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日々の未来(4) ◆gFOqjEuBs6




 クアットロは死んだ。
 心の底から信用する事は出来ない相手であったが、それでも目的は同じだった。
 皆でこのデスゲームから脱出する。そのたった一つの目的の為に、協力した仲間だった。
 アンジールも死んだ。
 最初は突然襲い掛かって来た、得体の知れない襲撃者であった。
 だが、最終的な目的は誰かを守る事。事実、アンジールはその最後の命を賭して、なのはを救った。
 天道総司も死んだ。
 商店街の戦いで出会った、この場に居る中では誰よりも頼れる仮面ライダー。
 なのはと同じ目的を掲げ、全ての命を救って、共に脱出する筈の――掛け替えのない仲間だった。
 ヒビノミライも死んだ。
 まだ出会ったばかりだけど、彼が本当に信用に足る人物である事は、その眼を見ればわかる。
 アンジールと天道の死にその涙を流し、最後の最後まで諦めずに戦い、その命を散らした。

「皆、もう居ない……もう、魔力も残って無い……」

 最早涙も流れはしなかった。
 目の前で皆殺された。自分の持てる魔法も、何一つ通用しなかった。
 竜魂召喚と、その後に続く戦闘で消耗した魔力は凄まじい。
 精神力も尽きかけている今、なのはには絶望しか残ってはいなかった。
 諦めてはならない。それは解って居る筈なのだが――どう考えても、無理だ。
 戦える道具は何一つ無い。魔力も、仲間ももう残ってはいない。

「もう……終わり、なんだね……」

 それは事実だ。
 もうどうしようもない事実なのだ。
 奴には、自分達の持てる全ての策が通用しなかった。
 魔力も碌に残って居ない自分に、最強のカテゴリーキングたるキングを倒せる訳がない。
 その考えが、最後まで諦めずに戦った皆を冒涜する行為だと言うのは、解る。
 だけど、もう何も残ってはいない。手詰まり。どうしうようもないのだ。
 そう思っていたなのはの耳朶を叩いたのは、意外な人物の声であった。

「私は結局……何も守れなかった……」
「本当に……そう……思うか……」
「え……その声……! まさか……!」

 それは、聞き覚えのある人物の声。
 低く、鋭く尖った歴戦の戦士の声であった。
 聞こえる声に振り向けば、そこに居たのは、一人の戦士。
 アスファルトに突き刺さった一振りの刀――爆砕牙を杖代わりに。
 その巨体を持ち上げ、無理矢理立ち上がって居た。

「ア……アンジール、さん……生きていたの!?」

 いいや、生きて居られる筈がない。
 あれだけのダメージを、ほぼ生身で受けたのだ。
 いくらソルジャーと言えど、生きて居られる訳が無いのだ。
 されど、事実として目の前のアンジールは立ち上がって居る。
 それは、不可能を可能にする程のアンジールの執念が成せる業。
 生きたいと、守りたいと願う心が。アンジールの魂を辛うじて現世へと留めているのだ。
 そもそもアンジールの身体は、死亡すれば緑の光と共にライフストリームへと還る。
 身体がそのまま残っていると言う事は、それはまだ辛うじて生きている証明なのだ。
 といっても、異世界を生きるなのはがそれを知らないのは当然なのだが。

「お前には……聞こえないのか……? あいつらの声が……」
「え……? 声……?」

 気付けば、なのはの周囲を無数の光の粒子が漂っていた。
 それは、メビウスとヒカリが光子にまで還元された姿なのだが、なのははそれを知らない。
 だけど、この光が何処か温かい、不思議な光だという事は、なのはにも分かる。
 退屈そうに剣をぶらぶらと振り回すコーカサスをよそに、なのはが顔を上げた。
 同時に、なのはの頭の中に、声が響く。

『眼を逸らしてはいけない。君になら聞こえる筈だ。今はそばに居なくとも、勝利を信じて共に闘う仲間の声が』

 なのはの頭の中に、青い光の巨人のイメージが浮かび上がる。
 それは、先程天道総司が変身して戦った戦士……ウルトラマンヒカリ。
 ヒカリの声が聞こえると言う事は、まだ天道総司は死んでいないと言う事になる。
 だけど、あれだけ派手に負けた天道総司が死んでいないとは、一体どういう事だろう。

『そうだ……君達人間が居てくれるから、我々はどんな強敵とも戦ってこれた』
「私達が……?」
『救って欲しい、俺の仲間を。君達が培ってきたものがあれば、必ず守り抜ける』

 ヒカリが言うが早いか、周囲の粒子が一箇所に集まった。
 それはなのはの腕へと集束されて行き――やがて、青のブレスレットへと変化する。
 かつて、ペンウッドの命を救ったとされる奇跡の光のブレスレット。
 つい先程まで、天道総司と一体化し、共に闘っていた青き輝き――ナイトブレス。
 受け継がれて行く光の絆。それが今、こうして高町なのはの元へと宿ったのだ。
 ナイトブレスを見詰めるなのはの肩を、アンジールが掴んだ。

「立て、なのは……俺達はまだ、誰一人死んではいない」
「アンジールさん……」

 その身を立ち上がらせ、爆砕牙を杖代わりとするアンジールに肩を貸す。
 不思議なものだ。先程までは絶望に打ちひしがれていたのに、今はまるで違う。
 アンジールが生きていた。ヒカリの声を聞いた。
 それだけで、なのはの心に希望の光が再び瞬いた。
 そして今度は、その希望に応える様に、周囲の光が集束され――
 集束された光が、なのはの眼前で人の形を取った。
 服はぼろぼろに裂け、全身血まみれ、痣だらけ。
 ボロボロに傷ついては居るが、間違いない。
 光が形成したのは、見まごう事無き天道総司であった。

「守り抜くんだ……俺達の力で、全ての参加者を」
「天道さん……!」

 天道総司が、力強く頷いた。
 その声を聞いていると、力が湧いてくる。
 これがキングには理解出来ないであろう、人の心の光。
 誰かの命を守りたいと願う限り、無限に湧き上がる力。
 それが、なのはの心に希望と勇気を与えてくれるのだ。

「ああ、ミライも一緒にな。お前になら、聞こえるだろう?」
「アンジールさん……!」

 アンジールが、優しい微笑みを浮かべた。
 そうだ。皆で守り抜くと誓ったではいか。
 誰一人欠かさず、皆で脱出すると誓ったではないか。
 それがなのはが誓った、たった一つの願い。ならば、こんな所で立ち止まってはいられない。
 ただ、守り抜く。たったそれだけの目的を果たす為に、自分達はここまで戦ってきたのだ。
 その為にも、こんな所でミライの命が欠けて良い訳が無かった。

「キュックル~!」
「フリード……!」

 体力を回復したフリードが、その翼でなのはの傍らを飛ぶ。
 なのはの右腕に装着されたナイトブレスを、フリードがつついていた。
 このフリードも、小さな命とは言え、ここまで共に戦ってきた仲間。
 このゲームから脱出する上で、絶対に欠かせない大切な存在なのだ。
 やがて、ナイトブレスが青き光を放つ。
 光と共に聞こえるのは、聞き覚えのある、優しい声。

『なのはちゃん……もう一度力を貸して欲しいんだ! 僕達の、未来を守る為に!』
「その声……ミライ君! ミライ君なの!?」

 それは聞き覚えのある、心優しき男の声。
 皆を守る為に戦い、散ったとばかり思っていた。
 だけど、それは間違いだ。ミライは、散ってなどいない。
 全ての参加者を守り抜くと誓ったミライが、こんな所で朽ちる訳が無かったのだ。
 それを理解すると共に、なのはの意識が暗転した。




 ほんの瞬きの内に、なのはの意識は何処か別の次元に存在していた。
 右も左も、上も下も、見渡す限り360度が黄金の光に包まれた異空間。
 この空間では方向感覚など意味を成さず、自分が立って居るのか寝ているのかすらも解らない。
 ここは何処なのかと考えるよりも先に、視界に入って来たのは、仲間の姿。
 ウルトラマンメビウスとして戦った、ヒビノミライだ。

「ミライ君……どうして!」
「ナイトブレスは、奇跡の力を持つ伝説の超人、ウルトラマンキングから授かったものなんだ」

 なのはが、自分の腕に装着されたナイトブレスへと視線を落とした。
 ウルトラマンヒカリが持つナイトブレスは、ミライの言う通りウルトラマンキングから授かったものだ。
 そもそもウルトラマンキングという存在は、ミライですらも完全には理解し得ぬ存在。
 1から30まで、ありとあらゆる次元に同時に存在し、ありとあらゆる世界で万能を誇る存在。
 宇宙の端から端であろうが、過去の果て、未来の果て……それどころか事なる世界の果てであろうと、一瞬で飛び越える。
 全ての世界、全ての宇宙で起こったあらゆる出来事を同時に把握すると言われる、神にも等しき存在。
 ウルトラマンキングと比べれば、歴戦のウルトラ警備隊員であろうが赤子にも満たない程度の戦力なのだ。
 それ程の圧倒的力量差。その上で全ての世界のウルトラマンの能力を備えた、最強にして万能たるウルトラの神。
 そんな伝説の超人・ウルトラマンキングが直々にヒカリに託したのが、このナイトブレスなのだ。
 そのナイトブレスがどんな不可能を可能にしたとて、不思議な事では無い。

「それに、ヒカリは前に言っていた。来るべき戦いの時、このナイトブレスが必要になると」

 かつてのエンペラ星人との戦いの時だってそうだ。
 どうしようもないピンチを救ったのは、このナイトブレスだった。
 メビウスの光と、ヒカリの光。それから、信頼出来る人間たちの心の光。
 それら全てを一つにつなぎ合わせ、メビウスを無敵の超人へと変えた。
 そして、無限の可能性を秘めたこのナイトブレスを今受け継いだのは、高町なのは。
 今この瞬間、なのはこそがこの戦いに勝利する為のたった一つの可能性となったのだ。
 頭の中に流れ込んでくるナイトブレスの情報。それを理解したなのはが、ミライに向き直る。

「私達にはまだ、出来る事がある……そうだね、ミライ君?」

 なのはの表情には、最早恐怖も絶望も無い。
 絶対に勝てる。絶対に守り抜ける。その確証が、勇気となってなのはの自信を裏打ちする。
 この戦いに勝って、キングを倒す。そして、全ての参加者を守り抜くのだ。
 ヴィヴィオも、スバルも、生き残った他の皆も……全員守って、帰還する。
 その為にも、守り抜く為にも。なのはは戦わなければならないのだ。
 こくりと頷くミライに、なのはがその決意を口にした。

「解った……一緒に行こう!」


 そう叫んだ次の瞬間には、なのはは元の次元へと戻って居た。
 傍らに居るのは、全身傷だらけになったアンジール。全身血まみれの天道総司。
 二人とも、最後の最後まで、自分の持てる全力を出し尽くして戦った本物の戦士だ。
 なのはの上空を飛翔するのは、眼前のコーカサスを睨み付ける飛竜、フリードリヒ。
 彼も、自分の身体がぼろぼろになるまでなのはを守り、戦い抜いてくれた仲間。
 他の二人と同じくらい大切な、掛け替えのない存在なのだ。

「キュクル~!」

 フリードが、空を飛びながら、頷いた。
 なのはもそれに応える様に、力強く頷く。
 最早言葉などは必要ない。ここに居る全員、気持ちは一つだ。
 目の前のキングを倒して、全員で帰還する。
 その為に、全員で一緒に戦おう。

「アンジールさん」

 なのはの声に、アンジールは無言で頷いた。
 その表情に、先程までの様な苦しみは見受けられない。
 アンジールもまた、絶対に勝利出来ると信じているのだ。

「天道さん」

 そしてそれは、天道総司もまた同じ事。
 なのはの声にこくりと頷き、アンジールと同様に微笑みで返す。
 今なら解る。天道総司もまた、自分達と気持ちは同じなのだ。
 ただ、守り抜く為に、もう一度だけ立ち上がる。
 今、自分達は一つに繋がっているのだ。

「行こう……私達、皆で!」

 ナイトブレスには、一本の短剣が装着されている。
 それを一度ナイトブレスから取り外し、もう一度装着する事で、ヒカリへの変身は完了する。
 その動作を、なのはが自分の手で完成させる。
 一度抜き放った短剣を突き刺し――同時に、光を放つナイトブレス。
 装着された短剣が黄金の光を放ち、青き十字の輝きがなのはの腕に煌めいた。
 ナイトブレスが装着された腕を……その掌を地面へと向け、真っ直ぐに突き出す。
 アンジールが、突き出されたなのはの手の甲に、自分の掌を重ねた。
 それに続く様に、天道が二人の手の甲の上に自分の掌を重ねる。

「皆さん……!」

 聞こえる声は、先程まで共に闘った勇敢な男の声。
 手を重ね合わせる三人のすぐ傍で、周囲を舞う光の粒子が収束した。
 全身から眩い光を放ちながら、形成される人影は――ヒビノミライ。
 メビウスブレスが装着された左腕を、三人の手の甲に重ねた。
 ミライの光が、天道へと。天道の光が、アンジールへと。
 そして、アンジールの光がなのはへと。全員の光が、一つに重なる。
 すぐ傍にいたフリードも一緒に――この場の全員の身体が、眩いばかりの光を放ち始めた。

 ――人は誰でも、自分の力で光になる事が出来る――

 かつてとある世界の、超古代のウルトラマンが言った言葉だ。
 暮らす世界は違えども、それは決して揺らぐ事のない不変の事実。
 どんな状況であろうと、諦めない限り……人は誰だって光になれる。
 例え人の心の中に闇があろうとも、信じる事を止めない限り――
 人はウルトラマンの心に応え、共に光になる事が出来るのだ。

 なのは。天道。アンジール。フリード。ミライ。
 五つの魂が共に共鳴し合い、一つの光を作りだす。
 五人を包む眩き光は、やがて「∞」の形を形成した。
 気持ちを一つに。合わせた掌を、全員で天へと掲げ――叫んだ。

「「「「メビウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥス!!!」」」」




 眩い光が、周囲の闇を振り払った。
 アンデッドであるコーカサスの視力ですらも直視出来ない程の光。
 流石のキングですらも、こんな状況には全くもって心当たりがない。
 あの携帯サイトで参加者全員分の情報を得たとて、ここまでの事は知り得なかった。
 故に、何が起こったのか理解出来ないキングは、ただ黙って∞の光を凝視する事しか出来なかったのだ。
 やがて周囲の光が収まり、視界が回復して行く。周囲が再び、夜の闇を取り戻して行く。
 コーカサスの視界に入ったのは、爆炎。燃え上がる灼熱の炎。
 爆炎は一人の人間の形を形成し、次いで輝きを放つ、黄金の光。

「ん……?」

 爆炎と黄金の輝きが一人のウルトラマンの形を形成した。
 その姿は、そのシルエットは、まごうことなきウルトラマンメビウスのもの。
 だが、今までとは決定的に違う。
 まずはその体色。今までのメビウスは、銀を基調に赤のボディカラー。
 それに反して、今のメビウスは赤だけでは無いく、青の炎が渦巻いているように見える。
 さながら赤の炎と青の炎が、ない交ぜになって燃えあがっている様にも見えた。
 赤と青の勇気の炎を縁どる様に、全身に走った黄金のライン。
 黄金がメビウスの全身に不死鳥の翼を象り、それを彩るように赤と青の炎が燃え盛る。
 左の拳と右の拳をぶつけ合わせ、両腕に装着されたブレスを輝かせた。
 左腕。燃え上がる太陽の炎を象徴する、黄金の光のメビウスブレス。
 右腕。静かな夜の、優しい月光を象徴する、白銀の光のナイトブレス。
 やがて両腕を一気に振り払い、コーカサスに対し、構えを取った。

「ハッ、何が起こるのかと思ったら、結局ただのウルトラマンかよ!」

 拍子抜けだ。
 少しでも警戒をした自分がバカバカしく思えて来る、とばかりに込み上げる嘲笑。
 メビウスにしろヒカリにしろ、どんなに手を尽くしても自分には勝てないというのに。
 今の二人との戦いで、自分はウルトラマンという存在のレベルを知った。
 ましてや片方は最強の仮面ライダーを自負していた男が変身したウルトラマン。
 ウルトラ警備隊の一人と、最強の仮面ライダーが手を組んでも自分一人倒せなかったのだ。
 それを、今更四人と一匹で力を合わせて一人のウルトラマンになったところで、勝ち目があるとは思えない。
 ならばひと思いに、この一撃で終わらせてやるのが情け。
 逆にいえば、この一撃を耐えられない時点で、あいつらはもう駄目だ。
 アスファルトを踏み締め、全てを両断する必殺の破壊剣を高らかに振り上げる。
 瞬間、迸る血の様などす黒い光が破壊剣を彩った。
 ばちばちと音を立てて、破壊剣が軋みを上げる。
 どす黒く、冷たい光が、みるみる内に増幅して行く。
 先程メビウスを破壊した時と同じ輝きだった。

「はぁっ!」

 それを一気に突き出し、自ら生み出した壮絶なる闇の波動を発射。
 どす黒い闇にも似た光。全てを飲み込む闇の奔流。
 巻き起こる衝撃波。周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、真っ直ぐにメビウスへと加速。
 やがて、闇の波動はメビウスの胸部で爆ぜた。
 刹那、大爆発――したかに見えた。

「えっ」

 否。爆発したのは、メビウスの身体では無かった。
 それどころか、メビウスは指一本動かしてはいない。
 今し方自分が放った“波動”が、メビウスの身体に命中した瞬間に、爆発したのだ。
 それだけではない。爆発は波動を伝わって、破壊剣を握るコーカサスへと押し戻されて行く。
 メビウスが自分の力を上乗せして、コーカサスの波動をそのまま押し返しているのだ。

「なにそれこわ――うわっ!?」

 冗談を言うまでもなく、破壊剣にまで爆破が到達した。
 どんな鉄壁であろうと容易く両断する筈の、最強の破壊剣に――亀裂が走った。
 それ即ち、最強を名乗る筈のオールオーバーに齎された、敗北。
 それを認識するだけの時間を与えられずに、オールオーバーは粉々に粉砕。
 コーカサスの腕を派手に爆発させて、破壊剣が爆発四散した。

「まだ解らないのか! キング!」

 赤と青のウルトラマンが言葉を発した。
 この声には聞き覚えがある。聞き間違えようのない、あの愚か者の声。
 自分の身を犠牲にし、他者の為に闘う、あの愚かな青年――ヒビノミライの声だ。
 例え赤と青の爆炎に身を包もうと、外見がメビウスなのだから当然かと納得。
 今自分が闘っている相手は、あのヒビノミライを主人格とするウルトラマンなのだろう。
 痛む右腕を抑え、メビウスを凝視するコーカサス。
 目の前のメビウスが、一歩踏み出し、叫んだ。

「今の僕は、もう一人じゃない!」

 同時に、気配を感じた。
 現在の主人格たるヒビノミライの気配。
 そして、その後方にずらりと並んだ、他の連中の気配。
 高町なのは。天道総司。アンジール・ヒューレー。フリードリヒ。
 その全員が、本当の意味で一つの光となった姿が、目の前のウルトラマン。
 二つのウルトラの光と、それを信じる人間達の心の光。
 それらが合わさり、究極の光の姿となって君臨した。
 ウルトラマンメビウス――メビウス・フェニックスブレイブ。
 不死鳥の勇者の名を冠する、究極のウルトラマンの姿。

「はっ……だから何だって言うのさ! 四人掛かりで僕に勝てなかったお前らが……!」

 もう盾も剣も、回復するまでの間は形成出来ない。
 だけど、その剛腕は全てを破壊出来るだけの力を持っている。
 どんな重量のものでも軽々と持ち上げ、どんな鉄壁をも破壊する拳がコーカサスにはある。
 こんなところで、こんな下らない慣れ合い厨に負ける事などあってはならないのだ。
 拳を振り上げて、コーカサスがアスファルトを蹴った。加速を付けて、一気にメビウスに肉薄。
 そして、力一杯振り抜かれる一撃――右のストレートパンチ。
 同時に、メビウスもその右腕を振り抜いた。

「フンッ!」
「グ……ァ……ッ!?」

 クロスカウンター。
 お互いの拳が、お互いの顔面へと――届いては居なかった。
 コーカサスの拳だけが、メビウスには届かなかったのだ。
 一方で、コーカサスの顔面を抉ったのは、燃え上がる爆炎を宿らせた赤の拳。
 めきめきと音を立て、仮面を砕いたその刹那。
 拳から放出されるは黄金の輝きと、灼熱の炎。
 一瞬の出来事に、視界を失うコーカサス。

「ハァッ!」

 今度は、メビウスの攻撃だった。
 不死鳥の炎と輝きを撒き散らしながら放たれる前蹴り。
 しかし最強のアンデッドの一角たるコーカサスも、只で攻撃を食らいはしない。
 ほぼ反射的に、左腕に装着されたソリッドシールドの本体を突き出した。
 どんな攻撃をも完全に無効化する、最強にして最硬を自負する自慢の盾。
 されど、その程度で灼熱の不死鳥となったメビウスを止める事は出来ない。

「なっ……!」

 盾を打ち砕いたのは、突き出されたメビウスのキック。
 眩いばかりの光と、灼熱の爆炎を撒き散らしながら、コーカサスの盾を粉々に粉砕したのだ。
 塵となって砕けた盾の破片は、勇気の炎に焼き尽くされて、光の粒子にまで還元されてゆく。
 勢いそのまま、今度はもう一方の脚を振り抜いた。
 メビウスによる、回し蹴り。その強烈な一撃が、コーカサスの腹部に直撃した。

「が――はっ……!」

 溢れ出すのは、緑の血液。
 夥しい量の液体が、黄金の仮面の下から吐き出された。
 気付けば、重厚な装甲に覆われている筈のコーカサスの身体は、くの字に折れ曲がった。
 腹部の装甲が眩い光を放出しながら、粉々に砕かれて行く。次いで、光へと還って行く。
 当然、それだけではメビウスのキックの衝撃を殺しきれはしない。
 キックに耐えられなかったコーカサスの身体は、後方へと一気に吹っ飛んだ。
 どごぉんっ! と、大きな音を立てて、コーカサスの背中が後方の雑居ビルの壁を突き破った。
 後方のコンクリートの壁を幾つも突き破って、ようやくコーカサスがアスファルトに崩れ落ちる。

「……クソッ! 僕が、負けるだと!? そんな、馬鹿な! 僕は――僕は!!」

 僕は、最強のカテゴリーキング。
 僕は、全てを滅茶苦茶に破壊する最強の存在。
 僕は、誰にも負けない絶対的な強者である筈。
 そんなキングの常識が、覆されて行く。そんな事は、絶対に認められない。
 認めてなるものか。こんな不条理な力を、認める訳には行かないのだ。
 アスファルトを殴りつけて、その身を奮い立たせる。
 最早腹部の痛みなども忘れて、激情のままに駆け出した。


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