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「俺は行けないよ」

 少し驚き、けれど、ああ・・・確かに彼ならこう言うだろうと誰もが肩を落とし、思った。共に行くか、どこか遠く、声が、名が届かない所へ行って羽を休めたいのだと。
 かつて、赤い石のついた指輪に幼い愛を誓った女性でさえ、何か言いたそうに口を開いたけれど、無理に笑顔を作って歩み寄ってきた。
「ここはオーブだ」

 そう、太平洋の島国。議長の進める計画に身をもって反対するためプラントに宇宙軍を差し向けた。
 誇り高き国。

「ナチュラルとコーディネーターが共に暮らす国だ。今は戦火で焼かれてしまっているが、お前一人、受け入れられない国じゃないぞっ!」

 ああ、いかにも彼女らしいとアスランは思う。だけど、その優しさが痛いとも思った。力も想いも併せ持つのは俺ではなくて、君。世界で何かを成し遂げたいと思っても、アスランはもうは黙って彼女を見ていることしかできない。

「お前、危なっかしいから、いつも怪我してばかりで、すぐ悩んでとんでもないことしでかすから、だから・・・私の目の届く範囲にいろっ!」

 国を選び、別れを告げた君が言うから許されるのだと気づいているか? それは勝者の傲慢だと、アスランは目を細めて目の前の女性を見る。しかし、彼女の思いも少しは分かるから、あえてそれは口に出さない。
 そんなことを言おうものなら、ここにいる、彼女の味方に何を言われるか分からない。

 アスランは、孤立無援だった。
 だけど、これくらいは言ってもいいだろう?と独りごちた。

「別にオーブを出るわけじゃないよ」
「なら、何で・・・」

 一緒に来ない、と言うつもりだったのだろうか。
 それこそ、自分勝手な夢想だとアスランは辟易する。

「俺はオーブの一民として君を見ているよ。ずっと、この国のどこかで」

 彼はカガリではない。天啓を受けた神の子であるキラとも、一声発せればプラントの民が飛んでくるラクスとも違う。
 己の手が何かを成し遂げられるわけではないのだということを、何度も死に掛けて、唯一人になって気がついた。

「だから、真実、オーブがナチュラルもコーディネーターも平和に暮らせる国になったと思ったら、そうだな、世界が平和になったと思ったら、会いに来て」

 この地上のどこかで、世界が平和になるのを待っているから。君たちが叫ぶ平和を、世界中の名も無き人々にまで満たしてごらんと笑いながらアスランは言い、カガリに手を差し出した。

 だけど、きっと君は忘れるよ、と。

 だから、これは別れだった。



 女神の祝福を受けた英雄でも、一騎当千の親友でも、まして女王の秘めたお相手でもなく、彼は平凡な人間だった。

 戦いが終われば、ただ、消える一兵士。

 初めは時たま口に上る名も、時と共に少なくなり、いつからだったか、誰の口からもその名を聞くことはなくなった。

 彼がその後どうしたのか、どの歴史書を探しても見つからない。





 歴史とは改ざんの記録と言うことで。
 カガリとキラとラクスが世界を代表して幸せになるから、アスランはその反動を背負って闇に消えればいいよ。


カテゴリ: [ネタの種] - &trackback- 2006年01月16日 22:30:18

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