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サムハイン(続)お試し

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では、早速。気分を盛り上げる為に。



 緩やかに描かれた弧に赤い光点がともる。瞬きをする間に蒼く透き通った輪郭が浮かび上がり、その星の由来の青い海と大地を円が球体となって姿を現す。
 しかし壮言といって朝を何べんも繰り返して歴史は紡がれるのだ。この国の王都でも北の大地でも、それだけは代わらない。

 パトリックはいつもと同じように、少しずつ冷えていく朝にローブの襟を手繰り寄せて部屋のドアを開けた。廊下にともる人工の明かり、足元を暖める絨毯、例年よりも早く露や霜が降り、1ヶ月も早く降った初雪からディセンベル領ではすっかり冬支度が始まっている。
「旦那様」
代替わりしたとは言え、城にいる者達にとってパトリックが主である事には変わりがない。
「今日はまた一段と冷え込んだな」
「左様でございます。王都でも初雪が降ったそうで」
パトリックが歩みを緩めて少しだけ振り返る。
「着いたか」
「本日中にはお目通りかなうと先ほど知らせが参りました」
回廊へと続く階段の古城の曇った窓から朝も早い領地を見下ろした。
「そうか。レノアにも知らせてやらんとな。今日からアスランが王城へ上がることになったと」
 病床の妻が冬を乗り越えて安堵した夫と息子を置いて、彼女は春の芽生えの中静かに息を引き取った。柔らかな日差しのなか、畑にタマネギやキャベツが実る春先だった。
「今年の収穫祭は寂しゅうございますね」
「老いたな、ゼルマン」
 重厚なドアが開き、白いテーブルの席に着くのは今日から一人になってしまった。会話は少なくとも、昨日までは確かにもう一人待っている者がいたが、一人減っただけで随分と広く感じられた。トレイを腕に乗せる給仕達に指示を出すゼルマン。
「まだまだでございます」
「そうだな。あれがどこまでやれるか・・・」

 窓から差し込む朝の光が食卓を照らす。朝日が昇る方向に王都はあり、一人息子を送り込んだ王国の重鎮が眩しさに目を細めた。




途中まで全然違う話を書こうと思っていたので・・・。


カテゴリ: [ネタの種] - &trackback() - 2006年10月01日 22:10:56

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