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 よくみると細かい擦り傷があちらこちらに走っているアラバスタの柱に凭れてイザークは目を閉じていた。突然の伺候を知ったのが昨日の昼。まだ、屋敷に戻らないディセンベル伯を待ち伏せして昨日は一日を無駄にしてしまった。黒い槍のような塀が取り囲む王都で一・二を争う古さの屋敷は中に長年のライバルが戻ったと言うだけでだいぶ印象が変わる。今まではただの抜け殻のようにひっそりとあった屋敷はまるで墓場のようだった。黒い塀に煤けた黒い壁、明かりが殆ど灯らないとなっては幽霊屋敷もかくやと言うあんばいである。通された部屋で親の敵とばかりに、タペストリーのザラの紋章を見上げて不敵に笑う。
 通路の向こうに気配を感じて組んでいた腕を解いた。一歩ずつ近づくたびに、指先がちりちりと震えるのを感じた。羽織った外套の留め金が奇しくも同じモチーフをしていた。
「遅かったな」
「初めてなんだ、王城とは広い所だ」
 同じくらい広い城を持つくせに、わざとらしく肩を竦める。微かに上目遣いに唇の端を持ち上げて笑う。衛兵達の視線を感じたが、イザークは顎を上げて見下ろした。
「迷子にならずにここまでたどり着けたことだけは褒めてやる」
「それはお褒めに頂き光栄だ、マティウス卿の跡継ぎ殿。ここでは新参だ、宜しく頼む」
 相手は伯爵。対する自分はただの公爵の跡継ぎで家督は今だ母が持っている。本当なら、膝を折るのは自分であるのに、相手がアスランであればそれには及ばない。
「まちくだびれたぞ」
「お手柔らかに頼む」
しかし、手を差し出すのはイザークからだ。硬く握りあって、通路の大理石の柱を後にする。遠巻きに見ていた者達もこれでいつもの勤務に戻るだろう。ディセンベル伯とジュールの倅が何事かを話していた。そんな噂も今日中には知れ渡るのだろう。
「貴様、抜かりはないだろうな? まず簡単に情勢からだ」
国を取り巻く環境、それとも、この王城に渦巻く力バランスか。何せ少し前まで宮廷を牛耳っていたザラの跡継ぎで、前伯爵は現国王の無二の親友にして、その従姉妹を妻に迎えた男である。ディセンベル伯の王城入りに何の目論みも無いはずがない。
最もそういう世界に翻弄されそうなこいつがどのように変わっていくのか。確かに楽しみにしている自分を自覚して、イザークは柄にも無く、面白いことが起こるだろうという予感がしていた。



 言葉が出てきません。
 最近なんだかこう言う事が多いです。今回は「目論見がない」になりましたが、本当はもっと硬い言い回しがいいんだ。「忌憚なく」「腹蔵なく」「魂胆がない」どれもこれもしっくりこない。2面性があって、裏で何かを企んでいるに違いない・・・なんてことを表現したいのに。そのまま書いたらイザークさんじゃなくなってしまうよ。はあ、お話って、難しいなあ。



カテゴリ: [ネタの種] - &trackback- 2006年10月03日 22:12:29

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