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日々の未来(3) ◆gFOqjEuBs6




「……ガッ……ハ――」
「え……?」

 だが、可笑しい。何時まで経っても、なのはが夢想した最期の時は訪れない。
 それどころか、聞こえて来たのは別の男の呻き声。何が起こったのかと瞳を開ける。
 そこに居たのは、なのはを庇う様に立ち塞がった黒髪の男――アンジールであった。
 コーカサスに背を向け、背負ったバスターソードと己の身でコーカサスの攻撃を受け止めたのだ。
 当然、無事でいられる訳も無く、バスターソードは粉々に砕かれていたし、アンジールの身体だってぼろぼろの筈だ。
 そうなる事は解って居た筈なのに……何故、アンジールは自分を守ったのだろう。

「何……で」
「クアットロが……言っただろう。時には身を呈して……仲間を守らねばならない……と」
「……!!」

 アンジールの言葉に、はっとした。
 確かにクアットロはあの時――ミライを置いて離脱する時、言った。
 仲間であるからこそ、時には身を呈してでも守らねばならない時があるのだ、と。
 だけど、それは十中八九その場で出たクアットロの方便だろう。
 そんな事は家族であるアンジールが一番良く解って居る筈なのに……。

「これが……守るという事、なんだな……」
「ありがとう……アンジールさん」

 ――否。アンジールは、クアットロに言われたから自分を守ったのではない。
 勿論、この場での行動方針を決めるきっかけとなったのはクアットロだ。それは否定しない。
 だけれど、それ以上に……この土壇場で、こういう行動を取れる男。それが、アンジールなのだ。
 人々を救いたいと願い、人々を救う為に、命を賭して戦う。そこに、自分の死が待ち受けていたとしても、だ。
 アンジール・ヒューレーという男の本質に気付いた時、なのはの瞳からは涙が流れ出ていた。
 なのはからの感謝の言葉を聞いたアンジールは――満足そうに、その場に崩れ落ちた。

「アンジールゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!」

 次いで、カブトの仮面の下で絶叫したのは天道総司であった。
 奴は自分と同じ、誰よりも何よりも、妹だけを守ろうとした男。
 最後はその身を呈して、他人の命を守る為に戦い、果てた。

「うっわぁ、ソルジャーの癖に何その死に方! 存外しょぼくて拍子抜けだよ!」
「貴様……!」

 嘲笑うコーカサスに、仮面越しに鋭い視線をぶつける。
 自分の中で、今まで押し殺して来た怒りが爆発するのを感じた。
 そして、潜在的な怒りが爆発した時、人は限界を超える。
 手元にあったデイバッグから、一振りの刀を引き抜いた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 全てを爆砕する、最強の妖刀。
 伝説の妖怪の息子たる男――殺生丸が自らの力で生み出した刀。
 親の呪縛を振り切って、全ての迷いを断ち切った時、爆砕牙は真の力を発揮する。
 バスターソードを掲げて戦ったアンジールの影をその身に重ねて、カブトは駆け出した。
 爆砕牙を両腕で握り締めて、コーカサスアンデッドに向かって突貫する。
 対するコーカサスは、先程と同じ要領で、左腕を突き出した。

「ディアン・ケト発動!」

 言うが早いか、再びコーカサスの前面にソリッドシールドが生成される。
 だけど、不思議と負ける気はしない。どんな硬い盾であろうと、今ならば突破できる。
 メビウスの決意。アンジールの覚悟。なのはの想い。それら全てを受けて、カブトは爆砕牙を振り抜いた。
 きぃん、と。一瞬だけ盾にぶち当たり――次の瞬間には、爆砕牙が盾を切り裂いていた。
 同時に巻き起こる爆発。爆砕牙によって切り裂かれた盾が、派手な音を鳴らして爆発したのだ。
 これこそが、爆砕牙の能力。斬った対象を爆発させ、その爆発は斬った後も続く。
 狼狽するキング。次の行動へ移る為の隙など、絶対に与えない。

「ハァッ!」

 勢いそのまま、カブトが振り抜いた爆砕牙が、見事コーカサスの左腕を直撃した。
 左腕に装着されていたデュエルディスクが、派手な爆発と共に破壊されていく。
 同時に、切り裂いたコーカサスの左腕と、左半身の表面が爆発を開始。
 勝ったか、と思った。

「ガ……ァ……」

 カブトの仮面から、大量の血液が溢れ出した。
 駆け抜けたカブトの腹に出来た傷口は、明らかに装着者の天道総司の身をも切り裂く大打撃。
 カブトがコーカサスを切り裂く瞬間に、コーカサスもまた、その破壊剣を力の限り振るったのだ。
 結果、破壊剣は見事カウンターの要領でカブトの装甲を、ベルトを切り裂いた。
 カブトゼクターを砕かれたカブトの全身から、眩い稲妻と、大量の火花が噴き出していた。

「あっぶねぇ~……っていうかデュエルディスク壊されちゃったよ!
 けどまぁ、デュエルディスクと命が引き換えって考えたら、馬鹿馬鹿しいよね」

 体表で炸裂する爆発を振り払いながら、コーカサスが言った。
 コーカサスの後方で、爆砕牙を振り抜いたままの構えで動かなくなったカブト。
 やがて、ゼクターを破壊されたカブトの身体を稲妻が駆け巡り――爆発した。
 カブトの装甲が弾けて、その身体は爆発四散。視界を覆う白と黒の爆煙。

「天道さんは……!?」

 身を乗り出したなのはの眼前に、何かが落下した。
 それは、持ち主を失った爆砕牙。爆砕牙が、ひゅんひゅんと音を立てて、こちらまで飛んで来たのだ。
 それがアスファルトに深く突き刺さると同時に、爆煙が視界からゆっくりと消えて行った。
 天道の安否を心配し、周囲を見渡すが――爆煙が晴れた先には、誰の姿も見当たらない。
 ただ、コーカサスアンデッドが退屈そうにその剣を振り回しているのみであった。

「総司さぁぁああああああああああああああああああああああああああん!!!!」
「そんな……天道さんまで……!」

 絶叫するメビウス。絶望するなのは。
 天道掃除は、今まで共に闘ってきた大切な仲間だ。
 決して長い時間を共に過ごしたとは言い難いが、それでも仲間である事に変わりは無かった。
 フリードを救うきっかけとなった、この場で出会った誰よりも信頼出来る人間。
 そんな人間を失って、平然として居られる訳が無かった。

「アンジールさん……天道さん……そんな……皆で脱出するって言ったのに……」
「あっはっは! カブトにも期待してたんだけど~……所詮この程度か。ま、仕方ないね!」

 さもつまらなさそうに――しかし、実のところは楽しそうに。
 天道の死に様を馬鹿にするように笑うコーカサスに、心の中で何かが燃え上がるのを感じた。
 それは、なのはが今まで感じた事はない感情。怒りや、憎しみ――憎悪と呼ばれる感情。
 アンジールと天道の死に、人前では堪えていた筈の涙が自然と瞳に溜めこまれていた。
 だけど、そんな事は最早関係無い。燃え上がる激情を隠しもせずに、コーカサスを睨み付ける。
 そして、そんななのはの気持ちを代弁するように、今度はメビウスが絶叫した。

「よくもっ……!! よくも僕の大切な仲間達をぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 その声は震えていた。腹から絞り出す様な涙声であった。
 怒りと悲しみ。キングに対する、堪え用の無い激しい激情。
 今にも全てのエネルギーが切れてしまいそうな身体から、もう一度力を振り絞る。
 カラータイマーが高速で明滅する。それは、メビウスに最期の時が近付いている証。
 今度こそ、これが最期だ。本当に最期の最期に残った力を振り絞って、立ち上がった。

「ハッ、笑わせんなよ! お前らまだ出会ったばっかだろ!」
「それでも! それでも皆生きていた! 同じ目的の為に、殺し合いを止める為に……! なのにお前は!!!」

 ゼストを殺された時の怒りを思い出す。
 こいつは、皆の命を弄んだ。クアットロとアンジール、さらには天道までを……その手に掛けた。
 下らない理由で皆の命を奪い、あまつさえその死を嘲笑った。命を賭けた皆の行動を、侮辱した。
 このキングに、最早人間らしさなどは皆無。こいつは正真正銘のモンスター、化け物だ。
 人の命を踏みにじり、その輝きを奪う化け物を、ウルトラマンは――ミライは、絶対に許さない。
 残り僅かな命を燃やし尽くしてでも、こいつだけは絶対に倒さなければならない。

「僕の命と引き換えてでも、お前だけは絶対に倒す! もうこれ以上、お前に誰も殺させない!」
「ハハハハハッ! 面白い面白い! 出来もしない事を堂々と言っちゃう痛いヒーローの完成だね!」

 本当に可笑しなものを見ている様に、コーカサスが笑った。
 なんとでも言えばいい。この男は、まだメビウスに残された最期の大技を知らない。
 そう。メビウスには、切り札がある。残りの命を全て燃やし、自らを炎の弾丸に変える、最強の必殺技。
 使用する度に寿命は縮み、その身体に多大な負荷を掛ける最強にして最後の裏技。
 その名も、メビュームダイナマイト。持てる全てを燃やし尽くす、最期の輝き――

「――っ!?」

 されど。
 メビウスの身体は、もう燃えなかった。
 殆どのエネルギーを使い果たしたメビウスに、残った炎は皆無だ。
 メビュームダイナマイトを使用しようと、両腕を広げるが――その身体からは、赤が抜け落ちて行った。
 あの日誓った、大切な仲間達との絆が……“俺達の翼”が羽ばたく事は、もうない。
 掛け替えのない仲間達との約束の炎が、消えて行く。
 最後に残った希望が、目に見えて消え去って行く。

「そんな……どう……して……」
「君はここでゲームオーバーって事さ、メビウス」

 最早、バーニングブレイブを維持する事すら出来なかった。
 その身体は元の銀色を基調にした、本来のウルトラマンメビウスの姿へと戻って行く。
 立ち上がる力さえ失ったメビウスが、朦朧とする意識の中で、片膝をついた。
 視界の中で、振り上げられる破壊剣。コーカサスからかけられる、最期の言葉。
 思えば、ここまで何度も限界を超えて起ちあがった。何度もその拳を振り上げた。
 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って――それでも訪れる、最後の結末。
 これで、もう本当に終わりなんだ。なのはの事を守る事すらも出来ずに――

(なのはちゃん、ごめん……)

 最期に心中で、謝罪の言葉を告げた。
 セフィロスに一度切り裂かれたこの身に、もう一度破壊剣が迫る。
 嗚呼。本当なら、自分はあの時死んでいたのかもしれないな、等と思う。
 そしてもう二度と、メビウスブレスが輝く事は――

「諦めるな! ミライ!」
「――えっ!?」

 メビウスブレスは、もう輝かない。
 されど、メビウスの視界は、光で埋め尽くされていた。
 対するコーカサスも同様に、突然現れた光に動揺する。
 メビウスとコーカサスの間に、光輝く何かが立ち塞がっていた。
 ややあって、光が収まる。全員の視線が、目の前の“光”に集中していた。

「貴方は……!」

 メビウスが、歓喜の声を上げる。
 ウルトラマンメビウスと良く似た頭部。違いは、両サイドから生えた突起。
 ウルトラマンメビウスと良く似た身体。違いは、色。赤ではなく、青の身体。
 心優しい青の光。胸で煌めく輝きは、メビウスと同じタイプのカラータイマー。

「ウルトラマンヒカリ……! 生きていたんですね……天道さん!」

 その場の全員の視線が、ウルトラマンヒカリ――天道と呼ばれた者へと集まった。
 何が起こったのか解らない、されど、嬉しくない訳がない――そんな瞳を向けるのは、高町なのは。
 何が起こったのかは理解できないが、もし生きていたのなら本当につまらない――そんな視線を向けるのは、コーカサスアンデッド。
 その場の全員の視線に気づいたウルトラマンヒカリが、状況を説明するべく言葉を発した。

「ああ。そう簡単に死んでたまるか」
「良かった……本当に良かった! 天道さん!!」

 その声は、間違いなく、天道総司のものであった。
 天道総司の声を発するウルトラマンヒカリが、メビウスへと掌を向ける。
 差し出された青の掌から照射される、何処か優しい、温かな光。
 光はメビウスの身体へと吸い込まれて行き、そのままメビウスの力へと変わる。
 高速で明滅していたカラータイマーが、その点滅速度を下げて行くのが解る。
 ヒカリが、自分のエネルギーをメビウスへと分け与えたのだ。
 流石に全回復まではしないが、それでも無いよりはマシ。
 光の照射が終わった後、ヒカリが説明を開始した。

「カブトが爆発する寸前に、俺はヒカリに救われ――そして、頼まれた」
「頼まれた……?」
「ああ。メビウスと、他の皆の命を頼む、と……だが、そんな事は言われるまでもない」

 言い終わる前に、ヒカリの右腕……ナイトブレスに、鋭角的に反射する光が収束されて行く。
 光の収束が完了する頃には、ナイトブレスから眩く輝く黄金の剣が具現化されていた。
 それを振り抜いて、アスファルトを蹴る。後方のコーカサスへと駆け出す。
 一瞬でコーカサスの眼前まで迫ったヒカリは、一気にその剣を振り下ろした。

「ハイハイ、無駄無駄」
「――っ!?」

 ヒカリの身体が、硬直した。
 コーカサスが突き出した右腕から、高圧の念力が放出されているのだ。
 何度も何度も、その剣を振り抜くが――何度振ろうが、命中はしない。
 退く事すら叶わない身体。ナイトブレードで、何度も宙を切り裂く。
 やがて――

「フンッ!」
「なっ……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 コーカサスが、その腕に力を込めた。
 念力はエネルギー波へと変わり、放出されたエネルギーがヒカリの身体を直撃。
 防御の姿勢すらろくに取れずに、放たれた光線がヒカリの身体を派手に爆ぜさせた。
 勢いそのまま、放出され続けるエネルギーに吹っ飛ばされたヒカリの身体が、後方のビルの壁へと激突。
 どすんっ!と、派手な損壊音を打ち鳴らして、青のボディがコンクリートに亀裂を走らせ、減り込んだ。
 ヒカリの胸に装着されたカラータイマーが、メビウスと同じ様に赤の明滅を開始する。
 今度は確実にトドメを刺してやろうとばかりに、コーカサスがエネルギー弾を発射した。

「ほら、死ねよウルトラマン」
「ぐっ……あぁぁ――」

 何発も、何発も。
 止まる事のない光の弾丸が、休む間もなくヒカリの身体を爆ぜさせる。
 銀の胸板を。青の胴体を。ブレスが装着された腕を。何度も何度も爆発させる。
 その度に、胸部で瞬く赤のカラータイマーが、その明滅速度を上げて行く。
 ヒカリの体力が目に見えて削られ、命が遠ざかって行く。
 だけど、そんな事をさせる訳には行かないのだ。

「やめろ……やめろぉ! うわぁぁあああああああああああああああああ!!!」

 今度は、メビウスの身体が煌めいた。
 放たれるは「∞」に輝く眩き閃光。
 ∞の光が、全員の視界を埋め尽くして行く。
 一拍の間をおいて、その場の全員の視力が回復した時。
 一同の視界の中からメビウスとヒカリの姿が消えていた。
 ――否。消えた訳ではない。

「ん……?」

 最初にその気配を感じ取ったのは、戦闘中のコーカサスであった。
 コーカサスが振り向けば、そこに居るのは最早一人で立つ事すら叶わないヒカリ。
 そして、そんなヒカリをその身体で支えるのは、ウルトラマンメビウス。
 赤と青。二人のウルトラマンが、お互いの身を寄せ合って、アスファルトを踏み締める。
 脚が震えていた。ヒカリも、メビウスも。二人とも、だ。
 もう彼らには殆どのエネルギーが残されてはいない。体力を消耗し過ぎたのだ。

「ミライ君……もうそんな力も残って無い筈なのに……」

 唇を噛み締め、なのはがぽつりと呟いた。
 なのはの見解は正しい。ヒカリの力を分けて貰ったとは言え、メビウスもまた満身創痍。
 今やメビウスのカラータイマーもヒカリのカラータイマーも、ほぼ同じ速度で明滅していた。
 では、何故エネルギーを分け与えられ、回復したばかりのメビウスがヒカリと同じエネルギー残量になっているのか。
 その答えは……エネルギー残量を一気に消費した能力、先程メビウスが使用したワープだ。
 ほんの10メートル程しか跳んではいないが、それでも今のメビウスには精一杯。
 残った力で、ヒカリをコーカサスのエネルギー弾幕から救ったのだ。

「最後まで諦めず、不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ……!」
「面白い……これで本当に最後だ。やるぞ、ミライ」
「はい!」

 二人のウルトラマンが、お互いに頷き合った。
 メビウスブレスに、メビウスの最後の輝きが宿る。
 ナイトブレスの表面を、ヒカリの最後の輝きが走る。
 二人同時に両の腕を上げ――その腕を、十字に交差させた。

「「シュアッ!」」

 二人の声が重なった。
 交差されたメビウスの腕から、激しい金の光線が放たれる
 十字に組んだヒカリの腕から、美しい青の光線が照射される。
 残り僅かな命の光を賭した、二人の最後の必殺技。
 必殺の威力を持った、悪を焼き尽くすスペシウムの光線。
 黄金に輝く光線はメビュームシュート。
 青く煌めく光線はナイトシュート。
 二つの光が一つに合わさり――極大の光となって、コーカサスに迫る。
 これが最後に残った、彼らの想いの全て。
 これが二人の光で生み出せる、最高の輝き。
 持てる力を振り絞った、最後の希望の光。

「ふんっ!」

 対するコーカサスが、オールオーバーを振り上げた。
 破壊剣に光が宿る。どす黒い血の様な。冷たい赤の輝き。
 ウルトラの青と黄金の光を優しい光とするなら、それこそ対照的な光。
 まるで血飛沫を上げる様な輝きを放つオールオーバーを突き出し――

「くっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 メビウスとヒカリの合体光線に、正面からぶつける。
 これで勝敗が決するのだ。お互いに、一歩も引き下がる訳には行かない。
 コーカサスの脚が。二人のウルトラマンの脚が。アスファルトを踏み締める。
 その腕に力を込めて、二人の光線と破壊剣を真っ向からぶつけ合う。
 メビウスが、ヒカリが。残った輝きを絞り出す様に、上体を乗り出した。
 破壊剣と衝突する力が、更に強大な物へと増幅される。

「なんだよ……この力!」

 これが、守る為に戦う者の力。
 これが、希望の光を力に変えて戦う、真の勇者の力。
 その力は絶大であった。されど、奪う為にしか戦えないコーカサスに、その力を理解する事は出来ない。
 今までとは比べ物にならない力。理解の限界を超えた、不可解な力。それを真っ向から受け止め――
 コーカサスの脚が、どすん!と音を立ててアスファルトへとめり込んだ。
 その黄金の巨体が徐々に押される。その剛腕が小刻みに震え始める。
 押しているのだ。二人の輝きが、コーカサスの悪しき輝きを。
 そして――決着は、一瞬であった。

「なんちゃってぇ~!」

 場の緊迫感を一気に崩壊させる様な軽い声。
 まるで先程までの不利な姿は全て演技だとでも言う様に――。
 コーカサスが、その脚を踏み出した。その剣を天へと掲げた。
 同時に、二人が放った金と青の光線が、その軌道を変えた。
 まるで吸い込まれる様に、掲げた破壊剣へと吸収されて行く。

「「なっ……!」」

 これには溜まらず、二人のウルトラマンも度肝を抜かれた。
 残り僅かな命の輝きを賭した攻撃が。最後の希望を掛けた攻撃が。
 みるみる内に、コーカサスの悪しき輝きに吸収されて行くのだ。
 邪悪を砕き、か弱き命を守る為放たれたスペシウムが――奪われて行く。
 振り上げた破壊剣が、吸収したスペシウムの光を自分のエネルギーへと変換する。
 そして。

「ま、ここまでやったのは褒めてやるけど。これで終わり、今度こそ死ねよ」

 破壊剣を、一気に前方へと突き出した。
 刹那、生み出されるエネルギーの奔流は、強大な悪しき波動。
 二人分のスペシウム。アンデッドとしてのエネルギー。
 それらがお互いに増幅し合い、強大な力の奔流となって、メビウスへと駆ける。
 まるで血のような赤黒い光。対象を確実に仕留めんと迫る奔流。
 それが正面から、メビウスの身体に直撃した。

「うわぁぁぁあああああああああああああああああああああああっ――!!?」

 メビウスの胸部が、大爆発を起こした。
 絶叫。断末魔の叫びとは、まさにこの事を言うのだろう。
 されど、メビウスを襲う光の奔流は止みはしない。
 絶叫し続けるメビウスの身体を、容赦なく赤黒い光が襲い続ける。
 メビウスの両の腕が、行き場を失い、我武者羅に宙を引っかいた。
 何度も、何度も。もがき苦しむ様に、何もない空を掴んでは離す。
 されどメビウスの身体を直撃した光は、どんなに苦しもうと、その威力を弱めない。

「うわぁぁぁぁあああああああああ!!! あぁぁぁああああああああああああああああ!!
 あぁぁぁぁっ、うわぁぁぁぁああああああああぁぁあああああああああああああッッッ――!!!」
「ミライっ……! クソッ……!」

 見兼ねたヒカリが、もう一度右腕にナイトブレードを具現化させた。
 それを振り抜き、コーカサスアンデッドに向かって駆け出す。
 この攻撃が届かなくとも構いはしない。メビウスを救う事すら出来れば、それでいい。
 その為にも、ほんの一瞬だけでもコーカサスの注意をさらさなければならない。

「お前は動くなよ」

 されど、ヒカリの思惑通りには行かない。
 最初の一歩を踏み込んだ瞬間に、ヒカリを襲撃したのは光弾。
 コーカサスが、破壊剣を持った右腕はそのまま、左腕を真っ直ぐに突き出したのだ。
 アンデッドの力の結晶たるエネルギー弾が迫り、ヒカリの胸部で爆発。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 突然の攻撃に、ヒカリがその片膝をアスファルトに付ける。
 ヒカリとて、もう余分なエネルギーが残っている訳ではない。
 先程のナイトシュートが失敗に終わった時点で、残ったエネルギーはほんの僅かなのだ。
 そして残り僅かなエネルギー波、限界を超えたダメージによって消失。
 ヒカリの腕に構成されていたナイトブレードが、霧散するように消滅した。
 されど、そうしている間にも、メビウスの悲痛な叫びは止みはしない。
 何も出来ない無力感に打ちひしがれながらも、手を伸ばす。
 この力が届かなくとも、目の前で苦しむ誰かを助けるくらいは、出来る筈だ。
 出来る筈なのに――その腕は宙を掻き、その指は虚空を掴む、だけしか出来ない。
 想いだけでは……それに伴った力が無ければ、何も守る事は出来ないのだ。
 力無く伸ばされた手は、メビウスに届く事は無く。

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!! うわぁぁぁぁぁぁッ!! あ、があぁぁぁぁぁぁあ――ッ!!」

 絶叫。聴くだけでも力が抜けて行くような、一際大きな断末魔。
 コーカサスの放った光が、メビウスの全身を爆ぜさせる。
 全身が爆発を開始し、メビウスの身体中で起こる小さな爆発は、大きな爆発へと変わって行く。
 やがて、爆発がメビウスの身体を包み込み――メビウスの声が途絶えた。
 メビウスの身体が、光の粒子となって消滅したのだ。

「ミライ……」

 先程までメビウスが居たその場には、もう誰も居ない。
 先程まで目の前で苦しんで居たメビウスは、光になって消えた。
 何も残らなくなったアスファルトを、ただ呆然と眺める事しか出来なかった。

「これでわかったろ? お前らじゃ、僕には勝てないのさ」
「キング……貴様……」

 青い拳を握り締め、振り上げる。
 同時に、今までに無い程の高速で明滅するカラータイマー。
 天道総司自身にも、もう解って居る。自分に、奴を殴るだけの力など残って居ない事に。
 振り上げたヒカリの腕は、何処にもぶつけられはしない。
 宙へ向かって振り抜かれる事すら叶わず、青の拳が光になって行く。
 最後にコーカサスを、その銀の瞳で睨み付け――光は、全身に広がった。
 これで本当に、ヒカリに残されたエネルギーも尽きたのだ。
 間もなくして、ヒカリの身体もメビウスと同じように消滅した。


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