※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 Level 17



 青い光を放つ石。
 卵大の大きさのそれを懐にしまって、シン達は地上に出た。その足でノームの村に戻る。
 しかし、シン達を待っていたのは静まり返った森だった。

「うそ」

 カンカンと打ち鳴らせど、そこには何もなく、ノームの村が跡形もなく消えていた。あれだけにぎやかな彼らの話し声が何も聞こえない。アイテムに溢れた軒下も、工房も深い森の中のどこにも見当たらない。
 ノームの村は確かにここにあったはずなのに。
 ヨウランやヴィーノは?
 アイテムを買い揃えた、アスランの店は?

 そうだ! あのスペルカード。
 シンはサービスだと言って渡されたスペルカードを探す。

 えっ、ない・・・。
 まさか、あれも幻?

 脳裏で煌く緑色の瞳も、どこで見たのか記憶が見つからない。
 途方に暮れた彼らの頭上を、日が傾いていく。

「戻るしかないだろう」
「戻るって・・・」
 レイが零し、シンが聞き返す。
「踊る子犬亭だ」

 そう、ギルドマスターにヒントを貰ったのだ。もしかしたら、ノームの村が消えてしまったことも何か分かるかも知れない。シンは釈然としないものを抱えて、メサイアの踊る子犬亭へ向かった。
 闇の森を抜けると、日はすっかり暮れて森も夜の闇と同化してしまった。
 踊る子犬亭に着いたのは夜も大分遅い頃で、一同はギルドマスターへの挨拶も程ほどに宿のベッドへと直行した。
 戦闘の連続から解放された安堵感。目的のものを手に入れた達成感。そして、一抹の不安を忘れるように眠りに落ちた。

 翌朝。一行はギルドマスターから驚くべき事実を聞く。

「あの村は、闇の森のダンジョンに挑むパーティにだけ、姿を現す村でね。光る瞳を失ったから、その役目を終えたのだろう」
 この大陸には知られていない不思議が数多く存在するけれど、そんなものをまさか自分が身を持って体験するとは思わなかったシンはただ感心するばかり。

「それで、君達はドラゴンの瞳を手に入れてどうするのかね。予言どおりならばそれは門を開ける鍵なわけだが。門か・・・地図に記されているのかな?」
 オレンジの瞳が鋭く光る。
 同じ盗賊同士、お宝の臭いには敏感だろう。
 シンはギルドマスターに地図のことが知られているのを思い出す。目をつけられてしまったに違いない。今はどちらもこちらの手にあり、表立って問題はないが、今後もそうとは限らない。どうやって、この場を切り抜けるか頭をめぐらす。

「レイ」

 しまった!

 ステラの後にレイがいて、殺気もなしにナイフを構えていた。
「その地図、是非、見てみたいものだ」
 唇の端を上げて、ギルドマスターが言う。
 歯軋りして、懐から地図の入った筒を取り出す。非難の視線を寄越すルナマリアがチラリと目に入るが、今は従うしかない。
 ステラに目で合図を送るが、ここはお互い盗賊同士、下手な合図はできない。
 シンが上目遣いに、恨み節全開でギルドマスターを睨みつける。

 ちくしょう・・・。
 ステラ、暢気に笑っているなよ、ピンチなんだぞっ!
 シンのSOSに彼女はキョトンと首を傾げるもんだから、シンは覚悟を決めた。
 地図がギルドマスターの手のひらに落ちる。
 その時、バタンとドアが開け放たれた。

「マスター、大変だっ。親衛隊のがさ入れだっ!」

 このタイミングを逃さないシンじゃない。
 ステラを引っつかんで、レイの刃から逃れる。が、地図は空中を落下して、床を転がった。コロコロと転がる先を目で追うが、黒いブーツにこつんと当たって向きを変えた。息を呑んだのはシンだけでなく、駆け出して手を伸ばしていたルナマリアも同じ。
 部屋の空気が一気にピリピリと震えて、シンは扉へと顔を上げた。
 ギルドマスターの問いかけは勿論、自分に向けてのハズはなく。

「この部屋には強固な結界張ってあるのだがね。それすら破るか」

 こいつはっ!?
 シンは全身に緊張が走る。
 いつのまにか部屋の中に白いマントの男が佇んでいる。

「流石はエターナル一のメイジにして騎士・キラ」
 ギルドマスターの抑揚のない声がその正体を暴き、ルナマリアの声にならない悲鳴が聞こえた。



 Level 18



 部屋の外にいくつもの鎧兜の音が達、囲まれているのが分かった。
 黒い手甲が地図の筒を拾い上げる。
「これは貰っていきます。それから・・・」

「何するのよ―――っ!」

 ロープのようなものが次々とルナマリアを取り囲んで、出来上がったそれはまるで鳥かごのようだった。ルナマリアが今やロープとは言えないほど硬度を増したロープを掴んでいる。
「取り戻そうなんて思わないで。僕は争い事が好きじゃない」
 一見、ただの優男に見えるのに、誰一人その場を動けない。
 シンもただ震える足をどうにか推し留めて、睨みつけるだった。
 挑んでも、きっと、また手も足もでずに無様にやられるだけ、そんなビジョンが浮かぶ。

 また・・・?
 俺はどうやって、リトルドラゴンを倒した?

 ルナマリアが捉えられた鳥かごを持ち上げる、彼の後ろの甲冑姿の男達。
 シンは自分でも無意識のうちに叫んでいた。
「待てよっ!」

 ―――もう、あのスペルカードはないのに。

 だけど、敵わないって諦めていたら、いつまでも見ているだけだ。
 リトルドラゴンを倒せたんだ、俺だって!

 眉一つ動かさずに振り返る前に、シンは踏み込んだ。
 目にも止まらぬ速さで繰り出される、真空の刃を紙一重でよければ、髪がひと房宙に舞って、頬に赤い筋が浮き上がる。
 痛みは無視して、ソードを振り下ろした。

 ピキキィィン

 見えない壁に押し戻され、シンは後に大きく吹っ飛んでいた。
 確実に届いたと思ったのに、何が起こったのか分からない。

「その瞳。気に入らない色だね」
 白いマントが持ち上がり、陽炎が起こる。

「まずいっ!」
 何がどうまずいのかシンは分からず、扉の外へ消えていく後姿と、ギルドマスターのスペルが発動するのを漫然と見送った。気づいた時には、書物が散乱した部屋でステラが腰に引っ付いて、背中に額を押し当てていた。



続く

まだまだ道のりは遠いぜよ。ようやく通常レベルに復帰です。なんだか、変な方向に物語が転がり始めてます。