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20XX NewYork 6

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匿名ユーザー

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 ビルの名前が分かればこっちのものだ。
 どれだけデータの痕跡が残らなくても、自分の目で見たものなら消しようがない。キラはカガリと打ち合わせして二人で彼を追いかけた。

 熱狂覚めやらぬニューヨークのお祭り騒ぎも、夜更けとともに収まっていく。5番街の人混みが嘘のように引いて、冬支度を整えた街が氷点下に冷える。

 キラとカガリのアパートではカガリが湯気の立つココアを片手にキラのコムコンを覗き込んでいた。監視カメラの映像を漁って、ロビーのガラス戸の向こう、ビルとビルの間に小さく写ったカガリを見つける。当然、ホール内にアスランの姿はない。

「あった、この時間! 34階だ」
「ちゃんとこのビルに入っていくのを見たのに・・・」

 監視カメラにはのこらなくても、足で登ったり、それこそ蝙蝠の羽でひとっ飛びなんて芸当でも披露しない限り、エレベーターの運行記録は残る。

 信じられない話だけど、彼はデータ上は存在しない。
 でも、この時間、ロビーから入ってエレベーターで34階まで上がり、とあるオフィスへと出向いているのだ。たとえ、エレベーター内の監視カメラに彼の姿がなくても。

 それさえ分かればこっちのもの。ついに、キラは糸口を掴んだのだ。
 オフィスの映像はこじんまりとしたパーティ。
 ピザやフライドチキン、サンドイッチ、軽食をつまんでアルコールが入る。メンバー達は談笑し、時にふざけ、時に真剣に話し込んでいる。

 何の集まりなんだろう。

 キラはメンバーの楽しそうな様子の記録を眺める。年齢は大学生から働き盛りまで様々。猛烈な勢いで彼らの身元を洗い出した。



 20XX NewYork 6



 ハロ・グループ


 ハロ・コミュニケーション社から発展した巨大コングロマリット。創業者パトリック・ディノが世に送り出した仮想次元技術で、わずか一代で世界の情報産業を制した巨人である。ディノ氏は一線を退いているが、ミッドタウンにハロ・フォートと呼ばれる、超高層ビル3棟と関連会社のビル郡を持っている。

 こんな大企業に・・・。

 パーティのメンバーは皆エンジニアで、キラの同業もいた。その彼らに共通しているのは何らかの形でハロ・グループに関わりがあると言うこと。最近ではハロ・グループ社内の同じプロジェクトに参加していたようだった。

 ・・・どうしてアスランが。

 しかし、キラも腕に覚えを持つ技術者。大企業の手がけるプロジェクトは気になるし、厳重にブロックがかかったデータキューブには腕がなる。企業のセキュリティ防壁診断がキラの会社のメインサービスなのだ。

 吸血鬼そっちのけで、プロジェクトの解析にのめり込み、カガリが呆れて冷めたココアを持って行ってしまった。あと一歩で進入できそうなところで、初めて見るガーディアンを突破できずに仕方なく引き返すことに。

 さすが、現在の基盤技術を世に送り出しただけのことはある。
 キラは落胆するどころか、目を輝かせて、コムコンを見つめる。

 このマシンじゃ処理速度が追いつかないし。
 防壁突破用の専用ツールだって、必要だ。

 諦めるどころかますます闘志を燃やして、策を練っている。情報スパイになりかねない弟を見かねた姉にゲンコツを食らうまで、キラは頭の中で考えを廻らせていた。


 もう一度入れてくれたココアを飲んで一息。
 今はまだ彼の姿を捕らえることはできないけれど、ハロ・グループの向こうに彼の影が見えたような気がした。これは勘だ。

 アスラン・・・一歩、近づいた。

 藍色の髪とエメラルドの瞳を持つ青年を、今でも鮮明に思い出すことができる。
 それは同じ男として悔しさが混じった記憶で、沸々と闘志が沸いてくる。
 古今東西、吸血鬼は美男美女だと言われている。先祖が残した日記や手帳にもしっかりそのことが明記されている。しつこいくらいに、それは注意書きされた警告。

 奴の容貌に惑わされるな。
 瞳を合わせるな、囚われるな、と。

 だとしたら、僕はもう手遅れなのかもね。

 キラは脳裏に彼を思い描いて、ふふ・・・と笑った。
 寝食を忘れ、生活のリズムを崩す程に彼を追いかけることに夢中になっている。一目見た時から、あの瞳が頭から離れなくて、首の痣には感謝していたくらいだ。

 僕に彼を追う大義名分を与えてくれた。
 追い詰めて、彼を暴いて、それから―――。
 それから?

 キラはそこで息を吐いた。
 その後、どうしたいのだろうと漠然と思い当たってしまったからだ。

 相手は吸血鬼だよ、滅ぼすのが僕らの使命じゃないか。
 放っておいたら人を襲い、血を啜る化け物なんだ。

 あの日、あの時、出会ってしまったのが、僕にとっても彼にとっても運のつきだ。
 あんな風に、嬉しそうに笑った彼が悪い。
 僕をその気にさせたんだから。

 自分でも不思議なくらいのめり込んでいるのが分かる。やりたくない事は意地でもやらないと、姉にも友人にもお墨付きをもらっている僕が。

 ま、なるようにしかならないしね。
 どうするかは、追い詰めてから考えよう。

 ココアの入ったマグカップを両手でもって、頭を切り替えた。彼を追い詰めるにしても、まだ相手は遠い。今は情報を集めなければならない時だ。

 ハロ・グループのプロジェクトとそのメンバーが今のところの手がかり。
 気になるのはこのプロジェクトの参加メンバーに創業者と同じファミリーネームを持つ人間がいたことだ。

 アレックス・ディノ。

 創業者のパトリック・ディノは実際に技術を開発したのは別にいたのではないかと噂されるほど、厳格な顔つきをしていた。どんな奴が仮想次元デバイスなんて突飛な物を考え出したのだろうと、公文書図書館やネットマガジンで顔を見て、驚いたのを覚えている。

 そう言えば、パーティの参加者にはいなかったよね。
 パトリックの血縁なら怖い顔してるんだろうな。

「キラーっ。今日こそ、もう寝ろよなっ!」
「あー分かってるって・・・」

 ツリー点灯式の夜のことを思い出して、キラはサーチ対象にその名前を追加した。 
 キラお手製のサーチロボットが思いがけない画像を拾ってくるのは、まだ先のことだった。




まあまあまあ。都合よすぎなのは置いといて、ちょっと展開に無理があるのも置いといて下さい(そんなのは書いてる本人が一番感じているんだ~。出す順番間違えたな・・・って!)ハロ・グループの企業ロゴはもちろんハロです。ハロ・グループ本社ビルへのエレメンタリースクールの社会見学ではハロの小さなぬいぐるみが貰えるとか。色は何色も合って、プレミアが付いている色もあるとかないとか。

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