決意


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僕は全てを話しました。
正直に。
そうするつもりではありましたが、
そうせざるを得なかったというのも事実です。
陰陽師・芦尾忠保どのがお奉行とともに詮議の場に現れては、
隠し事など不可能です。

芦尾忠保どのは新京で土御門家の門を叩き、その才を認められた人。
僕のような田舎陰陽師とは力の差は歴然としています。
すべてを知られてしまいました。
呪は必要なかったはずですが
(拷問でもされたら僕はきっと喋ってしまいますし、嘘も苦手です)、
念を入れて呪による裏づけも取られました。

ペッチャタコタンにチュプライ党の刺客が現れた「事実」。
チュプライ党の隠密であるあの娘を助けた「事実」。
アイヌの射手を敢えて殺さなかった「事実」。
全て事実です。
僕が裏切りものでないのも「事実」ですが、
そこは彼らにとってどうでもいいことのようでした。
これらの事実を、川越奉行と忠保どのは、
いかに有効に用いるか考えているようでした。

お奉行はしばらく無言で考えていましたが、やがてこういいました。
「やはり、その村をわしがじかに『調べて』みる必要があるようじゃ」
彼は役人に命じて、兵を集めることにしたようです。
・・・何ということでしょうか。

僕に聞かれてもいっこうに差し支えないとでも言わんばかりに、
彼らはおそろしいことを口にしていました。
むしろ、わざと僕に聞かせるつもりだったのかもしれません・・・。

「凪待から彦左衛門が来るのは待たねばなるまいな。
彦左衛門め、役立たずばかり連れてきおったら、
首を切り落として晒してくれるわ」
「お奉行様、彦左衛門殿ならば心配要りますまい。
河が静まれば、会所の兵に加え、
100を超えるつわものがコタンの東に陣取ることになります」
「瀬戸総十郎の方はぬかりあるまいな」
「は。先日アイヌの矢を受けたことを恥じ入っておりました。
必ずや獅子奮迅の立ち働きを見せましょうぞ」
「ヤツの門人は20ほどというが、それで足りるか」
「まず間に合いましょう。ほとんど命をおとすこととなりましょうが」
忠保どのはヒキガエルが痙攣しているようないやな笑い声を立てました。
「問題はあの爺よの」
「それもようやくに手はずがととのいましてございます」
「相違ないか」
「相違ございません。わが術の全てに加え、『例のもの』がございます」
「そうか。『例のもの』の秘密がついに明らかとなったのじゃな」
「河が静まり次第、ご覧に入れましょうぞ」
「よかろう。すべての兵が集まり次第、すぐに川越を発つ」

僕の処遇は「追って沙汰する」とのことでした。
役人に引き立てられ、牢に戻されました。
牢の中は僕一人です。
呪を禁ずる符が張られており、僕の力では破ることができません。

しかし、なんとかしなければなりません。
事態を放置することは簡単かもしれません。
それならばお咎めも軽くすむかも。
しかし、僕にはできそうにありません。
お奉行がペッチャタコタンを火の海にしようとしているのは、
火を見るより明らかです。

父さん・・・僕が故郷の土を踏むことは、もうないかもしれません・・・。
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