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Last update 2008年03月16日

石。  著者:真紅



そのあとは、何もかも真っ白になった。

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喜びで真っ白になった僕は、石を握っている。
その喜びで、さっきまでうなだれるような暑さを感じない。
ランドセルの中の筆箱が、心臓と合わさる様にカチャンと音を立てる。
学校帰りに立ち寄った、この川原で拾った石。
灰色の、でも、不思議と透き通っているような石。
僕はその石を両手で包み込んだ。
時折強く、時折弱く。
石は冷たいまま、握る僕の体温を吸い取ってゆく。
だが、じわじわと温まっていく石が愛しく感じる。
僕はボコボコのその石に、頬を寄せる。
額から流れた汗が、石へと染込む。
そっと、渇いた口付けをした。
砂の味。
少し変わっているであろうその行為に、僕は何故か嬉しくなる。
そうだ、これはあの石だ。
僕の好きな本に出てくる、魔法の石。
きっとそうだ。
"賢者の石"なんだ。

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公園で一緒に遊んでいた友人に見せる。
自慢するかのように石をかざす僕に、友人は尋ねる。
「その石は何?」
そらきた。
自信満々に、胸を張る。
そして、大きく息を吸って静かに僕は「賢者の石」と答えた。
すると友人はバカだ、と嘲笑する。
バカはお前だ、と悔しさで言い返す。
でも、友人の嘲笑は収まらない。
身体が恥ずかしさと、怒りで震える。
答えた時の僕の真面目な顔が、そんなに面白かったのか。
恥ずかしくなった僕はそこから逃げる。
逃げても逃げても聞こえるその笑い声に、僕は走りながら泣いた。

 ――――――――――――――――――――――

学校へ行く途中。
友人と会った。
まだ、昨日の事を笑い飛ばしている。
僕は嘘なんて付いちゃいない。
家に帰ってから、皆に話した。
ママにも、パパにも。
けど、誰も僕を信じない。
皆が、僕を笑う。
だって、昨日読んだんだ。
確かに本で読んだ。
僕は、読みかけの本を開く。
ホラ、意地悪そうな魔女が言っている。
「賢者の石はどんな願いでも叶えてくれる、不思議な綺麗な石だ」って。
「願いが叶う時、石は透明に光り輝く」って。
そうだ、これは賢者の石なんだ。
ホラ、その証拠にもう願いを叶えてくれた。
さっき願ったんだ。
ポツリ、呟く。
頬の涙の跡が、夕日に照らし出される。
「信じないナラ、死んじゃえ」
お返しに、ワラッテアゲル。
「バイバイ。」
僕の目には、先程まで嘲笑していた友人が駅のホームから落ちるのが映っていた。
その目は僕を捉えていた。
でも、次の瞬間真っ赤に僕の視界は染まった。

灰色の石はすでに透明に変わっていて、その真ん中から幾筋もの光を放っていた。




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