※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。





『実家からの手紙』


「ここがハイ・ラガード公国。世界樹に守られているという地」
「お嬢様ー!マリアお嬢様ー!!」
「あらイソップ、あまりに遅いから追いかけて来ないのかと思ってすっかり忘れていたわ。でももう遅いわよ………私はここで世界樹の謎を解き明かすんだから!」
「あ、いや。別に僕はお嬢様を連れ戻しに来たわけではなくてですね」
「じゃあ一ヶ月近くもかけて追いかけて来たのはなんだっていうのよ」
 彼の返答が納得いかなかったのかマリアは不機嫌そうに聞き返す。
「えっと、旦那様と奥様からの伝言を預かりまして」
 そう言うと彼は、しまっておいたマリアの両親から預かったという手紙を取り出し彼女に手渡した。
 彼女は手紙の封をナイフで切り開くと、手紙の内容に目を通しながらしばらくは無言でいたが、突然素っ頓狂な声を上げた。
「なんなのよこれは!あー………お母様なら確かに」
「お渡ししましたからね。それでは僕は」
「ちょっと待ちなさい!」
 一ヶ月かけて来た道を戻り始めようとしたイソップの首元をがしりと掴むと、マリアはそのまま思い切り引き戻した。
「んがっ。なにするんですかお嬢様」
「アンタは私と一緒に来るの」
 突然の彼女の提案に、一瞬言葉を失いそうになったが、すぐに
「ですが僕にはお屋敷を警護するという」
「貴方の仕事は『ワ・タ・シ』の警護でしょう」
 やけに私の部分の強調された言葉に、彼の発言は見事に途中で遮られてしまった。
「しかし」
「しかしもへったくれも無い!それともなに………私の言う事が聞けないっていうわけ?おまけにこんな辺境の地に大事なお嬢様とその友人をほったらかして自分は帰ると?」
「と、とととんでもない!というか友人って」
 という所まで言って初めてイソップは、マリアの隣に見慣れた少女がいることに気がついた。
「グリーン!?」
「イソップ様も来られていたのですね」
 のほほんとした笑顔を浮かべながら手を振る彼女の姿を見たイソップは、マリアに耳打ちするようにして尋ねた。
「まさかグリーンには何も言わずに連れてきたんじゃあ」
「私がそんなことするわけないでしょう。説明したわ。ちゃーんと「これから世界樹に行くわよ」ってね」
 それでここまで付いて来たと。文句も言わずに一ヶ月も。ただ歩き続けたと。
 素晴らしき友情(?)にイソップは思わず涙を流しそうになったが、それを堪えて言った。
「お嬢様!一先ずお屋敷に戻りましょう。グリーンを巻き込むわけにはまいりません。メディックなら屋敷の者を連れてくればいいですし、先ずはグリーンを家まで送り届けてそれからまた」
「無理よ」
 即答だった。
 しかし今度はマリアにもちゃんとした根拠があった。
 その証拠に先ほどまで自分が眺めていた手紙をイソップの前でチラつかせていた。
 その影でグリーンが「な~か~ま~は~ず~れ~は~いやい~や~」とか言っていたようにも見えたが、あえてマリアはそれを見なかったことにして続けた。
「いいから読んでみなさい」
 言われるままに彼女から手紙を受け取ると、イソップはそれに目を通した。
 そしてやはり素っ頓狂な声を上げた。
「なんですかこれは!?」
「見ての通り。私達はもう帰ることはできないの。この世界樹の謎を解明するまではね」
 手紙にはこう記されていた。

『 愛しの娘マリアへ

 世界樹の謎を解き明かすまで帰ってきちゃダメよ♪
                        母より

  P.S グリムとブルーにはお父さんが説明しておいてあげるよー by父 』


『奴の脳天に乾杯』


 ハイ・ラガード公国の中央に位置するセントラル・シティを早歩きで通り抜ける一行。
 一人は傍から見ても不機嫌だとわかる少女。もう一人は必死にそれを眺めようとしている青年。そしてその隣で街のあちこちを眺めている少女。
「なんなのよあのクソオヤジ!なにがお前らに紹介できる仕事はねー!なのよ。まったく」
 ここまで来るのにあらゆる資金を使い果たしてしまった彼らは、まずは資金を調えようと仕事を探しに酒場へと向かったのだが、許可を貰っていない人間に仕事を紹介するわけにはいかないと門前払いをくらったのだった。
「まぁまぁ落ち着いてくださいお嬢様。世界樹を探索する許可を貰うにはまずはラガード公宮に行かなければならないとわかったのですから。何も知らずに世界樹に向かっていたら捕まっていたかもしれないんですよ」
「はンっ。できるものならやってみればいいんだわ。その前にあのオヤジの脳天に一発ぶち込んでやるんだから」
 本気かどうかは別として、交易所で仕入れたばかりの小銃をイソップの額に向けて撃つような素振りでニヤリと笑う彼女の姿を見て、やはり自分が来て正解だったのだと彼は思った。
 そんな二人のやりとりを我関せずと街の見物をしていたグリーンが二人に声をかけた。
「あのーお二人ともよろしいですかぁ?」
 突然の発言に二人はグリーンにへとを向ける。
「はい?どうかされましたかグリーンさん」
「その、ラなんとか公宮なんですけど………先ほど通り過ぎてしまいましたよぉ」
 相変わらずのほほんとした彼女に言われ、はっと周りを見回してみれば。いつの間にか世界樹の前まで来ているではないか。
「い、いいわ!行ってやろうじゃない!」
「いけませんお嬢様!まずは許可をっ!」
「放しなさいイソップ!」
「いーえ!こればかりはいくらお嬢様の命令でも聞けません!」
「キーーーーーーーー!!」
 その後イソップに抱きかかえられるようにして公宮へと連行されたマリアを街の人間を始めとする冒険者達までもが奇異の目で見ていたのは言うまでもない。


「はンっ。試練とか言うからどんな内容かと思えば一階の地図を作れですって」
「が、がんばりますっ!」
 約一名異様に張り切っている人間もいるようだが、公宮を出るなりマリアは誰に言うわけでもなく言い放った。
「いいですかお嬢様………地図作りは探索の基本。一日で看破できるほど世界樹は甘くないのですから、それをしておくということは今後の探索にも大いに役立つということなのですよ。第一地図を作らずに迷宮などに入ればたちまち道に迷ってしまい終いには」
「あーーーーーーー!」
 突然耳を塞ぎながら大声をあげるマリア。もう聞きたくないという意思の表示なのだが、もう少し丁寧にできないものなのだろうかとイソップは思ったが、それをした所で話をやめるような人間でないことくらいマリアはわかっていた。
「わかってるわよ。ただちょっとムカムカしてただけなのっ。まったくもう」
 だから、あえて話を遮る様に大声を上げ無理矢理にでも終わらせたかったのだ。
 仕方ないですね。とでも言いたげにしつつもイソップも納得すると、ようやく一行は聳え立つ世界樹へと向き直り。

「それでは、いざ!未開の地、世界樹の迷宮へ!」
「あー!それ私のセリフー!!」
「あはは一度でいいから行ってみたかったんですよこういうの」
「わーたーしーもー!」