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20XX NewYork 7

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匿名ユーザー

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 顔見知りのジャンク屋に注文した品が届く。
 キラは意気揚々とそのダンボールをあけて、ごちゃごちゃとした機械をコムコンの横に置いて繋いだ。

「何だよ、それ・・・」

 カガリがいかがわしい目で見ている。
 見た目は不恰好でも、注文したとおりの働きをしてくれれば問題はない。キラは一人納得して手をこすり合わせて、コムコンのキーを叩き始めた。狙うは、ハロ・フォート。リストアップしたメンバーが接触している社員を洗い出すのだ。

「まあ見てて、カガリ」
「ああ」

 前回敗退したガーディアンをすり抜けて、とりあえず第一関門突破だ。キラはいつものコムコンの横に置いた妙な機械の反対側にもう一つコムコンを置いている。片方ではひっきりなしに数字のられるが下から上に流れる一方で、もう一つには映像化したセキュリティが映し出されている。

「キラ?!」

 また見たことのないガーディアンが出た。
 小鳥の姿をしたそれは、キラの仕掛けた攻撃をかわして、幾重にも防壁をめぐらしていく。衝突をかぎつけた他の防衛ツールまで寄ってくる始末。

「やるじゃん」

 負けないけど。
 手を滑らせていたキーボードの上から、左手が隣のコムコンに移り。

「なっ」

 2台のコムコンを同時に操作して攻撃を開始した。右手は右のコムコンで、左は左のコムコンで、両方の画面は今、小鳥の舞う仮想空間のバックに数字がスクロールしている。目指すデータキューブに辿り着く前に、関連会社のデータを片っ端から漁り、侵入ルートを探す。

 小鳥のはばたきが目に見えて遅くなると、キラは突破を確信する。
 次元デバイスの生み出す仮想空間を片っ端から復号化して、無意味な信号で埋め尽くしているのだ。飛びまわる空をなくした小鳥は落ちるしかない。

 やった!

 データの壁にぶち当たってついに、ガーディアンが消滅する。
 一気に開けたデータキューブは、しかし、一瞬で黒く塗りつぶされてしまった。

 オートデリート?

 違うっ!

「カウンターだっ!!」

 それは強烈な攻撃だったのだ。
 キラの仕掛けた攻撃ツールが消える。いや、それだけじゃない。あわてて手を滑らせてコムコンをバッテリー起動に切り替える。

 真っ黒な画面を見つめ、キラはいすに深く沈みこんだ。
 一難去って、また一難。
 カガリがポンポンとたたいて部屋を出て行ったのを合図に、はあ~とため息をついた。
 じっと画面をにらみつけたまま。

 あのカウンターのことはゆっくり考えるとして・・・。

「まずは、手に入れた情報からだよね」

 気を取り直して、再び作業を開始した。



 20XX NewYork 7



 キラがひたすらガーディアンと格闘している間、アスランは会社ビルのプロジェクトルームの一角で作業をしていた。
 プロジェクトは一時選考を通ったに過ぎないので、ライバルチームの戦略を分析して、こちらも出方を練り直さなければならない。業務時間の後で、その為の会合がハロ・フォート3番目に高いビル・トゥーレで開かれていたのである。

「なんか、不安定だよなあ・・・」

 プロトタイプをいくつも持ち寄って内部レヴューをしている最中に、ポツリと零したメンバーの一言が発端だった。ちらつく室内照明に異常を悟ったメンバーがプロジェクトの保守を始めたのだ。
 社内のチーム同士のスパイ合戦も日常茶飯事のこのビルで、プロジェクトのデータキューブの防衛にアスランも参加することになる。

 いつの世も、人間の習性は変わらないな。
 相手を追い落とすことに力を入れるんだから。守るより攻撃する。作るより奪う。
 アスランは皆がプロジェクトそっちのけになったのを見て、自らも防衛ツールを起動した。

 皆エンジニアで、一癖もふた癖もある兵ばかり。
 社内のセキュリティ対策チームも舌を巻くほどのメンバーもいて、一種のお祭り気分で防衛の現場を覗く。

「お前、またそのスキン使ってんの?」
「会社標準で、別にいいじゃないか」
「だっせえなあ・・・パトリック・ディノも趣味悪すぎだぜ」

 悪かったな。ダサくて。
 アスランは苦笑する胸のうちで零す。

 丸い球体ロボットがロゴマークのハロ・グループ。
 ハロ・グループ社製のセキュリティツールは皆、この愛らしい球体ロボットの形をした防衛ツールが初期標準で装備されている。子供じみているとして、そのまま使っている社員は少ないのだが、その少ない怠惰な社員の一人がここにいた。

「おいっ!」
「なんだ、今の?!」

 唐突に攻撃を仕掛けていた相手が掻き消えた。
 仮想次元そのものを飲み込んで、黒く塗り潰されてしまった。何が起こったのかわからず、メンバー達が周辺をうろうろするが、データのものが消えてしまっては手の出しようがない。

 何より、攻撃を仕掛けられていたデータキューブが問題だった。
 社員が本社ビルの監視映像など覗いても、メリットになることは何一つないからだ。

「これって、外部からの侵入だよな」

 なかなかやるじゃないか。
 俺を追っているハンターかな?

 メンバー達が顔を見合わせる中、一人、いつにない緊張感を感じていた。プロジェクトの会合が半ばお流れになってしまった後も、帰宅する途中、今日の攻防を思い出す。落とされてしまった小鳥のガーディアンも球体ロボットのガーディアンも原型はアスランが作ったものだ。

 ハロが食べてくれたからよかったものの、いずれ破られるのは時間の問題だな。
 これは久しぶりに、本当に面白くなりそうだ。

 挑まれた分野が自らの得意とする所ならなおさら負けるわけにはいかない。
 高揚した気分のまま部屋のドアを開けた瞬間。

 全身が硬直した。

 吹き抜ける鬼気。
 部屋の窓際に立って、マンハッタンの夜景を見ていた人物が振り向いた。
 エメラルドの瞳と撫で付けられたロマンスグレーの髪。

「父上・・・」

 どうして、ここに――――――




ご都合主義なのは毎度のこと。ハロが企業ロゴの会社ってどうよって感じですが、ええい、ままよっ! 3つの超高層ビルは67階建てです。えっ、どこが超高層なの?って。きっと、1階分が2階分くらいあるんだよ。きっとWTCより高いんだよ。

思ったより早くパパリン登場です。きゃー、パトリック!! 素敵!!・・・・・・アホです。後先考えずに書いているから、もう自分が書きたいシーンだけが細切れに繋がった話になりそう。ううう。

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