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「先に行っててくれ、キラ!」

 アスランが急に反転して通路を戻っていく。警告が鳴り渡って揺れが始まるメサイアの中、キラとアスランは中央司令所からフリーダムとジャスティスを停めたドックに戻る途中だった。制御を失い、シールド失った移動要塞はゆっくりと月面に向かって降下しており、数分後には衝突爆発する。
 かく言う今も、所どころで小さな爆発が起こっているのか、キラの目の前でガタンと隔壁が落ちた。ダンと冷たい壁を叩くキラ。

「ちょっと待ってよ、アスラン! どういうつもっ」
「やっぱり俺には、このまま置いていくことはできない」

 壁の向こうから声が聞こえた。

「何言ってるのっ。今すぐ出ないと、ここはもうっ」
 最後まで言わなくても結果は目に見えている。事態は一刻を争うのだ。
「助けられる人をそのまま見捨てて逃げて来たなんてカガリに知られたら、またどやされるよ」
 キラが隔壁をこじ開けようとパネルを操作するが動かない。それもそのはずだ、内側からアスランが上がらないようにつっかえをしていたからだ。
「月面にもまだ助けたい奴がいるんだ。手のかかる後輩達だけど、頼む、キラ」
 シンという名の少年。
 キラもアスランから聞いて、オーブで家族を失い、インパルスでフリーダムを落とし、そして、脱走しようとしたアスランを撃墜したという後輩のことを知っている。アスランが彼のことをとても気にしていたことも。

「アスラン! 絶対、戻ってきてよ」
「当たり前だろ。お前も気をつけろよ」

 遠ざかる気配にキラは両手で隔壁を叩く。パイロットスーツのグローブ越しに伝わる衝撃が痛かった。くっと歯を食いしばって隔壁を後にする。ドックにたたずむフリーダムとジャスティス。キラは隣の深紅の機体を見つめて、フリーダムのコックピットに滑り込んだ。






 もうその頃には要塞が分解する盛大な音が響き始めていた。その中で、ドアが空くモーター音にタリアがおもむろに顔を上げる。彼女の腕の中には身動きしない議長と、泣き疲れて息を殺すように身体を預けているレイがいた。

「グラディス艦長!」
「アスラン・・・何をしに来たの!」

 驚いてタリアが咄嗟に叫ぶが、アスランは既に中央指令所の崩れた天井や柱を乗り越えていた。彼女が目を見開くうちに3人がいる一段高い場所に上がる。

「一緒に脱出するんですっ!」
「あなたは、早く逃げなさいと言ったはずよっ」
 タリアが手を振る仕草は、まるでアスランを追い払うような手つきだったが、彼はそれを上手く避けてレイの肩に手を置いていた。

「レイ。立てるか?」

 アスランの手の下のレイはまるで置物のように反応がなかった。全てをあきらめた抜け殻のような状態。理由は違えど、一度は自分も死を覚悟した。

「シンも、ルナも無事だ」

 返事は無いけれど、レイの肩がピクリと震える。
 守りたいものが無くなったから、生きている理由が見つからないから、責任を取らなくてはならないから。死を選ぶ理由は様々にある。

「しっかりしろ、レイ! 君はちゃんと状況を確認したのか、議長はまだ死んじゃいない。撃たれたショックで気を失っているだけだっ」

 レイがタリアから頭を浮かして、目を閉じたままの議長を見る。

「・・・ギ・・・ル」
「そんな、でも、彼は」

 アスランがデュランダル議長の上着を開いて、撃たれたと思わしき箇所を探る。応急処置を始める彼が、視線は手元の議長に落としたまま、口を開く。

「お子さんがいらっしゃるのなら、こんな所で死ぬべきじゃありません。親を亡くした子供程、弱くて悲しい存在はいません」

 アスランがパイロットスーツの救急キットからテーピングを取り出して止血していくが、すぐに血の赤い色が浮かび上がる。
 レイと顔を合わせず、彼の後ろに回る。本当に時間がないのだ。

「レイも・・・シンやルナに言うことがあるだろう」

 呆然とするレイの背中の救急キットも漁って、さらに議長の胸に巻きつける。一通り手当てを終えた彼が、この時になって二人を見る。

「二人とも立ってっ! レイ、二人で議長を支えるんだ。艦長、レイを頼みます」

 レイが生死を確認しようとデュランダル議長に手を伸ばすが、要塞が崩壊する音がすぐそこまで迫っていた。

「早くっ!!」

 力の抜けた大の男にアスランとレイが肩を貸す形で立ち上がらせ、体格的に負担のかかるレイをグラディス艦長が支える。中央指令所は既に半分が瓦礫で埋まり、そこかしこで火花が上がる。通路に出てもそれは同じで、意識のない重症人を連れてまっすぐ歩くことすらおぼつかない。

 レイの表情は読めないが、それでもなんとかデュランダル議長を支えていた。タリアが眉をしかめて通路の先を見るアスランを盗み見る。彼はなぜ危険を承知で戻って来たのか、ただ自分達を助けるためにしては物足りない気がする。その疑問を察したのか、アスランが口を開いた。

「約束です、議長との」
「約束?」
「はい。『道を間違えた時は正してくれ』と」

 ドン。と、爆発が起こって通路が大きく揺れる。

「それに・・・俺はずっと、何と戦わなければならないのか、考えてきました」





「最終的に俺は、オーブに付いてザフトと敵対しましたが、議長の言うこと全てに反対ではありません」

 先ほどの爆発で重力制御が利かなくなったのか、4人の身体が浮いた。
 息を注ぎながらアスランが話す。

 遺伝子によって適正を決め、自由な未来を奪うようなディスティニープランには勿論反対だけれど、かと言って、それが議長のやって来た事全てを否定することにはならない。ロゴスと言う戦争を煽る存在を暴露し、一時的にでもナチュラルとコーディネーターが手を合わせることに成功したのは彼の成果だし、なぜ争いがなくならないのかと世界に問いかけたのも、彼だ。

 話しながらアスランは、議長がパトリック・ザラのことを「平和を求めた」と評したことを思い出す。求める世界は誰もが同じ、ただその方法を間違えたのだと言っていた。あの言葉は、ザフトに引き込むための甘言なのかも知れないが、非道だと頑なに父を拒絶するアスランの心に確かに届いたのだ。

「これからプラントは、ラクス達クライン派が中心になって立て直していく事になるでしょう」

 彼女は議長が利用したいと思うほどに大きな影響力を持っていて、彼女を慕う信奉者も多い。それはプラントの中枢まで入り込み、条約違反のMSを建造するまでに及ぶ。

「そして、おそらく・・・彼らに都合の悪い事を、ある事ない事、議長は背負うことになる」
「そうね。諸悪の根源のように言われるわね」

 議長に肩を貸すアスランをタリアが見る。

 2年前と同じ。死者は何も語らないのだ。
 パトリック・ザラは憎悪を撒き散らした独裁者として、ラウ・ル・クルーゼは世界を破滅に追いやろうとした狂人として吊し上げられ、プラントでは激しいバッシングが起こった。何処までが真実で、どこからが虚構だったのか、ここにいる二人は少なくともそのボーダーラインを知っている。

 この期に及んで自ら死を選ぶと言うことはないだろうが、アスランは一言も発しないレイに言う。

「その為にも君は生きて、彼の、ザフトの名誉を守れ。事実を正しく伝えなければ駄目なんだ」

 一番恐ろしいのは情報操作で、敵対する考えを封じ込めてしまうことだ。

「この先どうするかは、世界の人々が決めればいい事だ。選択肢は多い方がいい」





「だが、人は自分と違うものを区別し、受け入れない。人は恐れ、争う」

 ようやく口を開いたレイの一言目は、誰の言葉だったのか。
欲望の果てに生まれ、絶望を見た男なのか。

「だからと言って遺伝子によって全てを決定するというのは行き過ぎだ」
「あなた方のやり方では戦争は無くならない」

「ああ、俺もそう思うよ」

 レイが言っていることも間違ってはいない。
 自由な未来を唱えることは、アスランの探している問いの答えにはならない。せいぜい、今ある現状を悪化させないだけ。悪くならない代わりに良くもならない。

 どちらも、正しくない。

「難しいな。たった二人の間でさえ答えがまとまらない」

 この世界には幾億の人がいるというのに。
 だから。

「世界は許容しなければいけないんだ」

 エレベータが止まっているから、細長い構内をワイヤーに沿って上に向かう。

「分かり合えるなんて言わない。ただ、そういう考え方もあると認めなければ、お互いに否定し合うばかりで何も始まらない」

 他者を恐れ、認めない。
 他者の存在を許さない世界。
 例えるなら。

 この崩れ行く要塞の中で、お互いを『傲慢だ』と言って。
 銃を向け合ったように。





「それが私達を助ける理由?」
「それもあります。でも、悔しいじゃないですか」

 アスランが笑う。
 状況は少しも楽観視できないのに、彼の声はどこか楽しそうだった。

「プラントの市民が議長を選んだ。なら・・・プラントの市民が裁くべきです」

 タリアが一瞬、目を見開く。
 プラントにはプラントの自負があるのだと、彼が言っている。

「あなた、結構、言うわね」

 エレベーター構から扉をこじ開けて通路に出る。
 タリアが乗ってきたランチを停めた場所を思い出しながら方向を示す。帰る事は考えていなかったから会っているかどうか不安だと笑う。

 しかし、笑った傍から大きな衝撃。

「この先のドックよ」
「急げっ」

 進行を妨げる通路に浮かぶの残骸に半ば体当たりするように進んで、ようやくランチに辿り着く。

「頼んだぞ、レイ」
「あなたはどうするの!?」
 ランチの中から、議長を抱えたタリアが叫ぶ。当然、一緒に乗ると思ったのだろう。

「俺には持ち帰らないといけないものがあります」

 核エンジン搭載のMS。ジャスティス。
 要塞と共に爆発でもさせたら被害がさらに大きくなってしまうだろう。

 アスランは右手を上げて敬礼する。

 レイも敬礼をする。

 二人が視線を合わせたのは僅かな時間で、すぐにレイは身を翻してランチの中に消えた。
 アスランもジャスティスを停めたドックへと向かう。その後ろでランチがドックから飛び出した。
 アスランは振動と明かりの落ちた通路を進む。非常隔壁が半分閉じた向こうにジャスティスが見えた時、メサイアがついに月面に落ちた。





 メサイアが墜ちる。





 月面から虚空に向けて光が走る。その巨大な火柱に浮かぶ黒い点が少しずつ大きくなる。やがてそれは輪郭を浮かび上がらせ、羽根を広げて飛んでくる。

「・・・シン!」
「あれは・・・フリーダムっ!?」

 月面でメサイアの最期を見ていたシンとルナマリアが、目の前で膝を折るフリーダムを見上げた。デスティニーは色を失い、インパルスもとても戦える状態にない。白兵戦を仕掛けるにしても、二人には今そんな気力はほとんどなかった。
 ぼんやり見つめる先でフリーダムのコックピットからパイロットが降りて来る。キラだ。

「君がシン?」

 答えないシンをルナマリアが見る。

「えっと、ルナマリアさん?」
「・・・そうよ」

 一呼吸置いてルナが答えると、オーブのパイロットスーツの男が手を差し出した。

「救助に来たんだ。月面にいるはずだって・・・助けたい奴がいるから頼むってアスランが・・・」

 名前に反応してシンが身じろぎする。
 ルナも目を見張って、キラを見る。

「アスランはレイって子を助けにメサイアの中を戻って、僕には君達の事頼むって・・・だから、助けに来たんだ」

 ルナがキラに起こされて立ち上がる。地上よりもずっと楽に立ち上がれるけれど、シンにもその手が伸ばされるはずだった。

「・・・レイ。っ! レイっ、メサイアって!?」

 爆発は今も続いていて、破片が頭上をいくつも流れていく。シン達に見えるのは、月面に突き刺さる巨大な墓標。シンの途切れたはずの涙が流れ出す。歯を食いしばっても、首を振っても、目の前の現実は変わらなかった。

「レイ・・・くそぅ。行くなよお前、お前が」
「まだ、そうと決まったわけじゃない! 生きてるさっ、アスランが助けにいったんだっ!!」

 それでも、シンは泣きながら首を振る。視線だけはそらせずに、残骸となったメサイアを睨みつける。デスティニーは敗れ、メサイアは墜ち、議長は勝てなかった。戦争の無い平和な世界、その夢の成れの果て。輝きを失った世界で、シンの視界の片隅に残された色があった。


 インパルス。


 コア・スプレンダーなら。


 まだ、飛べる。

「俺、行かなくちゃっ」

 突き上げる衝動。

「死なせるもんかっ。レイも・・・アスランもっ」

 ピクリと震えたキラの手を跳ね除けて、月面に勢い余って飛び上がる。ルナが一瞬不思議そうに見つめ、シンの視線にある機体を見て、目を見開いた。

「シンっ!!」

「ルナっ!」

 二人がインパルスに乗り込む。
 キラの目の前で各部を切り離して、コア・スプレンダーがメサイアへと向かう。その時にはキラもフリダームに向かって飛び上がっていて、青い羽根を広げて残骸を纏ったメサイアへと向かった。

 飛び散った破片をものともせず、コア・スプレンダーがメサイアの周りを飛ぶ。レーダーは利かず、二人の4つの瞳が必死に探す、その先の破片の向こうに漂う光は。




 ミネルバのランチ。

 ランチの中からタリアが近づいてくるコア・スプレンダーを見上げる。キャノピーが開いて、赤いパイロットスーツ姿が飛び出す。その光景を少し離れた所にいたフリダームからキラが見つめていた。




フリーダムのコックピットのモニタにランチからの映像が映る。それにはタリアが映っていた。



 タリアの瞳に浮かぶ涙。その横で、レイを抱え、肩を震わせてうつむくシン。キラが二・三言、言って静かに目を閉じる。タリアが答えてモニタが切れた瞬間、キラの手がフリーダムのスロットルをきつく握り、フッと離れた。

 結局、議長は助からなかった。
 途中で息絶えたのか、アスランが現れた時に既に亡くなっていたのかは分からない。ゴンドワナに移送され、残ったザフト兵達の敬礼の間を静かに棺が通り過ぎた。

 レクイエムに撃たれなかったオーブの首相官邸では、カガリが、復興に向けていち早く世界の団結を呼びかけるメッセージを送る。アークエンジェルからもたらされた通信の最後にキラがいて、その口の動きを読んだ若き代表は最後まで涙を流さず、通信が切れた後に天井を仰いで泣きながら拳を握りこんだ。

 エターナルがプラントへと入り、ルナとメイリンがポートで抱き合う。デュランダル議長の専制を批判するラクスを初めとするクライン派と、レイとタリアがもたらしたザフト側からの情報で戦後のプラントは混乱の中にあった。

 数を減らしたプラントがまだ無残な姿をさらし、墓地には延々と墓石が立ち並ぶ。





 白い軍服姿の青年が足を止める。目的の墓石の前に人が立っていたのだ。その中に眠るべき戦友が。

 後ろにいた緑を着たザフト兵が慌てて手を伸ばすが、白い軍服の青年が銀髪を揺らして殴りかかる、その手は寸前で止まり、相手の胸を拳で付き返した。後姿の青年と何かを話し、彼は肩を怒らせ、掴みかかろうとして、急に力を抜きゆっくりと頷いた。その後、指差したまま乱暴に去っていく。後ろにいた緑のザフト兵が手を上げて別れを告げ、同じように去っていく。

 プラント臨時政府の会議場に向かうラクスが見たのは、議場の反対側に座る、2年前にもこうして臨時政府の議員を務めたイザーク・ジュール。そのブルーの瞳が薄く笑い、多数を占めるクライン派であっても、喉元に銀のナイフを添えられたままプラントの戦後が動き出した。



 地球では。

 一時、ロゴスが滅びようとも、また新たに別の企業がたくましく経済活動を再開していた。指導者を失った大西洋連邦でも、副大統領による臨時政府の元で大統領選挙の準備が進められる。


 ベルリン郊外の湖が漣一つない湖面に青い空を映していた。
街はまだひどい有様だったが、ユーラシア西では連合の脅威が去ったガルナハンで、少しずつ自治が回復されて行く。基地が建設されようとしていた島では住民達が自分達の生活を取り戻し、大量の連合の機体をジャンク屋に売り捌いていた。


 そして、オーブでは。
 沿岸部の幹線道路がようやく全線繋がり、慰霊碑近くまで車で乗り入れできるようになる。





 2度目の戦火で再び荒れてしまったオーブの慰霊碑。
 2年前のあの日のように、大地が抉れ、海水を被って枯れ果てた草花が黒いバイクの向こうで風に揺れていた。

 土台を残して吹き飛んだ慰霊碑の前に立っている少年が、車のブレーキの音で振り返った。まだ日の出前だけれど歩いてくる女性を見つけて、白んでいく世界の中で少年が唇をかみ締める。

「アンタ・・・」
「・・・シン?」

 女性の方も先客を見つけて歩調を緩めた。

「一番乗りは私だと思ったのに、先を越されてしまったか」

 彼女はこの国の代表だった。
 シンと呼ばれた少年は、慰霊碑を吹き飛ばしこのオーブを銃を向けた敵軍の兵だった。さらに言えば、2年前のこの場所で家族を失ったこの国の民だった。

「何しに来たんです?」
「ようやく道が繋がって、ここに来れるようになったと聞いたから、一番に来ようと思ったんだ」

 シンが目を逸らして慰霊碑のある場所からオーブの海を見つめる。まだ光のない暗い海。

「言い訳をしに来たんですか」

 窮地に国を出ていたカガリが再び戻った時、オーブは世界の敵を抱え、市街地にまで被害が及ぶ激しい戦闘が繰り広げられた。さらに、プラントのデュランダル議長の唱えたデスティニープランに反対を表明して、撃たれる前に宇宙軍を差し向けた。

「そう、かもな。またアスハは国を焼いた。理想を唱えて、国民と国土を危険に晒してしまった。最悪の事態は免れたけれど、お前が言ったように綺麗事でまた私は・・・っ」

 とつとつと話していたのに、最後の方だけ語気に力が入る。

「あいつはどうしてるんですか。フリーダムのパイロット」
「キラか? キラならここにはいない」

 カガリも同じように海へと目を向ける。
 もう少しで夜明けだ。

「2年前にあんな思いをしたのに、私達は肝心な所で間違えるんだ。何と戦えばいいのか。どうすれば憎しみの連鎖を断ち切れるのか、答えを探しに行ったよ」

 シンはディオキアで議長と会食した時、彼が口にした言葉を思い出していた。

「簡単に見つかるもんか、答えなんて」
「ああ。だから、答えを知っている奴を探すってさ」

 シンがカガリを見る。
 その時、水平線に光の帯が広がった。

「夜明けだ」

 顔を出した太陽は赤く、暗かった海が光に染まる。浮かぶ雲が空に影を落とす。

 去っていく女性を見送りもせず、シンは一気に明るくなる世界と、背後に広がる惨状が照らされていくのを見る。

 彼はこの時初めて自分が力を求め、力を振るった結果を知ったのかもしれない。

 ひたすらに突き進んだ跡痕を。
 願ったのは戦争のない平和の世界。
 それは救世主のそれか、破壊者のそれか。

 守った命も、守れなかった命もある。
 彼のその手で奪った命もあった。


 夜明けを迎え、海と空の間で明日は今日になる。
 ひび割れた大地に立つ少年も、また明日に向かって歩き出す。






おわり

妄想は尽きることを知らず、ただ流れ出すのみ。と言う分けで、だからん的最終回です。日記から再録です。やー、私の中ではアスランはレイとタリアを助け、シンとルナマリアをキラが助けに行くって事になってますから。花がどうとか言わず、罪を背負い、罰を受けなさい。世界が万人にやさしくあればいい。