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Last update 2008年03月15日

Butterfly  著者:真紅



彼の着氷はとても美しく―
手の細部にまで感情が乗っていました。
曲の最後。
僕の前で彼が両手を広げた姿は。
まるで・・・。
蝶が、羽根を広げたようでした。

でも彼は、悩んでいました。
自分の実力を。
自分の今の全てを。
僕は魅せられました。
彼のその中の「弱虫」に。
だからこそ、開放して上げたかった。
氷の上で、寒さに震える。
彼の「弱虫」という名の蛹から。
羽ばたけば、あれ程綺麗な姿なのに。
僕はただそれだけだったのです。
ソウ・・・タダソレダケ・・・。

僕は彼にナイフを渡しました。
鋭く、冷たく、血を待つように光るナイフを。
そして選ばせました。
いや、選ぶといっても選択肢は突き付けてませんよ?
ただ渡しただけです。
幾多にも伸びる岐路への片道切符をね。

人とは実に脆い。
だが、面白い。
究極の二択を突き付けられた人間は、三択目を見出す。
 ・・・が、彼はそうはいかなかった。
残念でしたよ。
僕の目が狂ったのかと、動揺さえしましたよ。
彼は典型的な固執を見せる人間のようでした。

それから、彼は僕にナイフを付き付けました。
え?それを止めたかって?
ご冗談を。
僕は彼がどうしようが静観するつもりでしたから。
一時間は経ったでしょうか。
つぅ・・・と涙が零れていました、彼の目から。
頬を伝い、流れるその涙はとても美しかったです・・・。
ダイヤなんかよりも、真珠なんかよりも、もっともっと。
彼は気付いたようでしたよ?
僕が本当に伝えたかった事・・・。
「勇気を出せば何でもできる」って事。
そう、人を殺すっていう勇気。
そう、自分を殺すっていう勇気。
それ等を出せるのなら・・・って事です。

だから彼は今、ああしてまだ氷の上で羽ばたいていられる。
あ、「僕のお陰」とは言いませんよ。
あれは彼の力。
彼が自分で見出した可能性です。
でも、彼は幸せにはなれないでしょうね。
一度「人を殺す」という逃げ道を垣間見たんですからね。
じゃあ、僕は此れにて。
あなたに預けた、そのナイフ。
大事にして下さい。
え?俺は幸せになれるかって?
さあね・・・。

弱虫は、幸福をさえおそれるものです




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