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 我らの正義に星の加護を


 我らが希望の元で安らかに眠れ



「こんなにも掛かってしまった」

 イザークは羽鯨の化石の下で呟く。
 しんと冷えた空間には彼以外に立つものはなく、イザークの青い双眸が足元を見つめている。

 歴代の議長にのみ代々口伝で引き継がれるキーワード。この世界の誰もが求めるものが眠る場所。未来のためと願い、人のために望む。自由であるが故にその手に必要なもの。

「皮肉なものだ。ザラ派に出し抜かれないように編み出された仕組みが、彼らを阻み、お前を守っている」

 たとえ、議長となろうとも、プラントの市民に選ばれなければ辿り着くことができなかった。それ故、アイリーン・カナーバもラクス・クラインもあれだけ手を尽くしたにも拘らず未だ封印は健在だった。

 膝を突き、冷たい床を指でなぞる。

 コーディネーターの希望。
 人類の未知なる夢、羽鯨の化石の下に眠っている。

 床が割れ、螺旋階段が出現する。
 どよめきはプラントの最高評議会議長を見守る評議会議員達から沸き起こる。イザークがひそかに忍ばせた報道関係者も驚きを隠せない。

 失われたプラントを除く全ての都市にこの光景は配信されている。カツンと響く靴音までも、そして羽鯨の化石の下のドーム上の空間に光が入った。

 イザークは同胞の願いを胸に、星の宇宙に散っていった者達の言葉を思い出す。

「我らの正義に星の加護を」

 青いフットライトに浮かび上がるのはドームの中央にある円筒形の水槽。水が光を反射して内にたゆたう存在を照らした時、爆発音が響き渡った。

 充満する煙と振動にもイザークは目を逸らさなかった。叫び声が上がるり、護衛が身を挺して新しい最高評議会議長を庇う。乱暴な軍靴の音と銃を構える音が混じり、耳を劈いて弾丸がドームを切り裂いたのだが。

 まさにプラント中が息を呑んだその時、煙が引いて、無傷の物体を浮かび上がらせた。見えない透明な壁が守っていたのだった。

「ようやく、我らの正義を取り戻す」

 水槽に浮かぶのはイザークと同じくらいの青年で、その水槽を背にしてドームの入り口に視線を向ける。イザークはそこに立つ前議長ラクス・クラインを見据えた。

「戦争の真実を白日の下に晒す。他ならぬ『正義』が」

「『させませんわ』と言ったら?」

「今、この会話、映像全てがプラント中にライブ配信されている」

 各家庭のリビングで、街頭でデパートのディスプレイで正義と呼ばれた存在が映し出されている。プラント市民なら誰もが知っている存在。
 自らの父親、市民権の復活をした当時の最高評議会議長でさえ、彼の瞳を曇らせることはできなかった。善悪を見極める、紅色をした無情の正義。

 いくつ銃口を並べようと、どれだけ麗しい言葉で飾ろうと、市民の視線は水槽の中で緩やかに開く瞳に釘付けだった。




カテゴリ: [ネタの種] - &trackback- 2006年03月18日 23:22:54

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