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日々の未来(6) ◆gFOqjEuBs6




 冷たい風が、頬をくすぐる。
 高町なのはは、己の身を抱きよせるようにしながら、目を覚ました。
 殺し合いの会場とは言え、夜の気温は薄着で眠るには少し肌寒い。
 結果として、熟睡に至る前に高町なのはを目覚めさせたのは、夜の風だった。

「ここは……?」

 周囲は、見渡す限り瓦礫の山であった。
 原形を留めた建造物など、この場所を中心に直径1キロは存在しないように思えた。
 何もかもが壊された廃墟の山。街に降り積もる煤けた灰。
 そのどれもが、先刻までの戦闘の激しさを物語っている。

「キングは……皆は……!?」

 そうだ。全てを思い出した。
 自分はつい先刻まで、仲間達と共に戦っていたのだ。
 共に一つの光となって、悪の権化たるキングと戦っていたのだ。
 未だ靄が掛ったような思考を振り切って、全ての記憶を取り戻してゆく。 
 まずは仲間達の安否。これは最優先で考えなければならない。
 ヒビノ・ミライ、天道総司、アンジール・ヒューレー。
 出会ったばかりとは言え、掛け替えの無い仲間だ。
 その姿を求めて、周囲の瓦礫をもう一度見渡す。

「天道さん……!」

 やがて見付けたのは、一人の仲間。
 瓦礫の影に横たわっていた仲間の元へと駆けより、その身を起こす。
 脈は正常。顔色は悪いが、瓦礫によるダメージも見受けられない。
 それは偶然か、まるで天道を避ける様に瓦礫が散乱していたからだ。
 この分ならば大丈夫だろう。最初に出会った頃と比べれば、幾分かマシだ。
 次に、あとの二人の仲間の捜索を開始。
 程なくして、天道と同じ様に横たわるアンジールを発見した。

「アンジールさん……!」

 即座に駆け寄り、その安否を確認する。
 アンジールの戦いは、天道やミライのそれとは決定的に違う。
 カブトやメビウスに変身した彼らと違って、アンジールは生身で戦っていたという事。
 それ故に肉体へのダメージも大きかったらしく、やはり天道よりは重症に見えた。
 全身を血で汚したその身体を何とか起きあがらせ、脈を取る。

「まだ生きてる……早く手当をしないと……!」

 ボロボロに痛めつけられてはいるものの、まだその命は燃え尽きてはいない。
 早く何処かへ運んで治療すれば、助かる可能性は十分にある。
 だが、現状では傷ついた二人を連れて移動する手段がない。
 まずは天道とアンジールの二人に治癒魔法を行使し、最低でも歩けるようにならなければならない。
 天道が回復すれば、二人で協力してアンジールを治療出来る施設まで運べばいい。
 ……と、そこまで考えて、なのはは一つの事実に気付いた。

「ミライ君が……居ない?」

 そう。何処を探しても、ミライの姿が無いのだ。
 先程までここに居た仲間達の中で、ミライだけが居ないのだ。
 否。ミライだけではない。この場から、ミライと共に消えて無くなった男が居る。
 先程まで自分達を散々に苦しめ、最期の最期まで減らず口を叩き続けた男。
 スペードのカテゴリーキング……名前は、キング。

「そうだ……あの時……」

 そして、全てを思い出した。
 メビュームフェニックスとなって、キングを飲み込んだ直後。
 あの灼熱の炎の中で、何があったのかを――。




 これ以上、キングに無駄な殺戮をさせない。これ以上、誰も悲しませない。
 その為にも、揺るがぬ悪……怪人キングを、この世界から完全に消し去る。
 絶対に死なず、消滅もしない不死生物。その法則を無視し、不死生物を消滅させるというのだ。
 簡単な事では無い。それこそ、あらゆる物理法則を無視出来るだけの力がないと不可能だ。
 そして、それを成す為の力が、不死鳥の勇者――メビュームフェニックス。

 燃え盛る炎となったメビウスが、キングを飲み込んだ。
 周囲の建物を焼き尽くし、崩壊させてゆく。まさに、圧倒的灼熱。
 と言っても、それくらいは出来て当然。これは光となった者達の、魂を燃やした攻撃なのだ。
 自分の命と魂の炎を燃やし尽くして、悪を焼き尽くす――。
 その衝撃が、生半可なものである訳がない。

 しかしながら、キングもさるもの。
 本来ならば不死であるが故に、その執念も相当のものであった。
 炎の不死鳥となったメビウスがキングの身体に組み付き、その炎で焼き尽くさんと迫る。
 黄金の装甲は全て煤と消えた。剥き出しにされた、鈍くくすんだ黒金の筋肉。
 こうなったキングは最早、裸の王様も同然だ。
 しかし、それでも王は王。

「無駄だよ! 僕は死なないって言ってるだろ!」
「それでも、お前をこのまま野放しには出来ない!」

 自分の命と引き換えに、魂の炎を燃やす。
 ミライの絶叫と共に、メビウスの身を包む不死鳥の炎が更に熱く燃え上った。
 よもやキングも、不死である自分を消滅させようとしているなどと思いもよらぬ事だろう。
 だからこそ、キングにはここまでして自分を苦しめようとするミライ達が理解出来ずにいた。

「なんだよ、死なないって言ってるのにさ……!
 結局お前たちも僕を苦しめたいだけなんじゃないか!
 何が正義の味方だよ、この偽善者共が……!」
「それでも善だ……! お前を倒せるなら、今は偽善者だろうが構わない!」

 メビウスの炎の中で、アンジールが絶叫した。
 キングには、クアットロを殺された。愛する者の命を、まるで玩具を壊すかのように奪われた。
 家族を奪われたという辛い事実が、アンジールにこの上ない程の愛憎を抱かせる。
 だけど、今はもうそれだけでは無い。それだけで済むレベルの話では無くなって居るのだ。
 こいつを逃がせば、これからも大勢の命が弄ばれるに決まっている。
 二度とクアットロの様な犠牲を出さない為にも、こいつだけは倒さなければならないのだ。
 その為ならば、例え偽善者だなどと罵られようが構う事は無い。

「倒す? 無理だって! 勝機が無いって分かってるのに!?」
「例え勝機は無くとも、希望はある!」
「そうだ! 希望がある限り、俺達は諦めない!」
「そして諦めない限り、僕達の可能性は無限大なんだ!」

 信じる心が、不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ。
 例え本来ならば不可能であったとしても、希望がある限り絶対に諦めはしない。
 諦めない限り、ウルトラマンと、ウルトラマンが信じた人間の可能性は、無限大。
 ミライの絶叫と共に、不死鳥の炎がキングの身を焼き焦がして行く。
 キングの身体が、少しずつ粒子と消えて行く光景。

「お前ら……まさか!? そんな、ありえない! だって、僕はアンデッド――」
「これが私達の……人間とウルトラマンの、心の光の力なんだよ、キング……!」
「あり得ない! 不可能なのに……! こんな力……お前たちこそ化け物じゃないか!」
「違う――!!」

 絶叫される、圧倒的な否定。 
 この力は、化け物の力などではない。
 ただ奪う為に振るわれる、暴力的な力などと同じであってはならない。
 これは、人の心の光が重なって生まれた新たな力。
 そして、その使い方は――

「――未来を切り拓く力だっ!!」

 いつの日か、人間がウルトラマンと肩を並べて宇宙を飛べる日が来るまで。
 そんな未来が訪れるまで、ウルトラマンは人間達の心の光を信じ続ける。
 その為にも、こんな所で散っていい筈の無い命を、守り抜く為の力。
 信じた皆が一緒に居てくれる。だから輝くこの力。だから燃やせるこの命。
 最早この力に、不可能などあり得ない。

「あぁそっか……もういいよ! もうつまんなくなっちゃった!
 そんなに僕を消したいなら、お望み通り消えてあげるよ!」

 緑の血液を吐き出しながら、キングが嘯く。
 その声には、再び喜色が込められていた。
 まるで、新しい興味を見付けた子供の様に。

「でも、僕一人では死なない! お前らの心も連れて行く!」

 高らかに宣言し、キングがメビウスの肩に掴み掛った。
 最早、キングに残された力は残り少ない。
 装甲も武器も全て消失した今、戦力となり得るのはこの身体一つ。
 それでも、メビウスの身体に組み付いて、最期の足掻きを見せる。
 キングの身体から、アンデッドとしてのエネルギーが溢れ出した。

「お前が守りたかった人間たち、皆僕と一緒に逝っちゃえよ!」

 メビウスとなって戦う四人と一匹の間に奔る、緊迫。
 コイツはもう、生への執着を捨てている。
 元々“命を大切にする”など考えもしない男だったのだ。
 自分の命がここで消えると知った所で、それ程の執着はない。
 ただし、悪質な事に自分一人で死ぬつもりもないらしい。

「私達全員で生きて帰るって約束したんだ……! こんな所で――」
「無理無理! 僕だって命がけなんだ、お前らだけ生き残れると思うなよ!」
「そんな事は……させない! 皆の命は、僕が守る!」

 刹那、メビウスの中で、三人は感じた。
 自分達の意識が、徐々にミライから離れて行く事に。
 そして気付く。ミライが今、何をしようとしているのかに。

「総司さん。アンジールさん。なのはちゃん。フリード。
 ここまで僕と一緒に戦ってくれて……本当にありがとうございます!
 皆さんが居てくれるなら……僕はもう、何も怖くありません」
「やめろ、ミライ! 今際の言葉など聞きたくない……!」

 天道が、メビウスの光の中で手を伸ばした。
 だけど、その手は何も掴めず、ただ空を掴むのみ。
 次第にミライの光から、後の全員の意識が遠のいていくのが、自分達にも分かる。
 だけど、ここで意識を手放せば、掛け替えの無い者を失ってしまう。
 それが分かっているから、少しでも抵抗しようとする。

「本当に、ありがとうございます……皆さん!」

 されど、それ以上の抵抗は無意味であった。
 刹那、メビウスの身体から炎とも光ともつかない弾丸が飛び出した。
 メビウスの身体から強制的に射出されたその光は、メビウスの後方へと撃ち出された。
 それらは、キングの視界の奥でそれぞれの形を取り、三人の人と、一匹の竜の形を形成。
 全員で一緒に不死鳥となって、キングを倒す。
 その為に心を重ねたのに……今、彼らの心はもう一度離れ離れになった。
 それが何を意味するか。そんな事は、キングにもすぐに理解出来た。

「お前まさか……たった一人で死ぬ気で……!」
「これは“死”じゃない! 皆の命を……! 皆の未来を守る為の……!!」

 少しずつ、少しずつ。炎とメビウスが一つになって行く。
 何処までがメビウスで、何処からが炎なのか。その境界が揺らいでいく。
 それはまさしく、メビウスの身体が炎の中へと溶けて行く様に。
 やがて形を失い、黄金の光と灼熱の炎の境界が完全に消失。
 同時に、爆発的な灼熱がメビウスを起点に発生する。
 黄金の輝きを含んだ炎は、一気にキングの身を焼き尽くさんと燃え盛る。
 同時に、周囲のあらゆる建造物を巻き込んで、何もかもを灰に変えて行く。
 されど、守ると誓った仲間達には、瓦礫の一つたりともぶつけはしない。
 意識を失い横たわる仲間達へと迫る瓦礫や火の粉を、メビウスの輝きが振り払う。
 最期に残った力で、キングを焼き尽くし、仲間達を守り抜く。
 無限大の可能性を、未来へとつなげる為に。

「やめろよ……お前、何処まで面白くない奴なんだよ……! なんで、こんな事……!」
「僕達ウルトラマンは、これからもずっと人間と共に歩んで行くと決めたんだ!
 その為にも! 人間と共に歩んで行く未来の為にも! ここで皆をやらせる訳には行かないんだ!」

 これからもずっと……ウルトラマンは、人間と共にある。
 例え人間の心の中から闇が消えないとしても、その心には確かな光がある。
 心の中に、光と闇を両方抱いて、それでも走り続けるのが人間だ。
 どんな矛盾を孕もうが、そこに存在し続ける。生きる意志を持って、未来を目指す限り。
 そして生きている限り、彼らが信じた人間たちの心の光は無限の可能性を持っている。
 そんな無限の未来を守り抜く為にも、大切な仲間達をここで死なせる訳には行かないのだ。

 その為なら、自分が犠牲になろうと構いはしない。
 ここで出会った大切な仲間達が、ミライの意思を継いでくれる。
 どんな困難であろうと、こんな殺し合いをブチ壊して、皆で脱出してくれる。
 そうしたら、彼らはきっと、もっと多くの命を守る為に戦ってくれる事だろう。
 だから、ここで命を燃やし尽くす事に、何の躊躇いも感じない。
 今度こそ本当に――もう何も怖くは無かった。




 不死生物は、絶対に死なない。
 絶対に消滅する事も無いし、絶対に壊れる事も無い。
 確か、自分達はそんな命を与えられていた筈なのに――。

(あれ……僕は……)

 最早キングの身を守るものは何もない。
 最高の盾も、最強の剣も。黄金の鎧も、鋼鉄の仮面も。
 それだけじゃない。今はもう、この身体すらここには無い様に感じる。
 もう自分には、何も残されてはいない。何もかもが無くなった。
 圧倒的な虚無感が、キングの心を覆っていく。
 が、それは一瞬。すぐにキングの心を、黄金の光が照らして行く。

(嗚呼、なんだよこれ……綺麗だなぁ)

 最早、何処から何処までが自分の意識なのかも分からない。
 黄金の光と灼熱の炎に包まれて、キングの意識も溶けて行く。
 走馬灯の様に流れ込んでくるのは、アンデッドとしての一万年の記憶。
 それから、数万年をウルトラマンとして生きて、大切な事を地球で学んだ男の記憶。
 何もかもの境界が無くなって、一つに溶けて行く姿は、見た事も無い程に美しかった。
 最期にこんな綺麗な光景が見えるなら、これはこれで良かったのかな、なんて柄にもない事を考えてみる。

 もう自分は、カードに封印される事は無い。
 無限に続く牢獄の様な苦痛を、もう感じなくてもいいのだ。
 何故なら自分は、ここでメビウスの光と共に虚無へと還るのだから。
 やがて自分で何かを考える事も無くなって行く。
 意識が溶けて、少しずつ消失して行くのだ。
 そして間もなく、完全に消えて無くなる。

 黄金の光と灼熱の炎が完全に消える頃には――。












【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード   消滅】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは  消滅】















「ありがとう」

 ここに、感謝の言葉と共に、決別を告げた少女が一人。
 瞳に涙を浮かべて、心と身体に傷を負って。それでも、立ち上がる。
 未来を守る為に戦い、無限の光の中で散った男を、なのはは忘れない。
 例えどんな苦しい戦い経ても、どれだけの時間が経っても。
 嗚呼、例え悠久の時が流れようと、絶対に――彼の名前を忘れてはならないのだ。
 自分達を生かす為に犠牲になった男の名前を、まだ若い心に刻みつけて。
 これから無限に続いていく日々の未来を、なのはは生き抜いていく。



【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.天道とアンジールを回復させる。
 2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
 3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※金居を警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】無し
【道具】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.……(気絶中)
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました


【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:……。
 1.……(気絶中)
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。



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アンジール・ヒューレー
高町なのは(StS)
天道総司
クアットロ
ヒビノ・ミライ
キング







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