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タイトルとりあえずこれで行こうかな。



 今年も残す所あと3日という年の暮れに、ついに現れた住職。彫照寺に間借りしている伊々室神社の神主アスランは、村で唯一の食料品店、ファミリーショップ・鷹屋の帰りに見つけた不審者が、まさか僧侶とは思わずに声をかけていた。銀髪に似合わない袈裟姿はどこの狐の妖怪だろうと思ったのだ。
 あの格好がなければ僧侶だなんて思わないよな。
 線香の匂いに塗れ、木魚を叩き、念仏を唱えている姿を想像できない容姿だった。凛と張り詰めた空気を感じるけれど、内にあるものは別のものようだった。

「まさか、本当に来るなんて」
 しかも絶対に曰く付きだ。

 隣の神社が火事で消失しても、連絡一つ寄越さなかった宗派だ。勝手に間借りしてもいいかと問い合わせた時も音沙汰なし。それほど程に無視されていた寺にやって来る僧侶が、只者であるはずがない。

 どうせ今年も、隣の彫照寺の分まで掃除をし、年末年始が大忙しになるだろうと踏んでいた。年末にかけて洗濯機の調子が悪くなり、悪天候も重なって中々片付かない。この時期、大掃除と大洗濯はセットである。ずるずると先延ばしにしていると気がつけば今年も残り3日となっていた。
 新年を迎える準備だけはしようと食糧も買い込み、掃除グッズも揃えたのだ。今はそれが功を奏して、半分は彼の手にある。
 髪を首の後ろで括り、襷がけして、屋根の上に跨る彼の手にはピンクのビニール手袋がはめられている。

 イザークと言ったっけな。お坊さんの癖に短気だ。

 昨夜の夕食の席で軽く自己紹介をした彼らは、初日から噛みあわなかった。仏門のイザークが経文を唱える傍らで、アスランはさっさとぱくついていた。便利なものを使うことに躊躇のないアスランの神社の裏方は田舎には有り得ないほど近代的で、自作の食器洗い機が回り、風呂も全自動追い炊き機能的。使い方を説明しようとしたら、『それくらい俺でも分かるわっ!!』と怒鳴ってからの彼が10分はバスルームで悪戦苦闘していた姿を思い出す。
 翌日は朝早くから、雨漏りの修理から始めると言って張り切って登っていった。
 それを見上げているアスランの手にはバケツと雑巾があった。
「大体、貴様のその格好はなんだ」
「あっ、これ? 去年貰ったんだ。福袋に入っていたはいいけど、家族の誰もサイズが合わなかったのだそうだ」
 着ているトレーニングウェア引っ張る。袈裟姿よりも断然動きやすいと思ったアスランがもう一着あると告げた。
「サイズが大きいのがもう一つあるんだ。着るか? 汚れるだろ」
 数秒の間を置いて彼は真っ黒な袈裟と目で追い、短く「ああ」と寄越した。


 2:虹の彼方に


 おかしな奴だった。
 こんな片田舎で意外と文化的な生活を送っているかと思えば、奴は常に微妙な妖気を漂わせていた。「今日中に掃除をしてしまわないと!」と言う割にはのんびり、庭の石を拾って、奴の居場所、神社へと置きに行っている。

 今までにいなかったタイプだ。
 行動が意味不明だった。

 何十人と修行僧がいるお山にはそれは多彩な人材が揃っている。本場インドで修行してきて女好きだったり、歌手に転進したり、大人しそうに見えて小姑だったりだ。イザークはその中でも折り紙つきの目立つ存在だった。
 容姿もさることながら、お山の修行僧の中では既に実践に借り出される程の法力だったのだ。先輩であるミゲルについて、各地に飛んだものである。しかし、竹を割ったような性格と熱しやすさから、期限付きで頭を冷やせと言われたのだ。
 聞いたこともない田舎の寺。
 実践だけでなく、日々文献を漁り、教義を深めていたイザークには見知らぬ寺の存在は驚きだった。本尊こそ、無冠の虚空蔵菩薩であったが古さで言えば国宝級とまではいかないがそれなりに価値のあるものだろう。

「何が『これが現実だ』だ。ただ、手を抜いているだけだろうが」
 最後にかかわった調伏の仕事で止めをさそうとしたら、まだ早いと止められた。食って掛かったイザークはミゲルから、「まだ金になるだろ?」と言われてぶちきれた。
 そして、今に至る。
「金儲けなどと、くだらん」
 イザークがふいに視線を逸らした先で何か黒いものが翻った。

 なんだ、あれは俺の仕事着・・・!?

 竿に干され、風に吹かれて棚引いている。黒い袈裟も法衣もバタバタと舞っていた。

「貴様、何をやっている!」
 屋根から飛び降りて、指差してズンズン進む先は洗濯竿。
 あー、とポンと手を叩いたアスラン。
「乾燥機も作ればよかったか?」
「そういう意味じゃない!」
 タオルやTシャツに混じって袈裟がはためいているのだ。ありがたみも合ったものじゃない。イザークは米神を押さえて、神官から視線を外した。
 仏門には仏門のやり方がある。
「まあ、いいさ。今日から俺は宿坊だからな」
「ふーん」
 寺の前の道を左に進めば店らしき建物があった。昨日の奴の買い物はそこでしていたものだろう。まだ時間もある、こんな得体の知れないやつの世話になってたまるか。
 イザークがフンと鼻を鳴らして本堂へと向かった時、アスランが思い出したように声を出した。
「あ、そうだ。そっちはガスと水道、止まってる」
 なんだと!?
 彫照寺はかれこれ一年以上も無職の寺、当然である。
「今すぐ開通させろ!」
「その前に本堂の掃除だ」
 三角巾で頭を多い、マスクをしたアスランが晴れやかに言った。

 既に晦日の午前中が終わろうとしていた。



ぐだぐだいって進みません。
正月も終わったというのに、晦日ですよ。


カテゴリ: [ネタの種] - &trackback- 2007年01月09日 20:56:22

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