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Men of Destiny 13

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星空を覆い尽くす時



「じゃあ、ステラはこの部屋を使って」
と、シンは自分の家でもないのに家主気取りでステラを空き部屋に案内する。アレックスと二人で急遽片付けた部屋で、毛布や布団はアレックスとシンの分を提供した。おかげで二人はリビングで寝る羽目になるのだが。


 掃除をしながら、シンはアレックスに色々と入れ知恵されていた。
『彼女、一人か? 身分を証明するものとか何も持っていないみたいだし、俺のことはまだ警戒しているみたいだから、お前、色々聞き出しとけよ』
 意味が分からない。
『ずっとここに住むわけにいかないだろ。お前は居候で、彼女は家族が探しているかも知れないんだし』
『そっか』
 シンはコーディネータで、今はレジスタンスの仲間を助け出すチャンスを待っている状態。時が来ればシンはここを出て行ってしまう。アレックスが彼女を放り出すとは思えないが、それに縋る事はできない。
 何より、家族が。
『お前、何も考えずに連れてきたのか? もしかして・・・一目惚れ?』
 ガシャン。持っていたガラクタを落としていた。
 この部屋はもともとアレックスの作業部屋でキーホルダーのパーツやら、家電修理用の機材などが散乱していた。シンはそれらをまとめて備え付けのクローゼットの中に放り込んでいる最中だった。
『違いますよ!』
『分かりやすい反応だ』
 急いで落としたガラクタを拾い集めて乱暴に放り投げる。鼻息荒く次のガラクタを寄せ集めて抱えたところで、ステラが顔を覗かせた。
「シン?」
「ステラ。もうちょっとだから」
「シャワー浴びるの、どこ?」
 ドサリ。シンはまた、ガラクタを拾い集める羽目になった。
「廊下の突き当たり右の扉だから」
 アレックスが手を上げて説明しているが、ステラがちゃんと分かっているかどうかは怪しいものだ。うんと頷いては居るが、見ている方向が全く違う。それはアレックスにも分かっているのか、シンに『案内してあげて』と言われてしまった。
 扉を開けたそこは、シンもまだ数えるほどしか使ったことがないバスルーム。
 バスルームで立ち尽くすステラを見て、嫌な予感がよぎる。
「これがシャワーね、温度は自動調節だから」
 どうして、他人の家のシャワーの使い方まで懇切丁寧に教えているのだろうと、疑問に思いながらもシンは、『タオルはここに置いておくから』と至れりつくせりである。
 無論ただの善意だけと言うわけではない。
「どうして一日中あんなところにいたんだ?」
「ステラ、スティングとアウル待ってたの」
 少し舌足らずな話し方にも大分慣れたと思う。シンはステラがいきなり服のボタンを外すのを見て慌てて飛び出した。


 シンと同じようにアレックスからTシャツを提供されたステラが、濡れた髪を拭いているのか怪しい手つきでタオルを動かしている。
「ここ、どこ?」
今更ながらこんなことを効いてくる彼女に、シンは驚いてアレックスと顔を見合わせた。
「ここは俺の家で、君にはそこの部屋を使ってもらえればいいのだけど」
「シンは?」
 首を竦めてアレックスを伺い、シンを見るステラ。そんなに警戒することはないとシンは思うのだが、ステラにとってはそうではないらしい。アレックスも苦笑して肩を竦める。
「シン? 彼は居候。君は彼の初恋の人、なんてね」
「そこ、絶対違いますから!」
 首を傾げる彼女と反論するシンを無視してアレックスが部屋の明かりを消してカーテンを開ける。灯火管制の敷かれた街に明かりはなく暗がりだけが広がっている。その窓からは平和のメッセージが見えないから本当に暗闇だった。
「お邪魔虫は洗濯でもはじめますか、二人で仲良くな。あっ、シンは変な気、おこさないように」
「ちょ、ちょっと!」
 こんな真っ暗な部屋困るんだけど。シンはばつが悪そうにステラを見れば、彼女は窓の外から街を見ていた。正確には夜空を。
「寒くないのか?」
 アレックスから借りたTシャツはやっぱり大きくでぶかぶかだった。毛布でもと探した視界の端に流れる星が一つ。
「わあ・・・」
 尾を引いて夜空を横切る流れ星。
「きれい」
 誘うようにいくつもいくつも目の中を星が流れていく。それは確かにきれいだけれども、隕石が大気との摩擦で起こる現象だと分かっているけども。
 人の命が消える最後の輝きに見えて。
「そうだな」


 洗濯をし終わって部屋を覗いたアレックスが、肩を寄せ合って眠る二人に毛布をかけるのは1時間ほどたった頃。収まりかけていた流星群の最後の一筋が夜空を渡る。
「運命・・・か」
 命を燃やして宇宙をかける流れ星が彼の瞳にも映っていた。長く赤い尾を引く星に瞳を閉じる。
「おやすみ」


 翌日、バーガーショップに辿り着いた途端、ステラが駆け出した。いつから待っていたのか、二人の少年がステラを待ち受けていた。一人が頭を小突いて怒っていて、もう一人が歩いて来る。
「あの・・・」
「あいつの家族みたいなもんで、ずっと探していたんだ」
 家族みたいなもん。3人が3人ともあまり似ていない姿に戦争の影を感じた。
「ったく、ネオになんて言い訳するつもりだよこのバカ。勝手に無断外泊なんかしやがって」
 孤児院か何かだろうか。
「ありがとうございました」
「ああ。はい」
 何がハイなのかよくわからず、流されて返事を返すシン。指して年は変わらないだろうに、相手のしっかりした態度に気構えもないうちにステラと別れてしまった。
「シン・・・また会える?」
「きっと会えるさ」
 そんな確証などどこにもないのに、そうであったらいいと思う。
 できれば、今度会う時は本当の俺のままで。
 去っていく姿を2・3歩追いかけて、そのまま見送った。昨日とは違うファーストフード店で昼を済まし、駅やバラックの商店街を覗き、待ち合わせまでの時間を潰す。補導されれば学生証を見せてこっぴどく叱られた。
 一人になって、宛てもなく街をさ迷うシンは、肩を叩かれるまで意識がとこかに飛んでいたのだと思う。びっくりして振り返ったうしろに居た人物に片足残したまま、後ず去るという芸当を披露してしまった。
「ル・・・ルナ! とメイリン・・・」
 帽子ですっぱり頭を隠したルナマリアとメイリンが恐ろしい程の笑顔で立っていた。


 今度はシンも弁明しなかった。と言うより言い訳のしようがなかった。待ち合わせの場所で、シンの後に女性が二人。
「うちは旅館じゃないんだが」
 体のいい安宿状態にアレックスがため息を付いた。

もうぐだぐだです・・・。会話が多くなるので苦しいのがバレバレですがな。

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