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ああ、禁断の×××

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 任務に次ぐ任務、実戦と訓練が入り乱れたハードスケジュールをこなして、やっとの思いでもぎ取った休暇はしかし、色気も何もない警戒警報で露と消える。ちょっと前までそんな日々を繰り返していた。
 最も、何もそれは俺達に限った事ではなく、前線に配備されている兵士は皆そうだったから、そういった事に関しては仕方がないと早々に達観していた。
とはいうものの、ザフトレッドなどと祭り上げられ、俺たちは勝つ為にのみ育てられるサラブレットかっつー勢いで、いやそれ以上の厳しい視線に晒されて、生きるか死ぬかの戦場に身を置いていた。とくれば、どうしても要らぬストレスは溜まったし、弱音を吐きたくなった時だってある。
けど、俺たちにはそんな甘えは許されていなかった。俺たちは一般兵どころが、ただのザフトレッドでもない。常に毅然とし、兵の模範となり、敵を倒し、親の七光りを蹴散らして其処に在らねばならなかった。
 本当に、マジで勘弁して欲しかった。
 だけど俺は、アイツよりも軽かったから。応えねばならない義務も、背負っていた重圧も、全然、軽かったから。
 だから俺は、アイツと居る時は、どんなにマズイ事態が起こっても、どんな事があっても、軽く笑い飛ばしてやるくらいの覚悟を決めている。
 静かに慟哭するアイツから目を逸らしたあの日、俺はそう決めたんだ。



【 ああ、禁断の××× 】
※詮索厳禁。史実には全くもって基づいてないので悪しからず。




地球側との争いに一応の決着が付き、どれだけ保つかは知らないが停戦協定が結ばれた。そのお陰というかそのせいで、戦時中よりも恐ろしい事後処理に奔走する破目になったのだが、まあ、それも何とか片が付いたので多くは語るまい。
そしてほんとーに久方ぶりの休暇を堪能した俺は、今、ヴォルテールの通路を歩いている。

 ざわざわ・・・。ヒソヒソ・・・。

 全くなんなの?俺ら珍獣?見慣れてるでしょ、俺たちが歩く姿なんて。そう呆れながら、でも顔には出さずに俺は溜息を付いた。
元々神経質なイザークの目付きが凄い事になっているのは当然として、あの激鈍ちんのアスランまでもが、この異様な館内の雰囲気に気づいている。
 まあ確かに、良くも悪くも知名度抜群で、二度の大戦で二度ともザフトを離反するという前代未聞の前例を創っちゃった奴が、普通に(本人は嫌がって居たが)ザフトの軍艦に乗っていれば、そりゃ少しは煩くもなるのも仕方ないだろう。
 だが、この艦はヴォルテールだぞ。隊長はイザークなんだぞ。俺が居ない間に何があったか知らないけど、お前ら、気ぃ緩め過ぎだって。

 ざわざわ・・・。ヒソヒソ・・・。

 いっこうに減らない好奇の視線や内緒話の嵐に、いつイザークが切れるかとハラハラドキドキしながら、俺はイザークの自室に滑り込んだ。規律に滅法煩いあのイザークが、雷を一つも落とさない訳がない。今に来る、絶対落ちる。この感じはヤバイ。
 カウント、3、2、・・・。

「貴様ぁっっ、どうしてくれるんだ!?責任を、とれぇ~!!」

 予想を上回る大噴火に、押えた耳が痛い。
おいおいイザーク!?そりゃ隊長室は完全防音だけど、その声量はどうなのよ?・・・とつい軽口が口から出そうになったが、いつも見慣れている(それもちょっと悲しいが)大激怒のイザークとはちょっと趣きが異なった横顔に、言葉を慌てて飲み込む。
おりょ?と首を傾げる俺を完全に無視して、イザークとアスランの二人は睨みあって、もとい、見つめあって・・・あれ?

「解った。俺も男だ。潔く責任を取ろうじゃないか。幸いにして、新居には困らないしな」

 は?

「ふんっ。貴様のような軟弱者に一戸建てを構える甲斐性があるとは思えんがなっ」

 話の展開についていけない俺を残して、二人のバトルは続く。こうなった二人の会話に割り込むのは至難の業で、仕方なく俺は記憶を探る。何はともあれ、キーワードは『責任』と『新居』。そこで、はたと気が付いた。
 そういえば、頼まれて休暇中にイザークの自宅を訪れた時、エザリアさんが嬉々として何か設計していなかったか?出来れば永久に封印したい幼少時の思い出を語られて、あまりの恥ずかしさにすっかり忘れていたのだが・・・。

「子供には元気に育って欲しいの。だから、いくら高級でもマンションなんて駄目よ。お庭を走り回って、ちょっと木に登ったり池に落ちたりして、毎日親を心配させるぐらいの方が良いの。だから、あの子達の新居は絶対に庭付き一戸建てよ!」

 確か、そんな事を力説されたような気がする。あの時は、おばさんも夢見てるなぁ~ぐらいにしか思っていなかったが、こうなって来ると話は別だ。艦内の噂話にも、二人の態度にも納得がいく。

「確かに俺はサラリーマンって柄じゃないし、青年実業家を語るにはザラの名が邪魔だ。だから、代わりにディセンベルの謎の発明家という事にして、ザフトから特許料を取り捲るから大丈夫だ」
「それもそうだな・・・・・・って違う!!お前は馬鹿か!?それでは共食いではないか!!なんでこの俺が貴様に特許料を支払わねばならんのだ!?ふざけるな!!」
「イザークからじゃないぞ。Z・A・F・T。軍からだ。お前は国防長官じゃなくて、議長になるのだから」
「尚更悪いわっっ!!最終的に国防予算にGOサインを出すのは誰だ!?貴様それでも国防長官と評議会議長を歴任されたザラ閣下の息子か!?」
「おい、あんまり興奮するとお腹の子に障るぞ」
「まだ出来とらんわ―――っっ!!というか、母上といい周りの馬鹿共といい、勝手に先走り過ぎだ!!それに、考えても見ろ!俺と貴様の子がそんなヤワな訳なかろうが!!」
「っ!?・・・イザーク・・・」

 うわー、決定打。赤面なんかしちゃったりして、なんだか可愛いじゃないの。

「と、とにかく、軍は駄目だ。せめて民間、いや、プラントの資金も駄目だ」
「じゃあどうしろって言うんだ?路地裏で靴磨きでもしろと言うのか?」
「何でお前はいつもそう思考が飛躍するんだ?プラント以外にも国はあるだろう・・・」
「あっ!そうか。カガリの所があるか・・・」
「ったく、あの女の所でも連邦でも構わんが、当然、軍事転用可能なものは不可だからな、気をつけろよ」
「それぐらい解ってるぞ」
「なら良い」


 アカデミー時代からライバルで、事在る度に水と油のように反発し騒動を起こしていた。いろいろ厄介な立場に居た俺たちにとって、そうやって本音トークをぶちかまし、全力でぶつかりあえるという事がどういう意味を持っているかなんて、きっと奴らは考えた事もないに違いない。だから、皆俺たちの関係を誤解するのだ。
そして、俺は知っている。伊達にずっと側で見てきた訳じゃない。あの二人には、俺やニコルなんかよりもずっと深い絆がある。

「でも、俺とイザークの子供かぁ。どっちに似ると思う?」
「解るか!そんな事。第一、こんな時に悠長に子なぞ産んでられん」
「それもそうか・・・。でも、俺は欲しいな」
「安心しろ。誰も産まんとは言ってない。今はその時ではない。それだけだ」

 激戦の中で次々と仲間を失い(貴様が言うな!byイザーク)ザラ隊が解散して、気が付けばジュール隊になっていて。そして、このヴェサリウスが本国に帰港すればジュール隊も解散だ。イザークは国防長官補佐官として、ザフトを取り仕切る事になる。
 当然、金魚の糞みたく俺も連れてかれる訳なんだけど、実際問題、ホッとしたんだ。アスランなら、間違いなくアイツのメンタル面を支えてやれるから・・・。
あーくそ、俺も彼女欲しいぜ。ったく、何時まで惚気てるんだよ、お前ら!俺はこれ以上堪えられんちゅーの!!

「ぶっ、だははは・・・・・・!?」
「急に何だ!?イキナリ笑い出すな馬鹿者!!」
「だ、だって、おま、お前ら・・・ぐふっ、あ、駄目、限界」
 どっちが子供産むかで喧嘩して、絶対刃傷沙汰になると思ってたのに!何普通に産むとか言ってんのイザーク。そりゃお前はそういうキャラだけどさ、女王様過ぎるだろ!?
これを笑わずにどうしろと?

「何が可笑しい―――、ディアッカぁ!!」


「痛ってぇ―――」
 何やら鈍い衝撃を感じ、俺は頭に手を伸ばした。
「痛いのは当たり前だ。痛いように殴ったのだからな」
「全く何なんだよ・・・。いきなり殴んなよな、イザーク」
「突然笑い出した貴様が悪い。忙しさのあまり、ついに気でも狂ったのかと思ったぞ」
 さっさと起きろ。そう言い捨てて、イザークが簡易キッチンへと向かう。そこに何が常備されているかを知っている自分に、やっと夢を見ていたのだと気づく。

「はっ、ははっ」
確かに、俺は笑い飛ばしてやるって決めてたさ。
けど、これはさすがに・・・。ゴメン、やっぱ無理だわ。笑えねー。
「おい!ディアッカ!?」
馬鹿野郎。最後の最後で俺に押し付けやがって。

 アイツは、アスランは・・・、メサイヤと運命を共にしやがった。議長を止めて、メサイアを止めて、逝ってしまった。奇跡は、二度は起きなかったのだ。
 数ヶ月後、空の棺が納められた墓標に向かって泣き続けるキラ・ヤマトと、彼を慰めるのに必死で、墓には見向きもしなかったラクス・クライン。そして佇むイザークと俺。
 それは、平和の歌姫と俺たちの道が分かたれた日。

「大丈夫だ、イザーク。ちょっと、懐かしい頃の夢を見たのさ」

 あの頃よりも若干大人びて精悍さを増したイザークの眉間に皺が寄る。わかってる。あれは夢だ。決して叶う事のない、奥底に仕舞いこんでいた残酷な俺の夢。

「覚悟はいいか、イザーク。始めちまったら、もう二度と戻れないぞ」
「ふっ、愚問だな。貴様こそ良いのか?」

 俺と、イザークの視線が交差する。
 先に笑ったのはどちらだったか・・・。

「さあ、戦闘開始だ」

この日、クライン政権は唐突に幕を閉じ、新たにジュール政権が誕生した。



 それから数日後、ドコゾの謎の発明家から議長宛に、超高性能ネコ型護衛ペットロボなるものが送り付けられて来る事を、勿論ディアッカは知る由もなかった・・・。



 なんちゃって。




*

「この日、クライン政権は唐突に幕を閉じ、新たにジュール政権が誕生した」この一文を詳しく頼むとお願いしたけれど、自分で書いてと言われてしまったので、そのままアップだよ!イザーク様のカッコいいところ見て見たい、って、この話では逆なのか。
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