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 Level 28



「女王っ!」
「分かっている」

 議会塔を陥落させるわけにはいかない。
 彼らの要求は飲めないが、王と議会が対立したままでは国民に示しがつかない。王都での内乱は今すぐにでも終息させなければならない。
「騎乗するっ」
 勇ましい戦装束の女王が、特別に用意されたゴールドドラゴンに乗る。君主の杖を篩って、議会塔へと向かえば、取り囲むように十数匹のゴールドドラゴンが後に続く。
 君主の杖が指し示すままに議会塔目指して王都に林立する塔の間をすり抜け、ドラゴンの口から炎のブレスが漏れる。

「執政っ!!」

 シンがようやく最上階に辿り着いた、その時。
 女王の大音声が議会派陣中に轟き渡った。

 ゴールドドラゴンに取り囲まれて、メイジ達が恐れをなして逃げ散る。この場にそぐわないシンに構わず塔を降り、ある者はテレポートで逃げ、ある者は最上階からダイブする。
 その中でただ一人、不敵にドラゴンに騎乗した女王を見上げるのは、たった今名指しされた執政。

 あれが執政・・・?!

 少し離れてキラがおり、その後の壁にもたれるようにアスランが倒れていた。

 シンはとんでもない修羅場に出くわしたのだった。
 金の鎧を着た女王と鉄化面で顔を隠した両陣営のトップが睨み合っている上、杖を奪った執政側が絶体絶命なのだ。このまま、女王の乗ったゴールドドラゴンのブレスで一巻の終わりになりかねない。
 しかし、追い詰められた執政官が空中のゴールドドラゴンを見据え、手にしたジュールの杖をゆっくりと向ける。捲土重来の土煙の変わりに、杖の宝珠が光を帯びる。

 あっ。杖が。
 目まぐるしく事態が入れ替わる。

「駄目だッ!」

 叫んだのは、シンから杖を奪い、アスランを浚った騎士。
 だが、駆け寄るキラの目の前で執政がぐらりとよろめいた。
 体当たりをしたのは壁に横たわっていたアスランで、荒い息をついて執政から杖を奪おうと再び立ち上がっている。

 執政を庇うように立つキラの後で、執政が彼に杖を向けた。

 アスランがジュールの杖に膝を折る。
 その杖はカオティックの雄・レッドドラゴンを意のままに操るモノ。

 どれだけ言葉を尽くそうと、目の前の光景が全てを物語る。

 闇の森でドラゴンの瞳を手に入れられる者を待っていた。
 丘の迷宮にいるという友人は建国の伝説の時からいる杖を作った奴で。

 ジュールの杖の宝珠が紅く光り、空を覆う暗雲が渦を巻いて、赤い光の奔流が押し寄せる。

「ぅぐっ・・・っ!」

 ガクリと膝をついたアスランが両手で自らを抱きしめて、腰を折る。
 叫びにならない声が皆の鼓膜を打ち、恐怖で足が竦む。
 ゆらりと顔を上げたそこにあるのは光を放つ碧の双眸。
 人ならざる瞳に見つめられて、シンは3度目にしてそれがドラゴンの瞳だと知った。
 蒼いドラゴンの瞳。続いて、紫の瞳、そして今。

 彼を撃つ赤い光が容を造る。
 ドラゴン。

 闇の森の地底で出会った腕試しの竜じゃない、本物の巨大なレッドドラゴン。燃えるような赤い体躯はまるで血を凝縮したような濃い紅の鱗で覆われていて、背には身の丈の何倍もあろうかという巨大な翼。身体を支えるように四肢が塔に穿たれていて。

 指の先まで熱が充満するこの感覚。

 閉じられた瞼が開く、それだけで議会塔の最上階が吹き飛んだ。



 Level 29



 俺・・・生きてる・・・?

 塔の最上階部分。
 天蓋が吹き飛んで、屋上になっている。シンは手足が動くことを確認して、そこから周囲を見回した。議会塔の後ろにあった数々の塔が跡形もなく無くなっていて、王都を轟音が襲った。

 空中のレッドドラゴンに次々とゴールドドラゴン達が体当たりしている。狂ったようにレッドドラゴンに向かうゴールドドラゴンとは反対に、女王の乗ったゴールドドラゴンだけが飛び続けていた。

 動きを止めたレッドドラゴン。

 あの杖が・・・。
 シンは吹きさらしの議会塔の最上階で、その光景を見下ろす執政を見つける。相変わらずあの嫌な奴がその傍に控え、女王の竜のブレスを防いでいる。

「キラ・・・レッドドラゴンを喰らいなさいませ」

 えっ、喰らうって、誰が何を。

 その声は一体どこからって、答えは一つしかない。 
 探るシンとは正反対に、黒い鎧の騎士が執政を振り返っていた。

「命を繋ぐにはそれしか方法はありませんわ」

 女だ。
 会話の内容は、衝撃過ぎて意味が掴めないが。

「生きた竜の心臓がキラに永遠の寿命を与えてくれます。もうそれしか貴方の命を繋ぎとめる方法がないのです」

「何を言って・・・?」

 ドラゴンを食べろを言い出した執政に構うことなく、また一体とゴールドドラゴンがぶつかっていく。レッドドラゴンとゴールドドラゴンでは、身体の大きさから、パワーから随分と違いあったが、シンの目の前で繰り広げられる竜の肉弾戦はあまりに重かった。相当な質量をもった物体が動き、ぶつかり、落下するのだ。
 動きを封じられたとは言え、レッドドラゴンの僅かな抵抗で羽根をもがれて落ちていくゴールドドラゴン達。君主の杖を振り続ける女王が無駄と判断したのか、猛スピードで突っ込んでくる。

 すぐ上を女王の乗ったゴールドドラゴンが通り過ぎる。炎のブレスの狙いは外れたが、空気の刃を議会塔の最上階にいる3人に叩きつける。

「今やそれだけの力があるドラゴンはアスランだけ・・・例え、封じられたカオティックでも、貴方の命を消さないためなら、私はっ!」

「エターナルの乱れは・・・僕の加護が足りないからじゃないっ」

 そんなことの為にステラは死んだのか。
 手の中の剣を握り締める。
 世の中にはただ今日を生きるだけで精一杯な奴らが大勢いるのに。腹を空かせ、雨露をしのぐことすら満足にできないっていうのに。

 永遠の命だって・・・?

「覚悟っ!!」

 執政の頭上に女王が迫っていた。
 シンは頭で考えるよりも早く、感情のままに瓦礫の床を蹴っていた。





続く


鉄仮面さんはとっくにバレバレだったと思いますが、ようやくカミングアウト。カガリとの衝撃の対面は次回、かなあ。せっかくドラゴン化なのに、カッコイイシーンにならないよ!