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Round ZERO~AMBITION SECRET(前編) ◆HlLdWe.oBM




「ちょっといいかしら、ウーノ」
「どうぞ」
「生き残りがE-5の魔法陣に向かっているようだけど、放っておいていいの?」
「ああ、それね……ふふふ……」
「?」
「気にする必要はないわ、だって――」


     ▼     ▼     ▼


「……ん、あ」

顔面に浴びせられる灼熱のような熱気でスバルは目を覚ましていた。
まだ朦朧とする意識を無理やり起こして目を開けると、炎に蹂躙されるアスファルトとコンクリートの瓦礫が見えた。
それらは辺り一面に無秩序に転がり、次いで焼け焦げた匂いが鼻の奥を刺激する。
目の前に広がるのは瓦礫と炎が作り出した地獄のような光景。
だがこんな光景を以前にもどこかで見た覚えがある。

(あ、そうだ。あの時だ……)

大規模な火災が起きた4年前のミッドチルダ北部臨海第8空港と似ているのだ。
あの頃のスバルはまだ幼かった。
そして弱くて泣き虫で、悲しい事や辛い事にいつも蹲って、ただ泣く事しかできなかった。
あの時も姉のギンガと逸れてしまって、途方に暮れて一人で燃え盛る空港を彷徨っていた。
そして時間が経つにつれて周囲の炎の勢いはさらに増していき、とうとう一歩も動けなくなってしまった。
絶望に押し潰されそうになった身ではただ蹲って助けを求めるしかできなかった。
その瞬間、スバルの近くにあった天使像が台座の崩壊をきっかけに倒れてきた。
その天使像は優にビル三階分の高さはあり、もう気付いた時には逃げる事など不可能だった。
もっとも、もう少し早く気づいていたとしても恐怖に怯えきった身体では無事に逃げられたかどうか定かではない。
目の前に迫り来る巨大な天使像はまるで天から下された最後の審判のように思えた。
少なくともあの瞬間自分はここで死んでしまうんだと本気で思った。

だがスバルは生きている――純白の衣に身を包み光の羽を纏った憧れの恩師『高町なのは』の活躍で。

(あの時は、助けられるだけだったな……)

自分を助けに来てくれた高町なのはという魔導師は強くて優しくてカッコよくて。
その雄姿と、広い夜空と、冷たい風の優しさと抱きしめてくれた腕の温かさは、今でも昨日の事のように鮮明に思い出せる。
だからその時は泣いてばかりで何もできなかった自分がひどく情けなかった。

それからだ――『スバル・ナカジマ』が魔導師を目指したのは。

(もうあたしは『誰かに助けられる』側じゃない! 今のあたしは『誰かを助ける』側だ!)

あの時スバルは生まれて初めて心から思った。
泣いているだけなのも、何もできないのも、もう嫌だと。
だから強くなるんだと。
そのために今までその一心で努力してきた。
この腕は立ち塞がる障害を突破するため。
この足は少しでも早く救助に向かうため。

(そうだ、こんなところであたしは寝ている場合じゃ……………………え?)

この時になってようやくスバルは自分の置かれている状態がどのようなものか理解させられた。
唯一自由に動く首を回して背後を振り返ってみれば、頭部と左腕付近以外は瓦礫の下敷き。
機械の身体を持つ戦闘機人でなかったら即死だったかもしれない。
普段はあまり良くは思っていなかったが、この時ばかりは機械で強化された身体がありがたく思えた。
だが頭部と左腕にしても無事とは言い難く、特に頭部は額を切ったせいか出血で視界が若干赤く滲んでいる。


だがそのような怪我など“両足が瓦礫で跡形もなく潰されている”事に比べたら一瞬で霞んでしまう。


「うそ……そ、そんな……ッ、アアアァァァアアアアア!!!!!」

両足の喪失。
それは当然これから走る事はおろか歩く事さえ、いやそれ以前に大地に立つ事もできない事を意味する。
まだ完全にそうなると決まったわけではないが、今の状況を考えたらそんな希望は気休めにしかならない。

「……ぁ……ぇ」

スバルは両足の痛みも忘れて、ただ呆然としていた。
もうこの足では誰かを助ける事など出来るはずがない。
『誰かを助ける』側ではなく『誰かに助けてもらう』側になってしまった。
これではまるであの頃に逆戻りだ。
何もできずに自分の無力さを思い知ったあの頃に。

(……こ、こんな事って……あんまりだ)

だが、あの時と同じようにスバルにはまだ危機が迫っていた。

「……ぇ?」

その瞬間、火災で脆くなった瓦礫が崩壊して破片がスバルの頭上に落下してきた。
破片と言っても人の頭ほどの大きさで且つ高所からの落下物だ。
いくらスバルが戦闘機人の身体だったところで今の状態では死を免れない。
少し前までのスバルならこれくらいの危機など脱する事ができたはずだ。
だが両足を失って夢を断たれた今のスバルには抗う気力がなかった。
ボーナス支給品の蒼天の書も他の道具と一緒に瓦礫の下敷きでこの状況では使い道がなかった。

(みんな……ごめん……)

デスゲームで死んでいった者とまだ生きている仲間の事を思いながらスバルは死を覚悟した。
だがいつまで経っても予想していた衝撃は来なかった。
それは誰かが落下してくる瓦礫を破壊してくれたおかげだと気付いたのはすぐだった。

「え?」

それはまるであの時の再現。
赤く滲む視界の向こうには誰かが手に持った何かをこちらに向けて立っていた。
紅く揺らめく炎の中に立つその姿はまるで光のように輝いていた。

「なのはさ――」
「皮肉だな。姉妹揃って同じ相手に殺されるとは」


     ▼     ▼     ▼


昇りかけの太陽に照らされた荒廃した大地。
その地の名は『E-5』。
このデスゲームの会場の中心に位置するビル密集地であり、その中央には時空管理局地上本部がひときわ高く聳え立っていた。
少々離れた場所からでも見上げる事ができたその姿は本部の名に相応しく立派に威容を誇っていた。

だがそれも今となっては過去の話だ。

セフィロス、アーカード、キース・レッド、アレックス、天上院明日香、八神はやて。
人外の域に達する力を備えた者同士が幾度となく激戦を繰り広げたおかげで、E-5にあった建造物はことごとく崩壊してしまった。
その結果、現在この地は以前とは打って変わって殺風景な瓦礫の野原と化していた。
まだこの地が無事だった頃を知る者からすれば、あまりの変わり様に思わず目を疑った事だろう。

しかし残念ながらE-5の手前に降り立った5人の参加者はいずれも初めてこの地を訪れた者ばかり。
それゆえにそこまでの驚きが湧いてくる事はなかった。

高町なのは、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、スバル・ナカジマ、天道総司。
さまざまな苦難を乗り越えて、5人の参加者は一堂に集い、今こうして一つの目的のために動き出していた。
この血塗られたデスゲームから抜け出し、元の世界へと帰還する事。
それこそが5人の目的であり、目指すべきゴールだ。
そのためにはE-5にある転移魔法陣が重要な鍵である可能性が高い。
だから駅での話し合いの末にE-5へ向かったのだが、目的地の上空に達したところで厄介な問題が判明した。

その件の魔法陣がどこにあるのか見当が付かないのだ。

ユーノははやてとの情報をやり取りした際に『E-5には参加者を転移させる魔法陣がある』と聞いていた。
だがそれが具体的にどこにあるのかは聞きそびれてしまっていた。
後から詳しく聞こうと思っていたのだが、不運にも直後になのは達が合流して先程の騒動に巻き込まれた。
そして真相を知るはやては何も伝えないまま死んでしまい、唯一の情報源は消えてしまった。
なのは、天道、ヴィヴィオは魔法陣の存在を駅で合流した時に初めて知ったので詳しい場所など知っているはずなかった。
一方でスバルはデュエルアカデミアではやてが『月村すずかの友人』の名で送信したメールにて魔法陣の場所を知っているはずだった。
だがその結果は駅での話し合いで何も言わなかった事が全てを物語っている。
かがみの襲撃に始まり衝撃的な事がありすぎたせいでメールの事などスバルの脳内から忘却の彼方に追いやられてしまっていた。

つまり誰も魔法陣の正確な所在を知らない事になる。
しかし最終的に4分の1の参加者が知っていたのに、駅で集合した際にユーノ以外誰も魔法陣の存在を知らなかったのは不運としか言いようがなかった。
それでも不安を残したままE-5に向かったのは、E-5に行けば何かしらの手がかりがあると踏んだからだ。
まさかエリア1つ完膚なきまでに崩壊しているとは思っていなかった。

「とりあえず一旦小休止も兼ねて、今後の対策を練ろう」

フリードに乗って上空からE-5の惨状を目の当たりにしたユーノはそう提案せざるを得なかった。
残りの4人もその意見には賛成だった。
このまま済し崩し的に捜索を開始してもいいが、やはり大まかにでもどうするか決めておいた方が無難だ。

「そうだ。なのは、今の内に回復魔法掛けるよ。5分ぐらいで終わらせるから」
「うん、ありがとうユーノ君。じゃあバリアジャケットは解除しておくね」

着地するや早々に開口一番ユーノはなのはに回復魔法を申し出ていた。
再び出立するまでの間に出来るだけコンディションを良くしておきたい。
そんな配慮を感じ取ったなのはも喜んでユーノの申し出を受け入れ、すぐに懐かしい緑の回復魔法の光が優しくその身を包み始めた。
そして少しでも魔力消費を抑えようと思ってバリアジャケットの解除に入った。

だがなのははある事実を忘れていた。

『マスター! 待って下さい、今マスターの服装は――』

その事実に気付いたレイジングハートが制止の声を上げたが、既に遅かった。
淡い光と共にバリアジャケットが消えたなのはの姿は実に扇情的なものだった。
先程のはやてとの激戦でなのはが着ていた着物は多大な被害を受けてボロボロの状態という有様。
辛うじて下着こそ無事だが、逆にボロボロになった着物から覗く下着は独特の色気を醸し出していた。

「――きゃっ!?」

一瞬遅れて自らの状態を認識したなのははエース魔導師には可愛すぎる悲鳴と共にバリアジャケットを解除した事を激しく後悔した。
ハッと気づいて皆の方を見ると、スバルとヴィヴィオは困惑した表情を浮かべて立ち尽くしていた。
一方で天道とユーノの男性陣は紳士的にも明後日の方を向いてくれていた。
だが一瞬でも恥ずかしい姿を見られた事については疑う余地はないだろう。
さすがにこのままは不味いと思って何か変わりの服はないかとデイパックを漁ってみるが、そんな都合よく替えの衣服はなかった。
一応かがみが着ていたホテル従業員の制服があったが、血や土で盛大に汚れていたので使えそうもなかった。

「えっと、この際タオルでもいいから誰か身体隠す物持っていたりしない?」
「それならこれを着ろ」

ダメ元で聞いてみると、後ろを向いたまま天道がどこかの店のウェイトレスのような衣装を差し出してきた。
だがなのははそれに見覚えがあった。
いや見覚えがあるどころではない。
白いシャツに臙脂色のスカート、そして黒のエプロン。
間違いなくそれはなのはが幼い頃より見慣れている実家が経営している喫茶翠屋の制服だ。

「天道さん、その服どこで?」
「ああ、そこに転がっていたデイパックの中に入っていたんだ。たぶん誰かが落としていたんだろう」

余談だが、この天道が拾ったデイパックの元の持ち主の名はカレン・シュタットフェルト。
そしてデスゲーム開始早々に瀕死となったカレンを助けようとしたのがもう一人の高町なのは――つまり小学3年生の頃のなのはであった。
最終的にそのなのははカレンを助ける事は出来ず、またその死にショックを受けて隙を見せたところで殺されてしまったが。

(そういえば最初に転送された場所が翠屋だったな。まだ1日ちょっと前なのに……もうだいぶ前みたいに思える……)

あの時、自分は深い怒りと悲しみですぐに動けなかった。
だがアリサの死に報いるためにという想いで立ち上がった。
それから様々な出会いと別れがあった。
柊かがみ、シェルビー・M・ペンウッド、武蔵坊弁慶、C.C.、アンジール・ヒューレー、八神はやて。
この地で出会い死んでいった者達の想いを無駄にしないためにも、あと一息だ。
翠屋の制服を見る事でなのはは最初の気概を思い出して、心を身体も引き締まるようだった。

「あともう一着子供用の制服もあったが、ヴィヴィオに着せてやれ」
「あ、これって……はい、ありがとうございます」

そして天道から渡されたもう一つの衣服。
半袖の白シャツにブラウンのスカート、そして薄緑色のベスト。
それはミッドチルダにある聖王教会系列の魔法学校、St.ヒルデ魔法学院の制服だった。
そこはなのはがヴィヴィオの進むべき未来として考えていた場所でもあった。
まさかその姿がこんな場所で見られるとは思わなかったので、正直ちょっと嬉しかった。

「ヴィヴィオ、これ着られるかな?」
「えっと……うん、たぶん大丈夫」
「あ、あたし手伝います」
「スクライア、覗くなよ」
「覗きませんよ!!!」


     ▼     ▼     ▼


なるほど、だいたい分かった。

中~遠距離を得意とする砲撃魔導師/時空管理局が誇るエース魔導師/高町なのは。
防御と補助魔法を得意とする後方支援型/超巨大データベース無限書庫の司書長/ユーノ・スクライア。
格闘戦を得意とする陸戦魔導師/ギンガの双子の妹/スバル・ナカジマ。
聖王の器/レリックを埋め込めば聖王として覚醒/ヴィヴィオ。
天の道を往き総てを司ると豪語する男/仮面ライダーカブト/天道総司。
陵桜学園に通う女子高校生/仮面ライダーデルタ/柊かがみ。

高町なのはが無事であり八神はやての姿が見えない以上、この時点ではやてが生存している可能性は低い。
つまりこの6人が俺とキングを除いた生存者か。
もっともキングの言った事が正しければの話だが、いまさら嘘を付く理由もない。
それに今まで聞いた話とだいたい合っているから疑う必要はないな。

そうなると、ここから脱出するために俺が取るべき最善の方策は――。


     ▼     ▼     ▼


「やっぱり地道に探すしかないね」

なのはとヴィヴィオの着替え(着ていた衣服はホテル従業員の制服と一緒に放置)、及び各自食事などによる体力の回復に努めながら話し合った結果、そういう結論に至った。
はやての情報によるとE-5のどこかに魔法陣がある事は間違いない。
E-5の広さは1㎢だが5人もいれば決して探せない広さではない。
ちなみにはやての発言が嘘という可能性もあったが、あの時はまだ友好的な関係だったのでわざわざ偽の情報を混ぜる理由は低いと判断した。
それよりも問題はタイムリミットの方だが、こればかりはどうしようもない。
既にユーノが予想したタイムリミットまで1時間を切っている。
正直なところ、これがラストチャンスと言っても過言ではない。

「ユーノ君、ヴィヴィオをお願いね」

出立の準備を終えた高町なのははユーノと視線を合わせながら約束を交わした。
はやてとの激戦で消耗した体力と魔力はユーノの回復魔法のおかげで、全快とまではいかないが、ある程度回復できた。
その手に長年の相棒レイジングハート・エクセリオンのみ。
その身には気高き意志を示すかの如く純白のバリアジャケットを纏っている。
はやてとの戦いでカートリッジを使い切って魔力面で心配があったが、幸いその問題は解決できた。
天道が見つけたデイパックの近くに落ちていた別のデイパックの中にカートリッジが13発も入っていたのだ。
全てレイジングハートにも使えるものだったので問題なく補充する事ができた。

「大丈夫、ヴィヴィオのことは任せておいて」

ヴィヴィオの後ろ姿を目に入れつつユーノはなのはの頼みを快く引き受けた。
元々司書長らしく落ち着いた感じだった深緑のスーツは今となっては所々ボロボロになっている。
だが逆にそれが強い意志を秘めた瞳と合わさって一層頼もしく見える。
その手には本来の姿を得た白銀の飛竜フリードリヒの手綱が握られていた。

「なのはママも気を付けてね」

幼いヴィヴィオも状況の深刻さを感じ取り、ユーノの懐に背を預けながら手を振る事でなのはを安心させようとしていた
その首には捜索の手助けになるようにとユーノから渡された双眼鏡が掛かっていた。
さらにその身には遠い将来通う事になる真新しいSt.ヒルデ魔法学院の制服が映えていた。
そしてその小さな両手にはなのはから譲り受けたケリュケイオンが装着されていた。
ホテルでの戦闘の後遺症でヴィヴィオのリンカーコアは消失していたので、本来ならこの組み合わせは無理がある。
だが小休止中に改めて調べたところ、ヴィヴィオの体内にリンカーコアとは別の似たような働きをするものがある事が判明した。

実はこれはデスゲームを円滑に進めたためにプレシアが設けた仕掛けの一つであった。
本来ならデバイスは魔力源であるリンカーコアを持つ者しか扱えない。
だがそれでは参加者間で不公平が生じると考えたプレシアは事前に参加者に擬似的なリンカーコアを植え付ける事で解決しようとした。
参加者への支給品として大量のデバイスの類が配布される以上、その問題は見過ごせなかったのだ。
そしてそれは擬似的なリンカーコアとしての働きの他にも魔力に類する力を魔力に相互変換する機能も備えていた。
そのため本物のリンカーコアに比べれば遥かに性能は劣る事になり、せいぜいデバイスの起動と張りぼてのバリアジャケットを展開する程度になった。
だがプレシアとしては最低限デバイスが起動するだけの力が備わればいいと考えていたので支障はなかった。
この仕掛けのおかげで別世界の魔力に類する力を持つ者や何の力を持たない一般人でもデバイスを起動できるようになったのだ。
もちろんなのは達はそこまで詳しい事情を知っていた訳ではなかったが、今は時間もないので深くは考えなかった。

重要なのはヴィヴィオが自ら皆の役に立ちたいと強く申し出た点だった。

当初なのはは今まで通り自分で竜魂召喚を継続するつもりだったが、それはさすがに魔力の消費が大きすぎた。
なのはの身を案じたユーノとしてはこの後戦闘になるかもしれない状況でなのはの魔力消費は可能な限り抑えたかった。
そこで発言者であるユーノが自ら竜魂召喚を引き受けようとしたのだが、ここでヴィヴィオが自ら志願してきた。
みんなのために少しでもいいから頑張りたい。
それはただ純粋で幼いながらもヴィヴィオがずっと抱いてきた想いだった。
もちろん最初はなのはを筆頭に4人ともヴィヴィオの申し出を受け入れなかった。
だが実際フリードの様子を見ると、信を置いている順位は『新しく主になったなのは>お互いに向き合ったヴィヴィオ>キャロの同僚であるスバル・助けてくれた天道>ユーノ』が妥当に思えた。
なのはを避けるなら次点のヴィヴィオが受け継ぐのは自然な流れであり、最も上手くいく組み合わせであった。
結局最後はユーノが後ろで全面的に補佐するという事でなのはも納得した。
なによりヴィヴィオの真剣な願いを無碍にしたくなかったというのが真情だったのかもしれない。

「それじゃあ、また後で」

右手に嵌めたリボルバーナックルの調子を確認しつつスバルは皆を見渡しながら声をかけた。
その姿はストライカーの名に恥じぬ威風堂々としたものだった。
右手に尊敬する母の形見であるリボルバーナックル。
両足にはいつか仲良くなりたいと願う妹?が使っていたジェットエッジ。
そして身に纏うのは憧れの恩師のものを模した純白のバリアジャケット。
ちなみに左手用のリボルバーナックルはカートリッジだけを右手用の方に移動させて、天道が拾ったデイパックをもらって入れている。
最初は両手装備にしようかと思っていたが、やはりまだ『重い』ので慣れた右手だけにしておいた。
それからレヴァンティン、完全に破損したクロスミラージュ、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)、そして目下使い道がない蒼天の書も一緒にデイパックの中に仕舞っておいた。

「よし、行くぞ」

ジェットスライガーに乗り込んだ天道の号令が聞こえる。
その服装はユーノ以上にボロボロだが、それが逆に天道の不敵さを際立たせていた。
『これ以上、誰一人として死なせない』という誓いを必ず果たすべく、気力は十分だった。

E-5のどこかにある転移魔法陣の捜索にあたって5人は4手に分かれる事にした。
飛行魔法を使えるなのはとフリードに乗ったユーノとヴィヴィオは上空から。
ジェットエッジを走らせるスバルとジェットスライガーに乗った天道は地上から。
4手に別れたのは捜査範囲を広げて、時間を短縮するために他ならない。
だがこれは時間短縮というメリットとは逆に戦力を分散させるというデメリットも同時に生じてくる。
もちろん5人ともその可能性は考えた。
まず今の時点で5人を襲う可能性があるのはキングと金居のどちらか。
今までの話を総合するとキングと金居はお互いに種の存続を賭けて戦う間柄なので手を組む可能性は低いが、その可能性が皆無というわけではない。
だが万が一組んだところでE-5は一面瓦礫の山なので動く物があれば上空からはすぐに分かる。
つまりもし襲いに来ても上空の3人が容易に発見するため、対応は遅れずに行える。
だからこそメリットを重視して4手に別れて捜索するという案を採用したのだ。

不屈のエースは両足に光の羽を纏って空に舞い上がる。
優しき司書長と幼き聖王は白銀の巨竜の背に乗って空に舞い上がる。
蒼きストライカーは両足のモーターを振るわせながら駆け出す。
天の道を往き総てを司る男は銀と黒の化け物バイクにエンジンをかけて走り出す。

今この瞬間、5人は最後の希望を求めて、行動を開始した。


     ▼     ▼     ▼


「うーん、これはギリギリかな」

スマートブレイン社製のサイドカー“サイドバッシャー”のハンドルを巧みに操りながらキングはふと呟いていた。
おそらく現在位置は森林地帯から平野部に飛び出た辺りなのでE-8辺りだろうか。
背後から差し込む朝日でサイドバッシャーの漆黒のボディーは一層輝いていたが、それとは裏腹にキングの心中は若干曇り気味だった。
ついさっき上空からE-5に降りていく残りの参加者の姿が確認できた。
これから荒廃したE-5エリアの中心で魔法陣探しに取りかかるはずだ。
正直今から向かって間に合うかどうかは微妙なラインだ。
もしも到着した時に全てが終わっていたら興醒めどころの話ではない。
それでは何のために必死になってバイクを走らせているのか分からなくなってしまう。

「大丈夫だ、問題ない」

不意に左下方から合いの手が入った。
サイドカーに身を委ねるギラファアンデッドの人間としての姿である金居だ。
先程まではキングから残りの参加者の情報を聞いていたが、聞き終わるとしばらく黙っていた。
ギラファが持っていた茶釜の中に入っていた和菓子と大量の角砂糖を二人で食べていたので静かになったのはある意味当然だったが。
それがいきなり装備の具合に返答するかの如く軽い調子で言葉を振ってきたのだ。
だがその返事に面白い気配を感じ取ったキングは興味津津といった具合にほくそ笑んでいた。

「どういうこと?」
「言葉通りだ。あいつらの足止めをしたから『俺達が到着した時には全て終わっていた』なんて最悪な展開にはならないという事だ」
「へー、さすがギラファ! 手回しがいいね!」

ギラファがどうやって離れた場所にいる参加者の足を止めたのかは分からない。
だがこの慎重なアンデッドが自信を以て言っているのだ。
現にE-5にいる参加者は足止めを食らって途方に暮れているのだろう。

「そうだ、一つ聞いていいか」
「ん、なに?」

説明になっていない説明を終えたギラファはついでといった風に問いかけてきた。

「さっき言ったよな――『楽しければそれでいい』と」
「ああ、言ったね」
「何か具体的なプランでもあるのか?」

確かにE-5に着いたら生き残った参加者で遊ぶつもりだった。
最初それは漠然としたもので具体的には特に考えていなかった。
だが今こうして問われてみると、徐々に何をしたいのか頭の中で整理されてきた。

「そうだなー。最初はカブトと戦おうとも思ったけど、もう十分戦ったから後は僕の手で始末できたらいいや。
 ……ああ、そうだ。最後にあいつらに僕の力を見せつけてやりたいな」
「もう十分見せつけているんじゃないのか?」
「なんて言うかねー、あいつらいくら脅しても諦めないから最期にガツンと見せつけてやりたんだ」

それはキングが『最強』であるが故に。

「ねえ、『最強』vs『最強』って燃えない? もちろん真の『最強』は僕だけどね」


     ▼     ▼     ▼


それは突然現れた。
いや現れた時にはもう彼らの仕事は終わっていた。
彼らに与えられた仕事は唯一つ。

『身を呈してE-5にいる参加者を足止めしろ』

それは命令。
機械の身では決して抗う事が出来ぬ絶対遵守の力。
そして彼らは自らを犠牲にして4つの花火を作りだし、その命令を全うした。

そのために魔導師が地に落ち、戦士が地を這う事になろうとも、彼らの知った事ではない。
もうその身は命令を遂行した際にバラバラになってしまっている。

あとにはただ自らが為した仕事の成果が転がるだけ。


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