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散る―――(後編) ◆Vj6e1anjAc





 ここで今一度思い出してほしい。
 ルーテシアのレリックと融合し、本来なら相性の合わない組み合わせで目覚めた聖王ヴィヴィオは、
 いくつもの欠陥をその身に抱えた、不完全なレリックウェポンと化していた。
 現時点までに発覚していた変化は、2つ。
 1つはかつてのゼスト・グランガイツのそれと同じ、身体を蝕む拒絶反応。
 1つはレリックの暴走による、一時的な魔力量の向上。
 一度に発揮できる魔力の量こそ増えたものの、同時に身体へのダメージさえも助長され、
 本人の意識せぬままに、より早いペースで身体にダメージを溜め込んでいくという悪循環である。

 しかし――本当に、それだけだろうか?
 ヴィヴィオの身体に起きた変化は、本当にその2つだけだったのだろうか?

 考えてもみてほしい。
 ヴィヴィオが何者であるのかを。
 聖骸布のDNAから生み出された人造魔導師が、一体何者なのかということを。
 ヴィヴィオはかつての聖王のコピーだ。
 古代ベルカ技術の直系を受け継いだ、最高のレリックウェポンの素体だ。
 身に溜め込んだ戦闘力と魔力は、並の人間を遥かに凌駕している。
 そのベルカ最強の生体兵器として生まれた彼女の身体を、凡百の人間と同じ定規で計っていいものなのか?
 いかにストライカー級騎士とはいえ、突き詰めればただの人間に過ぎないゼストと、全く同一のケースと見なしていいものなのだろうか?

 回りくどい言い方はここまでにしよう。
 ここからは率直に事実のみを述べることにしよう。

 言うなれば聖王ヴィヴィオの身体は、その莫大な魔力を内に溜め込み、コントロールするための器だ。
 大量の水を貯水池に留め、必要量のみを放出する、ダムのようなものである。
 では、そのダムが壊れたらどうなるか?
 水を抑え込めなくなるほどに脆くなったらどうなるか?
 拒絶反応の影響で、ボロボロになった肉体が、魔力制御の限界域を突破したら?

 その先に待つのは、たった1つのシンプルな回答。

 それはその身に宿った全魔力の――――――暴発。

 肉体の限界を超えた魔力が、器を破り全面放出されることによる、魔力エネルギーの大爆発である。

 これまではギリギリ耐えることができた。
 今までに蓄積されたダメージでは、ダムを決壊させるまでには、ほんの僅かに至らなかった。
 しかしそこへ、とうとう決定打が叩き込まれる。
 完全破壊までには至らなかったとはいえ、スバルの放ったディバインバスターが、レリックにダメージを与えたのだ。
 衝撃を与えられたレリックは安定性を失い、体内の魔力は大きく掻き乱された。
 そんな水流の大きく乱れた状態へ、更に追い討ちをかけるように、
 最大出力でディバインバスターを放つべく、ダムのほぼ全ての水門が開け放たれたのである。
 そうなれば、どうなるか。
 結論は決壊の2文字しかない。
 レリックの魔力のみならず、ヴィヴィオ自身の体内に潜在される魔力まで、根こそぎ放出されるのみである。

 こうしていくつもの条件が重なったことによって、薄氷の上に成り立っていた聖王の身体は――遂に、限界の瞬間を迎えたのであった。


「ぐォッ……!」
 その瞬間を、その場にいた誰もが目撃していた。
 超巨大魔力スフィアを発射しようとしていたヴィヴィオが、突如としてもがき苦しみ始めたのだ。
 両手で自身を抱くように掴み、呻きと共に肌を掻き毟る。
 スフィアは緩やかに消滅し、代わりに聖王の身体から、魔力が霧のように漂い始める。
 そしてそこに宿された光は、カイゼル・ファルベの虹色だけではない。
 不穏な気配を放つ赤色が、その中に混じり始めたのだ。
 赤はロストロギア・レリックの色。
 それが漏れ出したということは、ヴィヴィオの魔力回路を介することなく、直接レリックから漏れていることに他ならない。
 見る者が見れば、容易に危険だと推測できる状況だった。
「う……ゥ、ォオオオオオ……ッ!」
 遂に堪え切れなくなったのか、膝をついて崩れ落ちた。
 四つん這いの姿勢になったヴィヴィオの身体が、びくびくと小刻みに痙攣を始める。
 美貌にはじっとりと脂汗が滲み、サイドポニーの金髪がへばりついた。
 地に着いた四肢はがくがくと震え、口からは明らかに危険な量の涎が零れた。
 それどころかその中には、薄っすらと血が混ざっているようにさえ見える。
「ゥ、ア……あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」
 瞬間。
 絶叫した。
 叫びが上がった。
 これまでの怒りの滲んだ怒号ではない、断末魔さえも思わせる悲痛な叫び。
 不意に弓なりに身体を反らし、中腰の姿勢となって放たれた咆哮。
 それが破綻の始まりだった。
 それが全ての合図となった。
 ヴィヴィオの絶叫を皮切りに、霧が間欠泉へと転じる。
 濁流のごとき勢いで、赤と虹の光が発せられる。
 さながら火山の噴火のように、漆黒の聖王の肢体から、膨大な魔力が放出されたのだ。
 轟々と渦巻くそのさまは、さながら小規模な暴風雨。
 暴力的なまでの閃光と爆音が、殺人的破壊力を伴ってぶちまけられた。

「何だ、あれは……?」
 相川始との予期せぬ再会によって、幾分か頭の冷えたエネルは、その光景を悠長に構えて見つめていた。
 不届きにも己と互角の勝負を展開していた小娘が、突然もがき苦しみ始めたのだ。
 そして身を起こしたかと思えば、この有り様。
 一体何が起きているというのか。
 見たところ、体調が悪くなったのは間違いないらしい。
 攻めるなら今をおいて他にないのだろうが、はてさて、あの身体から噴き出したエネルギーをどうするか。
 これまでの経験則からして、あれは当たったら痛そうだ。
 いくら回復手段があるとはいえ、痛みを覚えるのは面倒くさい。
 できれば下手に怪我することなく、あれを突破したいのだが――。

「ヴィヴィオ……一体、どうしたの!?」
 ディバインバスターを直撃させ、意図せぬうちにこの状況を作ったスバルは、不安げな声でヴィヴィオに呼び掛けていた。
 あの状態はまずい。
 何が起こったのかはさっぱり分からないが、尋常ではない苦しみ方からして、彼女が生命の危機に瀕していることは分かる。
 できることなら助けたい。いいや、助けなければならない。
 たとえディバインバスターが効かなかったとしても、一度助けると決めたからには――
「なっ!?」
 そう思った、次の瞬間。
「逃げるぞ!」
 不意にカリスに手を掴まれ、そのままぐいと引き寄せられた。
「待ってください! ヴィヴィオを、ヴィヴィオを助けないと……!」
「もう限界だ! このままだと、俺達まで危険に晒されかねない!」
「そんな……!」
 始は本能的に察していた。
 あれは危険な現象だと。
 ヴィヴィオ1人のみならず、自分達周囲の人間にさえ、危険を振り撒きかねない現象であると。
 具体的に何が起こるのかは分からない。
 ただ漠然と、危険な気配だけは感じ取っていた。
 振りかえって見るだけでも分かる。
 見えない脅威を振り払わんと、巨大な憑神鎌を振り回し、先端から余剰魔力を光波として放つさまは、明らかに常軌を逸している。
 見捨てることで心が痛むのは確かだ。
 それでも今は、出会ったばかりの小娘よりも、ギンガの妹の方が大事だった。
 彼女だけは絶対に守る。
 人の想いの力を教えてくれたスバルを、絶対に死なせはしない。
 その一心で彼女の手を引き、得体の知れないカタストロフから、必死に逃げのびようとしていた。

「ゥウッ! グゥァアアアッ!!」
 獣のごとき雄叫びを上げ、狂ったように鎌を振るう。
 我が身を苛む何物かを、懸命に遠ざけようとするように。
 魔力の嵐の中心で、ヴィヴィオは苦痛の真っただ中にあった。
 燃え燻る森の火種も、挑みかかって来る敵の姿も、空の満月も見えはしない。
 全天360度の光景は、有象無象の区別なく、慈悲なく容赦なく万遍なく、神々しくもおぞましき虹色へと埋め尽くされる。
 浮かび上がる紅蓮の影は、手にした憑神鎌の力の顕現だったのか。
 レリックより滲み出る赤い魔力が、処刑鎌の待機形態を彷彿させる顔をした、三つ目の死神の姿を浮かび上がらせた。
「グェ、ェ、ェエエエエ……ッ!」
 痛い。痛いよ。
 身体中が苦しいよ。
 何でこんなことになっちゃったんだろう。
 どうしてこんなところまで来てしまったんだろう。
 仕方がないことだと思っていた。
 身体が痛いのも苦しいのも、人を殺そうとするヴィヴィオが悪い子だから、その罰を与えられたんだと思っていた。
 でも、本当はこんな苦しい思い、しなくていいのならしたくはなかった。
 こんな怖い思いなんて、本当はしたくなかったのに。
「ァ……ァアー、ア……」
 ママ。
 どこにいるの、なのはママにフェイトママ。
 一緒にいてくれると思っていたのに。すぐ傍で見ていてくれると思っていたのに。
 もう嫌だよ、ママ。
 痛いのも苦しいのも怖いのも、もうこれ以上味わいたくない。
 だから助けてよ。
 ここまで助けに来てよ、ママ。
 なのにママはどこにもいない。
 どこにもなのはママを感じられない。
 ああ――私、見捨てられちゃったんだ。
 あんまりヴィヴィオが悪い子だから、そんな子はもう知らないって、なのはママにも捨てられちゃったんだ。
 これで私は、独りぼっち。
 生まれた時と同じ、独りぼっち。
 誰にも助けられなくて、誰にも愛してもらえない。
 ヴィヴィオはもう――独りぼっち。

「……がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 それはただただ圧倒的で、暴力的で冒涜的な力の発現。
 燃え滓となった灰色の木々も。
 森林に鎮座したコンクリートのホテルも。
 そこに立つ人影達さえも。
 全てが区別なく平等に、光の中へと飲まれていく。
 地面の絨毯をひっぺ返し、大口開けて酸素を取り込み。
 恐怖さえも煽る虹色のドームが、全てを無へと帰していく。
 衛星のように駆け巡る赤色の線が、全てを切り裂き消し去っていく。
 影さえも飲み込む死の光。
 闇を切り裂く七曜の闇。
 全てが虹色に支配され、それ以外の何もかもが見えなくなって。
 たっぷり10秒間は続いた大爆発は、エリアF-9に現象する一切合財を、余すことなく飲み込んだのであった。


 かつてホテル・アグスタと呼ばれていた、その施設の面影は既にない。
 ヴィヴィオの巻き起こした魔力爆発が、これまで健在であった建物に、遂にとどめを刺したからだ。
 コンクリートの壁も鉄骨も、情け容赦なく粉砕された。
 今その土地にあるものは、焦げた臭いを漂わせる、煤けた瓦礫の山だけだ。
「あの、女ぁぁぁ……!」
 そしてその灰色の山の中で、怒りに震える男がいる。
 全身をコンクリートに埋めながら、額に青筋を立てる男がいる。
 男の名は、神・エネル。
 スカイピアの神を自称し、恐怖こそが神であると自論し、恐怖による支配体制を敷き続けた雷の男である。
 その男が、生きていた。
 あれほどの爆発の中にあっても、驚くほどの軽傷を負うに留まり、こうして生きながらえていた。
 決め手となったのは、周囲の自然や建造物から電力を集めた、あの巨大な積乱雲だ。
 恐るべきことにこの男は、自らの支配した雷全てを使って、自らに襲いかかる魔力を、完全に相殺しきったのだった。
「最初から最後まで神を愚弄し……おまけにこんな屈辱を味わわせるとは……!」
 何だというのだ、この有り様は。
 全能の神を自称していた自分が、一体何という体たらくだ。
 か弱い少女を狩らんとしたら、あろうことか川に突き落とされ。
 神を信じぬ不届き者も、殺したと思っていたのに殺しきれず。
 赤いコートの男に返り討ちにされ、訳の分らぬ感情に心を乱され。
 男だか女だか分からないような奴に、いいように騙され利用されて。
 自らを檻に閉じ込めた紫鎧も、結局自分の手で殺す前に死に。
 あの女には見下ろされ技を盗まれ、挙句せっかく溜めた電力も使い切らさせられた。
 ひどい有り様だ。
 ここに飛ばされたから自分は、まったくもって嘗められっぱなしではないか。
「もう堪忍袋の緒が切れた! この場に生き残った全員、ただの1人として生かしては帰さん!」
 許さない。断じて許すわけにはいかない。
 これ以上醜態をさらすのは、自分のプライドが許さない。
 殺す。
 殺してやる。
 この場に集った全員を、自分自身の手で殺してやる。
 恐怖という名の崇拝を掴み取るために、再び最強の恐怖の象徴として返り咲いてやる。
 そうだ。
 もう誰も取りこぼしはしない。
「全員私の手で殺して――」
 ――ばぁん。



【エネル@小話メドレー 死亡確認】



 銃口からたなびく硝煙が、男の顔を静かに撫でる。
 脳天を真上からぶち抜かれ、物言わぬ死体となったエネルを、冷淡な視線が見下ろしている。
 いつからそこにいたのだろうか。
 そこにいつから立っていて、いつから神を見下ろしていたのか。
「怒りってのはよくないな。気が散って危機管理が疎かになる」
 スマートな体型を有した青年――金居が、デザートイーグルを構えてそこに立っていた。
 四つ巴の激闘から、真っ先に尻尾を巻いて逃げだしたこの男が、エネル達の生死を確かめるために戻って来たのだ。
(ボーナスは……これだな)
 がさごそとデイパックを漁ってみれば、新たな手ごたえをその手に感じた。
 鞄から引き抜かれた御褒美は、長大な柄を持った鉄槌だ。
 殴打する部分には痛々しげな刺が連なっており、凶悪な破壊力を醸し出している。
 重量こそあるものの、アーカードの持っていた、やたら長い刀よりは使い勝手がいいだろう。
 当面はこれを得物としようと判断し、デザートイーグルをデイパックにしまうと、そのまま左手にハンマーを持つ。
 ついでにエネルの手から剣をひったくると、本人のデイパックに詰め、それも奪った。
「それにしても、とんでもない被害だな」
 そこで思い出したように、高みから周囲を見回し、呟いた。
 数分前に起こった大災害には、さしものカテゴリーキングも肝を冷やした。
 何せ逃げのびたかと思えば、いきなり目の前で虹色の大爆発が起きたのだ。
 あの時真南のG-9ではなく、F-9エリアに留まったままだったら、巻き込まれ消し炭になっていたかもしれない。
 これまでの情報を整理すれば、あのカラミティを巻き起こしたのは、間違いなくあのヴィヴィオだろう。
 何にせよ、厄介な2人が共倒れになってくれたのは幸いだった。
 死んだのか否かはまだ調べていないが、ヴィヴィオも小さな子供の姿になって倒れている。もはや脅威となることはあるまい。
(さて、これからどうするか)
 ともあれ、これで当面の目的は果たした。
 であれば、次の目的はどうすべきか。
 エネル達という不安要素が排除され、はやて達とも別れた今、自分がすべきことは何か。
 同行者が1人もいなくなったのだから、工場に立ち寄る理由もない。つまり、やることがなくなってしまったのだ。
 そこまで考えたところで、ふと、デイパックに入れたきりになっていたアイテムの存在を思い出した。
 学校で見つけ、それきり調べる機会のなかったUSBメモリだ。
 せっかく1人になったのだから、いい加減こいつの中身を調べてみよう。
 とりあえずは市街地に行って、適当なパソコンを調達し、こいつを開いてみることにしよう。
 そうと決まれば善は急げだ。
 コンクリートの山を滑り降り、倒れ伏す人影のすぐ横を、悠然と歩き去っていく。
 乾いた夜風が吹き抜けた。
 瞬間、金居の視界の中でちらついたのは、見覚えのある10枚のカード。
「……感謝するよ、お嬢ちゃん」
 ふと。
 不意に、にやり、と口元を歪め。
 すたすたと歩いていた足を止め、首だけを背後へと振り向かせる。
「本当に厄介な奴を始末してくれたことを、さ」
 キングの視線の先にあるものは――


【1日目 真夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】疲労(小)、1時間変身不可(アンデッド)、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
    首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル@オリジナル(4/7)、
    アレックスのデイパック(支給品一式、L、ザフィーラ、エネルデイパック(道具①・②・③)
    【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
    【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3))
    【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、ランダム支給品(エネル:0~2)
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.USBメモリの内容を確認するために市街地に戻る。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。


「う……」
 呻き声と共に、目を覚ます。
 未だがんがんと痛む頭を振り、ぼやけた瞳を指先で擦る。
 ヴィヴィオにやられた鈍痛の残る身体を、片腕でのそのそとと起こした。
 あれから一体どうなったのだろう。
 いいや、あれだけのことがあって、何故自分は生き残ることができたのだろう。
 徐々に冴えてきた脳内で、スバル・ナカジマは思考する。
 最後に記憶したものは、聖王の背後で吼える死神の姿と、網膜を蒸発させんばかりの魔力光だ。
 前後の状況から推察するに、恐らくはヴィヴィオの身体から発せられた魔力が、とんでもない規模の爆発を引き起こしたのだろう。
 あまりの光量と音量に、意識が吹っ飛んだほどの破壊力だ。
 まともに考えるのならば、今ここで自分が生きているのはおかしい。
 何が死期を遅めたのか。
 あの圧倒的な火力の中、一体何が自分を救ったのか。
「……ッ!」
 そして。
 次の瞬間、見てしまった。
 上へと持ち上げた視線に、その存在を捉えてしまった。

 自分が倒れている目の前に、異形の怪物の死体が立っていた。

「あ……ああ……!」
 見覚えのない、禍々しい背中。
 頭部から伸びた触角に、おぞましく歪んだ甲殻から覗く緑色の肌。
 全身を煤けさせながらも、倒れることなく逝った立ち往生の死に様。
 いかにも怪物らしいこの怪物の背中を、自分はこれまでに見たことがない。
 それでも、確かに悟ってしまった。
 否応なしにも、理解させられてしまった。
「始、さん……!」
 これは相川始だと。
 あの素顔も知らない仮面ライダーカリスが、自分をここで庇っていたのだと。
 圧倒的な魔力に身を焼かれても、それでも決して引き下がることなく、そしてそのまま最期を迎えたのだと。
 不意に、死体が光る。
 おぞましい昆虫の亡骸が光に包まれ、縮小し、一枚の紙切れへと変わった。
 トランプのようなカードの意匠は、生前彼が使っていたのと同じものか。
 それで本当に何もかもが終わってしまったのだと、何となく理解していた自分がいた。
 また、目の前で人が死んだ。
 死なせないと誓った人を、結局救えず死なせてしまった。
 皆を守ると約束したのに、結局守られてしまった。
 その厳然とした事実はスバルを苛み、涙腺に熱いものを込み上げさせる。
 きりきりと胸を締め上げる悔しさと情けなさが、瞳から涙を落とさせようとする。
「………」
 それでも。
 だとしても、泣くことはしなかった。
 静かに身体を起き上がらせ、視線を左側へと逸らす。
 始の死体の向こう側にいたのは、焼け焦げた大地の中心で倒れ伏す、元の小さな姿のヴィヴィオだ。
 すぐ近くに突き刺さっていたナイフは、始を殺したことで手にしたボーナス支給品だろうか。
 無言で立ち上がり、歩み寄る。未だ真新しいナイフを回収し、気絶した少女の身体を抱き上げる。
 ひゅーひゅーと響く呼吸音は驚くほど小さく、心臓の鼓動はあまりにもか細い。
 誰の目にも明らかな、満身創痍の有り様だった。
「……あたし、泣きませんから」
 ぼそり、と。
 消え入るような声で、呟いた。
 そうだ。こんな所で泣いている暇はない。
 こうして立ち止まっているうちにも、目の前の命はどんどん蝕まれていく。
 今ここで涙し膝をつけば、せっかくレリックの呪縛から解き放たれたヴィヴィオの命が消えてしまう。
「ヴィヴィオを死なせないためにも、前を向いて歩きますから」
 振り返ることはしなかった。
 始の遺したカードを拾い上げると同時に、すっぱりと思考を切り替えた。
 落ちていたデイパックを自分のバッグへと詰め、ジェットエッジのローラーを回転させ、北へ北へと進んでいく。
 今は涙を流せない。
 始の死を悲しんでやることも、弔ってやることさえもできない。
 今目の前で死にかけているヴィヴィオを、スカリエッティのアジトへと運び、その命を救うこと――それがスバルの使命なのだから。
「だから、もう行きます」
 白のバリアジャケットがはためく。緑の瞳が光り輝く。
 胸にこみ上げる悲しみよりも、なおも大きな決意を抱いて、満月の下を進んでいく。
「ありがとうございました――始さん」
 それが相川始との、最期の別れの言葉だった。


【1日目 真夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具③】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 2.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ
【装備】フェルの衣装
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。


 時は僅かにさかのぼる。
 これはヴィヴィオの魔力が暴発した、その瞬間の出来事である。

 悪い予感は的中した。
 否、正直予感以上だった。
 これほどの規模の大爆発は、これまでのバトルファイトを振りかえっても一度も目撃したことがない。
 腕に抱き止めたギンガの妹は、あまりの音と光に気絶してしまった。
 人間の開発したスタングレネートやらを、遥かに凌駕する音と光だ――正直自分自身さえも、未だ意識を保っているのが不思議だった。
 爆発が背後にまで迫る。
 目と鼻の先にまで光がにじり寄る。
 このまま飲み込まれてしまえば、それで何もかも終わりだ。
 身体はあっという間に蒸発し、骨まで残さず消え果てるだろう。
 自分はどうなろうと構わない。だが、それ以上に死なせたくないのはスバルだ。
 昏倒した少女を背後へと放ると、迫り来るカラミティへと正対する。
『REFLECT』
 カリスアローにラウズしたのは、ハートの8番目のカード――リフレクトモス。
 ギラファアンデッドの攻撃にも耐えられなかった防壁が、どこまで有効かは分からない。
 それでも手にしたラウズカードの中で、最もましな防御力を持っていたのがこれだ。
 すぐさま光の壁が出現し、カリスの盾となって立ちふさがる。
 爆発と正面から衝突したのは、ちょうどそれから2秒後だ。
 すぐさま、強烈な反発が襲いかかった。
 ばちばちと耳触りなスパークが響き渡り、衝撃が大気越しに身体を震わす。
 ハートのマスクの下の眉間を、苦悶を宿した皺に歪めた。
 見ればリフレクトの障壁には、既に亀裂が走っている。恐らくはあと数秒と保たずに、この壁は消滅するだろう。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」
 それでも、諦めてなるものか。
 膝をついてなるものか。
 全身から暗黒色の飛沫を放ち、本来の姿たるジョーカーへと変幻。
 黒と赤の鎧が消失し、黒と緑の甲殻が姿を現す。
 リフレクトがばりんと音を立て砕け散ったのは、ちょうどこの瞬間だった。
「くっ、お、おおおおおお……っ!」
 轟――と身を襲うのは、耐えがたいほどの灼熱と圧力。
 カリスの姿なら即死していたであろう殺人的破壊力に、無敵のジョーカーの体躯すら、じりじりと焦がされていく。
 命が遠ざかっていくのを感じた。
 不死身であるはずのこの命が、驚くほど静かに消えていくのを感じた。
 このままでは遠からず自分は死ぬだろう。
 たとえスバルの盾となり、彼女を守り通したとしても、その未来に自分の命はないのだろう。
 ふ――と。
 不思議と、笑みが込み上げた。
 まったくもって、不思議なこともあるものだ。
 殺戮のために生まれたジョーカーの最期の仕事が、命を守ることだとは。
 魔力の炎に焼き尽くされながら、しかし不思議と穏やかな気分で、自分の奇妙な運命を見据える。
 少し前まではこんなこと、考えたことすらもなかった。
 そんな自分を変えたのは、愛すべき人間達の心だ。
 スバルが懸命に説得してくれたからこそ、人の想いの強さを知ることができた。
 ギンガに命を救われたからこそ、人の想いに触れることができた。
 そして、最初に人の心を教えてくれたのは、あの栗原遥香と天音の親子だ。
 すいません、遥香さん。ごめん、天音ちゃん。
 俺はどうやらここまでらしい。ここから生きて帰ることはできないようだ。
 そして、それでも。
 だとしても、これでよかったと思える自分がいる。
 自分の命の捨て方としては、十分に満足できる死に様だと思っている自分がいる。
 人を殺す運命にあった自分が、人を守って死ねるのだ。こんなに上等な死に方はなかった。
 これで、いいんだよな。
 今は亡き少女が最期に見せた、穏やかな笑顔へと問いかける。
 俺はしっかり生き抜いたよな。
 お前が言ってくれた通り、人間の心に従って、真っ当に死ぬことができたんだよな。
 そうだよな……ギンガ――――――



【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード 死亡確認】



【全体の備考】
※F-9にて大規模な火災と魔力爆発が発生し、以下の被害が生じました。
 ・F-9が壊滅状態となりました
 ・ホテル・アグスタがほとんど全壊状態となりました。
 ・装甲車@アンリミテッド・エンドラインが大破しました。
 ・ヴィヴィオの支給品一式が消滅しました。
 また、火災は魔力爆発によって鎮火しています。
※F-9に落ちていたラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレードが、風に吹かれて飛ばされました。
 どこに飛んでいったのかは、後続の書き手さんにお任せします。


【ラウズカード(ジョーカー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
不死の怪物「アンデット」のうち、4つのどのスーツにも属さない「ジョーカー」を封印したカード。ラウザーに通す事により、カードが持つ能力を使用者や武器に付加させる事が出来る。
あらゆるラウズカードの能力を有しており、使用者が望むカードの代用として使用することができる。

【バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~】
金居に支給されたボーナス支給品。
未確認生命体第45号ことゴ・バベル・ダの使用する大金槌。
高い殺傷能力を有しており、バベルの怪力と相まって、紫のクウガの鎧に傷をつけるほどの威力を発揮した。

【黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK】
ヴィヴィオに支給されたボーナス支給品
「組織」に所属する契約者・黒(ヘイ)が使用するナイフ。

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エネル GAME OVER






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