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 アパートに帰るなり、姉のカガリが詰め寄ってきた。
「キラっ!! お前、大丈夫だったか!?」
「なんとか、無事」
「もう死ぬほど心配したんだからな!」
「分かってるって」

 姉といっても双子だから、上も下もない。その上、男勝りで負けず嫌いで、女らしさの欠片もなかった。だからと言って情に薄いわけはなく、人一倍情に篤く、脆い。

「分かってない! こう・・・胸が痛くなって・・・大丈夫なら連絡ぐらいしろよっ!!」
「イタッ、カガリ、ごめんって」

 半分泣きながらキラを叩くものだから、その手から逃れて部屋へと駆け込んだ。背負っていたカバンをベッドに上に投げ捨てて、全身埃まるけなのに今更ながら気付く。ジャケットも煤こけ、ジーンズは破れて血がついている。
「シャワー浴びよっと」

 さっぱりして、遅い夕食を取る。
 事故の話をして、テレビでその後のニュースをずっと見ていた。救出活動が続けられる様子が流れ、爆発当時の様子を興奮気味に離す被災者達。また一人、救急車に運び込まれるたびに「よしっ!」とカガリが拳を握りこんでいる。

「首、どうかしたのか?」

 どうやら、知れず手をやっていたらしい。

「なんだか、少し掠ったみたいで痛いっていうか、まあたいしたことないよ」
「たいしたことないってお前なあ、ちょっと見せてみろ!」

 いいよ、と言う前にずいっと近寄られて、じろじろと検分される。
 なかなか離してもらえなくて、キラはカガリをそっと見下ろすが、驚いたことに彼女は首を捻っていた。
「もしかして酷いことになってる?」
「それはないと思うんだが、だけど、キラ・・・」

 そろそろとカガリが離れてキラと向き合った。ぐいっと肩を押されたと思ったら、後に回りこまれて背中を押され、辿り着いたのは洗面台の鏡の前。

「首のアザをよく見ろ」

 蛍光灯に晒される首にあったのは、火傷の跡でもなければ、切り傷や擦り傷でもなかった。明らかに読み取れる黒い文字。
 中世の飾り文字を簡単にしたような。
 刺青しては趣味が悪い、始まりの文字。
 だけど、キラもカガリもそれをよく知っていた。


 これって・・・。

 キラはそろそろと手を上げて、その文字に触れる。指の先が動くたびに熱いとも冷たいとも感じるざわつきが起こって、真っ白な陶器の洗面を見下ろした。 

「どうして。父さんも、そのまた父さんも、この痣なかったのに」

 彼らの家系に流れる言い伝えは、親から子へ語り継がれる使命。
 あの時、聞こえたのは幻聴じゃなかったのだ。血に眠る遠い記憶からの警告で、キラはかの人物を思い出す。惨事の中、地下鉄のホームの壁際で静かに佇んでいた。黒いコートを着た、グリーンアイズの男。

 あいつが。

 吸血鬼。

 キラの首に浮かび上がったのは、ハンターとして代々受け継がれてきた証。奴が姿を現す時、世界は乱れ、多くの血が流れると聞かされてきた。

「気にするな! 別に刻印が出たからって、ハンターやらなくちゃいけないってことはないんだし!」
「駄目だよ。向こうも気付いてる」
 だから笑ったのだ。薄く、密やかに。
 戦いはもう始まっているのだ。

 アスラン。

 宿敵の名はそう言い伝えられていた。



誤解されるかなと思って、もうちょっと進めてみます。やっぱり、アスランとキラは対立してこそ面白いですよね。同志求ム。