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Last update 2008年03月15日

殺(さつ)  著者:神楽崎ゆう



 好奇心は、友情をつなぎ止める絶好の絆である。
 いや、自分でもイカれた好奇心だってのはわかってるし、俺たちが果たして友情とというもので本当につながっていたのかも疑わしいところだった。


 「けっこう呆気なかったね。」
 横たわったモノを眺めながらタクヤは表情も変えずに平然と言った。
 「じゃあ早いうちに片付けよう。時間が経つほど跡が染み付く。」
 ミツルは新聞紙でひとつひとつ包んでガムテープでとめ、大きなビニール袋に入れ始めた。
 タクヤもミツルを手伝おうと壁に貼っていた新聞紙を剥がし始め、丁寧に折りたたんではビニール袋に入れ始めた。
 2人は両手にそれぞれ大きな袋を持って外に出た。遠くのほうで車が走る音が聞こえる。それ以外は辺りはとても静かで、満月の光だけが彼らを照らしていた。


 俺たちは、人間を殺した。
 「人を殺してみる」とかいうのは俺たちの好奇心の的だった。大動脈を切るとどんだけ血が吹き飛ぶのか、刺すときの感触はどんなものなのか、のこぎりで切るとどんな音がするのか、輪切りにした肉の断面はどうなっているか・・・。考えるとわからないことは山ほど出てきた。
 そんな俺たちはインターネットのあるサイトで出会った。
 俺が中二で、タクヤは小学生のときだったそうだ。最初は行列を作っている蟻を踏み潰すのが快感でしょうがなかった。そんなことをしていると日が暮れるのも忘れてしまっていたんだ。
 それからリストカットをする奴ってどんな感じなのかを知りたくて左手首も切ってみた。みんな平然とやってのけるけど、あれはさすがに痛い。
 それからは小動物にも興味が出てきて、それで今に至るのだった。


 山中でバラバラ死体が発見された。死体の身元確認を急いでいるが、死体は新聞紙に包まれビニール袋に入れられて埋められていた。
 新聞の表面はどれもそのことで持ちきりだった。その犯人というのもまだ未成年2人であって、犯罪当初は15歳だった。
 裁判の判決は死刑か終身刑に値するものである。これに対し、20人の弁護士団が未成年の死刑廃止に声を上げている。


 タクヤは今どうしているのだろう。警察が来て連れられてからまだ一度も会っていない。毎日のようにサツが俺の所へきては犯行の動機を聞かれ、タクヤとの関係とかしつこく聞いてきた。
 ぁあ、あと精神科の医者とか言ってた奴も来たな。心理テストとか言って根掘り葉掘り質問攻めだ。しまいにはぼそりと「狂ってる」とかほざいて出ていきやがった。小さいころから親がいないからだとか、タクヤに関しては学校でいじめを受けていたのが原因だとか、周りは勝手に俺たちのことを決めやがる。


 6月26日、判決は決まった。未成年ということで、精神の異常は今後の治療で治る見込みがあるとして、懲役10年とされた。


 俺はその結果を弁護士に聞いてがっくりときた。
 10年もこんな暗い部屋で過ごすなんて。未成年の死刑はなしだ?
 死刑が一番重い刑だなんて間違っている。死んだほうがはるかに楽だ。生きている限り苦痛は付きまとうし、牢から出たところでまともに生きていくことなんて無理なんだ。
 希望は、抱擁ではなく一杯のスープだ。
 スープでおなかいっぱいになることはないし、そもそも希望で何が変わるわけなんてないのだ。




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