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Last update 2008年03月15日

異次元への鎖  著者:ブラックジョーカー



 それは冷凍室でかちかちにされた一切れのチーズのように、冷えきっていた。
本来それが正常に機能していれば人肌並に暖かいはずだ、電流が絶えず流れ、そこは暖かいはずなのだ。
 そして私が眠っている間、私の感覚を支配していた世界はその中にあったはずだ。
 今もまだあの中の世界の方が今周りに広がっている世界よりも現実に感じる。
 踏むべきプロセスを踏まずに覚醒してしまった事もあるのだろうか?
 それとも、覚醒したばかりの人間は正しいプロセスを経て覚醒してもこんな感覚に襲われるのだろうか?

 意識は確かでは無いが、優先順位を考えると"それ"をチェックするのが一番最初だろう。
 コアとなる装置の表面に大きな変化は見られない。
 電源を入れる……パスワード入力が画面が出る。
 操作システムは正常に動作している。
 診断モードでチェックを行う。
 破損されている部分は無いようだが、パワーが足りないようだ。
 ログを見ると、最初の30年間まではどちらかというと蓄積されていて、その後徐々にソーラーから供給される電力は減り。蓄えを食い潰して今回の結果に至るようだ。
予想外の事態に備えて用意した宇宙服を装着する。

 シェルターを空けると予想に反して日光が世界を照らしている。
 空は濃い青い色をしていてとても綺麗で、宇宙服を脱ぎたくなったが、自分の視覚だけを信じるのは余りにも不用意だ。
 しかし何故だろう?
 太陽電池部分は奇妙に変形している。
 分析にかけると不可解な構造した分子である事が結果として分かった。
 考えたところで答えは出ず、取り合えずここを離れて探索する事にした。
 シュルター内に戻りマスターキーを使い倉庫を開ける。
 不活性ガス(窒素)が吹き出し、緊急脱出用に用意されているジープはまったく以前の形のまま残っている。
 ガソリンを入れキーを回すとエンジン音を立てた。
 どうやら正常に動くようだ。
 代えの酸素ボンペを積み車を走らせる。

 道はその形のまま残っていて、車を走らせるのに問題は無い。
 しばらくすると高層ビル群が見る。
 その輝かしさを今も保ち続けているようで安堵する。

 しかし、徐々に近づくに従い私の心配は大きくなっていく。
 それは平面的なそれではなく、曲線的で複雑な輝きを放っている。
 道は形容しがたい形成物に変異している。

 管状の透明な固形物はビルを包み、ビルとビルを繋いでいる。
 建築物の殆どは削られているものの、透明な固形物で補間されていて崩れずにいるようだ。
 ジープで進入する隙間も無く、緊急用の火炎放射器を持って降りた。

 アスファルトの上、管の上などには見たことも無い得体の知れない生き物が移動している。
 透明で緑色をしていて、中には半透明な内臓器が見える。
 そして形を自由自在に変えられるようで、伸縮を繰り返している。
 地面からは垂直に枝状の透明な形成物が幾つも生え、その中を色とりどりの小さな生命体が動いている。
 目に入るものは透明もしくは半透明の管が複雑に絡み合った形成物ばかりだ。
 形成物を掻き分け奥へと入っていく。
 イソギンチャクとも花ともつかない不思議な生命体が、花弁とも口とも付かない器官から、結晶のような不思議な物体を噴出し、その物体はゆらゆら不規則に宙を舞っている。
 一方で、無生物と思われる地面と垂直に生えたパイプ状突起物は、こちらに向くように曲がり始めた。
 まったく理解の付かないそれらは、まるで推測すらも許さないかのようだ。
 突如強い光が目に飛び込んでくる。
 何かに囲まれたようだ。
 反射的に火炎放射器を向ける。
『打つな!僕らは人間だ。』
 何か起きたのか分からず私は呆然とした。

 彼らは私を郊外にある居住施設に快く迎え入れてくれた。
 施設は分解しにくい金属で守られている。
 UV照射、高温の蒸気など、他段階の滅菌を行い施設に入る。

 現象についての過去の文献を調べる。


 厚くされたオゾン層により完全にUV遮断する計画。
 人間が住むには理想的な世界を目指し、極端な潔癖症により人類は急激に環境を変える。

 計画が成功した時期から、そのが原因なのか、本来の人間の住む環境では生息できないマイノリティーな微生物や細菌の急激な増殖し、それらを撃退する為に数々の方法を試みるが、今まで対面する事の無かった微生物や細菌に、当然人類が耐性があるはずもない人類は成す術もなく、一方に逆にそれらは急激に進化を遂げ環境にさらに順応していった。

 急激な進化を遂げた原因に撃退する為におこなったアプローチに数々の因果関係をこじつけるものの、今現在決定的な結論は出ていない。

 現在それらは既存の生物と共生するものもあれば、本来持っている珪素外殻形成能力を発達させ、珪素高分子と炭素高分子を融合した複雑な形成物を作るものも現れるようになったという意見が最も有力とされる説である。
 その機能は炭素の持つ多様性と珪素の持つ強度を併せ持った形成物は人間の技術では作れない水準まで達しいる。

 しかし、形成物がどのような理由で作られているのかいくつかの仮説が存在するものの、推測の域を出ない事ばかりだ。

 形成物発生後、多くのアプローチが行われた。
 その中で形成物に大規模な攻撃を仕掛け反応を見るというアプローチが行われた。
 誤ったアプローチだと考えられるこの計画は、予想に反し重要なデータを残している。
 最初の攻撃に対して、あたかも巣の生物が何か大きな意思によって動かされているかのごとく、一斉に攻撃を行ったものだけを攻撃を行ったという結果だ。
 その中で一番特質するべきは、巣が神経の役割をしているという仮説が立てられ、それは分析の結果その仮説が事実であると立証された。
 詳細は、巣内には恐るべき長さの高い導電性を持った高分子が張り巡らされており、巣内の生物が恐怖を感じるより特徴的な波を持った微電流を流す事により、その電流が巣全体に瞬時に伝達されるという事である。



 以下のように情報がこの現象について理解するのに役に立つだろう。

 分子構造が機器を通し朧げに見えるのみで、人間に理解が付かない事により、その神秘性は守られている。

 私が科学者である事が判明すると、探索隊の一員に入る事になり、再びあの地を探索する事となった。

 地面を覆う形成物は、融解と凝固を繰り返し、その上形成生命体による上塗りにより複雑な結晶を形成している。
 ビル群の深層部へ入っていく。
 そびえ立つ形成物の間から何か動くものが見えた。
 私はそれを必死で追いかける。
 結晶を間を抜けて入っていくと広い空間に出た。
 微細な結晶に覆われた丘にそれは立っていた。
 その透明な狐、水晶と生物、有機と無機の混成体。
 色とりどりの結晶を纏ったその生物は間違いなく生きている。
 僅かに体から噴射される微細な細菌は、プリズムのように色を変えながら輝き、その狐の美しさを一層引き立てる。

 人間が今までの環境で快適に過ごしていたのは、その環境に適用するよう進化しただけであって、その環境は決して絶対の基準にはなり得ない。
 人為的に加えられた自然環境の変化も存在するが、まったく人間の関係ない現象により環境が大きく変わってしまう事も過去にはあるわけだ。
 そして何が人工であるか、何が天然であるかという判断は非常に難しい。
 例えば超自然により形成されたダイヤモンドも、技術の発展により既に書類的証拠以外に天然であるか人工であるか判別は不可能だ。
 何が良く、何が悪いのかというのは、所詮我々人類を中心にした考えに過ぎないのだ。

 それにしてもこの恐ろしく美しい光景に私は思わず見惚(と)れてしまった。
 しかし、決してそれは人間の踏み入れてはいけない領域で、分厚い防護服を通してでない限り見る事ができない光景である事を忘れてはならない。

 そして、次なる進化への賭けはあまりにも危険過ぎるのだ。

 僕は本を閉じた。
 疲れてしまい続きを読もうという気にはなれなかった。 

 もう、こんな時間になってしまった。
 僕はテーブルに着く。
 二人の声と一緒に、ろうそくの炎が揺らめいていた。




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