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Last update 2008年03月15日

決戦、前日  著者:知



「本当にそうだろうか。彼女と俺は、同じ種類なのだろうか」
 ベッドに寝転がり、そう呟いた。

 あの日から、決して答えの出る事のない疑問が頭の中を駆け巡っている。
 気が付くといつも同じことばかり考えている。

 枕元に置いていた携帯を取り、受信メールを見る。

「明日、時間大丈夫?」

 今日届いた、彼女らしい何のかざりっけのないシンプルなメール。だけど、このメールを見た瞬間に頭が真っ白になった。

「今日は時間がないから次に話すね。何故、ぼくが、再び書きはじめたのかを」

 互いに色々と忙しく時間が作れなかったため、彼女がそう言ってから数週間が経っていた。
 このまま何もないままになるのでは、そう思っていた。しかし、遂にこの日が来た、そう思うと何も考えられなくなってしまった。


 実は俺は大学に入る前から彼女の事を知っていた。その事を彼女は知らないようだ。
 俺も彼女も1浪しているのだが、同じ予備校に通っていて、同じ教室で授業を受けていた。大きな予備校だったので同じ教室で授業を受けていても互いの事を知らない、そんな事は当たり前だった。実際に彼女と予備校でコミュニケーションをとったことは覚えている限りでは1回しかない。彼女がその事を知らないのは当たり前なのだ。
 でも、その1回が凄く印象に残っていた。
 印象に残っていたと言っても何も特別な事があったわけではなく、教室変更があったことを知らず、1人教室にいた彼女に教室変更があった事を言っただけ。
 でも、その日から気が付けば彼女を見ている自分がいた。恋心からではなく純粋に興味から彼女を見ていた。
 彼女は誰も寄せ付けないような雰囲気を身に纏い、気だるそうに授業を受けていた。授業を受けるのが面倒でサボる奴は結構いた。でも、彼女はサボることなく授業を受けていた。
 傍目に見ると成績が良く真面目な生徒。でも、授業はただ受けているだけのように見えた。成績にも関心が全くなかったみたいだった。模試の結果を全く見ずにカバンの中に仕舞っているのを見た事があった。

 予備校に通っている人には大学に合格するという目標があるはずだ。よく授業をサボっている奴も、だ。
 そうでなかったとしても、少なくとも未来に向かっている。滑稽無燈な物であったとしても、それを大きな声で誇らしげに、自分はやればできるのだ、そう語る。
 しかし、彼女は現在をただ歩いているという感じがした。未来に向かうということを、あらかじめ諦めていたようだった。

 彼女と同じ大学の同じ学部に入ったのに、同じゼミになるまで一度も会うことはなかった。彼女と始めてゼミで会ったとき、別人と思うほど変わっていた。
 一体、何があったのか、彼女に対する興味はますます深まった。彼女と触れ合ううちに、興味が恋心に変わりつつあるのは自覚している。いや、もしかしたら既に変わっているのかもしれない。
 彼女の心がわからず、考えても仕方がないことばかり考えているのだから。




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