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 ああ、落ちていく。

 姿勢制御もままならない。ひっきりなしに鳴り響くアラートもどこか遠くに感じて、死んだモニタをずっと見つめていた。身体にかかるGにどうにもする事ができない。キラのことだから、このまま落ちて海面に激突して爆散することはないにしても、海中深くに沈んでしまってはひとたまりもないだろう。
 これが俺が選んだ道の結末だったのだろうか。
 ミネルバもプラントもオーブもカガリも何一つ守れず。
 絶対の窮地には変わらないこの情況を、俺は不思議と懐かしいと思い出していた。

 カガリは今泣いているんだ
 こんなことになるのがイヤで、今泣いているんだぞ
 なぜ君はそれが分からない
 この戦闘も、この犠牲も、仕方が無いことだって
 全てオーブの、カガリのせいだって
 そう言って君は撃つのか
 カガリが守ろうとしているものを

 なら僕は、君を討つ

 返す言葉も見つからない俺は手も足も出ずにあいつに撃たれてしまって。カガリが泣いているから、それを分かってやらない俺に非があったのか?
 俺にどうしろと言うんだ。

 リフレインする言葉にも、やっぱり、答えは見つからない。
 ミネルバを、プラントの同胞達を捨ててカガリの傍にいればお前は満足なのか? オーブの住人となった俺がザフトに復隊して、プラントの同胞達の為に戦うことになった事がそんなに気に入らないのか? 

 どっちも大切じゃ、駄目なのか。
 お前は俺にどうして欲しい。
 俺を撃っても、彼女が泣き止む事はないのに。

 そうだ。どうしようもなくて殺しあった結果が最悪だったあの時と同じ。それなのに俺はお前に情けをかけられて、本当にバカみたいじゃないか。もう俺には、お前が親友かどうかなんて分からないよ。
 違うな、初めからそう思っていたのは俺だけで、おまえにとって俺は姉の大切な人って位置付けなのか。だから、カガリを泣かせる俺が許せない。そうなのか?

 お前が遠い。

 置いていかれたのは――――――俺、か。
 世界は遠くて、もう俺には届かない。いつまでたっても俺は同じ場所に立っていて、風のように左右を人が通りすぎていく。
 ああ、俺はどうしようもなく独りだ。

 セイバーが落ちる。
 自分自身すら助けられずに。




 アスランが落ちていく。
 でも僕は助けない、君は自分で上がってこなきゃ駄目なんだ。何と戦えばいいのかなんて僕だって分からない、でも目の前の情況が分からない君じゃないだろ。
 迷ってるって、僕を撃てないってことも知ってる。
 僕がどうして君に本気になったかきっと君は直ぐには気づかないだろうけど、アスランなら絶対分かるはずだから。だって・・・。
 カガリを守るって、言った君だから。
 世界中の誰もがオーブが悪いって彼女を非難しても、君だけは・・・アスランだけはカガリの味方じゃなきゃ駄目なんだ。

 じゃあ、ミネルバに沈めっていうのか
 撃ちたくないって言って、お前はなんなんだ

 プラントとオーブと。コーディネータの同胞とオーブの国民と、量りにかけてどっちかを選べないなんてことは、承知してる。君はまたきっと、責任とか使命とか、そんな贖罪の鎖で自分自身を縛って動けなくなっているだけ。
 思い出してよ、君の一番大切なものを。
 失ってからじゃ、もう遅いんだから、選んで欲しいんだ。
 迷っている君を見るのがつらい。自分の顔を見てよ、ひどい顔をしている、今の君は。血まみれの赤い翼で飛ぶ君を僕はもう見ていられないんだ。
 だから、君を討つよ。
 その鎖を断ち切ってあげる。
 僕と対峙する赤い羽根なんて見たくない。

 たとえ二度と一緒に飛べなくても、君が違う空を飛ぶよりはいい。


誰が予想しただろう、この物語の結末を。