※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Last update 2008年03月15日

kissで叶う恋  著者:真紅


「聖女でいるのに飽きることはないのか?」

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

此処は、賑やかな大学の食堂。
牛丼を頬張りながら真剣な顔で、タケシが言う。
「・・・お前そう言って好きな子口説いたのか・・・?」
タケシは一切動揺しない。
「あぁ?悪いか?」
「寒・・・。」
「俺の決め台詞だぜ!?」
タケシは少し涙目。
「決めれてないんだよ、阿呆。」
「うっ・・・俺は後悔しねぇ!!」
タケシは拗ねるかのように机に突っ伏した。
「お前等には俺の良さは分からないんだよ!」
タケシの絶叫が響く中。
一方、俺は。
何も食わずただただ、ボーっと見とれていた。
「・・・紅。」
ボーっと見とれていた。
「真紅。」
ああ・・・優しい声・・・。
「真紅?」
「うわぁ!?え?!あ!?!?」
七穂。
「あのさ、唐揚げ要らない?お金無いって言ってたでしょ、苦学生君?」
「ああ・・・」
さっきまで落ち込んでたタケシが突っ込む。
「真紅要らないのかなぁ?俺が食っちまおうっと!」
「あ!タケシ、てめぇ!俺んだぞ!!!」
タケシは、フォークに刺さった唐揚げを高々と掲げながら言う。
「早い者勝ち、ってね♪」
俺は必死で取り返そうと飛び掛る。
「それは俺のんだ!!七穂が俺にくれたんだ!七穂が俺にくれたんだ!」
「遅い!」
タケシの口の中に消えていく、唐揚げ。
「あ~っ!!!!」
俺は立ち上がって、叫ぶ。
タケシ。
「ご・馳・走・様・♪」
俺の頭の中で、何かがブチンと切れた。
「ぶっ飛ばす!!!!!」
たかが唐揚げで、ギャーギャーと騒ぐ20歳になる男2人。
その横で我々関せず、とイチャつく男女。
そして。
七穂は真紅を見ていた。
真紅はタケシの胸倉を掴みながら、その視線に気付き七穂を見る。
「ガキ・・・。」
七穂はクスっと笑い、席を立ってどこかへ行ってしまった。
俺の気のせいか。
その後ろ姿は、聖女とも言える気品に溢れていた。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

俺は七穂が好きだ。。
それは俺が大学に入ったばかりの頃。
授業中、消しゴムを忘れた事に気付いた。
俺は周りを見る。
当然知っている奴などまだ居ず、「貸して」とも言えないほど小心者で。
俺は、上を向き溜息を付いて途方に暮れている。
と。
「・・・どうしたの?」
優しい声・・・。
前から聞こえる。
天井を向いていた顔を、前へと向ける。
其処で笑っていたのが七穂。
その笑顔は、天真爛漫。
屈託が無く、俺は一瞬で心奪われていた。
「・・・ホントどうしたの?大丈夫・・・?」
後で偶然横に居たらしいタケシから聞いた話だが、俺はただボーッとしていて。
そしてボーっとしている俺と、七穂が教授に怒鳴られたらしい。
だからだろう。
俺の記憶では、七穂に平謝りしていた記憶しかないのは。
ともかく。
ここからだ。
俺が七穂を想うように惹かれていったのは。
そう、俺は七穂が好きなんだ。
全身全霊、愛してるんだ。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

午前から午後まで詰めた授業を終え、俺はバスに乗る。
座席は全部埋まっていて、仕事帰りのサラリーマンや部活帰りの高校でゴッタ返していた。
「早く帰りてぇなぁ・・・。」
俺は一人でぼやく。
タケシは、あの後単位が危うい癖にサボって遊びに行ってしまった。
他の奴等はバイトや、女の子とデート。
一人で帰るのは久し振りな気がする。
かといって、特別なわけでもない。
俺は溜息と共に、窓の景色を眺めていた。
流れて行く夜景。
住宅街。
商店街。
街中の風景から外れて、夜空を照らす灯り。
住宅街や商店街より眩しいラブホテルの灯り。
入り口に佇む男女が見える。
「良いな・・・。」
俺は羨望の眼差しで、その2人を見つめる。
バスは動いている。
さっきまで背中しか見えなかった、2人の顔が見える。
「・・・!?」
タケシ。
その後を追うように。
「・・・七穂・・・?!」
化粧をし、着飾っていたが。
あれは間違いなく、七穂。
分からない、ワカラナイ、わからない。
俺の中には、疑問より悔しさだけが募っていく。
"何故タケシが・・・?"
俺が七穂を好きな事知ってる癖に・・・?
割れそうな程、頭が痛くなり始める。
バスは、ただエンジン音を響かせつつ走るのみであった。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

空は良く晴れた次の日の食堂。
だが俺の心の疑問は晴れない。
あれからタケシにメールをしたのだが、返信さえない。
何度も頭に浮かぶ、嫌な光景。
俺はそれを何度も掻き消しては、また無意識に浮かばせていた。
「おっ!真紅!」
いつもと変わらない様子で、タケシが声を掛けてくる。
「・・・あぁ。」
昨日の事を思い出す。
タケシと七穂。
確かに二人だった。
「悪いな、昨日はメール返せなくて。」
「・・・あぁ。」
ラブホテルの灯りに照らされた二人。
心無しか、七穂が苦しそうにさえ見えた。
何かあった。
それしかない。
「・・・なぁ、タケシ。」
聞くしかない。
「んぁ?」
「・・・昨日、ラブホテルの前で七穂と何してた?」
「・・・ハッ、何言ってんだよ。夢じゃねぇか?」
少し強めに言ったが、あっさり返される。
「見たんだよ、昨日学校の帰りにな。」
「・・・。」
何か言ってくれよ。
「七穂と・・・何してた?」
「・・・。」
何か言ってくれ、頼むから・・・。
「俺は・・・。」
俺は。
「俺は七穂の事が」
「私が何?」
言い出そうとした瞬間に、七穂が後ろに居た。
「・・・・!」
驚きすぎて、思わず身を引く。
「私がどうしたの?真紅?」
その純粋に、疑問を投げ掛けるような笑顔。
「ねぇってば?」
あの時、見た笑顔と一緒。
「え・・・!?ちょ・・・。」
次の瞬間、俺は七穂を抱き締めていた。
周りの時が止まる。
呆然とするタケシ。
その他諸々。
何が起こったか理解できていない七穂。
そして、今の気持ちの整理が全く付かない俺。
俺は我に返って、七穂を抱く力を少し緩める。
「・・・。」
七穂は少し顔を赤らめ、涙で目を潤していた。
可愛い・・・欲しい・・・。
「俺は。」
そう、誰よりも。
「俺は七穂が好きだ。」
そう言って俺は七穂の唇を奪った。
そのkissは長く、甘く、優しく。
俺はゆっくり唇を離す。
少しだけ、唾液が糸を引いたのが見えた。
「・・・行こう。」
俺は七穂の手を無理矢理引いて食堂を出る。
去り際にタケシを見る。
タケシは呆然と、ただあっけに取られている。
「・・・悪いな、七穂は譲らない。」
聞こえてるか分からなかったが、関係無いだろう。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

携帯が震える。
タケシからの電話だ。
俺は七穂の手を握りながら電話に出る。
「もしもし・・・?」
「真紅。」
「何だ・・・?」
「言っといてやる。」
俺は思わず身構える。
「・・・何を勘違いしてるか知らねぇけどさ・・・。」
「・・・?」
「俺は七穂にあの夜、告ってフラれただけだ。ラブホの前でな。」
「・・・はぁ?」
「それも、聖女でいるのに飽きることはないのか?俺と寝よう、ってな♪」
 ・・・アホだ、こいつ。
「昨日の今日だろ?恥ずかしくてお前にも言えなくてな。」
タケシはケラケラと笑う。
 ・・・て事はだ。
血の気が引く。
俺は勘違いで?
我慢できずに告白して?
七穂を抱き締めて?
それも唇奪って?
俺は無言で七穂を見る。
七穂は聞こえていたのか、うんと頷く。
「まぁ後は此れ聞け。」
タケシが携帯を耳から鳴らす音がした後に。
「真紅~!お前恥ずかしいぞ~!」
「真紅、アホだろ~!」
「勘違い~♪」
「早とちり~♪」
口々に、囃し立てる仲間の声が聞こえる。
どうやらタケシから事情を聞いたらしい。
「・・・うっわぁ・・・恥ずかしい・・・死にてぇ・・・。」
七穂は俺の心中を察したのか、「私も好きだよ、有難う」と微笑む。
其の笑顔を見ると、何もかもどうでも良くなるから不思議だ。
そして俺の腕にギュッとしがみ付く。
「でも、嬉しかった・・・強引で・・・でも嬉しかった・・・。」
七穂の胸が、俺の腕により一層押し付けられる。
「もしもーし!聞いてるかー!俺以上に恥ずかしい王子様ー?」
電話はまだタケシの声で震えている。
其の後ろから雑音と歓声。
俺は電話を急いで切る。
二人きりになりたいから。
気のせいか、少し耳鳴りがしている。
まるでまだ食堂に居るようだ。
だからか。
ひやかしまじりのひそひそ声が耳に入ってくる。




コメント

名前:
コメント:
| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
|ログイン|