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Last update 2008年03月15日

Last samurai  著者:真紅



会った瞬間、叱責の幻聴が聞こえてきた。
"揺らぐな!前を見ろ!"
慣れ親しんだ、声がした。
それは頭に響き渡り、俺の背中を押す。
鈍り丸み始めた判断力を、再び鋭く尖らせる。
刀を持つ両手に、嫌な汗をかくのを感じた。
 ―――――――来る。
下から振り上げられた刃が、俺の首を狙っている。
俺はギリギリの所で上体を反らし、それをかわす。
その勢いで、反撃にと、相手に斬りかかる。
が、相手も相手。
即座に反応し、後ろへと飛び退いた。
正に殺し合いの真っ最中。
正に果し合いの真っ最中。
刃と刃が交じり合い、混じり合い、火花を散らす。
その光景はとても美しく。
その光景はとても激しく。
その光景はとても恐ろしかった。
一息。
二息。
溜め息。
「・・・俺に力を下さい・・・。」
先程の幻聴の主に俺は呟きかけた。


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俺は刀を翻しながら相手を見つめる。
憎き恨むべき、相手を。
俺の母を殺した、相手を。
その復讐のために腕を磨き。
漸く見つけた、相手を。
「―――シッ!!」
斬り込んだ。
上段から下段に切下ろしつつ、間合いを縮める。
その下段から更に切り上げ、追撃を掛けた。
剣術の世界では、このパターンは在り来たり。
が。
相手が追撃を後ろへ後退して、いなしつつ、突き込んで来たのだ。
 ―――読まれてる!!
俺は遅くも後悔した。
自分自身に。
『そして愚直なまでに、失われた時への哀惜を叫び続ける。』

だが、幸か不幸か。
相手の刀は俺の左肩を貫いただけに留まった。
「・・・ッ・・・」
すぐさま後退し、刀を右手で持ち直す。
この命の競り合いを始めて、もう数時間。
体力も精神力ももはや限界に近い。
おまけにこの怪我だ。以って後数撃だろう。
面白い。
恐怖で気が触れたのか、俺は笑みを浮かべた。
痛みで気が触れたのか、俺は笑みを浮かべた。
混乱で気が触れたのか、俺は笑みを浮かべた。
次で終わらせる。
次で終わらせるしかない。
相手もそのつもりなのか、刀を動かしもしない。
俺は切っ先を相手に向け、少し腰を落とす。
相手は下段に構え、俺を誘う。
止まる時間と留まる2人。
流れ行く汗。
吹き行く風。









動いた。

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目を開く。
陽が眩しい。
左肩を触りつつ、正面を見遣った。
人が居る。
基、人が居た。
漸く見つけた憎むべき相手。
母の仇となる相手。
そして。
俺の剣の父であり。
俺の実の父でもある。
相手が語り掛けてくる。
「揺らぐな、前を見ろ。」
幻聴と同じ声。
同じように頭に響き渡る。
「始めましょうか・・・。」
「あの日の・・・弔い合戦を。」
"俺に剣を教えてくれた。あなたは幻だったのでしょうか?"
"母を殺したその理由を、剣で、語ろう。"
心の中の、笑顔の父に問い掛ける。
その姿を目の前の相手に重ねた。
それは幻聴の中での幻想での影。

『そいつはまさに影だった。』




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