白く霞んだ世界の空は、やはり淡い空色で、髪を揺らす風も優しすぎた。一切の穢れが落ちた魂は上も下も関係なくただここに集い、ゆらゆら漂いながらやがて消えていく。
ここは死者が集うあの世。
あるいは天国。
次々に新しい魂が召されては、四方に飛び去っていく。魂が消えるまでの間に懐かしい誰かへと会いに行く。想い出は美しすぎて、全てから解放された軽さで永遠のと思しき空間を一瞬で駆ける。今、飛び立った魂は黄金色の眩い光。強く、明るく、そしてやさしい光を纏った魂が東へと走る。吊られるように舞う光が虹となって熱を持たない白い世界がざわめいた。
ああ、けれども、魂の輝きは等しくなくて。
世界の端でずっと果てを見たまま果てる魂もある。白い世界に背を向けて、誰も見ず、誰にも逢わず微動だにしない魂。
少年の手が腕をすり抜け、青年の拳が肩を素通りする。
機械の申し子も、最後はただの人でしたね。
お疲れさん。
僕たちはここにいます!
閉ざされた魂にどれだけ真摯に声をかけようとも届かない。この世界にあるのは、自分と白き世界の境界線。
誰も彼を掴めない。
彼の見ているものを見ることはできない。
彼と同じ場所には立てない。
光を持たぬ魂は白い世界の幻のように、向こう側を白く映し出す透明な空間。じきに中身が世界に溶けて一部となる。
消滅の先にあるのは、無。あるべき深淵へと還るだけ。
一瞬、少しだけ、ほんの少しだけ、魂は白い世界に小さなプリズムを放って消えた。
相変わらず、せっかちな奴だ。
最後にやって来て、真っ先に消えてしまうとは。
話をしたくて待っていたのに。
君はあの時、何を話していたんだ?
輝く魂はプリズムの飛び散った先を見つめて、ゆっくりと頭を振った。
もう・・・忘れてしまった。
***
実は、最期、誰も迎えに来ない方が閣下らしいと思ってます。シロエやマツカのお出迎え入りません。本人が一人だと思っているんだからいいんです。それにね、キースはみんなと同じ場所にはいけないと思うから。
別にイジメじゃないよ。でも、それが業と言うものだから。
それを受け入れてこそ、キースなんだと思っている。皆と同じ場所に来れた、良くやったお疲れ様と言われてホッとしちゃ駄目。
彼の経験は彼のもの、彼の痛みも怒りも悲しみも孤独も彼のもの。誰も肩代わりはできないから、どこまでも背負っていくしかない。正直、誰にもわかってもらえないだろうと思うんだ、アニメ版。分かち合うってのは、キース自身がまず許すまい。それ希望。