Last update 2007年10月07日
タイトルなし 著者:GURA
『そうですね』と僕は言った。
『その答は、僕が報せるものではなく、あなたの胸の奥にあるはずです。』
僕が応えるまでには、幾筋かの風がふたりの間を、まるで切れそうな糸を紡ぎ合わせるかのように擦り抜けていった。
僕が応えるまでには、幾筋かの風がふたりの間を、まるで切れそうな糸を紡ぎ合わせるかのように擦り抜けていった。
石畳を転がっていく落ち葉の群は、きっと無邪気な者にしか解らない、なにか魔法の歌を囁いていくかのようだ。
太陽は、もう落ちる。
湖からの渡り風を纏いながら、彼女は細いブーツからその影を伸ばし、ふと空を見上げた。
湖からの渡り風を纏いながら、彼女は細いブーツからその影を伸ばし、ふと空を見上げた。
呟いた彼女の声は、僕には届かない。
風の音に掻き消されて?
それとも、自分の心にだけ聞かせる、彼女の魔法だから?
それとも、
僕にはもう、
届かない、
声だから…?
風の音に掻き消されて?
それとも、自分の心にだけ聞かせる、彼女の魔法だから?
それとも、
僕にはもう、
届かない、
声だから…?
僕は握り締めた自分の薬指を、ぐっとコートの影に隠す。
僕の中にゆっくりと流れる想いの数々は、とうとう言葉にはならず、彼女をただじっ と見つめ続けることしかさせてくれなかった。
僕の中にゆっくりと流れる想いの数々は、とうとう言葉にはならず、彼女をただじっ と見つめ続けることしかさせてくれなかった。
初秋の太陽が頬の上にまつ毛の影を落とし、それが細かく震えているのが見えた。