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Last update 2008年03月16日

サミットサミットサミット  著者:空蝉八尋



「でも、すでにある程度、わたしたちは世の中のことを経験しなくても済むようになってしまっているじゃないの」
 国会議事堂のひとつの席で、若い女性の声がした。
 何か重大な物事を決める会議なのだろうか、黒々と埋まった席が並ぶ。
「まったくだ。経験豊富? もう意味を成さない言葉のようだ」
 その向かい合わせで、机の上へでっぱったお腹をさすりながら中年男性が言った。
「それではそれも決め手にならんな」
「流れが良くなったんだよ。段階など踏まずに、誰でも簡単誕生! 合格! 結婚! 出世! そして安楽死!」
「保険から始まり、人生保障の進歩はここまで成長した」
「なんて幸せな人生を送れるようになったのかしら」
 その場に居る全員の顔が、夢見がちにほころんだ。

「だれも不満を持つ国民は居ないし」
 スクリーンに映し出された統計をレーザーで指し、眼鏡を持ち上げながら。
「誰もが満足な生活を送っているようだし」
 その隣には同じように一色で埋め尽くされたグラフが映し出されている。
「我々は成功したんだ、この国の改革に!」
 その場に居る、752人は声を張り上げた。

「罪を犯すにも武器がない」
「金属物質へ結合する生物兵器カビで、そんなものはとっくに滅びた」
 誰かが手を高々と上げる。
「諸外国との交通は、飛行機やら船やらも、そのカビで使い物にならないし」
「外からの不要物はすべて遮断されたのだ」

 ふと、誰かが首を傾げてしまった。

「そうなると、どうする?」

「はてさて、これは便利なものか?」
「はたまた、これは不便なものか?」
「聞いてみればいい」
 そこでやっと初めて、散り散りだった皆の視線がある一点に集まった。


「失礼致します、私たちは誰を首領にすればいいのでしょう?」







『再起動起動起動、データ修復修復、作成作成……完了、首領二スベキ人物、該当者ゼロ、データ統計国民数ゼロ、故該当者ゼロ……首領ヲ作成スル必要ナシ…
 …ゼロ、ゼロ……』





 最後の電子音が鳴り止むと、その場はワッと沸いた。
「答えが出なすった! これに従えば間違いはない!」
「いいえ、間違いなどあるものですか。今まで従ってきた結果を見ていたでしょう?」
「統一したんだ。遂に、私たちはこの国を何の異議もなくひとつにした!」
 肩を取り合い、溢れる喜びを分かち合う752人。 
「この名前は歴史に残るぞ! かの有名なナポレオンでさえ太刀打ち出来ないほどの、その名を轟かせるに違いない!」

 彼らは拍手喝采した。
 精一杯の誠意と、期待と、崇めと、充実と、未来と、自分達へ。

 人工的合成物に過ぎない有名人を、真の英雄だと思いこんで。




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