開拓村で


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父さん・・・。
やはり北辺の地は騒乱の地でもあるようで・・・。
川越の北にある開拓村にやって来たときのこと。
一人のアイヌ娘が一人の侍にひどい折檻を受けていました。
僕と熊八さんは我知らず助けに向かっていました。
侍と押し問答になりましたが、
どうにか血を見ずにおさまりがつきました。
娘を助け起こし、手当てをしました。
そのとき彼女が言ったのです。
「日没前にここを発て・・・」と。
そのときは首をかしげただけだったのですが、
それが発端であったといえば発端であったのです。

居酒屋で熊八さんと飲んでいました。
そこで運悪く出くわしたのが例の侍で・・・。
さらにそのときに事件は起こったのです。
開拓村の食料が蓄えられている蔵に、火が放たれたのです。
熊八さんと僕は消火に向かおうとしましたが、
侍はそれを許しませんでした。
「貴様ら蛮族の手のものに相違ないな。たたっ斬ってくれる」
腕の立つやつで、熊八さんも動きが取れません。
「先に行ってろ。俺はあとからいくぜ」
熊八さんを信じることにしました。
ペッチャタコタンの長老いわく、
彼には強力なカムイがついているそうです。
僕も、彼が負けるとは思えませんでした。

蔵の消火に向かうと、恐ろしいことがおきていました。
消火に向かった村人が矢をあびせかけられ、息絶えていきます。
そのときようやく娘の言葉の意味がわかりました。
自分を助けてくれた親切なシサムを、
襲撃から守るめの言葉だったのでしょう
そう、これは単なる放火ではなく、チュプライ党の襲撃だったのです。

僕は無心に呪を唱え、霧を呼び寄せました。
これで敵の視界を封じ、彼らに逃げる暇を与えたかったのです。
多少は効果があったようですが、それでも敵の攻撃が止む様子はありません。
村のあちこちが燃え始めていました。
僕は手近な村人たちを呼び集め、再び呪を唱えました。
姿隠しの呪によって、村人たちの姿が見えなくなるのをみとどけると、
熊八さんを探しに行くことにしました。
村人たちは声さえ立てなければ見つかることはありません。
彼らは逃げ延びるはずです。

居酒屋は燃えていました。
危険を冒して声を限りに叫びました。
「熊八さん!」
返事はありませんでした。

「あなた、逃げなかったのね」
女の声に振り返ると、彼女がいました。
例のアイヌ娘です。
「・・・なぜ、こんなことを・・・」
僕はかろうじて声を絞り出しました。
「早く逃げなさいな。死にたくなければね」
その言葉とともに、彼女は煙の向こうに姿を消しました。

熊八さんを必死に探したのですが、見つかりません。
煙で視界がききません。
そこへ僕に斬りかかってくるものがいました。
チュプライ党かと思いましたが、違います。
例の侍です。
しかし、彼の斬撃は力がなく、僕にですら避けることができました。
「・・・裏切りものめが・・・」
彼はそう言って倒れました。
見ると背中に矢が一本刺さっています。
致命傷ではないようです。
彼を助け起こしました。
まだ意識があるようです。
「僕の連れはどこだ」
「・・・知らん、煙にのまれて・・・あとは・・・」
彼は意識を失いました。

侍を支えて動くのでは逃げ切れないかもしれませんが、
止むを得ません。
むざむざ見捨てるわけにも行きませんから。
危険にそなえて用意しておいた符を用い、
矢止めの法を己に施し、彼をかばいながら、必死に逃げました。
姿隠しの法があれば・・・。
村人を救うためとはいえ、
あそこで使ってしまったことが少し悔やまれました。
弓弦の音とともに、矢が数本、こちらへ飛んできます。
見つかってしまった・・・。
侍を物陰に隠し、死を覚悟して彼らに立ち向かうことにしました。
一度も使ったことのない呪を使うことにしました。
おそるべき「火球の法」です。
僕の師は、決して使ってはならぬといっていたのですが・・・。
アイヌの射手たちを殺してしまわぬよう、わざと狙いをはずしました。
轟音とともに火が荒れ狂い、業火のもたらすかりそめの昼に、
さらなる光が加わります。
射手たちはひるみ、一度退却することにしたようです。

どうにか生きながらえました。
チュプライ党は去り、無事朝日を拝むことができたのです。
しかし、多くの人が死に、また村はほぼ全焼しました。
熊八さんの行方もまったくわかりません。
今は何も考えられない状態です。
ただ、死ななくてよかったということだけ。
これからどうしたらいいのでしょうか・・・。
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