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E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(後編)◆jiPkKgmerY




◆ ◇ ◆ ◇



時は遡り、四度目の放送が開始される凡そ一時間程前のE-5市街地。
その時八神はやては憑神刀(マハ)を片手に持ち、宙を舞いながら、白色の巨大竜から必死の逃亡を図っていた。
その細身を包むは彼女自身の魔力により構築されたバリアジャケット。
単純な防御力としては相当に高度なもの。拳銃の一撃や二撃程度なら易々と耐えうる堅牢さを誇るだろう。
が、その防御力を以てしても眼前の白龍と戦うには無謀と言わざるを得ない。
火力が余りに違いすぎるのだ。いや、火力だけでなく、その防御力も攻撃速度も白龍の方が八神はやてよりも早いか。
現在、はやてが白龍に勝っている点といえば、小回りと単純な速度、そして憑神刀が出す瞬間的な火力のみ。
憑神刀の一撃はいずれも強力。だが、強力であるからこそ多用は出来ない。
ただ生存を求めて考えも無しに技を連発してしまえば、如何に膨大な魔力を有するはやてであっても直ぐに力尽きてしまう。
その事実を理解しているからこそ、はやては逃げ惑う。
故に、逃げ惑うしかないのだ。
どんなにか細くても良い、何時かは勝機が訪れると信じて、はやては背部に備わった六つの黒翼を揺らして、市街地上空を飛び回る。
一瞬前まで身体があった地点を、白夜龍の口から放出された白色の光線が走り抜ける。
一瞬前まで身体があった地点を、白夜龍の巨大な爪が蹂躙し震撼させる。
その一撃一撃がまさに必殺。
迫り来る攻撃の数々を反射と予測で回避し続けるはやては、自身の命がまさに綱渡りの如くか細い均衡の上にあると感じていた。
たたの一度のミスでこの命は易々と砕け散る…… そう感じ取っていれど、だがしかし恐怖は微塵たりとも浮かばない。
家族の為に、
世界を守護しようと自らの命さえも犠牲にした家族を救う為に、
八神はやては赤焼けの天空を舞い続ける。

「どうしたの? あれだけ偉そうな事を言っておいて逃げ回る事しかできないの?」

対する天上院明日香はそこから百メートル程離れた地点で、青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)と八神はやてとが織り成す、戦いというには余りに一方的な戦いを見つめていた。
青氷の白夜龍は、明日香が手を貸さずとも既に一方的な様相で戦闘を進めている。
白夜龍が全身から噴出させる圧倒的な迫力と攻撃に、相対する八神はやても回避に努めるしか手段が無いようであった。
明日香は早々に自身の勝利を確信する。
そして、その確信を現実へと昇格させる為、手中のロストロギア―――夜天の書を掲げた。

「良いわ。あなたが立ち向かう意志を見せないのなら、このまま終わらせてあげる―――」

そうして明日香の右手から放たれるは、名もない、名付けるにも至らない単純な魔力放出。
その掲げられた右手から一直線に延びる白色の、砲撃魔法にも酷似した光線。
その光線は攻撃魔法というには余りに無骨で単純な、魔力の循環効率など何ら考えていない馬鹿げた一撃であった。
だが、使用された魔力が桁違いに膨大だった事もあってか、その破壊力は凄まじいの一言。
ジュエルシードという無尽蔵の魔力生産機があるからこその一撃。
ともすれば、高町なのはの砲撃に迫りかねない一撃が真っ直ぐに八神はやてへと急迫していった。

「ッ、盾!!」

横合いからの唐突な砲撃ではあったがはやては敏速な反応を見せ、憑神刀を掲げて障壁を張る。
白夜龍に気を取られ過ぎていたせいで回避には移行出来なかったが、だがそれでも直撃だけは防ごうと、防御壁を形成した。
数瞬の間を於いてぶつかり合う、白色の砲撃と淡い銀色の障壁。激突と同時に閃光が弾け飛び、互いの目を焼く。
均衡はほんの一瞬だった。
明日香の右手から放たれた砲撃は易々とはやてが形成した障壁を打ち破り、尚も直進を続ける。
その魔力奔流は津波の如く勢いではやてへと迫っていった。

「くうっ!」

が、はやてもギリギリの所で無理矢理に身を翻し、僅かにではあるが身体の位置をズラす事に成功する。
障壁との激突により発生したほんの僅かなタイムラグが、はやての命を救った。
白色の砲撃ははやての身体を掠め、その後方の空へと突き抜けていった。
しかしながら、直撃を避けたとはいえその奔流は強大。
魔力により宙を舞っていたはやては体勢を大きく崩し、螺旋を描きながら重力に引かれて落下していく。
そして、その隙を見逃す明日香では無い。

「ブルーアイズ、攻撃しなさい!!」

明日香の叫びに呼応するは青氷の白夜龍。
その巨体を揺らして錐揉み状態で落下するはやてへと急迫、はやての華奢な身体へと爪を縦一閃に振り下ろす。
はやての胴体程の大きさは有ろうかという巨大な爪が、風を切り裂きはやての身体へと接近する。
そして、接触。
青氷の白夜龍が振るった強烈な一撃により、はやての身体が瞬間的に加速し、猛烈な勢いで地面へと激突した。

「ふん……私の勝ちね」

拳銃から撃ち放たれた弾丸の如く勢いで墜落したはやてを見て、明日香は勝利を確信する。
疲労もなく、また負傷どころか攻撃の一つすら受けていない、まさに完全勝利といったところか。
冷たい微笑と共に赤く染まった天を見上げる明日香。
何時でも召喚可能な青氷の白夜龍に、闇の書とジュエルシードのお陰で使用できるようになった魔法……明日香は今回の戦闘で自分の力を確認した。
自分は強い。
あの裏切り者であるルーテシアにだって、チンクにだって、遊城十代を殺害した悪人にだって、負けない筈だ。
だが、まだ足りない。
この殺し合いを開催したプレシアには、これでもまだ勝利するには至らない。
あの平穏で楽しかった日常を奪った張本人、遊城十代が死ぬ切っ掛けを作り出した張本人。
殺して、みせる。
全てを殺して、全てを破壊して、そしてプレシアも殺す。

「まずはあのデバイスをいただこうかしら」

明日香ははやてが墜落した地点へと歩き出す。
更なる力を、全てを殺害できる絶対的な力を入手する為に、明日香は進む。
その歪んだ思考回路に気付く事も、疑問を抱く事もなく、壊れ掛けの市街地を歩いていき―――そして、見た。
墜落死を遂げた筈の八神はやてが、殆ど無傷な様子で再び天空へと舞い上がるその姿を。

「なっ……なぜ生きて……!?」

思わず驚愕の声を上げた明日香の傍らでは、青氷の白夜龍が雄叫びと共に敵対者へと羽ばたきを始めていた。
耳をずんざく咆哮が周囲を駆け抜け、半壊の市街地を揺らす。
驚愕に動きを止める主の横で、最強の白龍はただ敵だけを見つめていた。






「っ、はぁ! さっきのはヤバかったわ、マジで!」

その視線の先、明日香と白龍から凡そ百メートル程離れたれた天空にて、はやては冷や汗を流しながら小さく息を吐いていた。
はやての口端から一筋の線となり流れるは深紅の血液。
明日香からは無傷に見えたはやてであったが、実のところその身体には甚大なダメージが刻まれていた。
いや、それでも此だけの負傷で済んだ事は僥倖と言っても良いか。先の一撃に於いて八神はやては限りなく幸運であったのだ。
縦に振り下ろされた白龍の大爪。直撃していれば身体を包む堅牢なバリアジャケットごと、はやての身体を二つ分けていたであろう一撃。
その一撃を防いだのは、はやての右腕に握られていた一振りのロストロギア。
偶然、本当に偶然、錐揉み状態にあったはやてのその右手に握られていた憑神刀が、大爪の直線上に存在し盾の役目を果たしたのだ。
吸血鬼の真祖が振るう数百キロの超重量を一心に受けてさえ、ひび一つ入る事のなかった紫色の魔剣は、白夜龍の一閃すらも防ぎきり持ち主の命を救った。
しかし、それでも衝撃までは殺しきれず、八神はやては身体に大きなダメージを負い、墜落へと至るにあたった。
その衝撃は、憑神刀とバリアジャケットの上からでもはやての肋骨の数本ばかりを容易くへし折り、その奥にある内臓にまで多大なダメージを与えた。

「くそ、盛大にやってくれたやないか糞ガキが……」

だが、そのダメージからは考えられない程に、はやてはピンピンした様子で空を舞っていた。
昂揚しているのだ。
本来ならば身動き一つすら取る事ができない程の激痛が、異常とすら言える精神的昂揚により鈍痛の域にまで減衰している。
それは、家族を取り戻すという決意を再燃させたが故にもたらされた現象か。
何はともあれ、夜天の主は未だ撃墜には至らない。
変わらぬ戦意を胸に青氷の白夜龍と白夜天の主を睨んでいた。

「さて、どないする……」

巨大な白翼を羽ばたかせて接近する白夜龍を視界に捉えながら、はやては思考を開始する。
まともにやり合っての勝利は酷薄。勝機は皆無と言っても過言ではない。
憑神刀という強力なデバイスがあるとはいえ流石に相手が悪すぎる。
単純な構図を見たとしても二対一の状況、加えて片や夜天の書を装備した魔導師で、片やゴジラまではいかないにしても相当に位の高い召喚獣。
片一方とのタイマンでさえ勝てるかは怪しいところ、二対一では勝機など万が一つにも見る事ができない。
ならば、考えるしかない。
圧倒的な彼我戦力差を埋める策。それを考えるしか自分に勝利はない。
それを考えなくては、家族と再会する事が出来ない。

「無理はあるけど……やるしかないか」

思考に費やした時間はほんの数秒。
引き締まっていくはやての表情。
その視線が捉えるは、迫る白夜龍とその後方にて佇む白夜天の主。
弧を描く、その口。
やってやろうやないか、とはやては思う。
死さえ厭わない覚悟で、はやては思う。
家族を救出する、ただそれだけを胸に抱き、はやては夕焼け空に佇む。
白夜龍は既に眼前へと迫っていた。
その後方にいる白夜天の主も、背中の六枚羽根を羽ばたかせて天空に立ちながら、魔力が収束している右腕をはやての方へと突き出ている。

「いくで」

振るわれる大爪に、放出される魔力。
その両者を急降下により回避しながら、はやては自身の五感が極限まで研ぎ澄まされていくのを感じていた。
やはり、負ける気がしない。
絶対に、勝ってみせる。
そんな決意と共に、夜天の主は天空を駆け抜ける。
それは丁度、他の参加者がミラーワールドから帰還を果たした時と同時刻―――夜天の主は未だ絶望的な戦いを強いられていた。



◆ ◇ ◆ ◇



天上院明日香は相対する八神はやての行動に苛立ちを覚えていた。
青氷の白夜龍の攻撃を食らったにも関わらず大したダメージも無い様子で復活したはやて。
そのはやてが選択した行動は変わらずの逃亡劇。
一切の反撃もする事なく、無駄な持久戦に持ち込もうと、のらりくらりと回避に全てを費やしている。

「……逃げるだけだというのなら、此方も思う存分やらせてもらうわ」

ならば、と明日香も無尽蔵の魔力に任せて砲撃魔法を繰り返す。
まるで射撃魔法を放つかのような手軽さで、何発も何発も砲撃を連発。
白夜龍にも突撃を命じ、その大爪や尻尾による打撃を主として攻め込ませている。
白夜龍の攻撃に、明日香の砲撃……その両者から降り注ぐ一発一発が超威力の弾雨。
だが、その弾雨を一身に受けながらも、はやては優雅な立ち回りにより命を保っていた。
高められた集中力に、恐怖心の欠如が相乗されその回避行動は凄まじいレベルにまで達している。
必殺の攻撃の数々を、蝶のように舞い蝶のように舞い蝶のように舞い、交い潜り続ける。

(……おかしい……)

はやての戦法に明日香は疑問を覚えずにはいられなかった。
余りに消極的すぎるのだ。反撃よりも回避を優先するというのなら話は分かる。
だが現状は、戦闘開始から既に十数分が経過しているにも関わらず、未だに一度たりとも攻撃がない。
おかしい。このままジリ貧の戦いを続けていて先に力尽きるのは確実に相手の方。
それは戦闘している本人が一番理解している筈だ。

(……何かを狙っている……?)

思考の行き着く果ては敵対者の策謀。
この戦い方の裏には何らかの思慮があっての事に違いないと、明日香は考える。
が、その思慮が何なのかまでは流石に読み解く事は不可能。
明日香は砲撃を続けながら、はやての狙いを思索し―――そして、数秒程で思考を止めた。
無意味だと思ったのだ。
青氷の白夜龍が居る限り、戦況の有利は揺らがない。
その戦闘力は当然の事、青氷の白夜龍にはどんな攻撃であろうと自分へと攻撃対象を移し替える特殊能力が存在する。
勝利は揺らがない。これだけの力を得た自分が敗北する事など絶対に有り得ない。
その自信を胸に明日香は砲撃を続けていく。

「もういいわ……これで終わりにする」

それでも回避を続けるはやてに業を煮やしたのか、明日香は砲撃の連射を一旦止め、魔力の収束に意識を傾ける。
ジュエルシードから流れ込む膨大な魔力。発射へのシークエンスを整えるは闇の書。
二つのロストロギアが織り成すは『星を破壊する最強の光』にも迫る、超常の威力を秘めた砲撃。
ジュエルシードが持つ絶対的な魔力量に任せて発動されるそれを片手に、明日香は白夜龍へと足止めをするように命令を送る。

「跡形もなく―――」

主の命に従い、標的を追い回しながら逃げ道を塞いで行く青氷の白夜龍。
行く先、行く先を塞いでいく白夜龍に八神はやては逃げ場を喪失する。

「―――消え去れ!!」

そして、白夜天の主に集結した魔力が遂に臨界点へと到達し、発射される。
それは恒星の煌めきにも迫る圧倒的な光量。
一瞬で世界が白濁色に染まり、その白濁の中を一際眩い光が駆け抜ける。
一直線に、夜天の主へと、その命を刈り取るべく、
夜へと移り掛けた空を白色に染め抜きながら、極光の弓矢が夜天を射抜こうと疾走する。
その極光を一心に受けるは夜天の主―――八神はやて。
白夜龍の働きにより逃げ道を失い、回避は到底間に合わない状況。
砲撃に込められたら魔力も、異常を通り越して異質の域にまで到達している。
はやては思う。
自身を消し去るべく迫る白夜を見詰めながら、はやては思った。



―――計画通りだ、と。



「マハーーーーーーーーーーーーッ!!!」



夜天の呼び掛けに呼応するは、その細手に握られし紫電の魔剣・憑神刀(マハ)。
死を連想させる紫色に染められた憑神刀が、夜天の意志を受けて真なる力を発揮する。
『妖艶なる紅旋風』―――それは、この殺し合いの中で様々な想いと共に幾度と発動された極技であった。
一度目は、他でも無いもう一人の夜天の主が戦乱を阻止するべく発動させた。
二度目は、復讐鬼と化した片翼の天使が不死の王を殺害する為に発動させた。
そして、今回が三度目。
発動の度に会場へと巨大な傷痕を刻み込んできた紅色の極光が、白夜の極光を打ち砕くべく、三度目の起動に至る。
発動するは、何の因果か再び夜天の主。
白濁に塗り潰された世界の中で、紅色の極光が胎動を開始する。
憑神刀を中心に生まれた烈風が世界を揺るがし、烈風に混じった薔薇の破片が世界を切り裂いていく。
対するは白夜天の主が二つのロストロギアを最大限に活用して形成した、超特大の砲撃魔法。
片一方だけでも、会場の1エリアを崩壊へと導くであろう馬鹿げた威力の光達。
夜天を中心に置き、半球状に拡大を始める紅色の極光。
白夜天を中心に置き、その片手から射出された白濁の極光。
刹那にも満たない一瞬で二つの極光は接近し、激突する。
混合される二つの極光。
何時しか光は、まるで春に花開く桜の如くピンク色へと変化していき―――そして、互いが互いを呑み込み合い消失へと至る。
後に残されるは、遂に全壊へと至ったE―5の市街地。
もはや一棟の建築物すら聳える事は許されず、力尽きたかのように地面へと倒れ伏す。
それは丸一日に渡り殺し合いを傍観してきた地上本部も例外ではなく、全てが全て崩壊へと至る。
これが、この光こそが、全ての元凶。
キース兄弟の命運を分けた光の正体。
ジュエルシード、夜天の書、憑神刀(マハ)―――その三つのロストロギアが全力全開で衝突した結果、発生したピンク色の光。
その光の後に残る者は―――、



◆ ◇ ◆ ◇



八神はやては、白夜天と対抗するに辺り、二つの策謀を考えていた。
相手の砲撃に『妖艶なる紅旋風』を被せ圧倒するといったもの―――それが八神はやての考えた作戦の片一方であった。
二対一という戦いの性質上、加えてそのどちらもが強力な力を有している事も考慮すれば、天上院明日香へと攻撃を命中させられるチャンスは限られてくる。
命中させるのならば一撃で戦闘不能にまで持って行く事が理想的。そうでなくとも、行動に支障が生まれる位にはダメージを与えたいというのが最低限の望みであった。
だが、此処ではやての前に立ち塞がるは、青氷の白夜龍が持つ特殊能力。
フィールドの魔法・罠カードを犠牲にして攻撃の対象を移し替えるという、厄介極まりない特殊能力。
間隙を突き確実に攻撃を命中させられる好機が来たとしても、この特殊能力があれば容易に回避されてしまう。
それでなくとも憑神刀の技はどれもが強力。
白夜龍の特殊能力により技を無効化させられ、無駄に魔力を浪費するのは今後を見ても得策ではない。
確実に一撃で仕留めたい。それが最善、無理だとしても戦闘を続けるのが不可能な位の傷は負わせたい所であった。
特殊能力を発動される事なく、眼前の敵に攻撃を命中させられる策。
はやてはそんな夢のような策を考え、考え抜き、そして考え付いた。
誰もが、発案した本人ですら無茶だと思う、単純明快すぎて策とは呼べないような策―――それが前述の『相手の砲撃に「妖艶なる紅旋風」を被せ圧倒する』といったもの。
砲撃、それも全力全開の大砲撃の際は、どんな腕の良い魔術師であろうと足を止めざるを得ない。
つまり全力全開の砲撃を撃つ際は、どんな魔導師であろうと隙だらけになるという事。
砲撃に意識を傾けている最中ならば、白夜龍の特殊能力を発動させる事もできないかもしれない。
その隙を、はやては突いた。
相手が全力全開の一撃を放つその時を命懸けの回避で待ちながら、自身の中で魔力の研鑽を続け、そしてその待望の瞬間に全てを爆発させた。
白夜天が放つ全力全開に自身の全力全開をぶつけ、策の敢行を図った。
そうして、策は実行に至る。
八神はやての全力全開と天上院明日香の全力全開がE―5の上空で激突し、そのエリアにある全てを包み込む。

その極光の中、勝利を掴み取った者は―――



「……危なかった……わね」



―――白色の六枚羽を携えた白夜天の主・天上院明日香。
その身体に傷は無く、魔力の消費も殆ど無いと言って良い。
加えて青氷の白夜龍も健在。
明日香よりも近い位置で『妖艶なる紅旋風』を食らったからか、その身体には相当なダメージが重ねられているものの、白夜龍は生存を果たした。
対するはやても、何とか生き延びてはいるものの、その魔力の全てを使い果たしてしまった。
もはや飛行魔法を行使する事すら叶わずその身体は地面へと降り立っており、またバリアジャケットを維持する事も出来ない。
夜天を象徴していたバリアジャケットは既に宙へと霧散しており、はやての身体は元の茶を基調とした管理局の制服に包まれていた。
力無く垂れた憑神刀を持ったその両腕。
夥しい量の発汗によりズブ濡れとなっているその全身。
焦点があっておらず、何を映しているのか、正常な機能を果たせているのかも分からない双眸。
呼吸も粗く、その重く深い呼吸を続けている現状でさえ立っているのが精一杯といった様子。
その様子は傍目にも疲労困憊。
それだけ先の『妖艶なる紅旋風』に八神はやてが全ての力を注ぎ込んだという事なのだが―――それでも白夜天の全力全開を貫くには至らなかった。
結論だけを言うのであれば、はやてが放った『妖艶なる紅旋風』は明日香へと届く事なく、その力の殆どを消失させてしまったのだ。
根本に込められた魔力の絶対量に、余りに差がありすぎたのだ。
白夜天の力の根幹には無尽蔵とすら言える魔力を有したジュエルシードが存在する。
それと対抗するには、SSランクという人間の限界点に近い魔力量を持った八神はやてであっても力不足。
純粋な力のみでロストロギアを相手にするには、人間という種族は余りに力が劣っていた。
その覆しようのない絶対的な差が、この勝負を決定付けたのだ。

「……此処まで良くやったけど……終わりよ」

明日香は無慈悲に、表情一つ変えずに、再び魔力を片腕へと集中させていく。
しつこく面倒な相手であったが、これでようやく終わる。
最後の抵抗には驚かされたが、今の様子を見るにもうこれ以上は無い。
明日香はたまりにたまったフラストレーションを発散するかのように、人一人を殺すには余りに膨大な魔力を右手へと貯める。



「死ね」



そして遂に、終劇を示す砲撃がその手から放たれようとし―――



「…………ま……だ………や………………」



―――その瞬間、死体の如く動きを止めていた夜天の主が僅かに動いた。
壊れたブリキ人形のように歪で緩慢な動作で、手中の魔剣を振り上げる。
驚愕に目を見開く明日香。
その手が、行動が思わず止まっていた。

「…………マ…………ハ…………ぁぁ……ぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」

明日香は呆然とはやての事を見つめながら、畏怖という感情と共に疑問を抱いていた。
何が、この女を此処まで動かすのか。
その汗だくの身体で、疲労に震える身体で、何故まだ動こうとするのか。
明日香は疑問を感じずにはいられない。
執念という言葉すら生温い『何か』が、この女を支えている。
コイツは、この女は、何なのだ―――そう思考する明日香の頬を一筋の冷や汗が流れていた。

「コイツを………殺せええええええええええええええ!!」

夜天の叫びと同時に発動するは再びの『妖艶なる紅旋風』。
だが、その威力も規模も先のものと比較すれば、雀の涙程度のもの。
エリア一つを丸々飲み込む程の規模を有していた紅色の暴風は、今や精々半径数十メートルを半球状に包み込むに終わっている。
魔力の欠乏が影響していることは誰の目にも明らか。しかし、それでも人一人を殺すには充分な威力を秘めている光。
紅色の暴雨が再度白夜龍と白夜天の主とを呑み込み―――そして白夜天が高らかに宣告した。



「フィ、フィールドに存在する【白夜城―ホワイトナイツ・フォート―】を破壊し―――」



執念をも越えた家族への想いから生まれた限界の一撃を、一瞬で不意にする切り札の使用を。



「―――青氷の白夜龍の効果を発動!!」



天上院明日香は高らかに宣告した。
宣告と同時に世界を包み込む紅色の暴風が、渦となりある一点へと集中する。
その渦が攻撃する対象は青氷の白夜龍。
有象無象の区別なく、攻撃範囲にあるすべてにダメージを与える筈の『妖艶なる紅旋風』が、白夜龍の特殊能力により白夜龍のみを対象とした攻撃へと変化していた。
既に青氷の白夜龍は、一撃目の『妖艶なる紅旋風』により多大なダメージを負っている。
加えて一撃目と比べれば遥かに劣る威力ではあるものの、一点に集中された『妖艶なる紅旋風』を身一つで受けたのだ。
如何に最強クラスの守備力を持つ白夜龍といえども、最早耐えられる道理は無かった。
青氷の白夜龍は、苦痛に満ちた遺言の雄叫びを上げて消滅した。
だが、それを代償として白夜天の主は生き残る。
夜天が放った限界突破の一撃も、白夜天を貫くには至らなかった。
限度を遥かに超越した魔力行使に、夜天の主は立っていることすら保てず、地面へと倒れ込む。


「今度こそ……終わりね」

倒れる夜天の主を見た時、明日香の胸中には安堵の感情が思わず沸き立っていた。
疲労困憊の状態にも関わらず、恐怖すら覚える程の執念で立ち上がり反撃をしてきた八神はやて。
結局、何が彼女を此処まで突き動かしたのか、明日香には分からずじまいだった。
ただその執念の異常さだけは感じ取れた。
畏怖という感情と共に、はやての異常な執念は感じ取れた。
ブルリと一度身体を震わせ、ジュエルシードから魔力を集結させようとする明日香。



と、そこで、


明日香は自身の身体に発生している異変に気が付いた。



「えっ……?」



身体の左側が、軽かった。
何が起きたのかと、明日香は視線をはやてから外し、自身の左方向へと向ける。
そこにはあるべきものがなく、あってはいけないものがあった。
あってはいけないものはドバドバと噴出する鮮血。
あるべきものは―――左腕。
あるべき筈の左腕が、なくてはいけない左腕が、多量の鮮血を残して無くなっていた。

「え……あ……? ああ……あああああああああああああああ!!!」

知覚と共に痛覚が蘇る。
理性も何もかもを呑み込み、痛覚が明日香の全てを占領した。
耐え難い激痛の中、明日香が見たものは地面に転がる自身の左腕。そして、その左腕に握り込まれている闇の書。
明日香を白夜天たらしめていた二つのロストロギアが、左腕と共に彼女の身体から離れていた。
魔力結合が崩壊する。
この瞬間天上院明日香は白夜天の主から元の、カードゲームが得意な何処にでもいる少女へと戻ってしまった。
モンスターを召喚する事は勿論、魔法を行使する事すら出来ない極一般の少女。
白夜天は此処に消滅を喫し、そして明日香の命もまた消える。
トントンという軽い衝撃と共に明日香の胸に突き刺さる、三本の魔力刃。
明日香の口から漏れるどす黒い血液。途端に身体から力が抜け、明日香は仰向けに倒れ込む。
目を見開いたまま、自身に何が降りかかったのかも分からずに、明日香は漆黒に染まり掛けた夕暮れの空を見詰めていた。
その瞳から零れる涙は、もう拭う事すらされない。

(わ、た………し…………は………)

そして白夜天、いや天上院明日香は苦悶の中に息を引き取った。
最期の最期、その脳裏に映った人物は誰だったのか―――それは彼女だけが知っていた。



◆ ◇ ◆ ◇



明日香の命を奪った三本のニードルの正体は、宙舞う薔薇の意匠から発射された『愛の紅雷』という技であった。
術者はもちろん夜天の主・八神はやて。
限界突破の状況から無理矢理に絞り出した魔力で形成した、薔薇の砲台に砲弾。
それらを『妖艶なる紅旋風』に意識を取られて隙だらけの明日香へと射出、命を奪うに終わった。
八神はやてが考えた策謀は二段構え。
はやては、当初の『相手の砲撃に「妖艶なる紅旋風」を被せ圧倒する』といった策が通じなかった時の為に、もう一つの策謀を用意していた。

そのもう一つの策とは『妖艶なる紅旋風』を囮にして『愛の紅雷』を直撃させると言ったもの。

大規模な魔法を放てば当然相手は意識を向けざるを得ず、そうすると必然的に薔薇の砲台に気が付く事がなくなる。
それは、初撃で『妖艶なる紅旋風』の威力を見せ付けられては尚の事、高い効果を生み出す。
言うなれば二撃目の『妖艶なる紅旋風』は『愛の紅雷』を命中させる為の布石。
本命は『妖艶なる紅旋風』の残滓に紛れ込ませ、虎視眈々と狙いを定めていた『愛の紅雷』。
爆煙の中に潜む魔弾の射手が白夜天の命を削ぎ落とすに成功したのだ。

「や………った………とり…………戻した……で…………」

はやての策謀に誤算があるとすれば、憑神刀の魔力消費を侮っていた事。
憑神刀の魔力消費は異常そのもの。
はやてのSSランクという魔力量をもってしても、たたの一撃で魔力は枯渇にまで追い込まれてしまった。
これは白夜天の全力全開が予想以上に強力なものであったという事も影響している。
白夜天の全力全開を押し切ろうと全力を出し切り、その甚大な威力と憑神刀の異常な魔力消費が、はやてを疲労の頂点にまで押し上げた。
それが、先刻はやてが見せた疲労困憊の様相。
計画通りに事は進んでいたものの、それら誤算によりはやては限界突破の極地にまで追い詰められてしまっている。

「…………もう…………離さへん…………絶対に…………」

結局、彼女を勝利へと導いたのはそれら策謀ではなかった。
限界を越えた疲労の中でも彼女に魔法発動まで至らせた、その家族への執着が彼女を勝利たらしめたのだ。

「……………絶対………に……………」

八神はやては地面を這い進み、取り返す。
土埃に汚れたその手が掴み取るは、夜天の書。
千切れ飛んだ明日香の左腕と共に、はやては夜天の書を握り締め、そして意識を失った。
絶大な疲労に、何より家族を奪還した事で発生した気の緩みに、はやては意識を保つ事が出来なかった。
崩壊の市街地のド真ん中にて、仰向けに倒れ伏す夜天の主。



こうして、



こうして夜天の主は、絶大な魔力を引き換えにして―――家族を取り戻す事に成功した。



【天上院明日香@リリカル遊戯王GX 死亡確認】
【残り 19人】


【1日目 夕方】
【現在地:E-5 市街地】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】気絶中、疲労(極大)、魔力消費(極大)、胸に裂傷(比較的浅め、既に止血済)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(大)、スマートブレイン社への興味、
【装備】コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning 、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、首輪(セフィロス)
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる
 0.やっと……取り戻した……
 1.ヴィータと合流する……が、何かあったのだろうか?
 2.手に入れた駒(ヴィータ等)は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 3.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 4.金居のことは警戒
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと考えており彼を許すつもりはありませんが、自分にも原因があったのを自覚しました。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
※プレシアには他にも協力者がいると考えています。
※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
※図書館のメールアドレスを把握しましたが、メモが無い為今も覚えているかは不明です。
※シャマル、クアットロと情報交換しました。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※金居の発言には疑念を抱いていますが、少なくともアーカードを殺したいという意志だけは信じてもいいと思っています。
※自分の考え方が火種になっている事を自覚し、仲間にも拒絶される可能性がある事を認識しました。
※以上を踏まえた上で、自分の行動を改める。生き残る為には、形振り構わないつもりです。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。その為なら外見だけでも守護騎士に優しくするつもりです。
※憑神刀(マハ)のプロテクトは外れました。
※明日香がジュエルシードを持っている事にまだ気付いていません。

【全体の備考】
※E-5市街地に明日香の死体と共にバリアのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、トバルカインのトランプ@NANOSING 、支給品一式、ゾナハカプセル@なのは×錬金、救急箱があります
※E-5がこれ以上ない程に崩壊しました
※地上本部が倒壊しました



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キース・レッド GAME OVER
アレックス Next:Round ZERO ~KING SILENT
天上院明日香 GAME OVER
八神はやて(StS) Next:Round ZERO ~KING SILENT






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