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Men of Destiny 17

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気休めはいらない



 市政庁からゆっくりと離れていくアークエンジェル。
 少し雲が多いが天気は晴れ。風は微風、降水確率10%、午後から天気は下り坂とラジオの天気予報が告げる。
 電子スコープ内で護送車がゲートを出てくる。前後を官警のジープに護衛されてそろそろと進む。白昼堂々と進むのは自信の表れか。シンはスコープを仕舞って、廃ビルの屋上で膝を立てる。腕時計の時間を見ればジャスト。
「ターゲット確認」
『時間通りね。作戦開始よ!』
 即席のインカムでルナ達を情報を交換して作戦開始がスタートした。シン、アレックスチームが護送車を襲撃して救出した後、所定の場所で待つルナ達にレジスタンスの仲間を引き渡して囮役となる。
 ヨウランやヴィーノ以外の仲間がどうなったかは分からず、もしかしたら突入作戦直後の護送一陣でプラントに送られたのかもしれない。だから、この作戦の目標はヨウラン、ヴィーノを救出してその現状を聞き出すことにあった。


 一方、護送車の情況を上空から確認するもう一つの眼。
「勘が外れたわね」
「そうですね」
 名残惜しそうにブリッジでモニタを見つめるのは、最強の監視官と、アークエンジェルの女艦長、マリュー・ラミアス。女伊達らに艦長をしているせいか、温和そうな雰囲気に混じって落ち着いた動じない空気を醸し出していた。コードネーム・フリーダムを持つスーパーコーディネーターに親しく話し掛けられる数少ない人物でもあった。
「赤い眼のコーディネーターの少年、私達がいる間に現れなかったわね」
「このチャンスを待っているのかも知れません。無駄ですけどね」
 無表情に告げて、ブリッジを出て行く背中に女艦長が声を掛けた。
「ねえ、一つ聞いてもいいかしら? どうして、そんなにその少年に拘るの?」
「あの少年を追っていれば辿り着けるような気がして・・・でも、もう時間切れで・・・それに、今回も外れだったみたいだし」
「・・・そう」
 マリューが寂しそうな視線を送るが、キラが出て行ったブリッジのドアは無常にも乾いたエアモーター音を立てるだけだった。


 構成自体はたいした事はない。レジスタンスの襲撃でこのパターンをこなしたこともある。アレックスが運転する車にシンは潜んで襲撃ポイントに向かう。路面から伝わる振動に、アレックスに目で合図を送ると彼が身をかがめた。
「ターゲット接近。第一段階開始する」
 狙いどおりのタイミングでシンが護衛の車両のタイヤを狙って足を止める。ルートを変更する護送車と、護衛の車両から飛び出してくる官警のMPがわらわらと道を塞ぐ。シンは焦らず彼らの足と肩を狙って力を削いでいく。サイレンサー付きの銃は数撃てないから慎重に狙う。特に隊長格の男が連絡を取ろうとしたところは間一髪無線機を破壊することが出来た。
「アレックスさん! 今です」
「ああっ」
 道には所々バリケードしておいたから狙った位置に護送車がいるはずで、シンとアレックスは車を走らせて護送車を見つけると、バッとドアを開けたシンが道を横切り乗り移った。
 すぐに銃撃戦。
 はじけ飛ぶ逃亡防止の金網。
 助手席からだらりと腕を投げ出し、血の糸を引く護衛達。
 シンは天井から後に回りこんで、鍵を銃で吹き飛ばした。足を使ってうまく扉を開ける。
 20人くらいは乗れるはずの後部スペースにあったのは。
「なっ!」
 ただのダンボールの山。数にして20個。呆然とするシンの耳に届く秒を刻む音。カチ・・・カチ・・・何の音だと頭をめぐらすシン。
 伸びているコードがシンの足元にあった。扉を開けたら作動するようになっていると言わんばかりの時限式。
 くそっ!
 こんな街中でかよっ!
 シンは急いで護送車から飛びのいた。路面をぐるぐると転がって出来るだけ離れる。爆発ですぐに官警が駆けつけるだろう。
 視界の端でアレックスの運転する車が近づいてくるのが分かる。急に飛び降りたシンを不信に思って進行方向を変えたのだろう。
 しかし、その姿が爆発する護送車の炎と煙で覆われる。
 吹き飛ぶ破片に混じって、後方からエンジン音。間髪いれずに起き上がって振り向けばそれは、アレックスが操る襲撃用に用意した偽造したナンバーをつけた車。
「乗れっ!」
 サイレンとルナの怒鳴り声がする。そしてそれも強力なジャミングですぐに聞こえなくなった。シンは無造作にインカムを外す。


「どういうことだよ!」
 助手席に身体を沈めるシン。
「ニセの情報だったか。初めからこちらは囮だったという事だろう」
「失敗・・・したのか。俺達。きっともうヨウラン達はプラントに送られて・・・」
 ドアをガンと叩いた。
 ずるずると身体から力が抜けていくのが分かる。所詮はレジスタンスの生き残りが世の仕組みに立ち向かうなんて無理な話だったのか。
「諦めるのか? シン」
 車を運転するアレックスが前を向いたまま話かけてきた。
 ステアリングを握ぎるアレックスが見える。ガタガタと振動が伝わるからどこかには向かっているのだろう。シンのいる位置では車内の天井と窓から伺える空と街並みしか見えない。
「何か方法があるはずだ。距離を取ったからジャミングエリアをもうすぐ抜けられる。ここで諦めてしまっては彼女達を見捨てることになるぞ」
 インカムにはまだ雑音が混じっている。それでも、それを理由に引き下がることは出来ないなんてこと、今更ながら思う。合流時間のリミットまで後4時間。
 俺が煽ってこの人を引っ張り出したのに、真っ先に俺が諦めてるなんて。なんか・・・かっこ悪いな、と。
「君はそんな奴じゃないだろ」
 沈みゆく一方の意識が浮上をはじめる。
 考えるんだ。
 ここ数日空港や留置所を見張ってきて動きはなかったし、廃棄される可燃ゴミや出入りするトラックから言って数十人がいることは明白で。だからまだ、ヨウランたちは護送されていない、悪かったのはタイミングと位置。
 空港に準備されている輸送機も確認済み。だから、まだ間に合う。
「空港に・・・」
「向かっているよ」


 空港の駐車場に停めて、そこから二人は貨物ターミナルを横切って備品や食糧搬入の業者を探した。大抵は空港会社のトラックが輸送機への積み込みを行うもの。作業員を二人殴り飛ばして制服を上に羽織ると、身近にあった牽引車に飛び乗った。
「輸送機を探せ!」
「分かっています。けど、いいんですか、アンタ」
「仕方ないさ、こうなってしまったものは・・・・・・あれだ、シン!」
 ノロノロと滑走路に向かう空色の輸送機が2機、駐機スペースから動き出していた。その手前で荷降ろしをしているカーゴのトラック。
「あれを奪うぞ!」
 近づいてきた牽引車に怪訝な瞳を向けられても、アレックスが手を振ってお疲れ様ですと、とぼけたことを言うから、シンは意外と簡単にトラックに飛び移ることが出来た。
 刻一刻と滑走路へとカーブを切るギャラクシー輸送機。
 突然動き出したカーゴのトラックに引きずられるようにして落ちた作業員と、難なく飛び乗ったアレックスを確認してシンはアクセルを踏み込んだ。
「貸せ! 時間がない!!」
 運転をアレックスに任せてトラックの助手席から身を乗り出した。
 ビックリした空港作業員が手を振りながら飛び出してきていた。トラックはなおもぐんぐん輸送機に近づき、途中の芝生を横切って滑走路に飛び出した。
 エンジン音が一気に巻き上がる。
 シンは18メートルをジャンプして翼に飛び乗った。
 後にしてきたカーゴのトラックを見る。その背後には、空港警察のパトライトがすぐそこまで来ていた。
「時間がない。3分もしないうちに離陸するぞ」
 叫びながらアレックスが蛇行運転をしている。
 本当に時間がない!
 シンは翼を伝って輸送機の出入り口ハッチを銃でこじ開けて中に潜り込んだ。非常ロック解除でエンジンが自動停止する新型エンジンでないことを感謝した。
 潜り込んだそこにいたクルーを張り倒してカーゴスペースへと向かう。ごちゃごちゃとして機内に張り出しているロープやベルトにあちこち引っ掛けながら走った。
「ぐわっ」
 身体に掛かるGに壁に押し付けられ、窓から外を見た。
 巨体が動き出すそのパワーが蓄積されて、空へと舞い上がるべく助走をつける輸送機。滑走路がものすごい速さで後方に流れていく。
「冗談じゃない!」
 まだ3分経ってないのにっ!
 頭を振って走り出そうとした時、更なる衝撃がシンを襲った。
 爆音とものすごいジェットストリーム。
 煙、目に入る炎。


 窓から見えた輸送機の翼は盛大な炎をまとって、飛び立っていた。
 路面には炎上するカーゴのトラック。
 そして何より、この爆発の原因となった攻撃を仕掛けている飛行船。迫撃砲の第2波がシンの乗る輸送機に向けて放たれたところだった。

なんちゅうか本中華。話の展開なんて、今更次郎な気がしますが、適当三郎ですのであしからず。ぐへ。

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