※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Last update 2007年10月07日

タイトルなし 著者:一茶


彼女は少し青ざめて、まだ考え込んでいた。


しばらくして、彼女が言った。
「死因は、なんなの?」
彼女は弱々しい声でそう訊いてきた。
「失血死って言ってた。血を流し過ぎていたって」
「そうなんだ」
「輸血したけど間に合わなかったって」
「・・・」「・・・」

彼が死んだ。
それを数刻前に電話口の彼の家族から聞いた。
私と彼女と彼は親友だった。
友達以上恋人未満という言葉がぴったり合う。
不思議な関係だったが、居心地が良かった。

その日もいつものように三人そろって朝が始まった。
こんな関係のためか仕事も家も同じくしていた。
彼女が社長で私と彼が社員。
まぁ、表向きはそうなっていた。
実際は力関係なんてまったく無く、みんなで笑って仕事をしていた。

珍しく大きな仕事が入って私たちは張り切っていた。
三人で書類を作成して、彼が先方へ届けに行く。
バイクに乗る彼に、私は「気をつけて」と言った。
彼女は「急いでね」と。彼は「行ってくる」と。
それが私たちと彼との最後の会話だった。

「私があの時、『急いで』なんて言わなければ・・・」
彼女が暗い声でそう言う。
「そんなことないよ。それは関係ない」
「でも」
「でもじゃない!そんなふうに追い詰めないで」
「・・・」「・・・」

そういえば、分からないことがあった。
何で私が彼に向かって「気をつけて」と言ったのかが。
いつもの私ならそんなことは言わないで「がんばって」と言ったはずだ。
そういえば、彼の後ろに何かが見えたような・・・。
彼の死が見えた? そんな馬鹿なはずない。

「これから、どうしようか?」
彼女に訊いた。
三人だけでやっていた仕事だ。
それぞれの仕事の分担がうまくいっていた。
だから、誰かが欠けただけでも仕事ができないことは分かっていた。
「たぶん、ここは閉じないといけないわね」
「私たちも当分はそれぞれの就職活動かな?」
「でも、彼がいたここを失くしたくはないね」
「ええ、どうにかできればいいんだけど」
「・・・」「・・・」


それから数ヶ月が経った。
私と彼女は仕事場を閉じて、更に彼との思い出の家も売り払った。
就職活動はうまくいかなかったが、なんとか仕事には就けた。
いつものように、仕事場まで電車で行く。
ふいに、窓に何にか黒い影が見えた。
彼の後ろにあったのと同じ?
まさか・・・


私は何かしらゾッとして、前のガラスに映る人の姿を見た。





コメント

名前:
コメント:
| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
|ログイン|