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Last update 2008年03月16日

素敵な場所に素敵な人  著者:AR1




「問題はこの誰にでも平等に無慈悲な世界を、どう受け入れるかってことだったのかもな」
 誰かの墓の前で溜め息をつく男。鐘の音は死の象徴、生まれ出でたものは形を崩す。
 彼の前にそびえる墓は、彼の座高よりも高いくせに妙にいびつな形に切り刻まれ、されど墓石としての機能を辛うじて保っている状態に見える。指先で押したら呆気なく崩壊するのだろうか、とそれを実行してみるものの冷たい硬質感が爪の奥を貫くだけで、男には墓石が音を立てて笑っているように見えた。
 つぎはぎだらけで家名もろくに読めないような墓石なんぞ墓ではない、ということに男は気づいた。それでは、このピカソの絵を一色に染めてしまったかのような、もしくは極めていい加減な設計の幾何学模様のようなこの石はなんなのだろうか、とメトロノームのように前後左右に触れる脳味噌で分析してみた。
 後ろを見ると、今度は白い炎が直線を描いて宙を揺らめく。体を捻って正体を突き止めようとするものの、金縛りに囚われた体は地面へ縫い付けられる。まったく抵抗できないまま、男は砂利と密接な間柄。
 自分の姿格好もろくに認識しないまま、男は夜空の奥深くからスコープでこちらを狙っている連中に大声で激昂した。
「テメェら、俺のタバコを返しやがれっ!!」

「ああ……やっぱりここだったか」
 青い帽子を被った中年の男が答える。その隣でパーカーのフードを目深に被った、やはり同年代の男が答える。
「あいつ、酔っ払うといつも公園だもんなあ」何もかもが馬鹿馬鹿しいとばかりに、フードの下は憮然とした表情が潜んでいる。「手はつけられんし、幻覚は見るし、錯覚に陥るし……」
「どうする?」諦観を悟った声音で、青い帽子。
「選択肢は二つだ――あいつが一人で警察のお世話になるか、俺達も一緒にスキンシップを楽しむか」
 二人の見解が一致するのに五秒とかからなかった。言うまでもないだろう、という苦しい笑顔でをして――
「「……放っておこう」」
 二人の男は公園の全景を観察できる丘に背を向ける。その姿は他人を装っている風ではなく、もはや他人そのものであった。
「ダメだ!! あいつダメだ!! タバコのことしか考えてない! なんで操縦桿握らせんだよ!?」




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