると楽しみが増すのではあるが。
「イケる口だな」
「勘違いするなよ」
 答える男、キース・レッドの声はやはりつっけんどんだ。
 視線を揺るがさず、しかし意識を浅倉に向け、キース・レッドの分厚い唇が蠢く。
「ここに来る前からやっていた戦いを再開しただけだ、貴様の下らない自殺願望に付き合う気は無い」
 だが、
「……そんなに死にたければ、後で気が向いたら殺してやる」
 それだけ言って、キース・レッドはアスファルトを蹴撃した。
(速ぇな)
 瞬いた後、軍服の姿は浅倉と同基軸、歩道の上にある。
 一体どれほど地を蹴っただろうか、跳躍のごとき歩幅は人知を越えている。
 だが道路に立つ砲の男もまた動いている。異形の腕を突き出し、暗闇をたたえる穿ちは、今やガードレールの手前で腰を落としたキース・レッドを見つめる単眼だ。
 穴の奥で僅かに光が灯り、何かが来る、という短い一語が浅倉の本能を支配する。
「ーー散れ!」
 浅倉の号令に3匹の怪物はめいめいの方向へと走る。浅倉はベノスネーカーの胴に両足を置き、どうしても足りない移動距離を補った。
浅倉の動きに誰もが身を動かす中、移動をモンスター任せにした浅倉はキース・レッドへ振り向いた。
 奴はどうしただろうか、その思いを乗せた視覚は須臾の応酬を見る。
「ふ……っ!」
 キース・レッドの両腕を疾く振られ、一対の刃は光線となって閃いた。
 ぴ、という耳の奥が痺れるような効果音をたて、その軌道上にあるガードレールの一端は切断、連結の軛を解かれた鉄塊に送られるのは、振り抜かれた分厚い靴裏だ。
 かぁん、甲高い音。
 風を破る先にあるのは男が構えた巨腕の砲門。
「……!!」
 鉄塊が男とキース・レッドの丁度中間まで飛んでいく。
 そして、光。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………!!!」
 穴から放たれる光は空気を焼き、鉄塊を飲み込んで影に変え、消し飛ばす。
 周囲に熱気の圧力が波となって押し寄せ、窓硝子や鉄を僅かに歪める。
 だがそうした被害の中にキース・レッドの死はない。
「……滑り込み!」
 男が直立姿勢で砲撃する以上、地上とは胸丈までと同じだけの隙間が空いている。キース・レッドがいるのはその空白地帯、姿勢は右半身でアスファルトを擦るスライディング姿勢だ。
 ガードレールを切り飛ばしたのは攻撃ではない。初動を紛らわす陽動、そして飛び越えることなく路上に出るための障害除去だ。
 腕からの光が尾を見せた。
 そうなればキース・レッドに分がある。
 頭上を光線が通り過ぎたのを確認して巨腕が起立、楔となったそれに身が止まり、動きは弧を描く。
 それを利用しての起立は、蹴り上げとして男の顎を狙う。
「キース・シルバぁああああああああああああぁぁぁーーーーーーーー!!」
 それが片割の男の名前だろうか。
 怨恨まざまざといった口ぶりの強襲は、しかし背が仰け反らされた事で回避された。
 続けてキース・シルバーなる男はバック転へ動きを接続、更にサマーソルトキックへと昇華する。
 だが回避と連動した攻撃は狙いが甘い。だからこそ余裕のあったキース・レッドは膝を曲げ、打ち上がるキース・シルバーの爪先を踏みつけた。
 かたや勢いのある逆立ち、かたや浮いた身を落としつつある踏みつけ。地に着く分、動力はキース・シルバーの方に分がある。
 故にキース・レッドの足は空に打ち上げられ、彼もまたバック転を打った。
 互いに全身をバネにした幾度かの回転、それが止まるのはそえぞれが背後にしていたガードレールの手前まで辿り着いてから。刹那の攻防を見せた同形の男達は、再び道路と同じだけの幅を挟んで対峙する。
「ここで」
 空白の後に口を開いたのはキース・レッドだった。
「ーーここでこそ、ケリをつけてやる」
「やってみろ」
 応さ、とキース・レッドは再び瞬発、相対するキース・シルバーもまた、構えた腕から光を放った。



【現在地 F-6(ミラーワールド) レストラン前の大通り】

【キース・レッド@ARMSクロス】
【状態】疲労(中)、グリフォン起動中
【装備】核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金
【道具】ベガルタ@ARMSクロス『シルバー』
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)を倒して自分が高位だと証明する
 1.キース・シルバーと決着をつける
 2.紫の仮面ライダー(浅倉威)を殺してミラーワールドから脱出する
 3.極力早く首輪を外したい
【備考】
 ※キース・シルバーがアレックスと名乗っている事を知っていますが呼ぶ気はありません
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかに把握しています
 ※白刃の主をヴァッシュだと思っています
 ※サンライトハート改は極力使うつもりはありません
 ※ルーテシアの話の真偽に興味はありません

【アレックス@ARMSクロス】
【状態】疲労(中)、マッドハッター起動中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本:自分の意思で戦い、この殺し合いを管理局の勝利で収める
 1.キース・レッドと決着をつける
 2.キース・レッドに勝って彼が所属する組織を尋問、その後首輪を破壊する
 3.六課メンバーと合流する
【備考】
 ※セフィロスは殺し合いに乗っていると思っています
 ※はやて(A's)は管理局員であり、セフィロスに騙されて同行していると思っています
 ※キース・レッド、管理局員以外の生死に興味はありません
 ※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似た機能があると思っています
 ※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています
 ※他の参加者が異なる時間軸や世界から来ている可能性を考慮しています
 ※市街地東部に医療施設が偏っている事から、西部にプレシアにとって都合が悪いものがある可能性を考えています

 2人の男を中央として熱気が渦巻く。
 波濤にして怒濤の威圧は夕暮れの街をより赤く染め上げ、路上に散らばる窓硝子の破片を巻き込んだ様はさながら吹雪、誰もが危機の回避に眼を閉じる中、煌めく群は遥か彼方へと飛ばされる。
 金居が立つのはショーウィンドウを失ったビルの内側、椅子とベンチ、カウンターが隆起する内装は軽食店の作りだ。事実、カウンターの向こうに立付けられた棚には皿が並んでいた。今や軒並み破片の憂き目だが。
「………………」
 さすがの威圧も建造物までは砕きえない。だからこそ金居は、2度目の激突が起こる前にこの中へ飛び込んだ。
 そして今、影から覗くようにして両者の戦いを盗み見る。
「浅薄」
 金居は路上に巻く争いを、そう評した。
 男達がいかなる関係であるかはあずかり知るところではなかったが、見る限りにおいて拮抗しているようだ。仮に片方が倒れても残りは半死半生、生とつけば殺と続ける狂人どもが渦巻くこの場においては漁父の利で殺されるだけだ。場を読まぬこと甚だしい。
 それでなくとも、このミラーワールドという世界が自分達にどれほどの影響を与えるのか解らないのに。
(所詮アレらも狂人ということだな)
 種族の代表として常に生き残らねばならないアンデットとして、金居は愚挙を軽蔑の眼差しで捉える。
 だからこそ金居はミラーワールドの脱出を最大唯一の目的とする。幸いにして自分には脱出できる手段を持ち合わせているのだ。
 肩にかけていたデイバックを下ろし、取り出したるは青色の平たい箱。虎を象る紋章のそれは、紫色の仮面ライダーが身に付け、また握りつぶしたものとも同種のものであるようだった。
(これが何ほどのものかは知らないが、……大方これが“あの種のライダー”の変身を為す物なのだろう)
 そしてミラーワールドの出入りを為す鍵でもある筈だ。
 金居はこれまでの体験を思い出す。
「入口は鏡となった硝子、この世界の文字は鏡移し、……ここが鏡の世ならば」
 だとしたら、
「ーー出口もまた鏡、というのが打倒か」
 告げて、金居は壁に押し当てていた背を離して振り返る。
 そこにあるものは、一面の壁を形作る、鏡。
(視覚効果、店内をより広く見せるための工夫だろうか)
 この殺し合いに引きずり込まれる前、人間の街を歩いている最中に幾度となく見受けられた内装だ。さすがに無傷とはいかなかったが、屋内の、それも威圧を防ぐ壁の裏に張り付いていたお陰で全損は免れていた。
 小さなヒビを這わせ、埃に塗れつつも、しかし鏡は金居の姿を映す。
「出られるか、な」
 金居はそう呟いて、片手にした青い小箱を鏡に掲げようとして、
「ーーそうか」
 聞き覚えのある声が耳朶に注ぐ。
 無意識の動きで小箱を懐に仕舞い込み、振り向きによって金居は人影を見る。全身を黒くした人型は硝子を失ったショーウィンドウの向こう側、建造物の際で歩道を踏んでいる位置取りだ。
 だが、金居は一つの思い違いをしていた。それは影をまとうから身を黒くしているのではない。その人物そのものが、黒い姿に包まれているのだ。
 その姿が目の前まで迫ったことで、それは一目瞭然だ。
「!!」
 不意をつかれて金居は反応出来ない。したのは黒尽くめに胸ぐらを掴まれ、路上へ投げられてからだ。
 デイバックを店内に取り残してしまった、それすらどうでも良い。執着して注意を乱せば死へと直結する。今や自分達アンデットの不死性は失われているのかもしれないのだ。
 放物線を描く金居の姿が歪んだ。
 人の姿が、鈍く光り輝く黄金の外殻をした双角の異形へと。
「ふ……ッ!」
 空中で身を翻して着地、重量の増した身体を両足は支えきるも、引き換えにアスファルトが陥没した。
 そうして異形の面構えとなった金居は、店内から戻ってきた黒い人物を睨む。
「……カリス」
 黒い流線型の外殻に茨のような紋様、胸板と目元にあるハート形の隆起は、奴がハートスーツのアンデットを支配する仮面ライダーであることを暗に主張している。
 だがその正体はカリスではない。
「ジョーカーか」
「その名で呼ぶな」
 自分と同じアンデットの一種、しかしその存在は全てを絶滅させる最悪の切り札だ。
 醜悪な本性をカテゴリーAで押し隠し、ジョーカーは金居を指差す。
「……渡してもらおう」
 ジョーカーが何を望んでいるのかが解らない金居ではない。奴もまたアンデット、そして人間を模倣する心の持主、この場から離脱したいと考えるのは同じだ。
 だが小箱は1つしかなく、互いに手を取って仲睦まじく帰還するような性根も持ち合わせていない。
「渡すと思うか?」
「頼んでると思うか?」
 会話が結ぶ火蓋、それを切らんとして互いの手は武器を創造する。
 カリスが現すのは弦のない弓、しかし中央から上下に伸びる弧は刃の閃き、もはやそれは柄のない鎌だ。
 対する金居は反りを向き合わせた双刃を1つの鍔から生やす剣、その柄は左右の五指がそれぞれに1つずつ握り締めている。名をヘルターとスケルター、アンデットに与えられた武器創造能力によって金居が生み出しうる、種族の権威を顕現する武器だ。
「あの時つかなかった決着をつけるか」
 金居、いやさギラファアンデットと表すべき自分は、右の大剣の切先でジョーカーを指す。
 応じるようにジョーカーは、身を深くして両腕を開く独特の構えだ。アンデットが顔を合わせた時、言葉を交わすまでもなく意思は通う。それを敢えてした自分は、ひょっとしたら人間に感化でもしたのだろうか。
 そして互いの脚が力み、
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
 突然の哄笑が空を貫き、穿たれた道を通って影が路上を破砕した。
「「…………!!」」
 道路が断片として隆起するのは、丁度ジョーカーと金居が相対する直線の中央だ。さながら噴煙する火口といった風に、アスファルトのクレーターは土埃を舞い上げている。
 その中央に踞る影は、まるで隕石を真似ているかのようだ。しかしそれは、自ら輪郭を崩すことでそれを否定する。
「……ククククク」
 黒色の正体はマントだ。クレーターの底部に起立し、声の主はマントを払うことで土埃を蹴散らす。
 立ち上がるのは紫紺のスーツに黒い単眼の仮面で全身を隠す、体格的に見て、男だった。
「貴様は……」
「我が名はゼロ」
 仮面の男は宣言する。
「ーー魔王ゼロだ!!!」
 その男に対して抱くべき一語を、金居は胸中において絶叫することとなった。
(変態だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!?)
 激情に精神と五体は支配されて金居は動けない。ジョーカーもそうだったのだろう、体を強ばらせたままにゼロなる男の宣言を容認する。
 それを良いことに、ゼロは一歩を踏み出した。
『貴様等、戦いに背を向けるのか』
 二歩目。
『逃げ出す負犬か』
 三歩目。
『ならば』
 三歩目を踏み出し、
『ーー死ぬがいい』
 四歩目には、金居の懐に立っている。
「!!!」
 地を蹴る暇もない。
 腹部に触れた黒い拳、しかし訪れる衝撃は全身に対する。
「あぐ……ッ!!」
 さながら突風を受けたような感覚、しかし大重量のアンデット体である金居を飛ばす風はどれほどか。黄金の体は白いガードレールに叩き込まれ、幾つかの支柱をもぎ取り、鉄の帯を巻き込み変形させた。
 強化された体は人類の作る器物程度で痛まない。だからこそ、今得られる痛みはゼロの拳によるものだ。
(有り得ない……!) 
 器物にも痛まない外殻が、何をして人体の一撃に痛みを得るというのか。
(そもそもどうやれば拳で体躯の前面全てに衝撃が来る!?)
「考える必要があるのか?」
 は、とした動きで金居はゼロを見た。
 細く小柄な体に据えられる大きな単眼に表情は無く、しかしこちらを見透かしているような気がする。
 事実ゼロは、嗤っている。
 両腕を深く広げ、左右の五指に虚空を握り、機械的に加工された声は第二の宣言を響かせる。
「私は魔王! 虫けらの王者風情が届くと思うか!? 貴様が圧倒されるのも驚愕するのもこれから敗北するのも!! ーー全ては私が魔王であるが故なのだ!!!」

     ●

(やっべーーーー超ぉーーーーーーーー楽しぃーーーーーーーーーーーーーー!!!)
 仮面に表情を、服に歓喜を押し隠してキングの胸中は狂喜乱舞する。
 今ならばこの仮面という人間文化も理解出来る。自分を曝け出さないということは責任からの解放、違う誰かを演じることを無意識の深度にまで根付かせ、普段は出来ないようなことも声を大にできる。
 途方もない開放感だった。
 そして謝辞と賛辞をない交ぜにして、仮面に隠した視線は紫の鎧姿を見る。
(浅倉威! やっぱお前サイコーだよっ!!)
 ベノスネーカーから降り立つその姿はミラーワールドを出入りする仮面ライダー、その1体である王蛇の装いだ。それでもあの言動は、浅倉以外のものである筈がない。
(ミラーワールドで巻き起こるオールスター総当たり戦! ジョーカーもダイヤのカテゴリーKもいるとはね!!)
 そして何より、
(この状況っ! プレシアだってマヂギレってもんだろー!!)
 それが何よりも楽しかった。
 神様面をしてふんぞり返ったあの女が口角泡吹かして青筋たてているのかと思うと、腹筋が崩壊しそうだ。
 ざまぁみろ、という思う。より正確に表すならば、ざまぁwww、って感じだ。
「……ぐ」
 と、視界の端でカテゴリーKが動いた。
 腰を落とした巨体に応じて折れ曲がったガードレールに手をつき、二本角の下に埋め込んだ双眸がキングを見る。だが、その目に映るのは黒尽くめの怪人、ゼロの姿だ。
 吹き飛んだ拍子に離れて落ちた双剣が消失、直後にカテゴリーKの手中に現れる。転移した訳ではない。顕現を解き、しかる後に再び創造したのだ。
 両手の剣で身構える異形の目にあるのは警戒、そして少しばかりの怯え。
(ビビってるビビってる! 戦いはやっぱイニシアチブだよね!!)
 まさか本当にカテゴリーKの重量を吹き飛ばしのが、純粋な腕力だと信じ込んでいるのだろうか。
 ただ単に、殴ると同時に念動力で全身を突き飛ばしてやっただけだというのに。
 使用後に訪れる疲労感も今や快感だ。苦労の伴う娯楽は比較対象となり、純粋な娯楽以上の愉快を与えてくれる。むしろ疲れるほどに楽しくなっていくのだ。
(ブラフかかってゴクローさん! もぅちょい僕の“魔王サマごっこ”に付き合って欲しぃなぁ!)
 折角巡り巡ってきたアンデット同士の戦場、極めつけにこの格好なのだ、超人のフリをして場を引っ掻き回してやりたい。精一杯自分の掌の上で踊り狂ってもらおうではないか。
(さて)
 と、キングはゼロの姿を振り向かせた。カテゴリーKが立つ延長線上、キングを越えた先に立つのはカリスの姿だ。今や彼はある意味自分の同類だ。別人の姿に変装して戦っているのだから。
『貴様はどうする?』
 仮面の変声機能がキングのそれを歪めて響かせる。
 思わぬところで役に立ったな、とキングは思う。この2人を前にしてしまえば、声で正体が悟られただろう。
 『CROSS-NANOHA』で見たゼロの口調に多大な尊大さを加味する調子で、ゼロの単眼に黒い姿が映る。
 その姿は、
「うぅ」
 苦悶の声を漏らす様だった。
 鎌とも弓ともつかない武器を取り落とし、外殻に膨らんだ胸を抱きしめるようにして身をよじっている。胸の内で何かが蠢くかのように、それが身を破って現れようとしているかのように、その有様をジョーカーの膝は大笑いをする。
 だがキングにはそれを笑う気にはなれなかった。
 楽しくはある。しかし、いよいよか、という緊張感に仮面の中で汗が伝う。
(僕の正体が解らなくても、本能的にアンデットがいるのだと理解しているんだね)
 変貌こそしていないが、そうした力の片鱗を発揮したのだ。本能的に感づいても可笑しくはない。
 そして、最強のアンデット2体を前にして、絶滅の象徴は本能を抑え切れない。
「おおおおおぉ……ッ!!!」
 月に吼えるように、仰け反ったカリスは身を反り返す。
 直後、
「ぉアァぁ……!!」
 全身が水を放った。
 人の輪郭をした水流は、内側に秘めたカリスの姿をもやに変える。
 そして現れたのは、ジョーカーの本当の姿だ。
「……ハぁーーーーーー……カぁーーーーーー……」
 全身に牙を生やしているかのような、凶悪な姿だった。黒い頑強な外殻に埋め込まれた緑色の結晶は、キング達アンデットにとっての血潮の色だ。額から伸びる長い触覚と口角の牙は、あたかもカミキリムシを思わせる。もっとも、黒光りする外殻と合わせれば、ゴキブリのようにも思われたが。
 バックルの意匠は形を変えていない。しかし中央に断層を刻んだハートの紋章は緑色に変色していた。 
 姿勢は大きく背を曲げた猫背、だらしなく腕を垂らし、唾液を零す様は野獣の様相だ。
「ぉおおおおうるるるぁあああああああぁぁぁぁーーーーーー!!!」
 吼えて、煩わしいデイバックを引裂いてしまう。周囲に散らばった道具の輪を作るその様には、知性の欠片もなかった。
(本気で覚醒したんだね)
 狂気を発散する有様に、キングはそう思う。
 切り札たるアンデットの出現は本来危機的なものであったが、しかし今のキングには幸運だ。ただのカリスでは、カテゴリーKである自分の戦闘力には決して敵わないからだ。
 互角以上の戦闘力が三竦み、否応もなく感情が高揚する。
『さぁ!!』
 ジョーカーとギラファアンデット、その両者を左右にしてキングは告げた。
『ーー戦え、化物共!!』



【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】ジョーカー形態、暴走
【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:目に入るものは皆殺し
 1.……ぐるるる……
【備考】
 ※自身の制限にある程度気付いています
 ※ジョーカー化の欲求に抗っています
 ※首輪の解除は不可能と考えています
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝利者となるのではないか」と考えています
 ※特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘するとおおよその位置が察知できます
 ※エネルとの遭遇からこのバトルファイトに疑念を抱き始めました
 ※赤いコートの男(アーカード)がギンガを殺したと思っています
 ※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル竜騎でミラーワールドから出られると考えています
 ※ハートスーツのラウズカードを揃えた場合、ジョーカー形態を解除できます

【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、ハイテンション、ゴジラへの若干の興味
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする
 1.カリスとギラファアンデット(金居)の戦いを引っ掻き回す
 2.ギラファアンデット(金居)からタイガのカードデッキ(複製)@魔法少女リリカル龍騎を奪う
 3.浅倉と手を組んでこの戦いを更に引っ掻き回す
 4.浅倉以外のこの場にいる参加者を皆殺しにする
 5.『魔人ゼロ』を演じてみる
 5.はやての挑戦に乗ってやる
 6.浅倉とキャロに期待
 7.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える
【備考】
 ※自身の制限にある程度気付きました
 ※キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレードには以下の画像が記録されています
  ・相川始がカリスに変身する瞬間の動画
  ・八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像
  ・高町なのは、天道総司、の偽装死体の画像
  ・C.C.、シェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像
 ※首輪に名前が書かれている事を知っています
 ※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています
 ※ゼロの正体がルルーシュだと知っています
 ※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル龍騎でミラーワールドから出られると考えています

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】ギラファアンデット形態、腹部に痛み、ゼロ(キング)への警戒
【装備】ヘルター&スケルター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのは STS OF HUNTER
【思考】
 基本:プレシアの殺害
 1.カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎でミラーワールドから離脱する
 2.ジョーカー(相川始)とゼロ(キング)を退ける(可能なら倒す)
 3.利用できるものは利用し、邪魔者は排除する
 4.隙を見てアーカードを殺害する
 5.アーカードの隙を見てUSBメモリ@オリジナルの内容を確認する
 7.時間停止の対抗手段を手に入れたらキングを殺す
【備考】
 ※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています
 ※最終目的はバトルファイトの優勝なのでジョーカーやキングも封印したいと考えています
 ※カードデッキ(龍騎)@魔法少女リリカル龍騎の説明書をほぼ暗記しています
 ※殺し合いが難航すればプレシアの介入があると考えています
 ※首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています
 ※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています
 ※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています
 ※自身の制限に気付いています。変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています
 ※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれない、と考えています
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル龍騎でミラーワールドから出られると考えています



Back:13人の超新星(4) 時系列順で読む Next:13人の超新星(6)
投下順で読む
浅倉威
柊かがみ
エネル
新庄・運切
キース・レッド
アレックス
相川始
金居
ヴィータ
キング
ヴィヴィオ
天道総司
高町なのは(StS)
アーカード
柊つかさ
万丈目準
プレシア・テスタロッサ
リニス






| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー