Last update 2008年03月14日
夢 著者:亜季
手足の震えと口腔の乾きに、彼は夢の世界から現実へ引き戻された。
昼間でも暗く、たった4.5畳の狭い
この部屋で過ごすようになってからずっとそうだった。
この部屋で過ごすようになってからずっとそうだった。
彼にはお金はなかったが、どうしても親の小言に耐えれなくなり
「とにかく安い部屋お願いします!」と不動産屋に言ったら
家賃3万で紹介されたのがこの部屋だった。
「とにかく安い部屋お願いします!」と不動産屋に言ったら
家賃3万で紹介されたのがこの部屋だった。
将来、ミュージシャンとして食べていきたくて、
今は必死で毎日毎日、
喉がカラカラになるまでトランペットを吹いていた。
今は必死で毎日毎日、
喉がカラカラになるまでトランペットを吹いていた。
高校の時、憧れの先輩から譲り受けた大事なトランペットだ。
でも、トランペットは場所もとり
4.5畳のこの部屋では、寝床を削らないとどうにもならない。
4.5畳のこの部屋では、寝床を削らないとどうにもならない。
そして、今では抱き枕状態になっていて
枕と違ってケースは硬いから手足も休まらず、しびれるばかりだ。
枕と違ってケースは硬いから手足も休まらず、しびれるばかりだ。
だから私はこの言葉を彼に繰り返す。
「もっと広いところに引っ越さないの?」
「智子、うちに来るなって言っただろ。」
「彼女が遊びに来て何が悪いのよ?」
「俺の部屋狭いんだから、智子だって窮屈なの嫌だろ?」
「だから、裕也がもっと広いとこに引越せばいいじゃん。」
「金があれば引っ越してるよ。」
何度も何度も同じ会話を私たちはしていた。
「夢が現実ならよかったのに。」
「は?何で俺の夢の内容、智子が知ってんだよ?」
「寝言で言ってたよ。『智子、愛してるぜベイビー。この豪邸はお前のためだぜ』って。」
「俺、そういうジョーク、あんまり好きじゃないんだけど・・・。」