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『白き獣の子供達』


「………もーーー嫌っ!なんなのよあのモグラ」
「私のお父さんもなぜかは知りませんがモグラが嫌いらしいですよぉ」
「いやぁ、やっぱり三人で行くっていうのは無理があったんですよ」
「仕方ないでしょう。仲間を探そうにもここに来ている人達のほとんどが、もうパーティーを組んじゃっているんだから」
 モグラの洗礼を受け世界樹から退散してきた一行が街の酒場で頭を抱えていると、突然一人の男が声をかけてきた。
「お前達、仲間を探しているのなら付いて来なさい」
「な、なんなのよアンタ!?いきなり声をかけるなり」
「来るのか来ないのか。来ないのならばそれで構わないが、この街からは早く出て行くのだな。私から言えることはそれだけだ」
「なっ!黙って聞いてれば」
「落ち着いてくださいお嬢様。申し訳ありません。ですが貴方も初対面の方にはそれ相応の対応の仕方というものあるのではないでしょうか」
「………これは失礼、私はこの街の冒険者ギルドのギルドマスター。私の顔を知らないということはお前達はまだギルド登録をしていないだろう」

『ギルド』―――世界樹を探索する上で共に行動する仲間の集団であると同時に、公宮から認められたギルドは様々な依頼を引き受ける許可を得ることができる。冒険者達は探索の合間に、その依頼をこなすことで報酬を得ているのだ。中には世界樹の探索よりもその報酬が目当てでこの街に来る者もいる。

 相手の素性がわかった以上、付いて行かない理由は無い。
 言われるままに男の後を歩き続けると、やがて荘厳な飾り付けのされた扉のある建物の前へとたどり着いた。
 男は見た目にも重そうな扉を軽々と開くと、一度だけマリア達の方を見て、そのまま奥へと消えていった。
 しばらく扉の前で呆然と立ち尽くして一行だったが
「行きましょうか」
 というグリーンの声に意識を取り戻され、少し早歩きで建物の中へと進んだ。

 中に入ると、その外観からは予想できない程に騒がしく、いたる所で冒険者達が自分の冒険暦を語っている。
「遅かったな。ここにいる連中の値踏みでもしていたのか」
 少し奥に進んだ所で、ギルドマスターが待っていた。
「値踏み………と言いますと」
 未だに呑まれかけている二人に代わって、珍しくグリーンが聞き返す。
「なんだ。肝が据わっているのはお前さんだけか。まぁいい、それでお前達………名前はなんというのだ」
「マリア。フルネームの方がよかったかしら」
 肝が据わってないと言われカチンときたのか、グリーンが答えるのよりも先にマリアが答える。
「なるほど………では言い方を変えよう。お前達のギルド名はなんというのだ」
 そこまで言われて、ようやく男が聞いている名前の意味がわかったマリアはバカにされた気持ちになったが、周りにいる人間達が自分達に調味を持ち始めているのに気が付き湧き上がる感情を押さえ込んだ。
 そして、一呼吸置いて答えた。

「『黒猫』―――『白猫』の子供よ」


『黒猫』


 マリアの放った言葉は、建物の中の騒音を一瞬にして消し去った。
「白猫の、子供」
 しかし一度言ってしまったことを今更戻すことはできない。
 恐らく自分達の親がどういう人間だったのかよく理解していないマリアにとっては大したことではなかったのだろう。
 彼女がどう続けていいものか迷っていると
「ということなので登録お願いしますねー!えーとここに書けばいいんですか?」
ニコニコと笑いながらイソップが前に出て、ちゃっちゃと登録を済ませてしまう。
「これで、よし!それじゃあ僕達はこれで!お嬢様、グリーン、行きますよ」
 そう言うと彼は、二人の手を引いてそそくさとその場から退散した。
「本当に………あの『白猫』の子供か」
 残されたギルドマスターが呟くと、冒険者達は一行の去っていった扉をただ見ていた。


「登録はなんとか済ませましたが、仲間探しの方は振り出しですね」
 宿屋に戻った三人はテーブルを囲んで呆然と外を眺めていた。
「………ごめんなさい」
 沈黙を破ったのはマリアの謝罪だった。
「マリアちゃん?」
「まさかあんな空気になるなんて思ってもいなかったから、でも」
「大丈夫ですよ。仲間なんてすぐに見つかりますって、もしかしたら今にもそこの扉を開けて現れるかも」
 三人が部屋の入り口を見た時、コンコン。というノックと共にゆっくりと扉が開き。
「すまないけど相部屋してもらっても構わないかねぇ」
 女将が入ってきた。
 軽く肩透かしを食らった三人が思わず笑いを堪えていると、どうしたのかという様子で女将が見ていたが、その奥に待っている人影が見えたのに気がつき。
「大丈夫よ。どうせ私達以外に使う人なんていないんだから」
 マリアの言葉に、「この部屋でまで断られたらどうしようかと思っていたよ」なんて言いながら女将が新たな客を部屋へと招きいれた。

「よかったー。まさか街まで着て野宿しそうになるとは思ってもいなかったから助かりましたわ」
「カイエン………まずは挨拶」
 そうして姿を現した、異国の衣服を纏った少女と、彼女に連れ添うようにして立つ女性の二人組。
「わかってまーす!山本海燕と申します。しばらくの間同室にあずからせていただきます」
「リーダだ。感謝する」

 走り出したら止まらない暴走特急!文字通りの鉄砲娘ガンナー。マリア。
 防ぐのは前からの攻撃ではなく後ろの暴走娘!?二代目中間管理パラディン。イソップ。
 のほほん笑顔は嘘か真か………肝っ玉メディック。グリーン。
 裏が無ければ表も無い、真っ直ぐ貫く楽しい道ブシドー。カイエン。
 色々出せます。でも喋りません。クールアルケミスト。リーダ。
 偶然出会った二組のパーティーが、数時間後に正式に決定されたギルド『黒猫』のメンバーである。