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Last update 2007年10月27日

No Title 著者:一茶


「人間って、うえ死にするのは割と大変らしいけど、かわき死にするのって、割とすぐみたいじゃない」
「だからって、これはどういうことなの?」
私は彼女の足元を指差した。
そこには空になった3本の1.5リットルペットボトルが転がっていた。
「だから、かわき死するのは割とすぐみたいだから……」
「じゃぁ、それは?」
今度は彼女の手元を指差す。
ほとんどを飲み干したコーラのボトル。
「こ、これは……水分補給にはこれが一番かなって…」
「そっか、うん、そうなんだ。それじゃぁ、ちょっとついてきてもらえる」
「……うん」
彼女は怯えた羊のような目を向けている。
「大丈夫、叩いたりとかじゃないから」
観念したのか、彼女は立ち上がった。
「あ、そうそう。それはちゃんと流しに置いておいてね」
「あ…うん」
彼女は持っていたのも含めて流しに置いた。
「じゃぁ、ついてきて」
「うん…」
彼女を連れて行ったのは洗面所だった。
「これに乗ってほしいんだ」
「こ、これに…」
「そう、これに」
どんなに現実から目を逸らしても現実に戻してくれる。
人間が生み出した最も恐ろしい機械がこれだ。
「ご、ごめんなさい!出来心だったの」
「謝らなくていいからさ、大丈夫よ乗るだけだからね」
自分でも驚くくらいの猫撫で声が出た。
「う、うう」
「ほら、唸ってないで乗ってごらん。今朝はあんなに喜んで乗っていたのに」
「……」
とうとう彼女は押し黙って泣き出してしまった。
私はただ黙ってそれを見るだけだった。

落ち着いた彼女を椅子に座らせた。
「じゃぁ、聞くけどさ。貴女はどうしてこれをやろうとしたんだっけ?」
「それは……彼にきれいになった自分を見てもらうため」
「あとは?」
「あとは……今の自分に対するコンプレックスを無くす為」
「はい、よくできました。で、今回貴女は何をしたんだっけ?」
「隠れてコーラを飲んだ」
「どのくらい?」
「4リットル……」
「うん?」
「……6リットル」
「はい」
「……」
「じゃぁ、私はおりてもいいかな?」
「え?」
「だってさ、ことごとく裏切られたんだよ」
「……」
「最初はモンブランだったよね。次は蓬餅、アップルパイ、唐揚げ、肉まん」
「……」
「まぁ、流石に馬鹿食いはしてなかったけどね」
「うん」
「で、今回の6リットルのコーラ?あんたには呆れるよ」
「そんな……」
すっかり彼女は小さくなっていた。
「どうしてなの?どうして後一歩を我慢できないのよ!」
つい、きつい口調になってしまう。
「ごめん」
「ごめんで済めばもう減ってるものは減っているのよ!」
「……ごめんなさい」
「ああ、もう謝らないで。こっちが貴女をいじめているみたいじゃないの」
「……」
押し黙る彼女を見ながら大きなため息を一つ。
「いい?今度が最後のチャンスだからね」
「……」
「これで貴女がまたこんなことをしたら、今度は絶対に諦めるからね」
「約束す「約束なんてしなくていい!ただ、貴女が守ってくれればいいから。約束なんかよりも行動で示して」
「うん」


数週間後。
「で、結果がこれなのね……」
彼女の前にはどこからもってきたのかホールのケーキを入れるケースが4個転がっていた。
「……」
私に見つかって我に返った彼女は、ただ自分の前を見ているだけだった。
まったく、人が何とかとりもどしてあげたのに、本能の奴は、平気で人の感情を逆なでにするようなことをする。




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