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Last update 2008年03月14日

聖夜  著者:真紅



『そうらみろ、刑務所の中にもランプが一つ点いたぞ。』

彼女を皮肉る。
「・・・失礼な。」
彼女は不服そうに頬を膨らました。
「エーコ、僕という男が来てるんだから部屋は片付けなよ?」
床には、熊や犬のぬいぐるみや小物が散乱している。
まぁ・・・下着が無いだけマシか。
多分あったら、極度の照れ屋の僕は失神するだろうが。
僕は散らかり過ぎて、すっかり狭くなったその部屋に腰を下ろす。
ふむ、刑務所という比喩は正しかったようだ。
「良いじゃない、あなたなんだしさ。」
開いた口が塞がらない。
お互いの事を知ってるとはいえ、それは無いだろう。
更に畳み掛けるように彼女が言う。
「それでも好きなんでしょ?私の事。」
笑いながら僕の目を見つめてくる。
 ・・・畜生、可愛い。
「・・・分かったから、今度からは片付けな??」
僕は、赤くなり視線を逸らしながら言う。
エーコは頷きながらまた笑った。


あれから一時間。
僕らが何をしているかと言うと、アレだ。
コレをしないと、たった紙切れ一枚で優劣を付けられるアレ。
学生に付き物で、皆が必ず苦しむアレ。
まぁ簡単に言えばテスト勉強なんだが。
明日にある、学期末テストに向けての勉強である。
基本的に標準より少し点数が良い僕が、標準より随分下の彼女に指導をしている形だ。
「・・・という訳。分かった?」
僕は紙に、問題の解説を全力で判り易く書き込みながら教える。
真っ白だった紙は、すっかり僕の解説で黒く埋まってしまっていた。
「・・・。」
 ・・・やはり理解できて無かったか。
しっかりとペンを握り締め、固まるエーコ。
「えっと、もう一回説明しようか?」
「お願いします・・・。」
泣きそうになりながらエーコは答えた。
どうやらさっきとは、すっかり立場が逆転してしまったようだ。
問題と睨めっこし、頭を抱え悩む彼女。
うーむ、やはり可愛い。
惚れ直すとはこの事だろうと、ふと考える。
僕が妄想に耽っている間にも、悩む彼女。
仕方がない。助け船を出すか。
「良し、エーコ。疲れた事だしさ。」
彼女がピクッと反応した。
「休みにしよ・・・」
「やったぁ!!!」
 ・・・反応早いな、オイ。
悩む顔から一変、笑顔に早変わりした彼女に心でツッコミを入れる。
ハハハという苦笑いと共に。
「駅前のケーキ買ってくる!」
 ・・・は?
僕は何か聞き間違えたのかと思い、間抜けな声を出す。
何故なら駅前のケーキ屋まで、ここから30分は間違い無くかかるからだ。
ましてや、甘い物・可愛い物好きなエーコだ。
色んなケーキに目移りして一、二時間は戻らないかも知れない。
「甘い物食べたい。疲れたから。」
僕はエーコの眼を見た。
その瞳は、光り輝き爛々としている。
 ・・・ヤバい、本気の時の目だ。
僕は、この急展開に付いていかない頭をフル回転させる。
「ちょっ、ちょっと待て!明日はテスト・・・」
「いってきます!!!」
僕の説得が、言い終わる前にさっさと行ってしまった。
「・・・マジかよ・・・。」
僕は、彼女が勢い良く開けたドアが軋む音を聞くのみだった。
静まり返った部屋。
男が一人。
僕は周りを見渡した。
刑務所のように狭い部屋に、監房のように孤独。
僕は床の上に寝そべっている熊のぬいぐるみを抱き締める。
その小さなプラスチックの瞳には、今僕しか映っていないだろう。
孤独な僕と、熊のぬいぐるみ。
僕はため息を吐き、小さく呟いた。


『監房の中で僕らはみんなひとりぼっちだ。 』




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