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Last update 2008年01月13日

夢幻回廊 著者:一茶


 おわりとはじまりはいつもいっしょにやってくる。
ただ、どんな時であろうとも『おわり』はおわりでしかなく、また『はじまり』ははじまりでしかない。
誰にも分からずに『はじまり』は訪れ、誰にも知られず『おわり』が近づく。
そして、また『はじまり』が……。


「右手と左手のようになれないかなぁ」
「……えっ」
曖昧な会話。思い出せなくなる会話。その度その度に変化して、混沌へと帰する会話。その中で彼女が“僕”へと言った言葉。脊髄反射のように会話を続けていた“僕”の意識を震わせた言葉。僅かな沈黙の先の言葉。
「どうしたの、いきなり」
「んー、やっぱりいい。忘れていいよ」
曖昧な返事。誰そ彼(たそがれ)時の道の上、彼女の顔は見えない。“僕”はただ「うん」と、頷くしかできなかった。

「それじゃ、また明日」
「うん、バイバイ」
十字路の上、彼女と別れる。時間と方角の都合で誰そ彼時の中へと帰っていく彼女の姿。
誰そ彼の中で彼女は確実に消える。
『右手と左手のようになれないかなぁ』彼女の言った言葉が思い出される。彼女はその前に何を言っていただろうか。彼女とどんな会話をしていただろうか。

……オモイダセナイ?

何も、思い出せなかった。空白の時間。時間。時間?“僕”は…ダレだ。彼女のセリフ以前の“僕”がいない。どんなに頭を使おうともそこから始まっているシーンしかオモイダセナイ。
“僕”の時間はそこからしか始まっていない。“僕”の記憶はそこが撮り始めだ。彼女は“僕”の何なんだ。彼女はダレダ。“僕”はダレダ。ダレダ。ダレダ。ダレダ。 ダレ……。…………。     。


誰そ彼の中からその光景を見守る少女の姿があった。一つ、肩を使って大きなため息をしたかと思うと「失敗」と言った。
少女は先程“僕”と呼ばれるモノと歩いた道を戻る。そしてあの言葉の場所で自分の影に話しかける。



「不思議の国は、ずうっと、ここにあるんだね」
「……えっ」 影が動き出す。




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