Last update 2007年11月10日
レジスタンス 著者:BEAT
なぜなら気に入られること以外に私たちは何を求めているのだろう?
散々虐げられて来た存在である私たちは、いつと振り返ることなく、媚びへつらう習慣が骨の髄まで蝕んでいる。
帝国府は「人民の人民による人民のための世界」と題打ち、抜本的な改革を推進することを掲げたが、あくまでそれは建前であり、私たちの生活が改善されることは無く、混沌とした空気は依然気だるそうに漂うばかりであった。
帝国府が私たちの存在を再認識し、施しを与えてくれるのであれば、プライドなんか度外視してなんだってやってやる。気に入られる、もしくは生活を向上させるという絶対条件を基に、私たちは作戦会議に没頭する。
「この世界に戦争は尽きない、皆で徴兵を申し立て生計を立てるのはどうだろう?」
「命をさらしてまで上を目指す問題か?他に案の有るものは?」
「土地を借りるのはどうでしょう?小作人になって作物の何割かをいただくんです」
「いっそ亡命するのはどうだ?この世界の半分以上は帝国府の支配化に在るが、静かに暮らせる土地もあるのでは無いだろうか?」
「亡命……、では私たちの今までは無になるという訳ですね」
「ううむ……いつも通りに話がまとまらんのう。今日の密談はこれで終わりにするか」
「待ってください!こんな案はどうでしょう?各地で謀反を起こし、私たちの脅威を思い知らせるのです。あくまで血を流すことなく、帝国府が政策を見直す契機を作るのです」
「謀反……か、余り良い案には思えないが、今までの提案の中では利にかなっている様な気もするの。各地への連絡はどの様に行うのじゃ?」
「はい、先ずアジトとなる地をそれぞれに設け、運送屋に密偵してもらいます。最低でも帝国府本部を囲む4箇所に極秘で徒党を組みましょう!」
「あい分かった!その様にことを進める事にしよう。くれぐれも帝国府に情報が漏れぬ様にな」
こうして私たちは、農機具を護身用に帝国府に対する謀反を極秘の内に進めて行った。徒党は思いのほか、滞りなく召集された。
謀反前夜、帝国府の電脳部署に密偵を走らせた。彼は元帝国府の軍人で利き腕を戦場で失ってから退役していた。今でも軍服を持っている彼を潜入指せる事はことのほか容易だった。
しかし、彼は電光掲示板を見て一気に血の気が引いた。なんと、私たちがこれから謀反を起こそうとしていたアジト全てが、克明に映し出されていたのだ。
「なんでこんなところに?」
誰かの裏切りは明白な事実だった。そして、彼は悟った。我々は全滅だ、と。