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 一度、上目遣いで見つめてすぐにそらされる瞳。
 レジを打ちながらアスランは投げ落とされた小銭をしまって、お釣りを差し出した。指が触れるかどうかの瞬間、あっという間にお釣りは目の前の財布の中に消えた。
 朝のラッシュが一段落したファミザ店内でカガリがホットウォーマーにペットボトルを並べながら言う。

「よかったな」
「何が?」

 アスランがお玉でゆっくり混ぜながらおでんのダシを追加する。通勤通学途中の客足が途絶えるとぱったりと店内が静かになる。その僅かな時間に、次の波に備えてやることがいっぱいあった。

「アイツ、今日お前のレジに来ただろ?」
「ああ・・・あの高校生か。何だかまだぎこちないけどね」
「確かにな」

 縛られてビニールが被ったままの雑誌を並べ、午前便で届いたお弁当やパンを並べる。店内や冷蔵庫の温度を測り、簡単に掃除をするのもこの時間である。

「あっ、そうだ。今週末OKになったぞっ!」
「サークル無くなったのか?」

 彼らはシンが睨んだ通り、試験が終わって春休みに何処に行こうかと計画を立てている大学生であった。さし当たって、目下の予定は今週末のようだった。


 一方、こちらは3月までしっかり学校がある高校では、シンが昨日持ち上がった×ゲームのことを考えていた。

 ファミザの店員の男からどうやってチョコレートを貰うか。
 はっきり言って無謀もいい所である。

 いつまでも気にしていても仕方がないと、シンは抱きつき事件から初めてレジに並んだ。少し驚かれた後に笑顔を浮かべられたので、逆に焦って目を逸らしてしまった。特に深い意味はないのに、妙に意識してしまう。どこを見たらいいのか分からなくなるくせに、全神経が集中しているのが分かるのだ。

 ヨウランやヴィーノがあんな事言うからだ。
 シンは必死に言い聞かせる。

 意中の女の子でもいれば、さりげなくアピールしたり、そわそわして、顔色を伺って、当日まで生きた心地がしないだろう。

 しかし、相手は男である。
 しかも、年上である。
 その上、これが、格好良いのである。



 無理だろ。



 早々に出した結論に「はあ~」とため息を付いて窓の外を眺めた。
 北風の中を校門から見知らぬ制服を来た生徒が何人も入って来るのを見て、今日が推薦入試の日だと思い出す。そう言えばと思いついた所で、ジーと鞄の中の携帯が鳴った。こっそり確認すると妹からのメールだった。

『お弁当忘れたでしょ? 下駄箱の場所教えて』

 すばやく、返信すると背中からいきなりヴィーノが話しかけてきた。
 慌てて携帯をしまう。

「シン! マユちゃん、うちの推薦受けるってホント?」
「あっ、ああ」
「どの子?どの子? もう来た? 中学どこだっけ」

 ちょうど校門を過ぎた所だと言いたくなくて、黙っているとチャイムが鳴る。3学期は中間テストがないから、3月の学年末までのんびりできる。今頃、3年生は私立大学の受験真っ最中で、シン達も来年は受験である。
 志望はこの街の総合大学。
 結構レベルが高いけれど、実はシン達のクラスは理系の進学クラスなのだ。

 あの人達、俺の行きたいとこの大学生なのだろうか。
 ファミザの店員達を思い出して、ぼんやりと授業を受ける。黒板には今年のセンター試験の問題が解説されていく。



 シンは4限のチャイムが鳴ったところで下駄箱に弁当を取りに行った。
 靴の上に突っ込んであるのはトリコロールカラーのお弁当袋。冷えに冷えたそれを掴んで教室に戻ろうとした時、耳に届く声。

 あれが、マユのお兄さん?
 やだ、似てない。
 ちょっとかっこいい?
 ええ~、そうかなあ。

 よく聞き知った声は妹のマユのものだが、耳が反応したのは話し相手の声だった。曰く『ちょっとかっこいいじゃない?』と疑問形ながらも、そう言っている。 
 どこかに隠れて盗み見ているのかと伺う。
 視界の端で消える黒い姿は、軽く手を振る妹と『キャー』と声を上げる同級生2人。

「マユの奴。推薦入試はどうだったんだよ」

 シンは悪態を付きつつ顔が緩んでいた。その頬が引きつったのはそのすぐ後。

「あの子がマユちゃんか」
「似てねえ・・・」
「隣の子、かわいくないか?」

 隣の子よりマユのがかわいいだろ? と、心の中で突っ込んで、シンは肩をがっくりと下げる。隠れて伺っていたのはマユの友達だけではなく、ヨウランとヴィーノもだった。




ああ、だんだん短くなる!オチがない! あう。