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 地上の覇権をかけたゴールドドラゴンとレッドドラゴンの闘いから1万年。ゴールドドラゴンの守護する王国エターナル。メイジと呼ばれる貴族階級と奴隷同然の平民が王国にはいた。



 Level 1



 広大な王国の領土を広く遍く豊かさで満たすことなど無理な話なのだと言うことくらい、分かっている。こうして高い王宮の塔から見下ろす王都には、それは物資で溢れかえり、着飾った貴族達、花で覆った屋敷を沢山観ることができる。だが、それは本当にこの国の真の姿だろうか。
 貴族達の屋敷の高い塔の陰になって見えぬ裏通りを過ぎ行く者。
 地下の酒場で管を巻く者。
 我らの繁栄の陰で、どれだけの国民が虐げられていると思うかね?
 メイジに憧れ、弟子入りさせてくれと門戸を叩いた少年がどうなるか、お前は知っているか?
「・・・お父様。きっと、その少年は、庭師か下働きからはじめて・・・そのまま一生を終えることになるのではないかと」
「そうか。お前はそう思うか。・・・だが、それは違うぞ、カガリ。少年はどこにも弟子入りできぬのだ。平民である限り、王立の魔導院にも入ることができぬ」
 だから、その少年はただ路頭に迷い、生きるために盗みを働くことになるのだ。
 今日も、王都の治安を維持する議会の親衛隊が騒がしく駆け回っている。
 第1107代エターナル王、ウズミ・ナラ・アスハ王が塔から王都を見下ろし、第一王女カガリ姫がその視線を追った。
「お父様はその現状を変えようとしているのですか?」
「確かに人は平等ではない。生まれる時と場所を選べぬようにな。しかし、機会は平等に与えられるべきだろう」
 エターナル王国暦9997年。
 ようやく春の足音が聞こえ始めた、3の月と3日目。
 その日、国王は平等宣言とその礎となる法案を、貴族達で占められる評議会に突きつけた。



 Level 2



 ガシャリ。
 鋼鉄でできた仮面で顔の上半分を隠した細身の男が、評議会の議場の中央に歩みでる。
「彼らは野蛮で、わが国の富を食いつぶす存在」
「なぜ、そう決め付けるのだ。ちゃんとした教育さえ行えばわが国の新しい力となる」
「この国が荒れる原因となるかもしれぬ・・・暴動でも起こったらどうされるおつもりです? ただでさえ、王都の治安を維持するのにメイジたちが毎日走り回っているというのに。他国に攻め入られる隙を作ると言うもの」
 エターナルは大陸の殆どを占める大国だが、他に国がないわけではない。
 王と対峙する王を補佐する執政官は、王の出した提案に反対だった。
 当り前だ。差別する側が、無条件に権利をなぜ手放そうとするのだろう。治安や外交など口実に過ぎない。
「ゴールドドラゴンがいる限り、エターナルに攻め入る愚かな国はおるまい」
 国王は手にした金色に光る杖を掲げる。
「おお、さすがはゴールドドラゴンに守られし方だ。ゴールドドラゴン、ゴールドドラゴン! 何かあるとすぐドラゴン。我らもそのような万能の杖があれば、変革を起こすことに躊躇などしないでしょうに」
 国王の手にあるクラインの杖は、俗に君主の杖と呼ばれる世界に一つしかない杖。
 それは、かつて大地を平定した初代女王が所持していた、ゴールドドラゴンを従える伝説の杖。
「ジュールの杖でも探しましょうか」
「何を愚かな事を。かの杖は失われた」
 国王はため息をついて、評議会の議長に向かって顔を上げた。
 居並ぶ貴族達は皆、メイジの徴である、魔導士の杖を打ち鳴らす。
「それでは、評決を!」
 魔法で巻物が中央に立つ執政の下に宙を飛んで送られる。
 鍵爪をつけた手が蝋で封じられた巻物を開くと、これ見よがしに王に向けて評決の結果を見せた。

 否決。

「私は諦めん。いつか、私の想いがおまえ達にも届く日が来ると信じているからな。エターナルのことを真に案ずるのであれば、何が最善かはおのずと見えてくるのだ」
 金糸のマントと翻して、国王が評議場から退いた。



 Level 3



 カガリ姫は議場での様子を侍女に聞き、眉を潜めた。
「・・・杖? 君主の杖でなはなくて?」
「はい。クライン執政がそのようなことを」
 あの仮面で顔を隠した執政官をカガリ姫は好きになれない。
 王家の遠縁の紹介で王宮にいつのまにか溶け込んでいた、潰れたような低い声と、鍵爪の両手を持つ男。大層昔に王家から分化した末端の王族の子孫と言う触れ込みだったが、それを立証できるものは、彼が携えていた手紙しかない。
 疑い様にもそこに押された印章は本物で、評議会を乗っ取られてから忌々しく思っても、偽者だと証明することはできなかった。
「やたら、歴史や魔術に精通したやつのことだ。その杖のこと調べてみる必要がある。賢者グラディスに使いを」

 王女が侍女に命を伝えた時、約束もなくその噂の執政官が姫の部屋を訪れた。
「突然、申し訳ない」
 瀟洒なカーテンの掻き分けて、仮面の男が姿を現した。
「これはこれは執政官どの。何、で・・・しょう?」
 王女は執政の後に付き従う騎士を見て、急に声音を和らげた。
 執政は好きになれないが、従う騎士がまた彼女は苦手だった。柔らかい物腰と紫の瞳を持つベビーフェイスは王宮最強と言われる魔導騎士、キラ。
 階段で足を踏み外した折に、助けられて依頼王女は彼が苦手だった。つい自分のペースを見失ってしまう。

 王女は彼に恋をしていたのだ。

 だから、つい、執政に対するけんか腰が及び腰になってしまう。
「お父上も頑固なことだ。今回は姫からもいい加減諦めるようお伝えいただきたく、お願いに参ったのですよ」
 よくもまあ、いけしゃあしゃあと。とは言ったもので、王女の視線がきつくなる。
 必死に表に出さないように努めて冷静に答えた。
「貴方こそ・・・いつになったら、父上のお気持ちが理解できるのかっ!」



 Level 4



「ルナは素質はあるのに、コントロールが相変わらずねえ」
 可愛い弟子が送ってきた書簡はデスクを飛び越えて、大事にしていた銀の杯を叩き落とし、もう少しで暖炉に飛び込むところだった。読み終えるまでに、謝罪と共に飛び込んでくるかどうか待ち遠しくしていた所に、扉がゆっくり開く。

 王国の東の地にある王立の魔導院。
 魔術を研鑚し、学問を修める学び屋の一室で、歴史を教える賢者が不意の来客にいささか驚く。
 知らされていた人物とは違う来訪者は、白いマントの下に黒いプレートメールを着込む礼儀正しい青年だったのだ。腰に下げた剣がメイジの杖代わりになることで有名な最強のメイジであり、騎士。
「キラ殿。このような所に何かしら。ノックをしていただけると次からはびっくりしなくていいわ」
「お尋ねしたいことがあったのです」
「あらやだ。デートのお誘いなら駄目よ。貴方と私とでは歳が離れすぎているわ」
 賢者グラディスは見た目は成熟した魅力的な女性だが、人とは違う尖った耳をしている。
 エルフ。
 金髪碧眼でヒトと似通った姿をしていても、人とは違う種族である。
 人の何倍も生きる彼らは、通常、人に使われたりはしないが、中には好奇心からか自分から人間社会に飛び込むことがあった。
「ご冗談を。我が主は一人だけです」
「ああ・・・、執政殿ね」
「ジュールの杖の在り処を知りたい」
「教えられないわ」
 彼女が咄嗟に呪文を唱えるが、魔法が効力を発する前に騎士が目の前にいた。
「僕の前に防御は無意味ですよ」
 見据えられた紫の瞳がエルフの魔力さえ退け、二人一斉に暖炉を観る。
「なるほど、あそこに太古に描かれた地図があるのですね。あとは・・・」
 賢者の額に汗が浮かび、苦痛で顔が歪む。
 部屋の中がひしゃげ、天井に亀裂が入る。
「さすが、何百年と生きるエルフですね。ですが、その若さで僕に対抗するなんて早いですよ」
 大きく目を見開く彼女は、囁くように告げた目の前の青年を見上げる。

 絶望と共に突如開かれたドアに、ちいさく叫び声を上げた。
 可愛い弟子がこんな時にやって来てしまった。
「先生っ!?」



 Level 5



「鍵ですね」
「何者っ!?」
 まだ、魔導院に入って日の浅いルナには、だれだか分からなかったらしい。知っていれば、なけなしの魔術を放つなど無謀なことをしなかっただろう。片手を動かすどころか、指1本も動かさずにルナの放った疾風の魔術は消え去ってしまった。
「さっさと吐いた方が言いと思うけど。それとも弟子の前で頭を爆発させるかい?」
「なんて事を―――っ!」
「来るんじゃありませんっ!!」

 ボン

 音だけがした。
「あー、保たなかったか。鍵はまあ、後で探せばいいか」
 ルナの前で、エルフの師匠がガクリと頭を垂れる。
 よろよろと扉の前を離れて近寄ろうとするが、相手の男が怖くて壁伝いにしか歩けない。暖炉に寄りかかって、動かない師匠を見る。
 穏やかな青年と状況があまりに結びつかない。
 それなのに、ヒュっと頬を横切る感触に、小さな真空刃を放たれたのだと知った。
 避けようとしても恐怖で足がガクガクと震え、転びそうになる身体は暖炉の上のものを盛大に床にぶちまけた。
「来ないでっ!」
 暖炉のレンガが吹き飛び、火が一瞬大きく湧き上がる。

 コロコロ・・・

 ルナの前に転がる小さな筒。
 青年もルナもそれを見ていた。
 咄嗟に手を伸ばして掴んだのが、彼女の運命の始まりだった。
「それを渡して」



 Level 6



「これが欲しいのね」
 バシュ。バシュ。
 徐々に空気の刃が大きくなる。もう避けられないかも知れない。
 臥したまま動かない師匠は・・・ああ! 死んでしまったのだろう。
 ルナはまだ見習で魔道具がなければまともに魔術を使うことができないと言うのに。
 床に落ちた燭台、珍しい石。手に当たるものを手当たり次第に投げつけるが、青年の侵攻を止めることはできず、黒い手甲で覆われた手がルナに伸ばされる。
「それを渡すんだっ!」

 予想していた衝撃が来ずに、ルナは閉じた目をゆっくりと開けると、青年との間に誰かが立っている。歪む空間を開いているのは、エルフの師匠。賢者グラディス。


 杖を探すのです。
 杖を手に入れるためには鍵が必要です。ドラゴンの瞳が。
 さよなら・・・私の愛しい弟子よ。行きなさい、ディオキアの踊る子犬亭へ。
 そして、王女を助けてちょうだい。


 徐々に閉じていく空間。
 師匠と青年がいる空間と隔てられていく。この後どうなるかはルナの心持次第だと知っている。テレポートする瞬間、ここで如何に行き先を念じるかがコントロールの正確さをもたらすのだといつも言われていた。

 踊る子犬亭への道を思い描いて、ルナはテレポートした。




続く・・・のかなあ。

ダンジョンはあまり出てこないかも。だって、謎解き苦手ですから、地下10階とかウンザリしてた口なので。それより、主人公がまだ出てきてないんですが・・・。