冒頭シナリオ作成


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土文から会話のテンポからのたたき台



冬の羽佐間総合病院は、いつも暑いくらいに暖房が効いている。
俺が今居る待合室も、まだ診療が始まって間もない時間だというのに、既に暖かくなっていた。
彰一「コーヒーでも飲むかな……」
一人そう呟いて、俺は待合室の端にある自動販売機の所へ行った。
そこには、俺の妹の担当医である羽佐間 黒美華(はざま くみか)先生の姿があった。
俺を見つけた黒美華先生は、手に持っていたペットボトルをゴミ箱に放り込むと、俺に話し掛けてきた。
黒美華「あら、彰ちゃん、また奈緒ちゃんのお供? いつも偉いわねぇ」
彰一「どうも、こんにちは」
黒美華「はい、こんにちは♪」
露出過多な格好をしたこの人は、ここ羽佐間総合病院の跡取り娘で、親身な診療が評判の医者だ。
院長であり、手術の腕に定評がある彼女の父親も、この病院で現役医として診療を行っている。
そのため二人を混同しないよう、病院内では皆、父親を『黒雄先生』、娘を『黒美華先生』と呼び分けていた。
彰一「奈緒はまだ時間かかりそうですか?」
黒美華「今、血圧計ってるから、もうすぐなんじゃない?」
彰一「そうですか、ありがとうございます」
黒美華「……うーん、何でいつも君は、そんなに他人行儀なのかなぁ?」
彰一「はい?」
黒美華「水臭いって言ってるの! 私達、もう随分長~くお付き合いしてるのに!」
彰一「確かに長いですね。俺が中学生の頃からお世話になってますから」
黒美華「だから、何でそんな堅苦しい喋り方なの? 肩こっちゃうでしょ?」
彰一「いや、やっぱ色々とお世話になってるし……」
黒美華「アタシの脚見て、何か感想は?」
彰一「いつもお綺麗ですね」
黒美華「違うでしょ! もっと年頃の男の子らしい答え方があるでしょ? 『触りてぇ~』とか思わないの?」
彰一「思わないでもないですけど……」
黒美華「アタシの胸とかもジロジロ見る人多いのに、君はわざと目逸らすし!」
彰一「すみません、こういう性格ですから」
黒美華「……アタシは彰ちゃんの可愛いオチンチンが忘れられないんだけどなぁ」
彰一「あの……、俺そんなモノを黒美華先生に見せた覚え無いんですけど」
黒美華「去年見たよ?」
彰一「去年? ……まさか、俺が黒雄先生に盲腸切って貰った時ですか?」
黒美華「うん。バッチリ目に焼き付けといた♪」
彰一「ちょ、ちょっと! 何勝手に見てるんですか!?」
黒美華「だって、切ったのはお父さんだけど、アタシも少しお手伝いしたからねぇ」
彰一「お手伝い?」
黒美華「オチンチンの毛、剃り残しがあったからね。ちゃんとツルツルになってたでしょ♪」
彰一「ぅ……、手術中、ずっと目瞑っててわかんなかったんですけど、アレって黒美華先生がやったんですか?」
黒美華「そうよ~♪ 彰ちゃんって結構オチンチンおっきいんだよねぇ。アタシ仕事中なのにドキドキしちゃった♪」
彰一「……とりあえず、こんな場所で『オチンチン』って連呼するのは止めません?」
黒美華「じゃあ『ペニス』がいい? それとも『肉棒』の方がお好みかな?」
彰一「ホント勘弁して下さいって」
黒美華「そんなに恥ずかしがらなくってもいいじゃない♪ それに、もうオチンチンの毛も元に戻ったでしょ?」
彰一「……お陰様で、モサモサに戻りました」
黒美華「やっぱりそうなの? ちょっと見せてよ♪」
彰一「ええ!? い、嫌ですよ!」
黒美華「ケチねぇ。じゃあお尻で我慢するかぁ……」
そう言うと、黒美華先生は突然、俺の尻を撫で始めた。
彰一「ちょ、ちょっと!? 何で俺の尻触ってるんですか!」
黒美華「触りたいからに決まってるじゃない」
彰一「当然のように言わないで下さいよ! 大体こんなトコ、奈緒に見られたら……」
黒美華「あら、もしかして奈緒ちゃんが怖いの?」
彰一「ええ!? な、な、何で俺がアイツを怖がらなきゃいけないんですか!!」
黒美華「うふふ、ホントに君は正直だねぇ。隠し事出来なくて困る事多いでしょ?」
彰一「ぅ……、そ、そんな事は……無い、ですよ?」
黒美華「ふ~ん。……ま、無駄な抵抗は止めて、おとなしくお尻を撫でられなさい♪」
彰一「いや、だから止めて下さいって!!」
俺は黒美華先生から尻を逃がそうとして体をよじり、その場から離脱すべく後ろを振り向いた。
するとそこには、まだ診察を受けているはず妹が、非常に冷ややかな視線を俺に注ぎながら立っていた。
奈緒「……随分と楽しそうね、兄さん?」
彰一「!! な、奈緒!?」
奈緒「なに? オバケでも見るような顔して」
彰一「い、いや……、いきなり後ろに居たからビックリして……」
奈緒「さっきからずっと兄さんの後ろに居たけど?」
彰一「……さっきからって、いつ頃?」
奈緒「……剃り残しとか何とか言ってた時」
奈緒は少し顔を赤くして言った。
彰一「そ、そうなのか?」
黒美華「そうよ♪」
奈緒の隣へ移動し、嬉しそうに答える黒美華先生に、俺は恨めしげな目を向けた。
しかし、そんな視線などどこ吹く風とばかりに、黒美華先生はニヤニヤしながら俺のうろたえぶりを楽しんでいる。
仕方なく俺は、不快感を顔一杯に湛えた奈緒に話し掛けた。
彰一「……もう診察終わったのか?」
奈緒「うん終わった。だから私、もう帰るね! バイバイ!」
彰一「ちょ、ちょ、ちょ! 待て待て。何でいきなり怒ってんだよ?」
奈緒「怒ってない! 私は早く帰りたいから帰るの!」
彰一「その言い方、モロ怒ってるじゃん」
奈緒「怒ってないって言ってるでしょ!」
彰一「ちょっと待て。じゃあ一緒に帰ろうって」
奈緒「嫌! 私は一人で帰りたいの! 兄さんとは一緒に帰りたくない!」
彰一「お前何でそんなイキナリ怒ってんだ? 俺ずっと待ってたってのに……」
奈緒「そんなの知らない!」
彰一「知らないってお前……」
奈緒は俺のしょげた顔を横目で一瞥すると、笑顔を作って黒美華先生に向かい、勢い良く頭を下げて言った。
奈緒「じゃあ、黒美華先生、私これで失礼します!」
黒美華「はい、またね。お大事に~♪」
そう笑顔で対応すると、黒美華先生は再びニヤニヤとした視線を俺に向ける。
彰一「おーい、奈緒……」
弱々しい俺の呼びかけを無視して、勢い良く靴底を床に打ち付けながら、奈緒は病院の玄関へと歩いて行った。
黒美華「奈緒ちゃんってやっぱり可愛いわねぇ♪」
彰一「可愛いって……、アレがですか?」
黒美華「可愛いじゃない♪ きっと、大好きなお兄ちゃんをアタシに盗られるって思ったのねぇ」
彰一「ただの反抗期ですよ」
黒美華「違うわよ。さっきの奈緒ちゃん、恋する乙女の瞳だったじゃない♪」
彰一「まるで汚いモノでも見るかのような目でしたが……」
黒美華「もう! 彰ちゃんだって本当は奈緒ちゃんの事、可愛いって思ってるんでしょ?」
彰一「ははは、黙ってりゃ可愛いんですがね……」
黒美華「……はぁ~、これじゃ奈緒ちゃんも怒るはずだねぇ」
彰一「俺達くらいの歳だと、兄妹なんてどこもこんな感じですよ」
黒美華「……そうかもね。でもアタシは、二人がこの病院に通い始めた頃から知ってるから……」
彰一「その頃から考えれば随分マシですよ。昔は喧嘩にもならなかったんですから」
俺の母親と奈緒の親父は、共に伴侶を病気で亡くして、再婚した。
俺と奈緒は、その再婚を契機に兄妹となった。
だから最初は二人とも、喧嘩どころか会話すらあまりしなかった。
奈緒の『兄さん』という、俺に対して少し距離のある呼称は、その頃の名残だ。
黒美華「二人とも、昔からシャイだったからねぇ♪」
彰一「人見知りするんですよ。でも奈緒は特に酷かったなぁ……」
両親とも働いていたため、体の弱い奈緒が病院へ通う際に付き添うのは、自然と俺の役目になった。
通院の道すがら、いつも辛そうに俯いていた奈緒がかわいそうで、俺は少しでも気を紛らわせてやろうと一生懸命話し掛けるようになった。
きっと、それが俺達兄妹の始まりだった。
黒美華「……ごめんね、変な話しちゃった」
彰一「いえいえ」
黒美華「アレ? さっき奈緒ちゃん、カルテ持ってなかったよね?」
彰一「ええ、持ってませんでした」
黒美華「ちょっとここで待ってて」
そう言うと、黒美華先生は足早に診察室へ行き、カルテの挟まったクリップファイルを持ってきて、それを俺に手渡した。
黒美華「はい、コレ窓口に持って行ってお会計しといてね。お薬の処方箋も入ってるから、帰る前に薬局へ寄るの忘れないように」
彰一「はい、ありがとうございます」
黒美華「さて、アタシもそろそろ仕事に戻るかー。じゃあ彰ちゃん、またね♪」
黒美華先生はそう言って俺に背を向けて、肩の上で手をひらひらと振って診察室へと歩いて行った。
俺はその後姿を見ながら、奈緒の冷ややかな視線を思い出して、深い溜息をついた。

会計を終え、薬局カウンターに処方箋を渡した俺は、待合室で薬の調合が終わるのを待っていた。
『ピンポン』という呼び出し音の後、番号がカウンター前の電光掲示板に表示される。
その番号が、自分の持っている引換券に刻印された番号と一致するのを確認して、俺はカウンターへ向かった。
その時、応対に出てきた薬剤師は、いつも見かける妙齢の女性ではなく、初めて見る爺さんだった。
薬剤師「お前さん、コレ誰の処方箋かの? 女の子の名前になっとるが?」
彰一「あ、これ妹のなんです。さっきちょっと喧嘩しちゃって、勝手に一人で帰っちゃったんですよ」
薬剤師「ははは、そりゃ災難じゃったの」
彰一「ははは、そうですね。我侭な妹を持つと、苦労します」
薬剤師「いやな、お前さんは一見して病気に縁が無さそうに見えるからの、余計に不思議に思ったんじゃよ」
彰一「ええ、俺は生まれてこの方、病気らしい病気とはあんまり縁が無いですね。医者にかかったのも、去年ここで盲腸切って貰ったくらいです」
薬剤師「ほう。でも黒美華先生とは随分懇意にしとったようじゃが」
彰一「俺、妹の付き添いで、ここにもう五年以上も毎月通ってるんですよ」
薬剤師「ほほう。お前さん、優しいんじゃの」
急に誉められて照れた俺は、思わず照れ隠しの愚痴を口にした。
彰一「とんでもない、嫌々ですよ。しかも最近アイツ、反抗期で言う事聞かないし」
薬剤師「きっと甘えとるんじゃよ。逆に言えば頼りにされとるという事じゃ」
彰一「ははは、甘えるならもう少し可愛げのある甘え方すれば良いと思うんですけどね」
薬剤師「体が弱るとな、誰でも不安になり、心が荒むもんじゃて」
彰一「いや、きっとアイツのヒネくれた性格は、生まれつきですよ」
俺のその言葉をたしなめるように、薬剤師は言った。
薬剤師「お前さん、そんな事を言っちゃいかんぞ。病気というものは、治療や薬だけでは治せんもんなんじゃ」
彰一「それじゃあ、どうやって治すんですか?」
薬剤師「本当に効く薬というのはの、陳腐に聞こえるかもしれんが、やはり『愛情』なんじゃ」
薬剤師が口にした予想外の回答に、俺は思わず笑い声を上げた。
彰一「あはは、『愛情』って。あはははは、普通、薬局で『愛情』は出してくれないじゃないですか」
薬剤師「……そりゃそうじゃの! あっはっはっはっは♪」
彰一「そうでしょ? あっはっはっはっは♪」
大口を開けて釣られ笑いする俺に向かって、薬剤師はどこからか取り出した飴玉をポイッと投げた。
そのまま飴玉は空中に綺麗な放物線を描いて俺の口の中へ入り、舌の上で動きを止めた。
彰一「!? ……何ですかコレ?」
薬剤師「飴玉じゃよ。他では手に入らん貴重な物じゃ」
薬剤師が俺の口の中へ投げ込んだ飴玉は、今まで俺が体験した味覚のどれにもあてはまらない、形容し難い味がした。
しかし、それは決して不味いというわけではなく、むしろ舐める度にもっと味わいたいと思わせるものだった。
そして気付くと、飴玉は口の中で溶け消えていた。
彰一「……不思議な味の飴ですね」
薬剤師「ワシからのささやかなプレゼントじゃ。お前さんも、たまには薬の世話になってみい♪」
彰一「え? 薬の世話にって?」
その時、含み笑いをした薬剤師の後ろに、突然五人の可愛らしい女の子達の姿が現れた。
何故か彼女達は皆一様に、俺に向かって微笑んでいる。
彰一「あ、あれ? あの、皆さん誰? つか、いつからそこに……?」
しかし、彼女達が俺のその問いに答える事は無かった。
なぜなら、俺の口から言葉が出終わる前に、彼女達はどこへともなく姿を消してしまったのだ。
薬剤師「もし、何か不思議な事や困った事がお前さんの身の回りに起こったら、ここに相談しにおいで」
ちょうどその『不思議な事』が起こって茫然とする俺に、薬剤師は優しく言った。
そして、俺に『宮栖里 奈緒』と記名された薬袋を手渡すと、薬剤師は薬局カウンターの中へ戻って行った。
こうして、俺のほんとにほんとにおかしな生活は始まったのだった……。
ツールボックス

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