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Space Child Adventure 2

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「サンクチュアリに高エネルギー反応! 侵入者です!?」
「サンクチュアリからメインコンピューターに侵入!」
「レシーバーから通信。船内に不審者を発見したと・・・」
 ブリッジで飛び交う信じられない事態が、ガーディアン達にスクランブルをかける。となれば当然、アスラン達の出番となる。
「船内のコントロール、80%掌握されてんだってよ」
 ディアッカが叫んだ途端、船内の電源が一瞬落ちた。
「メインコンピューターが落ちたのかっ!」
「違う。外部からの接続を絶って、スリープモードに移行したんだ」
 アスランは静か過ぎる船内をバイクで駆け巡りながら、今回の事態を考える。サンクチュアリの封印を解いた途端現れた侵入者。オーソリティからの報告でも、侵入者はサンクチュアリから出現したと言っていた。この宇宙船が惑星プラントで発見されてから、その聖域に足を踏み入れた者はいないのだ、だとしたら侵入者とは?
「ニコル達はなんてっ?!」
 ガーディアンと共に船内を不審者を追跡中のレシーバー達の状況の気になる。
 頭の中で響く海の音だけが、段々と鮮明になる。
 時々、脳内でフラッシュバックする記憶にない風景が、どんどん荒んでいくのを無理やり振り払う。
 船内を飛び回るバイクに跨りサンクチュアリを目指すが、船内の侵入者によりせっかく開けたサンクチュアリへのゲートが閉じられようとしていた。
「間に合うかっ!」
 バイクに積んでいる修理キットが重い。
 何が何でもあの中に飛び込まなくてはと思っている自分がいた。スロットルを全開にして、限界まで絞って、しまいには修理キットをパージしていた。
「アスラン! お前っ!?」
 イザークの声が後で聞こえる。
 それでも、閉まりかけるゲートの僅かに残った隙間にバイクごと飛び込む事に成功していた。パトライトがくるくると回ってトラ縞の危険領域が重なると、サンクチュアリへのゲートが完全に封鎖される。
 寸での所で間に合わなかったイザークとディアッカがブリッジに通信を入れる。
 目の前には巨大な閉ざされた入り口。
「くそっ!」
「どうする、イザーク? こっから行けないとなると、外からしか入れないぜ?」
 銀髪が揺れて、イザークの青い目に睨みつけられていた。ディアッカがしまったと思ったのもあとの祭り。
「それだっ! でかした、ディアッカ!!」
 イザークはバイクを反転させると、猛スピードで外部ハッチのあるブロックを目指した。


 一方、辛うじてサンクチュアリの中に入る事に成功したアスランは、目の前の光景に言葉を失っていた。今まで見た事も聞いた事もない景色が広がっている。青い空、水を湛えた緑の大地。全身をガーディアン用のスーツで覆っているから、ここの空気を感じる事はできないが、きっと爽やかな風が吹いているのだと、なぜか分かる。
 こんなに天気のいい日は草の臭いを含んで、冒険したい気分になる。
 一歩を踏み出して、愕然と膝を折った。
「どうして・・・知っている?」
 スーツごしなのに大地の草の感触を覚えている。
 始めてみる光景だというのに、惑星プラントのドーム都市にはこんな場所はありもしないのに、確かに記憶に存在するのだ。
 あれほど聞こえた、音も今はすっかり消えている。
 変わりに外部マイクが捕らえた音にはっとした。ここには船を乗っ取ろうとする侵入者がいることを思い出す。慌てて腰に手をやるが、修理キットはここに来るまでに捨ててきてしまっていたし、殆ど丸腰の状態で音の方向を振り返った。

 やっと会えた。

 聞こえないのに、頭に響く声。
「この声!」
 ずっと夢の中で囁かれていた声と同じ。
 その人物が目の前にいた。そう、それは人の形をして、硬いスーツなどで身体を覆わずに、普通に過ごす服を着ていた。アスランと同じくらいの少年。
 茶色の髪に紫の瞳の少年が笑う。

 久しぶりだね、アスラン。

 会った事のない少年に久しぶりといわれて、アスランはますます混乱する。
「君は誰だ?」
 相手が多少悲しそうな顔をしようとも、惑星プラントのドーム都市で暮らした16年間の記憶の中に彼はいないのだ。それとも、ずっと小さい頃にあった事があるのだろうか。それなら、どうして。
「どうして、ここにいる・・・・・・」

 音を紡ぐのって難しいよね。早く君の顔が見たい。

 伸ばされた手が自分のガーディアンスーツに触れているのだと知った時、アスランは恐怖で全身の力が抜けそうだった。一歩どころではなく離れていた筈なのに、目の前にいるではないか。軽く触れられただけなのに、そこそこ着込むのに苦労するスーツの留め金が勝手に外れていく。
 やっぱり、草の臭いだ。
 目の前で微笑む少年に、とんでもない危機にさらされているというのに、ほおを撫でる風に漠然とそんな事を思っていた。
「何言ってるのかな、アスランは。ここは僕達が生まれた場所でしょ。コピーだけれどもね」
「君だ・・・」
 声だ。そう彼の声を自分の耳で聞いている。自分の声が情けないくらい震えているのが分かるけれど、分からない事だらけでどうしたらいいのか分からない。
 自分の事でさえ、自信がない。
 俺はアスラン・ザラ。父さんは都市の評議会議員で、俺はアカデミーの学生。
 こんな場所知るものか。
「あんまり帰りが遅いから、迎えに来ちゃった」
 抱きしめられたと分かって、突き放そうとしたけれど、ずっと強い力に阻まれてそれは敵わなかった。上下がひっくり返って、目を開ければすぐ真上に彼の顔があった。その向こうに青い空と見えない太陽をさえぎる木々の枝があった。
 近づく紫の瞳だけが全てのハイライトを飲み込んでぼうっと光る。唇に触れた生暖かい感触も、吸われて舌を入れられるまで何をされたのか分からなかった。自分は会ったばかりの正体不明の少年にキスされたのだ。
「なっ、何をするんだっ! 俺は男だっ!!」
「忘れちゃったの? 精神の交わりに身体は関係ないよ」
 気が動転して、相手の言っていることが理解できない。アスランは抵抗を試みるが、押し倒された状況ではどうにもならない。肌が大気にさらされてただでさえ心細い状況だというのに。
「あっ、それとも、久しぶりだから即物的に行く?」
 優しく微笑みかけられたのに、少しも安心できずに身体を硬くする。
 彼が侵入者に間違いはないのに、どうしてこんなことになるのだろう。
 ガーディアンだ、エースだと言っても、アスランはまだ16になろうかという少年だった。


「いた・・・」
 ニコルを初めとするレシーバー達が船内に現れた不審者をついに見つけ出した。船内に作られた都市の残骸の上部に架けられた十字の橋の中央にそれはいた。
「君は?」
 話し掛けた相手はニコルとそう変わらない背の少年。ニコルはアスランと変わらない15歳だが、彼もそれくらいの年齢だということだろうか。
 紫の瞳が印象的な少年が名乗る。
「キラ」
 名乗ったきり、くるりと背中を向けて歩き出す姿にニコル達は慌てて後を追った。


 予備の電源系統と独立したブリッジのコントロール機構でなんとか船を航行させるブリッジのクルー達。勿論船内の様子はわからないし、サンクチュアリの状況がどうなっているか分かろうハズもない。辛うじて、イザークが連絡を入れたおかげでガーディアン達の動きが分かる程度だった。
「ガーディアン達に伝えろ、『無茶はするな』と」
 今だ侵入者からのメインコンピュータへの攻撃は絶えず、船の機能も8割がた乗っ取られたままだ。船内を自由に行き来する事もままならず、サンクチュアリへの突入に外部から侵入せざるをえない状況。
 初めて船外に出たイザーク達は、内部へのハッチの上で装備の確認をしていた。隊長が皆が頷くのをみて、ハッチのパージを試みる。爆発は短く、ガーディアン達は船の危機に次々に船体の中に飛び込んだ。
「おいっ、イザークっ! そんなに飛ばすなって」 
 先頭を突っ切ってサンクチュアリへのゲートハッチに向かう。


「君はどこからの来たのですか?」
 ニコル達が根気よく接したおかげで、少年キラから少しだけ情報を引き出していた。それがちょうど、事態を解析していたオーソリティ達の答えと重なる。
「サンクチュアリは地球の環境を複製した空間です」
 オーソリティが操作したモニタ上で、再現された地球の映像が映される。
 太古の昔、人類達は地球という惑星で完璧に制御された環境で栄華を誇っていた。コーディネーターがもたらす、人類に最も過ごしやすいように調整された、害を与えるものを徹底的に排除した優しい環境。しかし、それは同時に生態系の破壊に繋がることだったのだ。連鎖は乱れ、気象を意のままにしたおかげで、人類以外の生命は途絶え大地は荒れた。地球は死の惑星となってしまったのだ。


「それが僕達の先祖だと言うのですか・・・」
 ニコルだけでなく、話を聞いたレシーバー達が一様に沈痛な表情をする。
 優しすぎる環境に慣れた人類は、もはや過酷な外の空間で生活することはできなかった。事の重大さに直面した人類は生体機械であるコーディネーターを破棄し、環境が修復されるまで、外宇宙に移民して時を待ったのだ。
 この船はその時の移民船。惑星プラントはそんな移民先の一つ。
 だが、問題はサンクチュアリに現れたエネルギー体が、この船にクルーをサンクチュアリに害を与えるものとして排除をはじめた事だ。封印を解いたことで、破棄されたはずのコーディネーターまで一緒に目覚めてしまったらしい。なんとか、サンクチュアリに出現したコーディネーターを停め、船の安全を確保しなくてはならない。
 未知の存在への恐怖を使命感で打ち破って、ガーディアン達がサンクチュアリへと迫る。


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まあ、背景は同じですが、所々違ってきます。
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